伝 説 で い こ う !
- ポケット モ ン スター -



05.真実の目撃者








:: 近所ゆえの不幸な証言者 グリーン視点 ::








 おれは知っている。
じいちゃんがしらないあいつのこと。
あいつの秘密を。
じいちゃんが誤解しているあいつの本性。

あいつが本当は物凄くやばい奴だって。
オレだけが知っている。





**********





 あれはおれが五歳のとき。
ねえちゃんにつれられて都会にいった。
タマムシシティの大きなデパート。
その前で姉ちゃんが買い物を終えるのを待っていたら"あいつ"があらわれた。
あいつはダボダボの黒い服をマントのようにきていて、ゲーセンからひらりとでてきて、笑った。
あの無表情のあいつが笑ったのだ。
小さな子供があたらしいおもちゃを買ってもらえて喜ぶそれのように。
けれどその手にしていたのは、怪しげな石版。
クスクスと楽しそうに笑っていた彼は、ゲーセンを振り返ってつぶやいた。

「アッハハ!あんな穴倉にかくされてたなんてね。あんなやつら暗黒神さまの力を借りれば屁でもない。ああ、やっとみつけたよ。巨大な魔力!なんてすばらしんだ!ミュウこそ世界の始まりだ!!」

 はっきりいって意味がわからない。

 わかっているのは、アレはおれと同じマサラ出身の子供であること。
二、三度程度だが、マサラタウンで彼を見たことがある。
珍しい赤色の目は忘れるはずがない。
 あいつはあのうさぎのような赤い目に狂喜を乗せてギラギラさせて、子供らしくなく口端を持ち上げて哂っている。
さらにはなにかわけのわからない「さぁ、儀式だ。暗黒神に生贄を」とかブツブツ呟きながらニマニマと不気味な笑みを浮かべていれば、言葉も出ないというもの。
あまりに意味不明すぎて、呆然と見送ってしまったおれの前を通って、あの子は笑いながら走り去っていった。
それからすぐにRと胸元にかかれた黒服を着た一団が、あちこち攻撃を食らったような痣やら擦り傷などの怪我を負ったボロボロの状態で現れた。
バラバラとゲームセンターからでてきた大人たちに続いて、少しだけ焦げ臭いにおいが鼻をついた。

なにをだれにされたんだろう?


「た、隊長。ここの支部はもうだめです!!壊滅です!逃げましょう!!」
「いや。あの石版を取り返さなければ!」
「ほ、本当に追うんですか?」
「あれは研究に必要なものだ!こんな失態がばれたら俺たちのクビがもたない!」
「こんな状態で、くびなどもうないではないですか!」
「そうですよ。そ、それに…あのこども。ジャシンがどうとか怖いんですけど!!」
「ええい!とにかくいそげ!!」

 さっていく集団に、おれはさら呆然とした。
どうやらゲームセンターの地下には秘密の研究所があったらしい。
それにもビックリしたが、あのこがそれを壊滅させたことの方に驚いた。
ポケモンが側にいるでもなく、ひとりでなにをしたんだと目を見張った。

それに……おれもあの子供は怖いと思うよ。



 ねえちゃんがもどってきたとき。
おれは本気で呆然としていて、魂が抜けたようだったといわれた。

事実。そのとおりだったのだろうと思う。





 ちなみにあの石版がなにに使われたのか、気になってこっそりレッドのうちを覗きにいったおれは勇者だと思う。
 おれはそのときみたんだ。
あいつの部屋を。
怪しげなグッズでうまった物凄く怪しげな部屋。
血のような赤い液体が飛び散る図形がビッシリと書かれた紙が部屋中にはられ、呪文めいた言葉を呟き続けるおれと同じ年ぐらいの子供。
どっから持ってきたのか年季の入った髑髏や、干からびた何かの腕。
それに照明の代わりにほの暗く子供の姿をぼんやりと照らし出す無数の蝋燭。
クスクスと楽しそうに笑う子供の手には、赤い液体がポタリとたれるナイフ。
さすがのおれもその光景を見て本気で寒気を覚えた。
さらに子供は黒いマントを羽織ると、あの石版を部屋の中心におき、蝋燭をポタポタとたらしたり、りんごをおいたりといろんなことをしだした。
そしてあいつが最後に何かを叫んだと同時に石版が光って砕け、あいつは意識を失って倒れた。

 そのときは怖くなって逃げ出したけど、どうやら術は失敗したらしい。
目を覚ましたあいつは、魔術やら怪しげなものをみるとパニックになるほどおびえるようになった。
それからは室内よりも外を好むようになったのは、室内にいるとあの怪しげな術を思い出すからだろうと思う。
 ちなみにあいつのお母さんが言っていた。
五歳のときからあの子は病のせいで口が利けなくなったと。
だけどおれは真実を知っている。
あの儀式の失敗で、声を奪われたのだと――。

 それと外に出るようになったことで、きちんとマサラの住人に目撃されるようになると、あいつは"知らないやつ"ではなく"マサラの子供"になった。
あの子を見てもだれだっけ?という反応をされなくなる程度認知度が上がったとだけ報告しておく。





**********





 あれから五年。
おれもレッドも十歳になり、マサラを出ることとなった日。

 じいちゃんの研究所にいくとき、またレッドが無邪気を装って草むらに入り、野生のポケモンを捕まえようとしていた。
おじいちゃんもだれもしらない。
だけどおれは知っているんだ。
レッドがいつもポケモンと遊ぶとき、かならずその一匹を連れ帰っているのを。
いつも違うポケモン。
でもああやって捕まえられたポケモンはレッドによってつれてかれても戻ってこない。
かといって家にこっそり遊びに行ってもレッドのうちにはおばさんがいるだけでポケモンなんか影も形もない。
間違いない。
あいつはまだ何か怪しい儀式をやっている!

たしかに屋内にこもることは減ったが、夜にやっているに違いない!
きっと夜の方が効率がいいんだ。


だからおれは決めたんだ。

ポケモンで日々何か怪しげな実験をしているようなやつから、罪のないポケモンたちをまもるため!!
あいつをまっとうな人間にさせようって思ったんだ。

笑わないあいつに笑ってほしいとかじゃない。
非道な実験をやめさせ更生なさせるためだ!!

だからおれは今日もあいつを見張るため側にいる。








<< Back  TOP  Next >>