飴 色 疾 風 伝
- N A R U TO -



01.ナミカゼ一家








:: side 並風ミナモ ::








 わたしが生まれたまさにその日。
その日に九尾が現れ里を襲い、四代目火影が死んだ。
そしてうずまきナルトが生まれた。

 そんなんで月日はたち。
わたしはついに明日にアカデミーに入学する。
マンガの主人公であるナルトは、たぶん友達ができるようにという火影の余計な配慮だろう――わたしより三年も早く入学していた。
この世界のアカデミーは、日本のような細かい年齢制限はなくおおざっぱだ。
ゆえに、原作に関わりたくないのに、彼とは同級生となることが決まった。

さぁ、うずまきナルトの冒険が始まるぞ。
だけどわたしはできるだけ自分の身に降りかかる火の粉は払いのけたい。
つまりは原作には関わる気がないということだ。

 この世界では未来に当たるナルト達のこれからのできごとであるマンガの内容。
大概、未来を知っていたら、裏表関係なく少なからず介入したくなるものだろう。

何度も言うが――わたしは関わるつもりは一切ない。

 我が家の家訓は、預金万歳!!
目指せ、脱貧乏!!
普通モットー!平和最高。

 こんな家で生まれたわたしには、主人公たちのような大きな力もいい家柄もない。
一般人でしかないわたしは、マンガどおりの大きな事件が起きてもどれも間違いなく生還できそうにない。

だから絶対に原作なんかに関わらないぞ!!

生まれたその日にわたしは決めたのだ。





「はぁ〜い、これで準備は万端ね。ミナモちゃん、明日からは頑張ってね。
お母さん、明日はバイトの方に行かなきゃいけなくて、入学式にいけないけど…。
た、たとえ…貧乏とののしられようとも…ぐす…負けないでいくのよ……ぐすぐす…」
「問題ない母よ!立派な稼ぎ手になるべく、わたしは忍術を学んで偉くなってくる!!笑われたらそいつを将来見返してやるぐらいにはな」
「本当にごめんなさいね。せっかくの娘の晴れ舞台なのに、うちは貧乏だから。
でも一日でも休むと給料が減っちゃうし。ごめんねミナモちゃん、明日を生きるためなの」
「何を言っている母。内職までやっているのだ。母に無理はさせられない。アカデミーの入学式。わたしなら大丈夫だ」
「ミナモちゃんのそういうかっこいいところ。お母さん大好きよ」
「わたしも、わたしの母がアナタであって嬉しい」
「まぁ」

 母と明日の入学式について話していると、突如ドタバタドタバタとあばら家に近い我が家を激しく揺らして父が、泣きながらかけつけてきた。

「あぁ、やばい!やばいぞ母さん!!」
「どうしたの?」

 父はわたしたちの目の前で急ブレーキをかけると、涙と鼻水で顔をぐしょぐしょにして土下座をしてきた。

「せっかくの入学式だというのにミナモの新しい服を買ってやれない!!
こないだの光熱費でうちにあったへそくりは消えた!!」
「う〜ん。困ったわねぇ。ちょうど髪を染める染料もなくなっちゃたのよ」
「なに!?それはまずい!! これではまた間違えられる!!いや、それ以前に俺たちのせいで…四代目火影様の威信に関わる!!」
「父、母。あれはどうだ?なんといったか…そう変化の術とかは?」
「あぁ、ミナモ。俺も母さんも無理だ!」

「「なんたって一般人だから!」」

「そんなところで意気投合するな!!」

「とりあえず一つはあるから、お父さんは髪を全部刈ること。ミナモは早く変化の術を覚えてくるように頑張ってね」

「ごめんよごめんよ!俺の稼ぎがほとんどなくて!!お金がないばかりにミナモに忍者になってもらおうなんて!
しかも俺が四代目と同じ苗字だったばかりに!?」
「あら、まぁ」
「落ち着け父よ。こなだ叔母より娘さんのお古をいただいた!明日はそれで行く!」
「うううう…。本当にいつもすまない!」 

 今の会話でわかるだろうが、わたしが生まれた家は、名家とはまったく真逆の立ち居地だ。
そう、ズバリ――貧乏なのだ。
しかも超の付く極貧。
さらに四代目と関係ないのに、いつも連結されてしまって…

 なみかぜミナモ。
十月十日生まれ。
髪の毛、おいしそうな蜂蜜を思わせる飴色、ふわふわくせっけ。
瞳、茶色。

 今のプロフィールだけでも、違うのは名前の微妙な差異。そして目の色ぐらいだろう。
これだけでなんとなく想像できるだろうが、我が家は『どっかの誰か』に物凄く似通った姓と容姿をもつ。
はじめにこれだけはいっておく。この世界の主人公たる金色の少年との血の繋がりは一切ない。
わたしたちは、ただ生まれた日が一緒だってだけで、偶然四代目と同じ読みをする苗字というだけの一般人だ。

『なみかぜ』という名は四代目と同じ読みだが、じつは漢字が違う。
我らが姓は『並風』――大きすぎず小さすぎず、波風たてず常に中でいようという意味の――すばらしき普通人生をもとめる一家だ。

 いくつかの似すぎた類似点。
そんなわけで、波風ミナトが四代目となったばかりに、この極貧一家は彼に恥をかかせないよういつも必死だ。
例えば、「なみかぜ」姓。
四代目火影を思わせる名前と、髪。
あまりに似ているので、その関係性を疑われるのを恐れた我々、父とわたしは蜂蜜色の髪をいつも黒く染めることにしていた。
運良く隣りの家が薬局だというのも良かったので、安く売ってもらっていた。
っが、しかし。
極貧のあまり、ついに髪染めさえ買えなくなった。
在庫はわずか。
わたしが、忍術を学ぶのも急がなければいけないだろう。
特に変化の術とか。

 しばらく父は丸刈りでいることが決定した。
これもすべて、我らが極貧一家と四代目火影が関係ないことを示すためだ。
こらえよ父よ。











2010.07.27. 改
2014.03.25. 加筆修正








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