赤 色 逃 避 行
- 伝 説 で い こ う ! -



08.ここでそのフラグですか!? (下)
『』・・・普通の人には聞こえなかったり理解できない会話。テレパスやポケモンの声など。
≪≫・・・夢主による筆談。









side ポケスペ レッド








 ゴールドとともに山にこもってから、そこそこたち、ゴールドという少年のこともよくわかってきた。
おれたちがいるのは、シロガネ山。
 シロガネ山は一年のほとんどを雪で覆われている。
だけどそれは一部だけだ。
街から見える白い斜面とは反対側はかんきつ線が吹き出るような温泉地帯。
そのせいで、その周囲だけは岩肌が覗き、周囲には雪は積もらないので、緑の森もうかがうことができる。
いろんな顔を見せるシロガネ山。
おれたちはそこで野生のポケモンを相手にしたり、互いにバトルをしあったりして、日々ポケモンたちと暮らしている。

 “その日”も、ひとバトルを終え、夕飯にしようかという頃合だった。

 森の中ではなく、温泉がふきでたりして地面の温度が暖かい場所は、湿度も熱気も高く、つねに蒸気で翳っていたりする。
ゴールドが岩場でさっそく釜戸づくりをはじめたのをみて、今日は釣りでもするかと、川へ向かおうとしたところで・・・。

バシャーン!

「え?」

 大きな水しぶきがした。
ポケモンがはねた?いいや、違う。
あれはなにかが水の中に落ちた音だ。
ここの湖は透明で底まで綺麗に見えるせいで遠近感がわかりづらいが、うっかりすると浅瀬に見えるがここの底は物凄く深い。
きっと何者か――たぶんポケモンだろうけど――が、謝って落ちてしまったに違いない。
慌てて水しぶきが上がった方へかけよると、水面の下に赤く揺らめくものが見えた。

「うそ、だろ!?炎タイプなのか!?」

赤といえば炎タイプ。そうなると命が危ない!!

おもわず後先も考えずに飛び込み――

『!?』

 澄んだ水のなか、そこにいたのは小さな男の子だった。

 意識がはっきりしないのだろうか、身体に力が入らないようで、男の子はどんどん沈んでいく。
慌てて水をかくスピードをあげてだきかかえる。
そこで男の子が背負っていたリュックに、しがみつくようにピカチュウがはりついていたのに気付いた。
それに親近感を覚え、よけい助けないと!と気がした。

『しっかり。絶対助けるから!!』





**********





 水から引き上げると、その子はすぐに水を吐き出した。
横でそのこのリュックから転がり落ちるように地面に着地したピカチュウは、ゲホゲホと激しく咳をしている。
ふたりともずいぶん辛そうだ。
だけどそこで覚えた妙な違和感。
男の子もピカチュウと同じように咳をしている。
だけどなんか・・・変だ。

“静か”すぎないか?

理由はわからなかった。
おれが“それ”の可能性にたどり着く前に、ふいにあった視線に――その色に、とらわれた。
目深までかぶった帽子。ぬれたせいで顔に張り付くようにくっついた長めの前髪から覗く、綺麗な赤色。
おれと同じ色の目は、だけど、おれより澄んでいて大きな宝石みたいだった。
前髪のせいで隠れてもったいないと思った。

赤色のそのこは、オレをみて首を傾げた後、周囲を不思議そうに見回していた。
不思議そうにといっても、そのこの表情が動いたわけではない。
あまり感情を表に出さないこのだろう。
おれがわかったのは、なんとなくにすぎない。
無表情の彼から感じ取れるのは、そんな雰囲気程度だった。

キョトンとした相手に話しかけようとして、そこで彼のピカチュウがみごとな助走をつけて、そのまま――ドコ!ガッ!メキョッ!!っと・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」

そのぉ・・・
えっと〜・・・

ピカチュウはシッポで、少年の帽子を吹き飛ばした(ということにしておこう)。

いまのをみてもわかるが、目の前の相手は、子供といって油断はできないだろう。
こっちをみてなんとなく怯えられてるのは、ひとみしりなのか?
たぶんこのこを守るために、あのピカチュウは強くなったんだろう。

それにウズっと、おれの体をワクワクしたなにかが走る。
思わず頬が緩んでしょうがない。

「なぁ。おまえって強いよな!
さっきのピカチュウの動きも凄かったし!!おまえのポケモンすごいなぁ!」

そんなおれの言葉に、そっと隠すように、あのこは六つのモンスターボールのついたポーチを陰に隠した。
気付いてないと思ってるようだし、なぜか隠したがってるようだから、みなかったことにしておく。

あれ?
なんかおれ睨まれてる?

おれがポケモンの話を持ちかけたら、そのこは口を今まで以上に硬く閉じ、睨むような険しい顔でおれをきつくにらんできた。
唇をかみ締めているのに、目が微かな潤みをおびる。そんな表情におれは覚えがあった。
ポケモンバトル――あのこが反応したのはそこだ。
そっか。このこはイエローと同じ。
ポケモンを大切にするがゆえに、バトルを嫌うあの黄色の子と――。
だからおれは睨まれてる。

それがわかったら、なんだか、目の前の子に対しては言ってはいけない言葉を言ってしまった気分になって、思わずどう言葉を訂正しようかと頬をかく。

そこで視線に入ったのは、あの赤。

いまは輝くようなひかりも感情も見えない。
そうさせてしまったのは、おれの不注意な発言のせいだろう。
それでも――

「へぇー(やっぱり)綺麗な目だな」

彼のまっすぐで澄んだ赤は変わらなかった。

「ん?」

 ふいにまた違う赤色が視界に入る。
白い肌に一本線を引くように、彼の頬に血でできた線ができていた。
小柄で儚い印象のある相手には、その一筋の血だけでも痛々しくうつる。

「ってか、お前ここケガ・・・」

 の赤い子の頬に、擦り傷があったのを見つけ、心配になって手を伸ばしたら怯えたように肩をすくめて強く目を閉じた。
そんなにおれはこのこを怯えさせるようなことを下だろうか。

思わず首を傾げたら

ちょうどタイミングよく、ゴールがやってきた。





**********





 あのこの名前は、。本当はレッドというらしいけど、おれもレッドなので、今はそう呼ぶことにしている。
はもともと別の世界のおれであるらしく、落ち着いて話をしてみたら驚くほどおれたちは似ていることに気付いた。
さすがは平行世界だ。
ただ、彼には問題があって、口が利けないらしい。
それが、おれがはじめにとであったときに感じた“静か過ぎる”違和感の正体だった。
こういうところは、平行世界のレッドといえど、やはり“おれそのもの”ではないのだと実感するところだ。
障害といえば、おれは氷漬けにされたせいで手足がたまにしびれたりと、ほぼ完治はしているもののいまだに若干の麻痺が残っている。
はそういった事件やしびれなどはないが、声帯から声を出すことができないらしい。
これが平行世界ゆえだというのはなんとなく理解した。

 そんなと暮らして一週間。
平行世界というなの異世界からきたは、いまだ帰る方法がわからずおれたちとくらしている。

 はじめのころ、はゴールドにしかなつかなかった。
この山には人間はおれたちしかいなかったけれど、おれが触れても怖がらなくなったのは随分後だ。
ゴールドがはじめからなつかれていたのは、彼がのイトコに瓜二つだったせいらしい。
それもしかたない。
なにせそのイトコというのが、平行世界のゴールドなんだから当然と言えば当然だ。
しかしは慣れていても、当の本人――こちらのゴールド――には、なれたことではなかったようだ。
おかげで小さい子に抱きつかれたり、懇願の上目づかいとか慣れていないらしいゴールドは日々挙動不審で、の子供らしいかわいらしい行動にひたすらたえたり、緊張で固まってはわたわたとして顔を赤く染めていた。
みているのは面白かった。

 そしてわかったこと。
あのこはよくフシギバナをだしては、会話をするようにそばに居ることが多い。
どうやら人見知りであげく口が利けないので、植物に話しかける癖がついたとは――筆談による本人談である。
植物なら自分が話しかけても「わからない」と言い返してくることも、否定もされないからだと、無表情(本の少しだけ頬が赤かったのではにかんでいたのだろう)で告げられ、おれが頭を抱えたのはいつのことだったか。

口が利けない。人見知り。
それ以外にもなんとは極度の方向音痴だった。

顔に感情はあまり出ない子なのだが、どこかほんわかとした抜けたところがあるとおれは思っている。

つまりだ。
はポケモンがいるとすぐについていってしまう。
あるいはポケモンに好かれすぎるのか。よくポケモンに攫われては、お持ち帰りされた先で他のポケモンに群がられて団子状になっていることがおおい。

そんなを気にするなというのは無理なことだ。

 モンスターボールに入らないピカチュウを筆頭にフシギバナやみせてもらったことはないが、他のポケモンがを守っているのはわかるし、野生のポケモンもあいつには害にならないのはよくわかっている。
わかった上でどうしようもないほど心配になるときがある。
あのなんに興味を示しているのかはわからないが、すぐにフラッといなくなってしまうあの迷子癖だ。
一週間をみてきて思ったけど、あんな危なかっしい奴をひとりにできないということ。
あの危うさはどこでも寝れるのが売りなイエローをこえるし、どうも本人に自覚はないようだであれでいてかなりのトラブルメーカー(というよりトラブル吸引体質ともいう)な気がしてしょうがない。
森や山を歩けばいつの間にか崖から落ちていることもしばしば。
話せないせいと動きがまったりしているせいで、人に誤解されやすいみたいだし。
本当にみているこちらの気が知れない子だった。
 になつかれて常にはりつかれていたゴールドにしてみれば、おれよりも気が気じゃなかっただろうし、心労が半端ないことだろう。
 だからおれとゴールドは、あのこを街に住まわせようという結論に辿りついた。
せめて気が付いたら崖から落ちていたり、スピアーの巣につっこんでいたり、わたっこをおいかけて木の上から降りれなくなったり、イワークの穴にはまってそのままディグダにはこばれてどこかにいってしまったり・・・・・・。
そんなことがないよう、山から下ろすことにした。
もちろん住居ぐらいどうにでもなる。
というか、ここまできたらさせる。


「ほら、いくよ」
さん・・・大丈夫ッスから、ねっ?」

 むしろおりてくれと懇願すること三日目。
との生活はちょうど一週間目を迎えた。
 懇願している――それももう数日目となれば話は違う。
今日こそはと、最終手段に出ることにしたら、なんとあいつはフシギバナを盾にしてきた。
ならばこっちもフシギバナだ!と、のリーフに対抗してフッシーをだして、つるのむちでリーフの身体を縛ってもちあげてほうりなげる。

そのあとも忍者波の素早さで、いろんなものの背後に隠れまくる
最終的には定位置となりつつあるゴールドの背後に回って、その背にべったりとくっつく。

それをやるとゴールドがかたまる。
最近は少し離れたようで、相手の方が年下であろうとなぜかに強く出れないゴールドも必死にひきはがそうと、諭すように困った顔で話しかける。
ついでにおれもゴールドの背後から引きずり出そうとひっぱるも、は動かない。
お前はどこのスッポンだとおもったり。

「ほらー!!お前はそれでももうひとりのおれか!」

“別の世界のレッド”であるは本当におれとは似ても似つかない性格だ。
おれなら絶対にこんなことで隠れたり逃げたりしない。

案の定、おれの言葉には勢いよく首を振って何かを叫んだ。
ただし慌てているためか、文字でソレを書いてくれなかったため意味を読み取ることはできない。
ただ、なんとなくだが、「無理だ」てきな発言をしていたのだけは間違いないだろう。

「おれさ、いまこいつと修行中だから・・・家あいてるから!!
山が好きなのはわかったから、せめておれの留守の間住んでていいから、オレの家でいいから人里で暮らそうぜ!山を降りよう
それにいざというときのために、おまえのことは博士やグリーンにも頼んでおくからさ。な。だーかーら!はなれろ!!」
「そうっすよさん。ただでさえ迷子になりやすいんすから!!」
「そうそう。おれらがきがきじゃないんだって。が迷子になってたり〜とか、ポケモンに襲われてないか。とかすごくきになるんだ!だから!なっ!!!」
「ってかたのむから離してくれっすぅ〜!!ああ、俺の服が!服がぁぁぁぁぁぁぁァァーーーー!!」
《わ、わかってはいるけど・・・無理だぁー!!!》

 おれがゴールドにはりついているをひっぱる。
はゴールドからはなれない。
ゴールドはにしがみつかれていつものように固まっている。
この方程式ででるのは、ゴールドの服が異常にのびるということ。

そんなこんなで、話し合いはすべて無駄に終わる。
それでもなんとかしようと、話はすすみ、おれの提案で「賭け」をすることとなった。

 ポケモンバトル。
この勝敗によって、にいうことをきかせようということだ。
たしかにのピカチュウは多彩な技を使うし、よく目にする彼のフシギバナも強いだろうことはわかる。
でも、これならおれがでるまくもなく、に頷いてもらえると思った。

否、これしかなかった。
頑固なを山から下ろし、人里に生かせる方法なんて、他に思いつかなかった。

そのときのおれは、間違いなく周りが見えてなくて、以前カスミに対してしたことと同じことをしていた。
過信。
はゴールドとバトルはしようとはしなかった。ずっとおれとならということを言っていた。
それに気付かず、とゴールドのバトルははじまった。





**********





 は無表情だ。
だからといって何も考えてないわけでも、何も感じていないわけではない。
無表情というよりは、ただ顔の筋肉が普通以上に硬いだけだろう。
現にその目はなによりも雄弁に物事を語り、音のない会話として紙の上にあいつが綴る数々の文字は感情に溢れている。

 勝負を受理したあと、あいさつのつもりなのかペコリと一礼してきたは、頭の上に軽く載せているというのが近く弛くかぶっていた帽子を目深まで下ろした。
そのせいでいつも言葉以上に雄弁に物を語っていた大きな赤色が隠れてしまう。
――とたん、空気が変わった。
 普段のようにおどおどした気弱そうな赤はそこにはない。
静かでいて圧倒的な存在感が今この場を支配している。
長めの前髪の隙間から覗く鋭い眼差しに背筋がゾクリとした。
恐怖?違う。そんなんじゃない。これは初めてと会ったときに直感的にこいつは強いそう思ったときのワクワク感に近い。
冷や汗が流れる。だけど気付いてしまえば思わず口端が緩み笑ってしまう。
きっと今の自分の顔はひきつってうまく笑えてない。
それでも口角がもちあがってしまうのはどうしようもない。
それは闘い馴れたもののみが許された強さ。
そしてあの目はイエローと同じように闘うことの意味を知っていてなお闘うことを選択した覚悟のあらわれ。
その覚悟に答えるようにあいつのピカチュウがバチバチと電気を惑わせた状態であいつの肩に飛び乗る。
あれだけの放電をしているというのに、離れた位置にいるこちらまでピリリッとした静電気が肌をくすぐるのには平然としている。
あんな近くであれだけの放電をされれば、さすがのオレの絶縁グローブなんかほとんど意味をなさない。
たぶんそれがの実力なんだ。
 あいつの強さは放電に耐えることじゃない。
あのピカチュウ自らが、マスターに電気が流れないよう完璧なコントロールをしているんだ。
オレのピカだって無意識の放電や静電気はどうしようもない。
だけどそれを容易くコントロールし、自分の支配下に置くなんて芸当を行なってしまえることこそあのピカチュウの実力が垣間見える。

 冗談じゃない。

つまりなにをどうしたってゴールドの負けは明らか。

あちゃ〜みやまったか。


 覚悟ゆえに細められ全てを真っすぐにみつめ全てをのがすまいと鋭さを帯びた赤。
それにのまれ、一応とはいえ敵である目の前の相手に見惚れて挙動が若干怪しいゴールドは、おれの苦笑に気付いていない。
力の差は歴然だし、外見とこの一週間の生活ですっかり誤解してなめきっているゴールド。
あんなんじゃそもそも勝てるわけがない。
おれもすっかり騙されちゃったけど、今ならあの子が必要以上にゴールドとの戦闘をさけおれと勝負したがったのも頷ける。



 結局のところレベルの違いというか格の違いを見せつけられて終わった。
止めなかったおれも悪かったけど、ふと相手が“だれ”であったのか思い出しどうしようもないのかもしれないと思った。

そういえば――

「きみも“おれ”だったね」

 コテンパンにやられて、自尊心を傷つけられつつもすぐに復帰したゴールドだったが、オレの「もリーグチャンピョンでしょう?」って言葉に、今度こそ魂を飛ばしていた。
あわてる赤色と、砂となってたおれふす金色。

おれはゴールドを介抱しつつ、おかしくなってわらう。


どうしてこうも・・・
君とおれは違うんだろう。


なんだかこの先がとても頼みに思えた。



 どうせなら、いつかのポケモンすべてみれるといい。

いや。みせれもらおう。
おれの実力ではきっと今の彼には到底追いつかない。
だからおれが強くなって、今度こそおれがにバトルを挑もう。

それまで遥か高みで待っていてほしい。

きみはおれで。
おれはきみなのだから。

違う道を歩んだもうひとりのおれ。
いつのまにか、おれのなかで君は大切なひとのひとりになっていた――。

そして“こう”なりたいと思う、おれの目標でもある。








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やっぱり戦闘シーンなし。
もっとガチンコバトルなみに派手な戦闘シーンとそれによる第三者視点の誤解ネタを書きたいんだけど・・・。
まぁ、そのへんはさすがに本編でやるしかないですね〜(涙ホロリ)
とりあえずこんなテンポで、ポケスペ編ではあまり過激な戦闘シーンなしでまったり展開予定。
若干終わり方に無理やり感はあるけど、これで下山。
次回はマサラです!








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