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04.誤解×コスプレ×珍プレー |
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side 主人公 「センパイ!大丈夫ッスか!!」 のばされた赤い青年の手。 目の前には知らない人。しかもオレのコスプレイヤーさん。 ヒィーー!! 襲われる!?そう思ってくんに助けを求めたけど、なんか言い争いになっちゃったし距離は離れているわで、いまの状態のくんでは目の前の相手を止めるのは間に合わない。 思わずぎゅっと目を閉じて、身体を硬くして縮こまっていた。 そのときパタパタと地面をける音が聞こえて、聞きなじんだ声がオレの耳に入った。 「突然センパイが飛び込むからびっくりしっちゃったじゃないですか。いったいなにが・・・」 『ごっくん!!』 「っ・・・!!」 ほんの少しオレが知っているゴールドより低い気がする“それ”は、だれかを馴染みない呼び名で“センパイ”と呼んでいた。 だけど内心ものすごいパニックに陥っていたオレは、些細な違和感を気にもせず一ヶ月ぶりにあうイトコに抱きついた。 『こわかったよー!!』 やってきたのはイトコのゴールド。 思わず目の前の赤い人から気合いではなれて、顔も見る前に抱きついた。 うわ〜ん。知らない人が襲ってきた!こわかったよぉ!! 知らない人で連結されて、オレの記憶の中の怖い女性人たちの姿が思い出されて、涙が出てきて、そのままわんわん泣いた。 「え、あの・・・ちょ、ちょっと・・・」 聞き覚えのありすぎるイトコの声。 なんかあせっているようで、必死に助けを求めてしがみついたオレの頭上で手をワタワタ上下に動かしたりしている。 だけどオレはそれの意味がわからなくて首をかしげ、ただ馴染んだ声に安堵するだけ。 そのまま対人恐怖症の心理を語ってきかせる。 だって本当にどうしようかと思ったんだ。 怖かったのだ。 ゴールドに置いていかれたせいで、どっかの怖い伯母上が、オレにポケモンけしかけてくるしよぉ!! この世界にきてポケモンが苦手になった。 この世界でテレビにでて、人間が怖くなった。 しかも波に流されて助けてくれた人は、オレのコスプレイヤーさん。 三重苦だねと周囲に突っ込まれるオレが、オレのものまねさんをみてびびらないわけないだろ!! 声はでないが血のつながりゆえ、オレのよわっちいテレパスは血縁者にのみ通じる。 なので必死にゴールドのいなかったこの一ヶ月間の恐怖を含めて話した。 だけど―― 「え?え?あ、あのちょっと!?ちょっと待つッス!!」 「あははは。ゴールド。お前随分なつかれたな〜」 「懐く…って。はぁ!?っつうかレッド先輩、だれッスかこのひとー!!」 『ごっくん?』 いつもならこうやって愚痴を言えば、それは大変だねと頭を撫でて慰めてくれるのに。 さすがに声をなくしても、オレがレッドとして成り代わる以前の人間としての習慣で、飢えた鯉のように口が自然と動くが、やはりそこからは音は出ない。 ゴールド相手にメモ帳は不要。 だからしゃべった。 なのにどうして? オレはいつものようにじゃべっているのに―― 「あ、えっと・・・ごめんな。なんて言ってるかわからないんすけど・・・」 ゴールドは心底困ったように頭をかきつつ、オレの肩を掴んでひきはがす。 それに驚き、あまりのことに思わず固まってしまう。 『え?・・・えっと、あの、オレそんなにわかりずらい言い回し、してた?』 ぱくぱくぱく。 ゴールドは人の話を聞かない伯母上とはちがって、ちゃんと人の話を聞いてくれる。 わからないことがあったら、わかるまで考え、しっかりきいてくるし。 から必死になって、自分の頭上にある金色の目に訴えかける。 だけどゴールドには通じないみたいで、首を傾げられるばかり。 そこで何かに気付いたように、ちょっと離れた場所から赤い人の「あ!」という声が聞こえ、突然のことで驚いて肩がビックとゆれる。 チラリと声のした方をみれば、赤い人がなんだか気まずそうに視線をそらされ、オレは何か悪いことをしただろうかと怖くなる。 人間はすべて怖い。 そんなオレの挙動は怪しく、相手が少しでも何かリアクションをするたび寿命が縮みそうなほど。 とっさにはがされたばかりのゴールドの服を掴んで、その背後に隠れるように赤い人の視線から逃げる。 「あー・・・おれの勘違いじゃなかったらごめん」 ゴールドを盾にしてこっそり影からのぞく。 赤いひとが本気で困ったような苦笑を浮かべて、困惑している様子のゴールドに向けて話しかけている。 「先輩?」 「たぶん・・・その子、しゃべれないんじゃないかな?」 「え?」 赤い人を先輩と呼ぶゴールド。 ごっくんにこんな知り合いがいたなんて聞いてないよ!! 知り合いなら始めに言ってよ! でもって、オレは無害ですと事前に紹介してくれないと、にいちゃんはびびりなのでこの安全地帯から出れませんよ!! 思わずオレが内心で違うところにツッコミをいれている間に、オレそっちのけでなにやらアイコンタクトをかわす二人。 そんな二人の様子を見て、どうしてかわからないけど、なんともいえない不安が胸の中に溢れだし、すがるようにゴールドの服をさらにきつくにぎる。 なんか嫌な予感がする。 理由はどうしてどうしてわからないが、今見えるものすべてに違和感を覚えた。 こういった勘はオレがミュウになってからよくあたるのだ。 確認するようにくんをみれば、難しい顔でなにか考え込んでいる風で、こっちのSOSは軽く無視された。 「あ、声・・・。もしかして話せないんすか?」 首をねじるようにしてこちらへ視線を向けるゴールドが、恐る恐るといわんばかりに話しかけてきた。 親しいはずのゴールドからは、戸惑うような声色。 思わず見上げてみれば、ゴールドが罪悪感丸出しの物凄く戸惑ったような表情で、困ったように頬をかいていた。 少し大人っぽさのあるその表情になにか違和感を感じ、思わず掴んでいたゴールドの服の裾を握っていた手に力がこもり震えが走る。 なんだろう。この違和感は。 『ど、どうしたのごっくん。そんなの今更じゃん?』 あれれ? 本当になんだろうこの違和感。 あれ? そういえば、なんでオレは“みあげている”んだろう。 10歳のゴールドより13歳のオレの方が頭一つ分は高かったはず。 なのに、なんでオレがゴールドを見上げているんだ? それになにかな?このゴールドがもっているいかにも“ビリヤード”で使いそうなおかしな棒は? よくよくみるとオレとゴールドの身長が逆転している。 なにより、オレが知るゴールドはやんちゃな子供で。 子供だけどオレのことをわかってくれてるから、オレに関しては同情的な世話焼きな一面を見せる。 こどもなのに兄を同情するような表情。 だからこんな・・・はじめからおとなびたような表情は見せないんだ。 『だ・・・れ?』 弱虫なオレは自ら掴んだゴールドの服を手放せないでいる。 だけど目の前にいる相手がわからなくなって、また“怖く”なる。 人間恐怖症がゴールドに対しても勃発しそうです。 体がまた恐怖に震えそうになる。 驚きで止まった涙がまた溢れ出しそうになる。 ああ。この恐怖をオレは知っている。 恐怖のコスプレ団体。 オレが街でみたオレのそっくりさんたち。 あれにせまられたときの恐怖と同等。 コスプレ――チラリと視線を向けると、オレに似たオレと同じようなかっこうをした赤い少年の姿。 そうえいばいたね。ここにもコスプレイヤーさんが。 って、ことは・・・このゴールドのようでゴールドじゃないような少年も“ファン”一行の仲間か? ど、どうしよう!? 『おちついてレッド!なにか、おかしいよ』 『くん?』 もう限界だ。 泣こう。 そう、思っていたら、ふいに唯一の救いの相棒の声が、天啓のように脳裏に鳴り響いた。 耳に傷跡のあるピカチュウと話していたピカチュウ姿のくんが、内心完全にパニックになって悲鳴を上げていたオレの側にやってくる。 『そっちのピカチュウにも確認取ったけどね。どうも全体的にここは、ぼくらの知ってる場所とは違うようだよ。 あと、そこのゴールド。もしかして“ボクの声”も聞こえてないんじゃないかな?』 『え?声がって・・・オレたちの会話ってテレパスじゃん。って!?えー!そんなことありえるの?だってオレのより、くんのテレパスの方が強いよね?』 『・・・・・・君が抱きついていたら、ふだんのゴールドなら君のこと慰めてくれるし、かばってくれるよね?』 『う、うん・・・頭なぜて落ち着けって言ってくれる』 『じゃぁ、君が服を掴んでいるその子は?』 『・・・・・・え・・・』 言われて、もう一度目の前のゴールドと赤い人を見る。 覚えるのは違和感。 “知らない人”という感覚から来る恐怖。 くんの言葉と、いままでのことを考えるに、なんとなく信じたくはなかったけど思っていた回答にたどり着いてしまう。 でもそれはやっぱり、ありえないことだ。 普通はありえないよ。 目の前のゴールドは・・・・・・ 『違う子?』 『だろうね。魂は同じかな。同じだけど、波動が微妙に違う』 オレの肩に乗ったオレのピカチュウ(本当はミュウ)は、オレの帽子をはじいてよく見ろと、大きなギザギザシッポでオレの頭を叩く。 いやね。たたかなくても見えるから〜!! っていうか、君が叩くから!そのでかいシッポのせいでみえないんだってば!! 『うるさいバカレッド。状況をちゃんと確認しなよ。君はこの世界を知っている』 『知っている?』 ピッ!ピカチュウ!ペシペシペシ!! 『はやくおもいだせぇ!だから君はバカレッドなんだよ!!』 ピカチュ!ピッカァ〜!! ピカピカ声が聞こえる。 それと一緒にオレをたたく黄色のギザギザシッポ。 帽子がないのでガードするもオレの腕くらいしか盾にするものはなく、けれどオレは相変わらず半そでで・・・。 あああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜 や、やめてぇ!! 『まじやめて!地味に痛いからっ!!』 『気付かない君が悪いんだよ。ここは君の知識でいうなら【ポケスペ】と呼ばれる世界だ』 『ポケスペ・・・って、ポケモンスペシャルぅ!?って今度は漫画の世界!?』 じゃぁ、目の前にいるのはオレのイトコではないゴールドってこと!? だからテレパス通じなかったの? え?ここ別世界なの?じゃぁ、オレ、ポケモンに襲われないの!? 『そこまでは保証は・・・。 まぁ、確実に君がいた世界じゃないだろうね。 なんなら世界が違うっていう証拠にさ、ためしにそこらのポケモンと話してみれば? きっとだれも初対面から君に襲いかかったりはしない・・・んじゃ、ないかなと』 『え、そう?』 『あくまで“たぶん”だからね』 信じる信じないは勝手だけどね。 いえいえいえ。 信じるよ。 だって君、オレが忘れたような記憶まで読めるじゃん。 信じるよ。 『ってか、ぼくの陰に隠れないでよ弱虫レッド!!』 ピカチュウ姿のくんが激怒。 オレがいまだに離さないゴールドの服裾をみて、電撃を放ってきた。 いや、だって。 でも知っているといってもそれは知識の中でだけなわけで、知らない人ってのは変わらないわけで。 怖いのはかわらないんだけど。 世界が変わったことよりも、知らない人がいっぱいいる中に落とされたことが死にそうに怖いんです!! 『ひぃー!!だってあのひとたち知らない人だよ!!襲われたらオレ対処できないから!!』 『いいかげんにしろっ!』 バリバリバリバリィー! ぎゃぁー!!! 電撃はゴールドにも見事に当たり、オレと二人でいたたと騒いでる間に、手が離れて不安で不安でしょうがなくなる。 心のよりどころイコールゴールド。 だけど今のオレにとっては、目の前の身長の高い君はあくまでカッコ仮という伏せ文字が付きそうな『ゴールド』の偽者のようで、でもやっぱり『ゴールド』と同じ感覚がして離れがたい矛盾に襲われている。 離した手でもう一度彼に触れても平気か?・・・じゃなくて、迷惑にならないだろうか? オレが不安でしょうがなくオロオロとしはじめたところで、くんが安心させるように肩にのってほおずりしてくる。 それでなんとか目前に知らない人たちが大量にいても真っ直ぐ前を向くことができた。 あとで絶対帽子をひろおう。 じゃなかったら、あっちの赤い青年から奪おう。 じゃないと、こんだけ知らない人に溢れていたら生きていけない。 さぁ、レッドなオレが漫画世界へトリップだ。 この先―― 『どうしろとっ!?』 いちおーオレ、人間です。でも魂は半分ミュウです。 名前はレッド。 堤防で波にさらわれ、海におちたところを別の世界のレッドに救われました。 ちなみにそのまま世界まで越えちゃったらしく、なぜか山の中の温泉から浮上。 アッハッハ。きっと邪神様のイタズラだね。 成り代わり憑依の次はトリップかよ。 うらむぞレッド(本物の)!! ん?ちょっと待った。 『ってか。じゃぁ、目の前にいるのはオレのものまねさんじゃなくて、もうひとりのレッド!?』 オレもレッド。君もレッド。 そしてオレをレッドにしたこの世にはもういない“あいつ”もレッド。 ややこしいよ!! --------------- ハイ。“こちら側”のゴールド登場です。 夢主は心の中は凄いことになってますが、あまり顔に出ないひとです。 むしろほとんど表情が動かない。 それを忘れずに〜。 そして新しいキャラがでたので、やっぱり普段とは違った誤解が発生します。 今回のタイトルにある誤解は、夢主の勘違いと周囲の勘違いをかけてみました。 どうでもよかったですね。すみません。 それでは、次回は「ゴールド視点」です |