伝 説 で い こ う !
- ポケット モ ン スター -



07.緑の回想記








:: グリーン視点 ::








 レッドは根本的にママさんに似ている。
レッドの家の前で、ママさんとレッドが二人並んでいるところを見て改めて思った。
 鼻筋が通って整った綺麗な顔や、マサラタウンでは珍しい赤色の瞳が彼女にそっくりだ。
だけど本人はもしかするとその目の色も顔もあまり好きではないのかもしれない。
サラサラの黒い髪の上に、目深まで帽子をかぶって顔を隠してしまった。
リュックを背負って、からだしたグローブをキュとはめる。その仕草がまた洗練されていて人をひきつける。
あらかた準備を終えると荷を担ぎ、博士からもらったモンスターボールをベルトに収納する。
その際に、帽子から隠れていない口元が嬉しそうにクイっともちあがる。
その笑みさえかっこよくて様になっている。
旅の準備が万全に整うと、どこからともなく野生のピカチュウがあらわれた。始は警戒していたピカチュウも相手がレッドだからなのか、嬉しそうにすぐに心炉を開いて懐いた。
そのまま慣れた仕草でレッドの肩の上に登った。
それに驚いている間に、彼は礼儀正しく一礼をすると、タッと軽やかな音を立ててかけだしてしまう。

 本当にあいつは名前のとおり、赤色がよく似合う。
それにひとつひとつの動作が、なぜか様になっている。
すごくカッコイイと思う。

外見だけは――。



 だってあのピカチュウは、あのレッドとグルなんだぞ!!
あんないかにも初対面ですといわんばかりの演技だったけど、あのピカチュウは本当はピカチュウでさえないんだ!
なんでレッドってあんなまともそうな外見してるくせに、マッドサイエンティストならず邪神なんてものを崇めているのか・・・頭が痛い。
なにせあのピカチュウでさえ、普通じゃないのをおれは知っている。
絶対黒魔術だかなんだかの産物に違いないのだから!

 おれはみたんだ。
あのピカチュウが野生でもなく、本当は偶然でもなんでもなく、ただ偶然を装ってレッドによりそっていることを。
あいつは間違いなくレッドとぐるの策士だ。



 研究所でレッドと一緒にモンスターボールをおじいちゃんからもらったとき、オレは視界の隅に映るあの黄色いポケモンをみた。
そのときおじいちゃんもレッドも気付いてなかったけど、窓辺になぜか一匹のピカチュウがいたんだ。
ピカチュウなんて珍しいなと思ってみていたら、そのピカチュウはレッドがモンスターボールを手にしたと同時にヒーッヒッヒッヒ!と甲高く笑いだしたのだ。
その声を聴いた瞬間、ゾクリと背に冷たいものが走った。
そのあとピカチュウはチュウと小さく鳴くとギザギザの尻尾を震わせて、次の瞬間、ピカチュウはバタフリーへと姿を変えていた。
おれがギョッとしているあいだにバタフリーは、なにげない顔をして窓辺から飛び立っていった。

変身したー!!!!

思わず心の中で叫んでしまったのは仕方ないことだと思う。
 普通のピカチュウがヒーッヒッヒッヒ!と声を立てて笑うだろうか?答えは否!!
ましてや普通のピカチュウが、バタフリーに変化するだろうか!?
まず普通は変身なんかしないから!!

ありえない。ありえない。ありえない!!

おれは空恐ろしいものを感じ、身を震わせた。

 あの不気味な生き物は、レッドの魔術により生まれたに違いないと思いついたのはすぐだった。
そういえばレッドは昼間ポケモンと戯れた後、必ず一匹のポケモンを持ち帰っていたのを思い出した。
あのバタフリーはきっと、レッドがいままで一匹ずつ持ち帰っていたあのポケモンたちを合成してできたキメラに違いない。
取り込んだ姿にでも変身する能力があるに違いない。
レッドならそれくらいの生物を作りだしてもおかしくない気がする。

 あぁ、今なら大昔に盗み見たレッドの部屋の様子がありありと想像できそうだった。
怪しい円陣の中心に立ち、目を弧の字にまげて笑いつつ赤い液体のたれるナイフ片手にブツブツと呟いているレッドの姿まで鮮明に思い出せ――

ブルリ……

乾いた笑いと共に、悪寒が身体を震わせる。

 思い出すだけでも恐ろしすぎる。
 でもあのピカチュウがキメラじゃなきゃ、説明できないことが多すぎる。
変身したり、あのいかにも怪しい笑い方をするような奇想天外なポケモンが生まれるはずがない。



 幼馴染としていうが、断固としてあいつは存在そのものが間違っている。
あいつに選ばれたフシギダネは絶対恐怖体験をすること間違いない。

 だからこそ、おれも旅立つことに決めた。

レッドからフシギダネを救出するため、オレはヒトカゲを選んだ。
飛べることは絶対にいつか役立つはず。
あいつがなんでわざわざマサラをでるのか分からないが、これから数多くのポケモンたちがその身を危険にさらすこととなるだろう。
阻止せねばならない。
それこそがあいつの秘密を知ってしまい、さらには声までかけて幼馴染みにまでなってしまったおれの責任。

責任?
って、そんなことごときでおれは、あの恐怖の生き物(=レッド)といないといけないのか!?
無理だろ!
怖すぎる!!
ライバル?無理、無理、無理っ!!
でもそう宣言して強気にでも出ないと、あいつと面と向かって話し合うなんてできそうにない。
どんなおかしなポケモンを呼び寄せるか分かったもんじゃないような奴だぞ。


・・・・・・ヒトカゲもらったけど・・・


二人で逃亡したりしちゃダメかな?
いいよね。きっとおれ悪くないよね?

レッドとは会わないように、逃げようと決めた。





 笑うピカチュウモドキをみた日。
おれは恐ろしい思いでしかないマサラから逃げだした。








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