有り得ない偶然 SideW
++ 黒 子のバ ケ ++




結: 「夢」の終わり






夢が夢でしかないと。

願いが
シナリオが
すべてが
壊れ始めたのは
いつから?

そもそも自分の計画はいつから狂っていたのだろうか


「こんなはずじゃ・・・こんなはずじゃなかったのに!!!」





++ side ワタシ ++





はじめのきっかけは、そう、"あの子"がいたこと。
“別の漫画のキャラクター”がいたこと。

あの女はなに?

わからない。

ワタシと同じように特典をもらってトリップしてきた子?

神様はワタシだ けに“特別”をくれたのではなかったの?
神様はあの子にリナリーの容姿をあげたの?
そんなのズルイ。
だって“特別”なのは、ワタシだけのはずでしょ!!

許さない。
だってワタシの火神くんを奪った女よ。

気になって、憎くて。
あの女だけずるい。
火神君に好かれるのはワタシでないといけないの。なのに。なのに・・・。
あんな女はいらないわ。
ここはワタシの世界よ。
ワタシが好きにしていいと、神様がワタシにくれた世界。
世界中のみんなの中心はワタシでないといけないの。

だからあのとき傍にいた霧崎のやつらを手掛かりに、「リナリー」という少女を探したわ。
なのに、見つからなかったの。
嫌で嫌で仕方なかった霧崎のバスケ部員にも声をかけたのに。
彼らは渋い顔をして「そんな生徒はいない」と言い切ってたわね。
他の霧崎の生徒を捕まえて、話を聞いても「リナリー」はいないという。
教師を言葉たくみにだまくらかして、生徒全員名前を調べさせても該当はなし。

ならばなぜ彼女は、あの夏祭りの時に、霧崎の生徒といたの?


わからないけれど、ワタシの生活は何も変わることなくて。
火神くんも黒子君もお祭りの時の女のことを聞いても不思議そうに首をかしげるばかり。
それからも原作は何も変わらなくて。

少しの不安は、やがてなくなっていた。
あの女のことも忘れていった。





+ + + + +





おかしな試合があった。

誠凛が秀徳と戦ったとき、ひとりだけ。こちらになびかない男がいた。
あの緑間や高尾くんでさえ、ワタシと話したがった。
なのに

「悪いが、俺はみゆみゆ一筋!金髪よりだんぜん黒髪!みゆみゆ最高だろう!みゆみゆかわいいよな〜」

と、あつくアイドルについて語った男。
たしか名前は――宮地清志。

秀徳のレギュラーで。
ドルオタ。

ドルオタなら興味ないわ。せっかくのベビーフェイスだったけど。
ワタシのかわいさに気づかないほどに、盲目なぐらいにアイドルが好きみたい。
そんなドルオタはさすがにきもい。
好かれなくてよかったとちょっとほっとしたところで、火神君が動いたの。
あんな残念な男こっちから願い下げよと思っていたのに、なぜか火神くんになつかれていて。

「キヨ先輩wwなにまた誰かをドルオタにひきづりこもうとしてるんすかwww」
「おーう火神じゃねぇの。相変わらずデケェなwww」
「いやいや、同じくらいっしょww」

火神君は、まず緑間君に挨拶するとばかり思っていた。 だけどまっすぐに宮地のところへむかい、とても親しそうに会話をし、そのまま彼は頭を撫でられていた。

実はそれは黒子君にも言えること。
彼こそ同じキセキとして、緑間君に声をかけるかとばかり思っていた。
とはいえ、ワタシにはそのときの黒子君を探せることはできなかったのだけど。

「よぅ黒子!少しは鍛えたか?」
「ぐ!つぶれる!宮地さんやめて!つぶれる!!!というかどうして僕のことわかるんですか!」

最初に黒子君を見つけたのは、宮地だった。
そのまま宮地は逃げようとする黒子君の頭を鷲塚んでなでくりまわしていた。

宮地清志は、黒子君がみえる――というよりも、本能的に場所を把握しているらしい。


まぁ、ワタシにはどうでもいいことね。


だけど、ふと気づいたの。
誠凛二年生の土田だけは、ワタシにあまり話しかけてこず、部活が終わるとすぐに帰ってしまっていた。
理由が「彼女を待たせているから」ということ。

宮地清志も土田くんもワタシ以外のなにかに夢中で、話しかけてこない。

とても真剣であろうと、心から好きな相手がいようとも――性別も年齢も問わず、だれもがワタシをかわいいと言っていたのに。
火神くんやキセキの子たちは、バスケに夢中でも、ワタシの言葉を喜んで聞いていた。
それがなぜ。

理由はわからない。
彼らだけが、ワタシの話を聞いてくれない。

二人ともワタシ好みじゃなかったから、あまり気にはしていなかった。


だけど


「なにがおきているの?」


誠凛と霧崎の試合――ウィンターカップ都予選のときに、それはおきた。
リコちゃんや日向君たちは、霧崎にいちゃもんをつけた。
だけど黒子くん、火神君は、霧崎のチームに笑顔で手を振っている。
あの土田君でさえ、霧崎のレギュラー陣を見て「久しぶり」とのんびりとした雰囲気でこたえ、瀬戸の肩をたたいていた。

「相変わらず眠そうだな瀬戸ぉ」
「勘弁してよ土田まで〜。寝るzzz」
「あ、おい、瀬戸。まだ試合が始まってないのに寝るなよ。・・・もう寝てる。ってことは今日は、瀬戸のかわりに松本?」

「あ!ツッチー久しぶり!そうなんだよねー。すぐ寝るからまつもっちゃんがでまーす。そういえばツッチーは調子どう?」
「久しぶり〜原。こっちは相変わらず。かなりヤバイのと、緩和されてるけどくらってきてるやつでみごとに二分割中。はためからは、学年で見事に分かれてるのがみてとれるな。
チカがそっちの学校でよかったよ。 こっちにいたら俺もチカも両方アウトだった気がする。アザナさんに感謝かな」
「そういえばチカちゃんきてるよ?つれてくる?」
「あー・・・そっちの席だと、こっちからのあたり悪いかもしんないけど、無視してくれるか?あとで俺から会いにいく」
「OK〜つたえとくねん♪」

土田くんは、敵であるはずの瀬戸、原と会話をしていく。

応援に来ている霧崎以外のひとたちは、みんなワタシのいる誠凛を応援してくれている。
ラフプレイヤーとしてしられている霧崎を応援しているのは、オレンジと緑のジャージの生徒だけ。
それだけいるじたいおかしいのだけど。

オレンジ・・・秀徳?

「はなみーやー!ファイトやで!」
『・・・・・・よし。何も見なかったことにしよう』
「ひどっ!?めっちゃ渋い顔されたあげく無視とか!!せっかく応援しにきたんに!!」

あと、ひとり。
たしかあの黒いジャージは、桐皇のもの。
そのなかの一人が、たしか今吉さん。彼もまた霧崎を応援している。

もちろん青峰君はそんな今吉をにらんで、ワタシのいる「誠凛を応援すべき!」と告げていた。
だけど今吉は「わしの後輩はあっちや!」と言ってきかない。
黒ジャージの一部がトゲトゲし始める。
今吉以外の全員(もちろん桃井を含め)が、誠凛を押す。そのなかで今吉は最後まで細い目のままニコニコして霧崎を応援していた。

何かがおかしいと思ったのはそこから。

また、“ひとり”。

たまにいるのだ。
学校中がワタシを見ている。そんななかでその学校のチームにたまに、ワタシを見ない人間がいる。
今吉は、宮地とはちがって熱中しているものはないはずなのに。

でも試合じたいは、ワタシが覚えているように、すすむ。
ただ、とちゅうの休憩のあと、花宮がなにかを言ったことで、青峰くんがコートに乱入してきた。
とめたのは、あの宮地清志だ。青峰くんの頭を笑顔のままわしづかみ、かけつけてきた今吉くんと共に、 青峰を引きずって退場していった。
少しだけ会場がざわついた。

こんな展開、原作にあったかしら?

気になったのは、青峰君を連れて行ったあの二人ともが“ワタシになびかないひとり”だったから。
でも試合は本当に原作通りだったの。
花宮になにか告げられてあおられているのか、火神君も日向君も、普段よりもあらあらしい。
黒子君が花宮の顔スレスレにイグナイトでボールをとばしている。
ワタシが応援すれば日向君も木吉君もいつもよりやる気を出す。
点数までは覚えてないけど、この試合は誠凛が勝つの。もちろん誠凛が勝ったわ。これもワタシの応援があったおかげよね。



「世界のすべてが崩れた」そう思ったのは、ウィンターカップ。
おかしいことが多すぎて頭の中の警鐘が大きくなり、他の声も聞こえなくなった時。

ちょっとまって。
どうしてそうなるの!?
ウィンターカップで優勝するのは誠凛よ。

なのに――――


「うっしゃ!!!!勝った!!勝ったぞ!」

全力で大きな声を上げて跳ね上がってまで喜んでいるのは、黒でも赤でもないユニフォーム。

“オレンジ”。

誠凛が桐皇を負かしたのはいい、誠凛と陽泉があたるのもいい。秀徳が準決勝まで登ってくるのもいい。それらは正しい流れ。
だけど赤司ひきいるあの洛山と秀徳による準決勝の試合で、大きすぎる変化があった。
原作では秀徳は洛山に負け、3位決定戦である海常とたたかうはずだった。
しかし洛山に勝ったのは、秀徳。
まるで秀徳は予選まで実力を隠してきたかのように、順調に黒星を増やしていったのだ。
それは赤司が相手でも同じ。
準決勝であの赤司のいる洛山は、秀徳によって負けた。
これにより誠凛と決勝戦で戦ったのは、洛山ではなく秀徳となった。

洛山との試合の時、はっきり言って秀徳はおかしかった。
だってあの赤司の〈天帝の眼(エンペラーアイ)〉や「アンクルブレイク」さえ、鼻で笑っていたのだ。

「フン。ふぬけたキセキになど興味はないのだよ」
「王者の威圧ってやつが、やばいwwwそよ風ぐらいにしか感じないとかww」
「たしかにwww赤司よりうちの裕也の方がこわいな」
「勝った!勝った!!!!」
「ヒュー!さっすが俺たちの裕也さんいい指導っしたねwwwwみてますか裕也さんwwww俺たち勝ちましたよ!あとでご褒美くださいね!」
「ああ、もうあいつの特訓受けなくていいのか。うけなくていいのか・・・・・きつかったなぁ(チベスナ目)」
「うちの監督を懐柔する裕也・・・の、訓練きつかったなぁ」
「なにがきついって、あいつがいると緑間の不幸体質が2倍になることだな。俺、空からタライが降ってきたとき戸惑ったわ。いや、いまはもう事前に察知してよけれるぐらいにはなったけど」
「悪いなwwwうちの裕也は緑間以上の不幸体質だ(ドヤ)」
「宮地ぃーそれドヤ顔するところじゃないだろ」

喜ぶ秀徳の生徒たち。
裕也ってたしか、宮地の一つ下の弟じゃなかったかしら。
その彼が物騒だってのは知ってるけど、彼まで不幸体質だったかしら。
まぁ、原作でも1,2ぺーじぐらいしかでてこなかったものね。わかるはずもないか。

こうして秀徳によってすべて塗り替えられて、原作は変わってしまった。
あの秀徳のせいで。

優勝は秀徳。

あんなに周囲が応援してくれていたというのに、あれほどやる気をだして、火神くんは本当のゾーンをひらけたというのに。
なぜ誠凛は負けたの?
どうして誠凛は2位なの?

だって。だっておかしいじゃない!黒子くんはこの世界の主人公よ。
主人公が負けるなんておかしいじゃない!

原作は変わってしまった。
なら、原作はどこにあるの?



そこからはすべてが変わった。
いままでワタシの味方だった緑間君や高尾君が、ワタシの話を一切聞いてくれなくなった。ワタシとの連絡はすべてきられた。
黒子君も火神君も、あからさまにあワタシを避ける。
バスケ部では、誠凛の一年生たちも徐々にワタシから距離をおきはじめた。
二年生たちは、そんな一年生をののしり、ワタシをかばうように傍にいてくれる。だけど、最初に木吉くんが離れた。

「なんか、やっぱり違う気がするんだよな〜。なんだっけ?
まぁいいや。あ、海外で治療うけてくるなー」

これは火神君たちの影響が広がったのか、それとも怪我が悪化したのか、よくわからない。
さいごまでよくわからないままに木吉くんはいつもと全く変わらない態度であっさり渡米していった。

そこからはもう勢いがついたようにすべてが流れていった。

誠凛のバスケ部はいつのまにか、ワタシの言葉を聞かなくなった。
あのリコチャンや日向まで。
相変わらずワタシの言うがままになっているのは、バスケ部以外。

「ねぇ、日向君。一緒にでかけましょうよ」
「いや〜悪い。次の試合には勝ちてーからお前のお遊びに付き合ってられるゆとりないわ」

「ねぇ、リコちゃん」
「ごめんなさいね。ワタシこれから買い出しなの」
「ならワタシも」
「いいわ。だって、あなたマネージャーっていいながら、一度だってそれらしい仕事したことないじゃない。重い荷物を手伝ってくれたこともないし」

「ねぇ、伊月くん」
「なに?」
「放課後の練習するならつきあいましょうか?」
「遠慮するかな。そんなに長い爪じゃぁ、ボールを傷つけちゃうだろ?うちの学校新設なせいであんまり部活に予算ないんだよ。もしボールとかそれでだめになったらこまるから」

―――今まで一度だってそんなこと言われたことなかった。

みんなが火神くんや黒子くんを中心に、ワタシから目をそらしていく。
なんで?

これもあれもすべて秀徳の、あの宮地清志と会ってから?あいつのせい?

ならあいつをはめれば、すべては元通り?
でももう誠凛は1位じゃない。有名校にはなれなかった。
見捨てて、王者となった秀徳を味方にすべき?
でもそれでは意味がない。
だってワタシが好きなのは、優勝校という名目。華々しく輝く漫画の主人公2人。
黒バスにおいて、黒子君と火神君が大好き。次はキセキ。
宮地清志は言葉遣いが怖いしオタクだし、好きになれないの。

なら、花宮のせいってことにして、宮地や緑間をはめれば―――



『なぁ、●●●先輩。ずいぶん不穏なことを考えてるみたいだけどさ』

どうやって秀徳を追い落とそうかと考えていたら、顔に出ていたのか、火神君に声をかけられた。
いけないいけない。怖い顔をしては、かわいいワタシでも、減滅されてしまいかねないわね。

「なぁに?どうしたの火神君」

とっさに顔を繕って、振り返れば、火神君と黒子君がいた。
なぜか火神君はあきれたような目つきをしていて、特徴的なふたわれ眉をつり上げている。
その背後には土田と一年生のベンチの子たちが、こちらをにらみつけるようにして立っている。
あら?みんなしてなにかしら。

『うーむ。それ、かわいいつもりでやってるなら、やめた方がいいぜ』
「は?」
「僕も火神君に同意見です。まだ花さんの女装姿の方がかわいいです」
『おい黒子。あれは比べてはいけないものだ。そもそもあのひと?人かも怪しいけど、うん、いちおう人ってことで。とにかくあのひとは性別不明だし。比べたら全人類がかわいそうだぜ』

「えっとなんのはなしかしら?」

『おっと忘れてた』
「ですね」

『悪だくみするなら、口にださないほうがいいっすよー』
「ですです。そもそも思ってることほとんどでてました」

「え」

『あれで気づいてなかったとか〜ナイワ〜』

「まぁ、簡単に言うと。御用改めです。お縄にかかってもらいますよ●●●先輩」
「な!?なにをいって」
『証拠はあがってるぜ。です!』
「あなたがトリッパーであり、我々をマンガの住人と見下したあげく、周囲を洗脳してたぶらかし、一部の人間をはめたり精神的においつめたということに関してですね。
あとこのレコーダー。実は半年分ぐらいの記録しかないですけど、それでも十分あなたの口からでた様々な計画のいったんが録音されています」
「何を言ってるの黒子くん、それに火神君まで。みんなどうしたの?わけわからないことを言って!・・・みんな酷いわ!ワタシがそんなことするわけないじゃない。それにどうして疑うの?ワタシが誰かをはめるなんてそんなことをして何の得があるの?ねぇみんなもそう思うでしょう?信じて!ワタシじゃないわ」
「泣きまねとはしらじらしいですよ。
さっきも言ったように、ネタはあがってるんです。
それにこのレコードを壊しても無意味です。別のパソコンにも音源は保管してあります。
本当にその軽い口はどうにかしたほうがいいですよ。あなたからの独り言でほとんど証拠がそろいましたから。
それに霧崎から苦情が来ていますし、あなたの悪だくみに加担させられた生徒から物的証拠も得ています。物々交換での取引とは、おかげでよい証拠になりましたありがとうございます」

再生されるICレコードからはたしかに、ワタシの声が響く。

「ふぅ〜火神君はアザナさんほど無効化の力が強くないので、みなさんの洗脳を解くのがとても大変でした。まずはよく接する1年からじわじわと洗脳をといていったんですよ」
「洗脳・・・そんな、何を、言ってるの」
『あれだけの証拠を見せられたまだ言うのかよアンタ』
「洗脳なんかしてないわ!だって!みんながワタシのことを好きでいてくれるのも、ワタシに愛をささやいてくれるのも、ワタシの言うことを聞いてくれるのも!ワタシがかわいいからでしょ!可愛いワタシが何をしても問題はないはずよ」

ピと音をたたて、停止ボタンがおされる。
黒子君がため息をついて、ワタシをみてくる。

「だからと言って部活のマネージャーとして好かれる努力ぐらいしましょうよ。あなた、ただのそこらのうるさいファンと何も変わりませんでしたよ。黄色い声を上げているだけの、そこにいるだけの存在。
バスケが大好きだったキセキのみんなは、貴方のせいで、ちゃんとした試合ができなくなっていた。だから僕はあなたが嫌いです」
「なっ!?なんで信じてくれないの!?だってワタシなにもしてないわ」

そうよ。ワタシは何もしてない。
勝手に周りが・・・

そこでひらめいた。
いるじゃない。適任が。

そう、そうよ!あいつよ!ぜぇーんぶ、あいつのせい。

「ワタシは悪いことはなにもしてないわ。だって・・だって、花宮真にやれって言われて!それでしかたなく!!ワタシはみんなの迷惑になるからって言ったのに無理やり!」

ワタシははめられたの。
涙をつくって、助けてと訴える。
すがるように黒子君と火神君へ一歩手を伸ばせば、さけられる。

同情をさそう言葉と表情を作っても、優しい言葉は返ってこない。
どういうこと?
そもそも洗脳って、なに?
だってこの世界はワタシのために神様が用意してくれた世界でしょう?ならワタシがとがめられる理由がわからない。

なのに、言葉で訴えれば訴えるほど、誠凛バスケ部全員から冷めた視線が向けられる。

「これだけ言ってもわからないんですね貴女は」
『しまいには花宮を悪役とか』
「落ち着いてください火神君。僕も花宮さんのことは、基本はゲスいな〜とはおもいます。ですが、いいところもあるんですよあのひと。小さい同盟組んではいますし、花宮さんの手料理とかうまうまですし、一緒にバスケしたりいろいろ教えてもらうの楽しいですし。いや、あのひとの不幸体質ひどすぎてちょっとまじでタライふってくるとかひきますけど・・・」
「なっ!?なんで二人ともあんな奴をかばうの!」

どうして世界の光そのものである黒子君と火神君が、世界の闇そのものである花宮真をかばうの。
おかしいじゃない。

「だってあいつは悪いやつなの!ワタシだって無理やり・・・・・」
「●●●先輩は花宮さんに無理やり何をされたんです?」
「そ、それは・・・・そ、そう。命令されたのよ!黒子君たちをはめなさいって!」
『さっきのレコーダーにはあんたの声で“花宮をはめなさい”っていう命令もしっかりはいってただろうに・・・』
「それもどうせ花宮が作ったニセモノでしょ!ワタシをはめるために・・・ひどいわ!」

『黒子ぉ〜give up。頭がおかしくなりそうだぜ』
「ですね」

「そんなニセモノものどうでもいいのよ!いいえ!むしろそれこそがあいつが仕組んだ罠よ!そのレコードこそ花宮がワタシをはめるために用意したのよ。ねぇ、そうだって言って黒子君。それは花宮に無理やり脅されて黒子君がもたされたのよね?」
「僕は花宮さんに洗脳をといてもらった瞬間から、ずっとあなたの背後にいて録音していたんです。なんなら学校内の監視カメラでもご覧になりますか?あちらに音声はなくても、僕の姿があなたのそばに映っているはずです」
「嘘よ!!だってワタシが正しいのよ!あいつは悪童!この世界で唯一の悪役なの!!汚い存在なんだから!だから悪いことはすべてあいつ、花宮真がやってるの!ワタシも黒子君もあいつに騙されてるのよ!
だってそうでしょう?あいつは悪童。絶対悪よ。なら悪事を企ててる根源こそあいつよ!この世界のすべての悪事はあいつが原因なの。あいつの存在そのものが悪を広めるの!それがこの世界のルール。そうあるべきことなの!だってあいつは“悪役”なんですもの!
そうよ!悪いのはあいつよ!あいつにたいして誰が何をしても許される。だってそれだけの罪を犯してるもの。どれだけの選手が花宮のせいで傷ついて、二度と試合に出れなくなったか!?あなたち忘れたの?花宮真!!あいつのせいで木吉くんの足は壊れてしまったのよ。そうよあいつがラフプレーなんかするから!あいつがやったのよ!すべてはあいつのせい!」

『はぁ〜。そこからして間違ってるんだよ。この世界に“花宮真”はいないのにな』

「何を言ってるの火神君。だって霧崎第一にはちゃんと“花宮”がいるじゃない。かわいそうにあいつに火神君までだまされて、あいつをいいやつだと思わされてるのね」

なんてこと。
気付かない間に、黒子君たちがあの悪童に言葉巧みにいいように言いくるめられていたみたい。
さすがは悪童ね。頭がいいとは原作でも言っていたけど、ここまで火神君たちを信用させるなんて。なんて卑怯な奴。

『だからさぁー、あんたいい加減に』
「火神君無駄です。
このひとには花宮さんの名前さえ聞こえてないんですよ」
『あー・・・そうかもな。そもそも花さんけっこう特殊だからなー。あの人の名前が聞きとれないってこともあるかもしれない』
「ちがって、彼女は思い込みが激しいみたいですからねー。聞こえないのではなく、聞いてないんですよ」
『まぁたしかに』

今、助けてあげる。ワタシがもっと強い言葉を言えば、みんなあっというまに元に戻るはず・・・そう思って火神君に手を伸ばそうとした。

「申し訳ありません。僕の光に近づかないで下さい。
さて、●●●先輩」

さっきからまったく表情が変わらない黒子君が一歩踏み出してくる。

なぜかそれに背筋に悪寒が走り、思わず一歩後ずさりしてしまう。
そのまっすぐなまなざしに、脳裏に一瞬、“緑色”がよぎった。
まってワタシ。何を怖がるの。
こわいことなんてなにもないのよ、しっかりしなさいワタシ。

あっちから近寄ってきてくれた。むしろこれはチャンスよ。
違うわ。そうじゃない。
彼はワタシの言葉を信じたから近づいてきてくれたの。そうよ。きっとそう。
なら、ちゃんと対応しないとね。
ほら、表情をとりつくろって。やさしい先輩の仮面をかぶって、ワタシを信じて近くにきてくれた黒子君に微笑みかける。

「なぁに黒子君、ワタシの話を聞いてくれる気になったのね。信じてくれてありがとう」

「聞くもなにも。貴女こそ僕らの話を聞いてないじゃないですか」
「ああ、かわいそうに。花宮になんて言われたの?ワタシが、守ってあげるから」

きっと花宮に弱みを握られたか、逆らえないわけがあるのね。それとも花宮は、自分がいい奴とでも思いこむようにふるまって、それで純粋な火神君や黒子君たちを操ってるの?
大変、助けないと。
ワタシの魅了する力で・・・

「自分の妄想にひたるのは構いませんが、さっきご自分の口からどれだけ証拠になる発言をしているかわかっていますか?花宮さんへの無礼もいい加減にしろ、です。
むしろそこまで・・・・貴女が貴女自身を守るような言葉ばかり言われると、なにかに怯えてるようにも見えてきました。おびえさせる気はなかったんですが」

「なにせ僕らは、どら〇もんのタイムパトロールというわけではないですし、貴女曰くどこかのスポコン漫画の登場人物にすぎないみたいなただの一般高校生的な、本当にただの人間なんで。こうやって証拠を突きつけたからといって、何ができるってわけではないんです」

その言葉に少しほっとする。
なぜ?
ワタシ、なにが怖いのかしら。
でもたしかにこれは“以前”感じたものと同じ。
これはいつだか感じたあの“恐怖”と同じ・・・。
そんな。そんなはずは。


「僕らはたかが一般人のたかが高校生にすぎません。ですが――」



『チェストォ!!!』



「いるんですよねぇ。タイムパトロール隊員みたいなひと。この世界にも」
『だな。世界の歪みとか凄い敏感そうな人、トージョーってなwww』

黒子君の言葉と同時、突如背後から衝撃をくらって、おもわず膝をついてしまう。
なに!?
なにがおきたの。

『膝がっくんとかwwwさすが花先輩www』
「古風ですがなかなか威力がある技ですよねそれ」

黒子君と火神君が楽しそうに笑う声が聞こえる。
センパイ?
まさか日向君とか伊月君がワタシに!?
地面にみじめにはいつくばったまま、それでも振り返った先には――

「はなみやまこと!?」

あの悪童花宮真がいた。

花宮はワタシのことばに、あのだっさい眉をしかめてみせた。
その口が開かれかける。あんたの声なんかききたくない!やめてワタシまで悪になってしまうわ!!
あんたのせいだ。あんたがいるから。
ああ、そう。そうなのね。花宮真はなんて馬鹿なの。ざまぁないわ。ワタシに、はめられに、自らきたのね。
ならすべての罪をこの場でかぶってもらいましょうか。
そのために声をあげようとしたら、カツンと音がして、それに恐怖がつよまり、逆に息が引きつれて喉から声が出てこない。
靴音を一回立てたあと花宮は音もなく、なんでもないとばかりにこちらに近寄ってくる。
いやだ!この世界で唯一の悪になんかに近づかれたら、綺麗なワタシまで悪に染まってしまう!
おもわず手を振り払おうとして、あばれながら声をあげようとしたら、ふわりとまるで大切なものを見るかのように微笑まれた。

「え」
『静かに』

そのまま、あいつのひとさし指がそっとワタシの口元を抑え、すぐに離れていく。
思わず言葉をのみこんでしまう。


『ヒュー。さっすが天然タラシ。花宮先輩色っぽーいwww』
「ああぁぁぁあれが自分じゃなくてよかった。本当によかった。●●●先輩犠牲になってくれてありがとうございます。花さんの価値観やばい。全人類を愛するあの博愛主義によるあの笑顔がやばいです。はっ!?Σ(゚Д゚)カントクや降旗くんたちまで顔を真っ赤に!!!!たぶらかされてる。たぶらかされてるぅ!!!!みんなしっかり!!」


綺麗な顔。優しい笑顔。
あたたかい手。

いまのは、なぁに?


見上げると、そこには―――“深い緑”色。

頭の中でカチンと何かがはまった。
目が共学に見開くのがわかった。手が震える。

「あ‥あぁ・・・あ・・いや・・うそ」
『ふはっ。"一年ぶり"かな?』

ニッコリと笑うその顔に、蜂蜜色の幻覚がうかび、その緑の正体に合点がいく。
そのまま叫びたくなった。
あの光の加減でキラキラかわる緑が細く弧を描き、やさしく微笑む様をワタシは知っている。

あの色は、不安と恐怖の根源。

忘れていた記憶がフラッシュバックするようによみがえる。
それとともに体がガチガチと震え始める。
体には力が入らなくて、手を前について四つん這いだった体制も維持できずしりもちをついたような体制になってしまう。
振り返らなけばよかった。
いやだもう。いやよ。あんな色。あんな言葉知らない!!

ああ、もう、もうタイムリミットなの。
違う!
そんなの嫌だ。
そんなはずないんだ!!有り得ないわ!

だってこの世界は神様がワタシのために作った世界でしょう?

誰かにそうだと肯定してもらいたくて、しりもちをついたまま視線を周囲へむける。
すると花宮になつく大型犬のごとくアレのそばにいた火神君と視線が合った。
ワタシをみとめて。そう思って手を伸ばせば――

『わりい(ニッコリ)。俺、じつはあんたが求める火神大我じゃないんだ。いやーあんたずっと勘違いしてるから訂正するのもどうかと思ったんだけどなwwww』

「え」

『俺はあんたと同じ“知識あり”の転生者だ。
っで、ぶっちゃけて言うと、この世界に“花宮”はいるが、“花宮真”はいないんだぜwww
だって花宮先輩も転生者だ!』

あーようやく言えてスッキリシタ!
そういって今までにないぐらいの笑顔の火神君は、横の黒子君と何か話し始める。

「ちょっと、まって」

いま、なんて。

転生?
火神大我じゃない?
知識―――原作知識のこと?
花宮真はいない?

なにがどうなってるの?

まさか神様はワタシ以外の転生者を送ったの。
ワタシ以外にも“特別”がいたというの。

なにそれ。

そんなのきいて――な  イッ!?

『正確にはあんたこそが“歪”とオレは判断したが。
そろそろ目を覚ましたらどうだ。眠っていて夢を見続けているのはお前の方だぜ“眠り姫”?』

気付けば目の前に花宮がいる。
彼は悪の化身である花宮真ではないらしい。
では目の前の彼は、緑の彼は――ナニ?

これほどの恐怖をワタシへ与える存在。
花宮なのに“花宮真”じゃないという。
そんなもの正体は一つだ。
汚い絶対悪よりもひどい。
これは違う。こんな恐ろしいものが人であるはずがない。
目の前にいるのは――

「ば、ばけもの!!」
『ふはっ。テメェに言われたくねぇな』

口調が変わり、原作でよく見たようなアクドイ顔にかわる。
緑の目をした化け物から逃げようと、腰が抜けてしまい力の入らない身体を無理やりズリズリと後退させる。
すっと、けれどそれはひどくゆっくりと、緑の化け物の左手がワタシの方へ延ばされる。
その手がスナップを鳴らすような動きを見せ、なにがおきるかわからない恐怖にドクンと心臓が大きな音を立てた。

パチン。

『いい夢は見れたかよ?』

音が響いた瞬間。
足元に黒いものがしみだした。
穴が開いているわけではない。地面がぬれたわけじゃない。
ワタシの下にあった影が動いたのだ。
ワタシを飲み込むほどに影は広がり、その影のなかから無数の手のようなものが伸びてくる。
音もなくそれは、影が手の形をしたものだとワタシが認識するよりも早く、ワタシの身体に絡みつき――


トプン。


すべての視界が黒に染まり、ワタシの意識は途絶えた。





 




『うぎゃーーーーーーー!!!キモイ!!キモイぃ!!!花宮先輩何おかしなもの召喚してんですか!!!』
『うっさい火神!オレは呼んでない!いつものテンションでつい』
『ついであんたなにしてやがる!!?』
『だから呼んでないっての!つい、相手の絶望顔が楽しくて、興奮のあまり指パッチンをしてしまっただけで!あんなのでるなんてきいてない!!!オレの方がびびったわ!なにあれ!?なにあれ!?なんなのあの手!!!』

『う、うわー。と、●●●先輩大丈夫なのかよあれ!?なんかいかにも某錬金術の心理のごときウニョウニョした手につれられて、穴にダイビングした!ぜ?!!』
「ぼ、僕も見ました。落とし穴が唐突に開いた的な!あと、ええ…たしかにあれは“手”でしたね」

『つか、いまの女としてどうなの?最後の悲鳴が「きゃぁ」ではなく「おんぎゃぁ!?」だったことに誰かつっこまねぇ?』








+ + + + +








オネガイ カミサマ

モウ少年ジャンプの世界ナンテ こりごり
それに イケメンが少なかったわ

コワイコトばかり

ネェカミサマ
ワタシのことがすきなんでしょう?だから力をくれたのでしょう?

だからモット チカラ をちょうだい

私がダレヨリモも モテル ヨウニ してネ

次ハ綺麗な人しかいないアノ世界がイイ

精霊ト魔法のあるアノ世界へ――――



「ねえさん、それを叶えるのは本来あなたの役目だったはずだよ」


え?

「すっかり人間たちの"夢"に取り込まれてしまって」


かみ...さ..ま?


「あれほど“本当の世界を渡る神々”には気を付けてと言ったのに、自らからみにいくなんて」

からみ?

かみさま?





ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!

どウ、シテ!

どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!
この姿は何?
この泥のような姿は何?
このまとわりついてはなれないモノたちはなに?
ワタシの息を今にもとめようとしているこの無数の黒い手はなに?

なぜ?
なぜなぜなっぜぇっ!?
なぜ、ワタシが人間のすがたになっているの?

そもそもか<カミサマ>ってだれよ!!!
神はワタシよ!!

おかしい
おかしいおかしいおかしい!!!!

ここはどこ?
さっきまでワタシは何をしていた?

誰かと話して・・・

怖いことがあって
コワい

そう、怖い怖い夢を見ていたの
夢を剥がされ、壊される夢を見て……あれは、ユメ?



ワタシは何を・・


 コ レ ハ ド ウ  イ・・・








+ + + + +








「花宮ぁ〜、あのさぁ」
『ん?』

「あの自称トリッパー女ってどこいったの?」
「ああ、あの匂いが臭い女?」
「そうそれ〜」
「いなくなってほっとしている。花宮への害にしかならない」
「安定だな古橋」


「ねぇお花〜あいつどうなったの?最近見ないよね」
『なんでオレに聞くんだ?』
「なんでって、なんかお花なら知ってそうだから」

『そうだなぁ。"因果は廻る"というだろう。だから、いまごろ・・・』



『どっかの"女神"の手抜きで、排水溝にでも流されて、記憶も魂も何もかも真っ白に漂白されてるんじゃないか?(ニッコリ)』



それはそれはいい笑顔を見せた花宮に、霧崎の仲間たちは全員顔をひきつらせた。
謎に詳しい説明だ。
これは聞いてはいけないことなのだと誰もが察した。

一年前突然現れ、周囲を洗脳し、人々をおとしいれた女がいた。そして現れたときと同じように、突然消えたあの女。
その正体も彼女がこの世界に来た経緯も彼女の未来もなにもかもしっていそうな花宮に、けれど優秀な脳みそを完備していた霧崎の仲間たちはそれ以上の深追いは避けた。

そしてその話題から話を逸らすべく、かわりのように今年の夏にその女がしでかしたことへと話を変えた。

「あいつ霧崎に“リナリー”を探しに来たらしいぜ。××ちゃんがいてった」

リナリーとは、今年の夏休みに花宮が愉快な幼馴染たちにより女装させられた時に名乗っていた偽名であり、黒髪ツインテールがかわいいリナリーという少女は実在していない。
そのリナリーを実在すると信じた夢女が、霧崎第一に彼女を探しにきたという。
聞いていた仲間たちは「さすがにそこまでするのかよ」とばかりに、顔をしかめる。

「まじ?うぇー」
「とはいえ、一瞬洗脳された教師もいたが、そもそもリナリーってあのお祭り限定の名前じゃん。火神が考えたやつ。
当然、そんな名前の生徒は入学していていないから、どれだけ名簿をあさろうとあの女にはみつけようがないってわけだ。
それにうちの学校と秀徳は、花宮効果で奴の洗脳にかからない。
っで、もし霧崎でリナリーの存在を知っている者がいたとしても、花宮大好きなうちの学校のやつらが、あんな女に所在を言うわけがない」
「だよね。それじゃぁ、あの女がどれだけのことをしようとも、うちのやつらがいい顔するわけないよね〜」

そもそ花宮を陥れることで自分が優しいヒロインとして成り上がろうとした女は、一年前からたびたびと霧崎第一を訪れていた。
霧崎第一の生徒たちを使って花宮をいじめ、花宮を孤立させようとしていたのだ。

「そういえばあの女って花宮を陥れるために結構な頻度で霧崎第一のやつらに洗脳をかけていたらしい」
「きもいな」
「うちのお花。神様だかんねぇ。あの女がかけた洗脳なんかすぐ解いちゃうのにな」
「しらなかったんだろあの女は」

当然、女のその目論見は失敗し、霧崎第一は洗脳にはかかっている者はいない。
しかし夢に取りつかれた女は、己の洗脳の力を過信しすぎていたが故に、女は霧崎の実状など何一つしるよしもなかった。
結果がこれである。

『あいつ、"自身も操られていた"のにさいごまで気づいてなかったからなぁ。視野が狭くなってたんだろうよ』

飲み物とってくるわとせきを立つ花宮を笑顔で見送った仲間たちは、顔を突き合わせ、先程の話題に話を戻す。

「あの女の話題ってさ、霧崎と誠凛周りが一番多いんだよね」
「嫌いだからまとぁりつく。って、それもどうよ」
「本当に変な奴だったな」

「あの女話ならまだあるぞ」
「もうおなかいっぱいだよ〜。花宮の机の上に仏花を置いたら、きっちりその花の正確な金額を花宮からつきかえされた話じゃなくて?」

「いや、それとも違うな。知ってるか?去年の話なんだが。
ああの女が霧崎に仕掛け敵始めた頃なんだが、あまりにあの女の来訪頻度が多くて霧崎のやつらが不快な思いをしていた頃、"あの女の存在が嫌でうちのやつらは顔しかめた"のに、あの女と取り巻きは"花宮の名前を出されたことが嫌すぎて顔をしかめた"と思ったらしいぜw」
「なにそれうけるwww」
「あーなるほど。それでかぁ。だからあの女は"霧崎による花宮いじめ"は成功したと思ったと。それでこっちの敵情視察の回数が減ったわけか」
「勘違いもそこまで行くとあっぱれだな」

「つ〜ま〜り」



「《花宮の嫌われ劇場》なぁ〜んて、どこにもなかった」



「「「それな〜www」」」





 









 


:: オマケ ::

火『あ〜花宮先輩が無自覚原作破壊者だってのは今までの転生経験から理解はしてたけど、あの人がいるとマジでシナリオが崩れる』
花『どうした火神、顔が死んでるぞ』
火『あんたのせいっすよ。
ウィンターカップの優勝者が意外すぎたんですよ。せめて洛山が勝つというシナリオはなかったものかと思いまして。それなら原作とは少しの差異で済んだんじゃないかと思って。もはや原作は大崩壊気味すぎて…けっこう頭混乱してるっす』
花『たしか、お前が知っている原作と違う流れになったっていうあれか。あれは"目に見えない力"を過信した赤司がわるいぞ。こちとら"目に見える不幸"と戦ってきたんだからな。負けるはずないだろう』
火『は?』

花『緑間の不幸体質にオレというプチ不幸体質が加わり、相乗効果で秀徳はとんでもない不幸に見舞われまくり、結果身体能力がずば抜けた』

火『そんなんありかよ!?』
花『あったんだからしょうがない』
火『はぁ〜。これだから原作クラッシャーは』




火『まぁ無事にすべて終わってよかったってことで』

火『お疲れっす先輩。今度飯か何かおごってください』
花『ああ、おつかれさん。おごるのは…まぁ気が向いたらな』








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