第5話 イケメン<免許<家族 |
オレの名はアザナ。 転生者で、死ねないせいでいろんな世界に生まれては新出を繰り返している。 マフィアの暗殺部隊のボスにもなったことがあるし、少女になったこともある。へたをすると人外なんてざらだし、何個か前では幽霊とバトルだってした。 実はすこし前は、アイドルなんてものをやらせてもらったりもした。歌って踊って、演じるアイドルっていう職業はすごいねあれは。 とはいえ、それは昔の話。 残念ながら、オレはあちらの世界で死んだ。 突然頭が物凄く痛くなってそのまま意識がブツリと途切れた。そういえば最近頭を強打した記憶があるのを思いだしたところで、「遅効性かよ!!」とツッコミをいれたとこで目は予想外にあっけなく開き、自分はどことも知れぬ場所から落下中で、全身タイツとかどこのアメリカンヒーローてきな格好で宙を落ちているところだった。 その後、赤と白のロボット系ヒーローに姫抱っこされて救われて、我に返るまでのほんの数秒のあいだに状況もなにもかも理解した。 おれは鏑木虎徹という男に憑依という形で転生したらしいと。 -- side 夢主1 -- そんなわけでアザナだったオレは、現在は鏑木虎徹で、ヒーローのワイルドタイガーです。 名前がいっぱいあって面倒なので、とりあえず虎徹で。 あ、足の裏にほくろがあるんです。なんという初体験。 って、そうじゃないな。 話を戻すと、今目の前には新しいオレの相方がいる。 なぜって、緊急収集の音が鳴り、軽い説明を受け、あの赤いのとバディーを組めといわれて、さっそく出勤とばかりに追い出されたためだ。 ヒーロースーツー着ていけよ!と、これまた“新しいスーツ”という名の鎧のようなロボットのようなそれを身に着けさせられた。 で、虎徹暦数十時間のオレは、現場へと放り出された。 ビルの正面には、イケメン部分だけをさらしたあの赤いロボスーツがいて・・・。 ぶっちゃけ一言いいだろうか。 スーツの説明書くれよぉぉぉぉ!!!!! 見たのも、着たのも今日が初めてなんだが! いやぁ、なんとなく勘でなんとかできそうな気はするけど、スーツっていう名称の癖にハイテクすぎる。 「うまく使えよ」と開発担当のエンジニア斉藤氏に散々言われたものの、使い方じたいわからなくてどうしろと!? まさか。この赤い青年に説明を聞くのか? 思わずバーナービー青年の目の前で大きなため息をついてしまったのは、決してオレが悪いはずではない。 なんか彼の外見からいって、きまじめでかたそうで、めちゃくちゃ長そうな説明がきそうなんだけど。 「どうかしましたかおじさん」と言われ、『どうかしまくりだよ』と返事のかわりにため息をついた。 とりあえずこのメカバイクおりたら、使い方を知っていそうなこの青年に聞いてみようと思った。 あ、早めに聞いた方がいいか。 使い方しらないままこのまま敵と戦うのはまずいよな。 「おじさんはサイドカーでいいですか?それとも運転しますか?」 『色から考えてオレはサイドだろ?事件はまっちゃくれないよ。そのままでかまわないさ』 「……あ。えっと、ハイ。わかりました。ちゃんとつかまっててくださいね」 『よろしく』 話に聞いたところ、オレたち二人のバイクは、某○○ライダーや戦隊ヒーローのごとく、バイクは変形するらしい。 しかもお互いどちらでもサイドカーになってドッキングが可能だとか。 変形バイクとか夢が詰まり過ぎだなぁ。 ここまでくると魔法の世界よりも化学が発展した世界のほうがすごそうだ。 そういえばいくつか前の世界では、未来で面白い空飛ぶバイクが存在していたな。炎をつかうやつ。 この赤と黄緑でできてるサイドカー付きバイクも空を飛べるんだろうか? でもね。虎徹の記憶を振り返るに、車の免許はあっても自動二輪免許は・・・・どうだろう。 ヒーローになるにあたり、大型の自動二輪の資格はとったようだけど、だからといってサイドカーをつけて運転したことはないように感じる。 初めてでバランスとれる自信はおじさんにはないです。 そしてかくいうバーナービーなんとかJrくん(いい加減名前が長くて言いづらいな)は、こうなることも想定していたかのようにずいぶんとスムーズに運転している。 それに加えてバニーなんとかJrはイケメンで、なんでも運転できて、オレというおじさんを空中で抱っこしてしまうほどの“できる”奴だ。 しかも超イケメン(重要なので何度も言ってみた)。 どうしてこうして金髪碧眼というのは美男美女が多いのか。 キラキラがまぶしくてこまる。 ああ、こんなイケメン青年といるより、家、帰りたい。 楓ちゃんに会ってみたい。 ギュしたい。 家族万歳。 ・・・そういえば虎徹って大量の借金があったような?ってことは…あれ?オレ、しばらく娘さんにも家族にも生で会えない?え?なにこれ決定事項? うん。「正義の壊し屋」とかありえない。壊している時点でそれはもはや正義じゃない。 今度からはできるだけ壊さないように頭を使って能力もけちけち使おう。 あとは借金を早く返して、家族と仲良く暮らそう。 もう友恵ちゃんもいないし、楓ちゃんにとってオレは唯一人の父親だ。 オレにとってもそう。 幾度かの前世で確かに子供のように可愛がっていた奴らはたくさんいるけど、今はオレが虎徹だ。 可愛い我が子には嫌われたくない。 うん。早く借金なんとかして隠居しよう。 すべてにまさるなによりもは家族愛 |