第3話 生き残るための能力と一つ目の世界 |
転生したら、性別が男になっていたので、一人称を『オレ』と改めた。 オレが生まれたこの世界は、本当に異世界らしく、漫画のように超能力じみた“念能力”という自分で考えて作り出す特殊能力が存在する。 オレは戦闘狂な母のせいで家の裏庭という名の山に放り出された。そのとき肉食な凶悪なトカゲのようなモンスターもとい凶竜にに襲われた恐怖でそれが開花した。 結論から言うと、状況が状況だったため、逃げるための力が最初に生まれた。 影と影を移動する能力だ。 -- side夢主1 -- オレの能力の基本は《墨》だ。 オーラが触れた部分の水分を墨に変換する能力。 その墨で描いたものは自動的に具現化してしまう。 そしてその絵に名前と制限をかけることで、一つ能力を付与できるというものだ。 では、最初の影を移動する能力とはなにか。 墨じゃないという矛盾が生じるだろう。 これはとっさに出たオレの力が暴走した結果、恐怖を感じたとき影を墨と誤認し影の中を移動していた。――ということが、“念能力”の師匠との検証で判明した。 つまり暴走状態の能力に、指向性を持たせ、能力を固定する必要があった。 最初に作った能力は、空間を移動する魚。 作り出した墨で魚の絵をかき、その魚に《黒姫/クロヒメ》と名付けをし、「影と影を移動する能力」をさだめ、存在を固定した。 これにより無自覚で、勝手にどこかに転移する現象がおさまった。 二つ目の能力は、《慈黒/ジコク》。 蝶の姿をしていてかわいらしいが、その蝶のまく鱗粉がえげつないと評判だ。 時間制で鱗粉は発火する。燃料が“生命エネルギー”なので、ぶっちゃけ命あるものならすべて燃え上がる。しかも生命エネルギーが完全になくなるまで燃えるので、生きたまま、あげく死んでも燃え続けるのだ。 「時間制で発火」すること、「地獄絵図のような光景がうまれる」。これらのことから、身内に慈悲もないと言われた能力だ。 その慈悲のなさを漢字にあてがい、時刻と地獄をかけて、《じこく》という名前になった。 作った本人が言うのもあれだが、能力を使った後の光景はとんでもなくえぐいしぐろいし、まさに地獄でしかない。敵から逃げるために作ったが、なんだが過剰防衛な気がしている。 基本固定の能力はこの二つだ。 あとは身体能力を持続的にそだてるしかない。 外見的特徴で言うと、人間と番った龍の一族の血を引いているので、目の色が感情で変わる。 普段は黄緑というか、明るすぎて金だか黄緑か怪しいレベルの微妙な色見なのだが、興奮したりすると瞳孔は開き赤が混じりこむ。朱金というやつらしい。 金目は龍の証らしいので、金色ならわかるが、なぜそこで赤が混じるのか。 そういうとこもオレの性格に似てひねくれてやがる。 原因は誰にもわかっていない。 そんなおかしな変化をするのは、どうも遺伝子異常がおこっているのではないかと師匠が頭をひねってくれたが、なにぶん親族が人間ではないもので、「そういうこともあるよなー」とすごく呑気に身内たちは納得してしまった。 のんきすぎる一族で困るんですが!!! なお、似たように目の色が変わる種族というのは、この世界では何種族かいるらしい。 筆頭が“緋の目”といわれるクルタ族だ。 彼らは感情が激高すると目の色がそれは美しい緋色に染まる。死後もその色はのこっているため、宝石と同等の扱いをされ、その日色に染まった眼は高値で取引されている。 だが、それを聞いたオレがどう思ったかわかるだろうか。 勘違いされて捕まったあげく目玉をえぐられたらどうしてくれるの?っておもったよ。 思ったどころか、実際頭を抱えて叫んだけど、誰も庇ってはくれなかった。 「現実に色が変わるんだから、どうしようもないし」「ま、がんばれ」と応援だけもらった。 愕然とした。 そんなもろもろの事情からもオレは強くなる必要があった。 ――弱肉強食の世界だった。 死んでいくものに手を伸ばすような人間はそうはいない。 自身の身を守るために、誰もが必死になっている世界。 『いや、それってオレのまわりだけかもしれないんだがなぁ〜(遠い目)』 気が付けばオレもこの世界特有の職業“ハンター”というものになっていた。 これは強制で、親から頼まれごとをされたのでそれをこなしていたら、いつの間にかハンターになるための試験に誘導されていただけで。 いや、言い訳はよしておこう。資格を取って悪いことはなかったのだから。 そしてこのころオレは小さな命を拾った。 オレと同じ赤い髪をしていたから縁を感じて拾った子ども。 まぁ、まさかこの子がうちの母親の戦闘狂な具合を引き継いでしまったとか、父親の無表情がうつってポーカーフェイスの達人になっちゃうとか、思いもしなかったが。 血がつながってないのに、うちの両親に似すぎている悲しみよ。なぜ彼らの悪いとこばかり似てしまったんだ。 オレの要素は外見色素ぐらいである。 子どもを育てているうちにあまりにうちの親の悪いところばかり似るので、子どもを連れて旅に出た。 しかしそこでオレの悪い点が明るみになった。 オレは生前から、「食べれれば問題ない」という派だった。 つまり料理なんか興味もないし、味にも外見も気にもしなかった。 だが旅をしたなかで、かわいい我が子が言うのだ。 「大丈夫だよパパ!僕そこの雑草でも!」 旅の道中、路銀も役に立たない荒野での出来事。 我が子が、飢えに苦しんでいた。しかも自分のことはいいからパパが食べて。と気遣ってくれるしまつ。 ごめん。パパはダメな大人だったな! 栄養計算もできないし、料理もかろうじて食べれる程度だったね。 なにせ裏庭という名の山で育ったもので!!!! 本当にすまないと思った瞬間だった。 そこからは料理に目覚めた。 どんな野原だろうと、雑草しか食べれるものがなくても。 家畜などおらず、あやしげな怪獣しかいなくとも。 必ずどんな食材だろうが美味しくなるように作ろうと決めたし、食材はあまり無駄にしないようにしようとも心がけたし、常に調味料は持参するようになった。 料理の研究もしたし、素材を探しに密林の奥地にも行った。 おかげでオレの舌とオレの料理の腕と、オレの戦闘力が上がった。 『美食ハンターって職業についたはずなんだが……なんで“珍獣ハンター”って呼ばれてるのかなオレは?』 美味しいものを探していただけなのに、未知の生物と遭遇しまくっている謎。 むしろ、やつらはオレをまっさきに襲ってくるんだが。 だからこの世界、いろんな意味で死が近いって言ってんだよぉ。 夢主1が一つ目の世界で、ハンターになりました---ただいま子育て中…。 |