伝 説 で い こ う !
- ポケット モ ン スター -



08.バトルしようぜ!








:: レッドになった主人公視点 ::








 オレはレッド。
口が利けないから、人間の友達が一人しかいない。

なぜか仲良くなれないんだ。

あんまりにもコミュニケーションが苦手で、 人見知りという難点もあるため、帽子を目深までかぶって人と極力視線が合わないようにした。
 ポケモンとは仲が悪かった。
世界の宝であるミュウと同じ気配がするのが許せないらしく、マサラのポケモンたちにはいじめられた。
おかげでポケモン恐怖症になってしまった。

 でもなぜか母さんとポケモンとは、口をひらかずとも会話ができる。
どうやらミュウのくんと魂が混じったせいで、くんの技である『念能力』をオレも使えるようになったらしい。
ちなみにライトくんは、オレと混ざったとき、オレが“)”だったときの記憶を読んだらしく物凄くいろんなことを知っている。
“向こう側”のアニメの内容や、オレが忘れていたことまでバッチしだ。
あとオレの能力として、仲間になったポケモン限定で、距離が離れていても話もせずに状態や気持ちがわかるようになった。

 つながってるわかるとき。
くんが一度興味半分でモンスターボールにはいったとき、オレは動けなくなった。
と、いうより、なんか狭い場所に閉じ込められているような窮屈感を感じ、 さらには少し眠気がきてまったりしだしたところで、くんが慌てた様子で「だして」と念話を送ってきたことで難を逃れた。
それ以降、くんにはモンスターボールにはいらないよう念を押した。
これからわかったのは、片方の身体への影響が、片方へ作用するらしいということ。
決してその作用がいつも同じ度合いなわけではなく、 片方へ反射する衝撃の強弱はランダムに近くてムラがあることは分かっている。
だけど間違いなくどっちが死んだら、もう片方もやばいことは二人ともに理解した。


 さてさて。
そんな口も利けない臆病者のオレが、 どうやってバトルをこなすかというと、これもまたくんがオレの記憶を引っ張り出してきた。
そのときに面白いことがオレ限定で起きたのだ。





 それは少し前のこと――。
短パン小僧が突然バトルをしかけてきたときのことだ。
そのときは偶然くんが、バタフリーに変身していて、そのバタフリーをかけて俺と勝負しろ!と言ってきた。
さすがにオレの半身は上げられません!とブンブンと首を横にふったら、なぜかバトルスタートしちゃった。


≪短パン こぞうが あらわれた!≫


 脳裏に聞き覚えのある効果音が響き、突然網膜にうつしだされた字幕が、目の前にいる少年の言葉を反復する。

『・・・・・・今の何?』

「さぁ!勝負だ!」


≪短パン・・・以下略は勝負を挑んできた≫


『以下略ってなに!?それ以前に今の文字とかパラメータってなんなのぉ!?』

 最近ではすっかり口を動かさずとも“話す”ことに慣れたオレは、 帽子の上に止まっていた巨大なチョウチョウ――バタフリーに念話なるものを送る。
バタフリーに化けていたくんからは、ビミョーとしか表現しがたい感情と共に説明される。

『君があまりにヘタレでポケモンへの指示もできないだろうし 、たぶん指示の仕方さえわからないだろうと、の記憶からゲーム知識を引き出したら・・・何か不思議なパラメータまででてきちゃって』
『あぁ、そうか。邪神効果ね』
!ちがうから!!そこにたどりついちゃだめだから!!
君まで邪神教に取り憑かれたらボク生きていけないから!
ほらリーフもしっかりを現実に引き止めてよ!』
『・・・・・・・・・・・・じゃしんこーかって・・・なに・・・・・・? って、ダレ?マスター、レッドじゃないの?』
『ああああああーーー!!しまったー!!リーフにのこと話すの忘れてた!!』
『ひー!!ば、バトルって・・・助けてくん!!』


 声をだすことのできないオレは、ある一定の距離にいれば念話がポケモンには通じるけど、バトル中は無理だ。
手で合図しようにもオレのポケモンたちに、戦闘中、それも敵を目の前にしてる間もずっとオレを見ていてもらうわけにはいかない。
 オレがわたわたとしている間に短パン小僧はやるきまんまんで、くんをみながら目を輝かしている。
あれは獲物をロクオンした目だ!!

 そういえば――ゲームでは最初に、短パンにバトルを挑まれていたことを思い出す。

 ゲームと短パンといえば・・・ハートフルな金銀時代に、 ゲームの初期主人公がなぜシロガネ山で、半袖でいたのが物凄く気になっていた。
今ならわかる。
オレがこちらへ連れてこられてから、年がら年中花に溢れたマサラをみて、 レッドが半そでだった理由がしっかり理解してしまったのだ。
カントーでも特にマサラ周域は気候が安定していて半袖率がたかい。
現に短パン小僧なる人種が目の前にもいて、後に会うことになるだろうジム リーダーのカスミやタケシもゲームではそれなりな夏ルックだ。
オレは思う。
ハートフル時代、シロガネ山にいたレッドさんが半袖だったのは間違いなく服がなかったからだと……ってレッドてオレじゃん!?


『はぁ〜』

「なにため息ついてるんだよ!お前みたいなへなちょこが俺に勝てるとでも思ってるのかよ!!」


 なんか怒ってるぅ!?
オレはただ長袖の服をいつか買おうと思っただけなのに…なんでこうなるの〜。
短パンな少年が怒りのままにモンスターボールを地面に投げつけ、キャタピーが現れた。
瞬間、脳に字幕のように短パン小僧の行動が、愉快な効果音と共にさらに文字で表記された。


ピロ〜ン♪
≪短パン小僧が しょうぶを しかけてきた!≫
≪短パン小僧は キャタピーを くりだした≫


さらにオレの視野には、なつかしき初代時代のままの角ばった文字で表示されたシステム機能の選択肢が見えている。

≪たたかう どうぐ ポケモン にげる≫

なんてなつかしい表示だろう。
呆然としているオレに、オレの帽子の上で羽を休めているくんが、どうかしたのかと首を傾げてきた。
つまり、他のみんなにはこの表示は見えていないし、くんの仕業でもないと。
さっき言っていたパラメータには≪じょうたい:ふつう≫とか表示されていた。
ということは、この選択肢もくんの能力の付属か。
でもくんには見えていないらしい。
もしかして……邪神様のおかげとか?
いやいや。それだけは勘弁してほしい。
勘弁してほしいけど、この機能はありがたい。
選択するのはどうするんだろうと首を傾げつつ、 とりあえずオレも自分のモンスターボールに手を伸ばすと、勝手に視界の選択肢が【たたかう】を選択した。
なにげなく手をモンスターボールからはなして、【ポケモン】を選ぶように意識してみる。
行動に出さなくても選択肢は変更することは分かった。
わかったけど、【ポケモン】の選択肢は、もっているポケモンのグラフが表示された。
だけど、これやばくね?
だってそのなかにはフシギダネの他に、“バタフリー”ではなく“ミュウ”ってくんのことが表示されている。
あ、でも。これはオレにしかみえてないから、ポケモン図鑑には表示されないよね。
あとでオーキド博士からもらった図鑑もチェックしておこう。
持ちポケモンに“ミュウ”って表示があったら悲鳴物だ。
 オレはそれに冷や汗をかきつつ、唯一の手持ちポケモンであるフシギダネのモンスターボールを今度こそ手に取った。
選択肢は【たたかう】を示した。
 とりあえずこのモーションは、行動で行うかボタンを選択するイメージが必要なようだった。
現在はポケモンのはいったモンスターボールを投げたので、選択肢が戦闘モードへと変わた。
 ポンという音がしてフシギダネのリーフくんが姿を見せる。
彼はオレを一瞥し、指示を頂戴と訴えてきた。
それとともにまたオレの目の前に文字。
リーフの使えるわざが一覧で表示された。
ちょっと図鑑いらないよねこのチート能力はって思うけど、今は甘んじてここから選択するしかない。
ふむふむ。リーフくんが今使える技は【たいあたり】かな。
軽く目を閉じてタッチパネルを触るイメージをする。
一瞬の瞬きの間。
それに選択肢はおされ、リーフくんは「わかった」といわんばかりにかけだした。

・・・・・・いやぁ〜。楽だね。

短パン小僧とかは、がんばって右だ。左だ。ああだこうだと指示を出しているけど、 オレのリーフくんはよけるとかそういのは自らの意思で考えて行動している。
なのでタイミングを見計らって選択肢をオレが選べば、 それに答えて攻撃わざをだしてくれるけど、それ以外はすべて自ら考えていろいろやってくれる。
オレの出番はあまりないね。

あ、そろそろ【たいあたり】をすれば効果があると思います。

そう思って【たいあたり】を選択すると、リーフくんは頷くような仕草をして指示に従ってくれる。

うん。イイコだ。


 後で聞いた話だと、オレの“声”はやっぱり直径1.5メートル以上離れると聞こえなくなってしまうという。
しょぼいな。
まぁ、でも人間だから、ポケモンの持つ力の威力がオレが使うと弱まるんじゃないかな。
聞こえなくなった声の代わりのように、リーフくんの思考はけっこうクリアになって自ら攻撃をよけるなど、 考えようと思ったらしい。
オレが【たいあたり】を選んだとき、リーフくんの体が勝手に操作されるという 感じはなかったようだ。こうした方がいい。そんな気持ちになったそうだ。

ポケモンを無理やり戦闘させてるって感じじゃない。
しかもこの誰にも見えないパラメータによって、身体や思考を操っているわけではないようだ。
これならオレが悪者じゃない。
いいことづくしじゃないか。

たまには邪神様もやるなと思ったオレはダメかもしれない。





「つよいな。でもつぎはまけないぜ!」

 短パン小僧はそういってオレに握手をせがみ、手を振って笑顔で去っていった。
それと同時にオレの視界からパラメータ各種の機能が消える。

『って、待って!!』

あわてて短パン小僧を引きとめようと手を伸ばすけど、 少年はオレが手を振っているとでも誤解したのか笑顔で手を振り替えしてきた。

『そ、そうじゃなくて!!オレが勝ったんだからお金くれないの!?』

まさかゲームなかだけの設定!?
だったらこの先どうしろと。
え。おこずかい?そんなものないよ!?

『・・・ふつうは勝負に負けたら勝った奴にやるのがこっちでも当たり前だけどね』
くん、どうしよ!?なんであの子笑顔で帰っちゃうのーーー!!』

その後オレはパニックになったまま、とにかく早く人里へ行こうと茂みを書き分けて走り出した。
だって、このままじゃオレ飢え死にする!?
ポケモンセンターはどこだぁ〜!!!








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