飴 色 疾 風 伝
- N A R U TO -



06.十月十日





金色はこわいこわい狐の色
十のつく日はみんなで泣きましょう
そのときその場に生まれていない者も
アナタたちの嘆き声を聞いて一緒に憎しみ悲しんでくれるでしょうから――


って、アホか。

どこまで理不尽な仲良しっ子なんだ。
同じ色を持つ者が本当に他にいないとでも?
同じ日に生まれる者が、その後一人もいないとでも?
いつまで憎しみにひたっている気だ?
ジブンは大切な人を殺されたんだからヒロインなんだ。とでも思っているのだろうか。
別に悲しむなとは言っていない。
度がすぎると言っているのだ。
たった一日で大量にひとが死んだといって悲しむのなら、なら戦時中はどうなのだとつっこみたい。
あれなんか、人と人の戦いだったはずだ。
なぜ人柱力ばかりがさげずまれなければならない?

この世界の住人は、大きすぎる力におびえすぎだろう。








:: side 並風ミナモ ::








 十月十日。
毎年恒例のこの日が、今年もついにきた。

「ミナモはいかないの?」

 同じく一般家庭の家出身ということで、なんだかんだで仲良くなった春野サクラに、今日の慰霊祭に一緒にいかないかと声をかけられる。
しかし誰が自分の生まれた日に人様の死を悼まねばならんのだ。
そんな憂鬱なことできるかと、毎年この日は我が家は慰霊祭には参加しない。
火影様も理由をわかっているから無理強いはしないのはありがたい。

「わたしは用がある」
「そっかぁ。じゃぁ、また明日ね」
「すまないな」
「いいわよ別に」




 十月十日は九尾の襲撃のあった日であり、マンガ『NARUTO』では主人公となる少年の誕生日でもある。
その日に里人全員参加の慰霊祭があるが…

――考えたことはなかっただろうか?

 うずまきナルト以外にもまったく同じ年同じ日に、生まれた者がいると。
九尾だからとナルトを除外するのは仮にわかるとしよう。
だとしてもそれ以外の今日生まれたものにとってみれば、里中は悲しみにあふれた日。自分の誕生日を祝ってもらえないことがどれだけさびしいだろうか。

きっと三代目も含め、誰も思いつきもしないだろう。

 なにせこの里は、あの日以降10月10日に生まれた者はいない。
正確には、いるにはいるのだが、彼らは生まれた日付を一日ずらされて申請される。
たとえば10月9日だったり10月11日だったりとだ。
生まれた者はその事実を知らされず、生んだ親たちは10日という日を忘れて、申請した日を祝う。

 だから里人は、10月10日に九尾に見せ付けるように、自分達の憎しみと悲しみを思い出すためだけに慰霊祭をその日に行うのだ。
それも里人全員参加なんて非常識なものをかかげて。
 その日はいつも里中が通夜のようになる。
彼らは自分達のことしか考えてないから、過去という名の死者ばかりを見て、生まれてきたものを祝福するのを忘れる。

死んだらそこで人生は終わる。
その先に死者たちに未来はなく、死者は決して彼らの未来を導くことはないというのに。

あまりに深すぎる悲しみは、未来へ歩めるはずの生者をみむきもしない。





「生まれた日に里総出で鬱になったり殺気立たれたらたまったもんじゃない」

 里が壊れた日。
たくさんの人が死んだ日。
あまりに死んだ物の数が多すぎて、生まれた物の数は忘れられた。

 うずまきナルトが生まれた日。
わたしも生まれた日。


だからわたしは今日だけは大人しくしない。
いつもとは違って少し良い服を着て、誕生日を祝うんだ。



 黒い服を気もせず里を闊歩するわたしを周囲は不謹慎だといわんばかりの目で見てくる。
不謹慎。無作法者?それがどうした。勝手に言ってろ。
こちとら喪服もパーティにいくような服を買う金なんかないんだからな。

「なんなのあのこ」
「毎年のことよ」
「今日が何の日か知らないのか?」
「死者への冒涜よ」

 キレイごとだ。
死者は笑わない。怒らない。
だがわたしは生きている。
なにより今日はわたしの誕生日だ。
それをキレイな衣服を着て祝って何が悪い?
死者は彼らに記憶の中だけとはいえ笑顔を振りまいているだろうに…。
死者であった者も誕生日には他者を巻き込んで祝ったのではないか?
なのに――死者はよくて、わたしは笑うことも誕生日を祝うのもだめなのか?

だが今

「里の恥知らずよ」

ほざけ。
わたしのことを何も知らないからそんなことが言えるんだ。

恥知らずと私を下げずむのなら。ならば――と、問いたい。

誕生日のわたしに対して、喪服でもって嘆き悲しみ、殺気を向けてくるのは失礼ではないのか?

それにナルトに対するお前らの態度がどれほど大人気なく、恥ずかしいことかわからないのか?
自分達だけを正当化してナルトを見下す言葉と行動のどこが、里の恥以外の何者だというのだろう。

なんで火影はこんなアホらの小言を封じないのだろう。

だからナルトが傷ついているというのに。
わたしだってたまに腹が立つし。
いっそのこと言ってやろうか。大声でさ。

今日はわたしの誕生日ですが、何か?と――。

言ったらすっきりするんだろうなー。
時間がもったいないからしないけど。

・・・お前らがわたしの誕生日が今日だと知っていたら、なんというだろうか?
恥知らずとののしってくれたその口で、どう弁解するんだろう。
さっきの言葉をすべて撤回するのか?
それはないだろう。
彼らにとってわたしは一人の小さな子供。
しかしそれに対して今日死んだのは数十という人員。
なかには親しいものもいただろうし、なにより里で最も慕われていたものも死んでいる。
彼らがわたしを祝うより、今日という日を恨まないはずがない。
わたしの価値など複数の死者の数を前にしてしまえばある分けないのだ。


「三代目は里を甘やかしすぎだな」


 今日のような殺気だった日にそんなことを誰かに聞かれていたら、間違いなくわたしは彼らの不況を買って殺されていただろう。
それはつまり、だれもわたしの誕生を祝ってくれていないということに等しい。
日付が過ぎた後にプレゼントや言葉をもらっても価値はない。
10月10日を否定するなら、その日に生まれた存在を否定するなら、それはわたしへの否定と同じ。


「さっさと用を済まして帰ろう」

 いい加減周囲の視線が鬱陶しくなってきた。
今日は慰霊祭に参加しない両親は一日中家にいる。
これから三人で誕生パ−ティーをするのだ。

翌日には幼馴染みが祝ってくれるとはいえ、ずっと小さい頃は三人だった。
だけど最近は違う。


「あけろうずまきナルト!」
「…でたくないってば」
「でてこなければ扉を蹴破る」
「……」

 双子じゃないのに、血も繋がってないのに。
髪色もそっくりで誕生日も同じ存在。
父親同士は苗字が同じ。

いつもこの日はとじこもってばかりの彼を引きずり出して、丸一日わたしの家に監禁するのが最近の誕生日の祝い方だった。
はじめは『うずまき』の血を恐れていた父だったが、10月10日にさびしげな表情をみせるナルトをみつけて連れ帰ってきた。

「「おいでおいで」って、壁に体を隠して顔だけ見せてさ、おびえたように青い顔で手をこまねいている姿はさすがに怖かったってば」

父を知るナルトもさすがにブルブルと体を震わせていた。
想像するもたやすいが、そこまで『うずまきクシナ』を怖がる父の気持ちがわからない。
ナルトはクシナじゃないのに。

ナルトに拒否できるスキがないほど、幽鬼のような父は怖かったらしい。
そうしてナルトの誕生日が今日だとしるや、「ミナモも誕生日なんだよ」と笑って告げ、戸惑うナルトの手を引いて連れ帰ってきた。
その際うちの父は、愉快にスキップまでしていたそうだ。
ナルトがびびっていた。

 うちにあるのは小さなホットケーキ。
それが我が家で出る最高のケーキだ。
誕生日おめでとうとはかかれず、ローソクがささっただけのそれが机の上におかれている。

「一緒に祝おう」

 そう言ってナルトに笑いかけた父。
子供が二人できたみたいねと嬉しそうに笑う母。

わたしはニヤリと笑うと、困惑しているナルトをわたしの横に座らせる。
やりかたをおしえて、二人でローソクを消した。

 それからは毎年必ずこの日は、二人分祝う。
式典のときに外に出るのは面倒だと、誕生日の前日からナルトを拉致ってとめることもあった。
今年はそれをしなかったせいか、すでに里人から何か言われたのか、ナルトは物凄く卑屈でうつ状態だった。
外に出ることにおびえているのを見て、ハァーと深い溜息が出た。

「よし。ならば変化をしろ。嫌ならわたしがおまえを勝手に連れて行く」

 ナルトなら変化ぐらいできるはずだった。
なにせおいろけの術をやるぐらいだから。
だけど今日のナルトは変化をしなかった。
しかもまた室内に引きこもろうとしたので、宣言どおり扉を蹴りあけさせてもらった。
そこで扉の側にいたナルトは、みごとに破壊された扉に当たって倒れていた。

「ふむ。これもまた手間が省けたな」

ナルトがたおれたのをみこして勝手に室内をあさってわたしは布団カバーをはがす。
それで目を回して床で伸びているナルトの頭から足の先までをすっぽりつつみ、ひもでしばってナルト巻きをひとつつくりあげる。
中で気絶から目覚めたナルトがモガモガとあばれたが殴って昏倒させ――どこが首かわからなかったから適当に殴っておいた――、それを引きずってわたしは家に持ち帰った。
里の中を通る最中は、奇異なものを見る視線がたくさん向けられたが、殺意を向けられるよりは断然ましだ。
それにこれから待ち受けることを思えば、気分は自然と晴れ、重いナルト巻きもそれほど苦はならなかった。





――誕生日、おめでとう。











2010.08.03. 改
2014.04.04. リンク復帰

“あの日”の同じ日に生まれた子って絶対いると思うんです。
そういう子ってどうしてるのかなと思って。
ちなみに本当に慰霊祭があるかはわからないけど、いろんな二次小説であったので「ある」ということで書いてみた。
誕生日を一日ずらすっていうのも、漫画で里の姿をみて作者が思った疑問から生まれた捏造です。








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