青 色 は つ い て な い

- リクエスト企画 No13 -

03. 忍者から守りきれ!

side 夢主1

「「「いたただきまーす」」」

お昼です。
バスケ部は、休みの日なのも構わずに、体育館で練習中です。
こんな真夏のクソ暑いなかでよくやるよね。
尊敬できる。

若「ん。桜井のかわいい弁当だな。妹のやつと間違ったとか?」
桜「ああ、すみません。でもこれ自分で作ったので間違えては」
若「え?自分で作ったのか!?」

体育館の壇上でお昼を食べているバスケ部員さんたち。楽しそうですね。
桜井のクマデザインのかわいいお弁当を目撃した2年の若松先輩が、桜井の手作りだと聞いて驚いていた。
何を驚く必要があるのだろう。


夢『バカですか先輩』

若「青峰!?」

思わず本音が漏れてしまったオレに、ようやく気付いたのか若松先輩の声でみんながこちらを振り返る。
気付くのおせぇし。
しばらくまえからいたのに。
だれも一緒にお弁当を食べようと声をかけてくれないから、扉の所でずっと立っていたんだ。さびしくなって自分から歩み寄ってみればこれだ。
みんなヒドイ。

弁当を食べる桜井の背後につったったままのオレは、この先輩なにを恐ろしい発言してるんだとバカじゃね?と思ったのをうっかりそのまま口にしてしまったため怒鳴られた。

チラリとのぞけべ、たしかに桜井の弁当はファンシーだ。完成度も高い。
だか、残念がら、いまのオレにはおいしそうとか以前に、《人様の食べ物》をみるとちょっと吐き気がしてしまう。
あわてて視線をそらせば、若松先輩が怒っている。
ギロっと睨まれる。

若「先輩に向かってバカとはなんだ!」

でも自分で作っていることに驚くってことは、先輩はだれかにつくてもらったお弁当ってことじゃないですか。
弁当を作ってくるのは、大概は「お母さん」だよね?
でも「おかあさん」だって「女」だぞ。
つまり死ぬ。

夢『弁当、その意味が分かりますか先輩?
ひとの手が加わった料理ですよ。
しかもそれを女に作らせるなんて!!何考えてるんすか先輩。男が料理しないでどうやって命を守るんですか!!どうせ「おかあさん」に作ってもらったんでしょう?そう呼ばれる人種が「女」だってわかってますか?
「女」に料理をさせるなんて!死を覚悟してないと無理に決まってるじゃないですか。それをバカといって何が悪い?』
若「う・・・いやたしかに、おまえをみてると自分で作るべきなんだろうけど・・・って!だから目上に対する言葉づかいどうにかしろよ」

午後の練習には間に合うからと、桃色の幼馴染みに誘拐されて、そのまま体育館に放り投げられた 青峰 です。
自分のみを守るために中学時代に『女に料理をさせるべからず』と認識した、そのオレです。
幼馴染みの女の子が料理でポイズンクッキングを素でしやがるので、困っているオレです。

それをしっているからか、オレの切実な料理に関する訴えに先輩たちもついにはだまる。

若「ああ、まぁいいや。
それよりどこいってたんだよお前!理由なく休んでんじゃねぇよ!休みの間はバスケ部にくるってきいいてたぞ」

若松先輩に言われた言葉に、思わずニコニコと爽やかな笑みを浮かべてやる。

夢『・・・なにその事実。シラナインデスケド』
若「え・・・」

この笑顔は泣き笑いですよ。
どうせ、さつきの独断と偏見によるもので、オレが夏はバスケ部につきあうって密約が監督や先生たちとの間ですでにされてるんだろうけどな。

しってるかい諸君?
オレはバスケ部じゃないんだぜ?
調理部だ。
それがなぜ。
なんでオレはこんな蒸し暑い体育館で、バスケ部のみなさんとバスケをしているのだろうか。

そもそも今日は、天文部の友人から、山に天体観測の合宿に行くから一緒にいくかと誘われて、楽しみにしてい家をでたのだ。
合宿の待ち合わせ場所にいけば、なぜかさつきがいて。拝むように謝る天文部の友人たち。

どうせさつきに弱みを握られ脅迫されたんだ。
そうして友人に売られました。
気分はドナドナ、売られていく仔牛。



若「まぁ、お前も座れって。でかいお前が立ってると威圧感ありすぎ」
桜「すいませんすみません。隣あいてますよ?すわりますか?」

夢『あー・・・どうも』

回想にふけっていれば、憐れみ交じりの視線がむけられる。
しかたないので、ふたりに譲られた場所に腰をおろし、天文部の奴らと食べるはずだった弁当広げる。



若「いつも思うけど…桜井のはかわいいけど、お前の弁当すごいよなぁ」

お昼の時間。
今日もまたオレの幼馴染みに弱みを握られた友人によりバスケ部に売り渡されたオレは、二段重ねの重箱を取出しため息をつく。

呆れたように向けられる視線に、思わず『さつきをやるからお前の幼馴染みがいるなら交換しろ』とつぶやけば、オレたちの周囲にいたバスケ部員が一斉にオレから視線をそらす。
それくらいさつきの料理の腕が壊滅的であるということなのだが。

そうだよな。いやだよな。
それにもう一度ため息をつきつつ、オレは厳重に鎖や鍵付き錠やらでさつきから中身を守っていた弁当を開ける。
ちなみに、あいつらがいう“すごい”ってのは、この厳重さと中身の異常さについてだ。

「なぁ青峰」
『なんすか〜』
「・・・その点滴、なんだ?」
『今日の夜ご飯です』
「「「「・・・・・・」」」」

重箱の一段目が点滴セット。二段目がお昼御飯だ。

その飯時には異様な点滴セットに、バスケ部の皆さんから注目をあびた。
これは常に毒物を食べさせられたショックでいまだ飯がまともに食えないから。
一日二食食べられた日は、まちがいなくいい日だ。だってせいぜい一食が限界だから。
そもそもが今日は、天文部の奴らとでかける予定だったのだ。
目的は星の観察。そのために、夜ご飯を持参していた。
昼の分は、このまま放置しておくと腐ってすごいことになるだろうから、しかたないから食べる。

鬱だ。

一度だけど。本当に一度だけど、今日、この重箱セットをさつきが手にした。
オレが天文部の皆様から引き離されて、彼女に拉致られてる時だ。
それがこわい。

まさかなとは思うが、あのさつきのことだから、なにがあってもおかしくない。
ダークマターこわい。
入れ替わってないことを祈るしかなかった。



どうしてさつきの料理がここまで凶悪的になったかというと、オレのせいだ。
転生を繰り返しまくっていたオレのスペックは、申し訳ないことにけっこうすごい。
ゆえに、あいつの料理を食いたくないがために、オレ自ら料理をすることにしたのだが、さつきが対抗心を燃やした。
そうしてさつきは、いままでの比じゃない頻度で料理を作るようになったのだ。
ちなみにあいつに横で教えながらつくらせてもすべてダークマターに変化した。
これは前世で料理や毒を技とする女性(【復活】のビアンキ)の生まれ変わりなんじゃないかとさえ思えた。

そんなさつきのダークマターの被害が、中学の時まではたまにあるかないかの程度だった。それが高校になってからは毎日のような頻度となった。そもそもさつきがなにかしらの物体を作くるようになったのは、オレが料理部なんかに入ったからだろう。
なぜ、対抗心むきだしなの?むしろいい加減自覚して、食材いっさいにさわるなよ。言ってもきかないから、オレが警戒するにいたるわけだが。

あいつの被害者が、オレだけというのがげせぬ。


そういえば、オレのお弁当がいつの間にか緊急医療キッドにかわっていたのは、・・・入学して二か月たったかどうだったか。もう覚えてない。

オレはきっと来年になる前に、胃に穴が開いて吐血すると思う。ストレスによる胃潰瘍か、ダークマターの攻撃によるものかは不明だが、その確信がある。きっといま死んだら、オレの死亡報告書には、原因「食あたり」とか書かれるんだぜ。
笑えネェ。



目が死んでるぜとバスケ部の奴らに言われ、感情のもこもっていないかわいた笑いを返す。

ああ、現実逃避はこの辺にして、では本物のお弁当を食べようか。

重箱の二段目をあける。
中には小さめの弁当箱が入っている。
オレがさつきの魔の手から逃れようと、保護していた正真正銘の弁当である。

オレの胃は強くはないんだ。
こうでもしなければ、まっとうなものは食えん。

オレの手には小さすぎるが、ダイエット中の女子ならこのくらいではないだろうかというレベルの小さな容器。
中学のチームメイトである黒子の昼食なみかそれ以下の量だ。

下の段にいれて保護しておいた弁当を開けて、中身が入れ替えられていないことを確認してから食べる。
なまってる線目の先輩が、よくそんなちょっとの食事量で足りるなと呆れているのか褒めてるのかわかりづらい感じで聞いてくる。

夢『オレもむかしは普通に食べてたんすけど、いや、もう、なんていうか食べ物受け付けなくて。これでもようやく食べれる方になった感じで』

バスケ部員「「「「・・・・・・・」」」」

夢『あ、でも片時も食材から離れてなければ普通にたべれるけど。体育の授業で教室開けるのも怖い。
ああ、人が作ったもんとかマジで無理。持ち込みのお菓子とか怖い。
黄瀬ってすげぇよな。歩けばたくさんの女の子に囲まれて、なんか一日一回は必ずミツギモンという名のプレゼントもらってるし。
・・・女こわい。料理怖い。プレゼントこわい』

オレがしみじみと過去を振り返ってつぶやいていると、なぜか各々が自分の弁当をみては顔青くして箸を止めている。
その多くが、胃を抑えるようにしている。

「俺、これ以上食べるのなんだか怖くなってきた」
「あかん。今日はコンビニ弁当にしておけばよかったわ」
「う・・・おふくろの飯なのに」
「大丈夫と分かっていても。は、箸が動かねぇ」

なんだみんな「おかあさん」の手料理というオチか?
そうだよなぁ。「おかあさん」=「女」だ。
バスケ部員たちよ。女に料理をさせてはいけないと身にしみてわかっているだろうに。

ぐるるるとお腹が鳴っているのに、だれも手を付けずに弁当のふたを閉じていく。
なかには泣きながらふたを閉めている奴がいる。

「家に帰ったら俺、絶対にかあちゃんの手伝いするわ!」
「ひとりで料理できるようになろうかな」

そんな声が聞こえた。

とりあえず、胃を抑えて泣く彼らのために、鞄から胃薬を取出し、みんなに配っておく。

「おお、ありがとな」と、なんともいいがたい表情でそれらを受け取る彼ら。

相変わらず目がうつろだ。大丈夫かとバスケ部の皆様に言われるが、そうやって心配するぐらいならいますぐオレを開放してくれ。

そんななかで、若松先輩が、なんだかもう試合後のように疲れきった表情で、薬を配るオレに今後の予定を聞いてくる。

若「青峰。午後練はでるんだろうな?」
夢『なんでオレがでないといけない?』

何度も言うけどオレは、調理部であってバスケ部じゃねぇよ!!

若「練習サボるなよ青峰」
夢『・・・・・・』

やっぱり決定事項なのね。
神様、やはり世の中から女は、というか桃井さつきを消滅させるか、更生させてください。いろんな意味で!!

「あ、青峰が泣いてる」
「ってぇことはマネージャー、なにも言わずにつれてきたってことか」

ああ、もう。なんだかくらくらしてきた。
吐きそう。
ストレス性胃炎?
ちうがうっしょ。これは―――

夢『ちゃんとした理由があれば休んでもいいっすか?』
若「あ、ああ。まぁ」
夢『オレ。これから入院します』

「・・・・・・」

体育館が一瞬だけ無音となった。
そして

「「「「はぁ!?」」」」

次の瞬間、バスケ部の皆さんから上がる盛大な疑問符。
ああ、あんまり大きな声を出さないでほしい。
脳みそというか、内臓に響く。

なぜって。
そんなん簡単だよ。

カランと、手にしていた箸がおちる。
やべぇ、もう手までしびれてきた。
ははは。オレ、ちゃんと笑えてるかなぁ。

夢『今日の中身が入れ替わってたみたいで・・・ぐふっ

その日のオレは、そのまま死んだ。




「「「「青峰ぇー!!!!!」」」
















【後日談】

夢『先生。オレは・・・もうあいつは忍者かなんかだと思うんですけど、この先オレはどうしたら』
医者「・・・日光江戸村に修行にでも行くんだね。
いっそ彼女から距離を置いてみたらどうだい?」
夢『そのつもりでだれもしりあいのいない高校をねらったのに。入学式にはあいつはいたんですが・・・どうしろと?』
医者「・・・・・・」





看護婦A「知ってる?302号室の患者さん、蛇の毒の血清で治ったらしいわ」
看護婦B「え。青峰くんって、たしか食あたりって言ってなかったけ?蛇に咬まれたの?」
看護婦C「そんなわけないわよ。胃潰瘍でしょ?極度の」

ABC「「「え?」」」

A「いったいどれが本当なの?」



看護師D「あ、先輩たちいい所に!小児病棟で聞いた噂なんですけど、302号室の髪の青い子って。謎の生命体にさらわれて人体実験を受けて戻ってきたその後遺症で入院してるって本当ですか?」

ABC「「「え?」」」

アニメ第15話「笑わせんなよ」 より