有 り 得 な い 偶 然
第4章 B L EA C H



30.変える。帰る。カエル





原作知識を知らないってのは、ある意味最強なんだなって思いました。
先輩がいろいろやらかしてくれましたよ。
いえ、世界が救われたことを考えれば、イケメンへの八つ当たりで藍染たおしちゃっても・・・まぁ、いっかとは思うんですけどね。

必要なメインシーンにだけ出没している先輩の不思議。







::: side 夢主2 :::







【BLEACH】世界の、それも戦争真っ只中付近のかきょうに突如つっこまれ、どうやって帰ればいいんだ!?と、あせっていたのもいまはむかしのはなし。
先輩のおかしな思考のすえ、あっさりラスボスが精神的な意味でご臨終なされました。
現在、元眼鏡のイケメンであっただろうラスボスは、それはもう精神的なダメージを食らい続けていることでしょう。
なにせスッポンポンだ。
みんな近づくのを嫌がったが、勇気ある男性陣によって犯罪者は簀巻きにされて縛られた。
ぶっちゃけ女性陣のホッとしたようなため息がすごかった。
夜一さんはカラカラ笑っていたが。
それもいかがなものだろう。



そんなわけで、まぁ、ルキア奪還編は、大きくシナリオを変えてちゃっかり終わってしまった。

ということで。





次はわたしたちの番である。
「帰ろう」と先輩が、藍染から奪った宝玉を片手に――


「死ねますたー!!めぇ〜!!!」


その宝玉から黒い羊のぬいぐるみのようなキャラクターがとびだしてくるなり、宝玉割るようなどうさをし!?
やめろ!と大騒ぎになったら、なんとぬいぐるみが割った宝玉はニセモノで。
やめろそんな心臓に悪いドッキリ!

「これでマスターたち、元の世界にもどすメェ。は・・・うん。なんとかなるメェー」
「え?」


次の瞬間には、宝玉が羊の腕の中でカッ!!と光り輝き、わたしと先輩を光が呑み込んだ。





* * * * *





そこはキラキラと光がとびかう宇宙のようで。
けれど色は真っ白で。
とても清廉とした場所に思えた。

羊は楽しそうにメェメェと鳴いていて、先輩は困ったようにけれど笑っていた。


『世界がさ』
「先輩?」
『帰ってこいって言ってるから、オレはそろそろ帰るな。お前は自由に生きろよ』
「え。あの。ちょ!?」
「めぇ〜。にはこれをいままでのマスターのわびにあげるめぇ」

黒い羊にハイ、ドーゾ♪とばかりになにかをおしつけられる。
手に平には、黒くて馬鹿でかいカエルの置物が。
おいおい、これ。あれだろ!先輩の能力でよく出したり引っ込めたりしている墨でできたカエル!!
どうすんだよこんなもん!?

え?貯金箱?
ならば穴はどこだー!!投入口もないし!!


『いや、だってそれ、ただの置物だぞ』
「なんですと!?」
『そういうきれのいいノリツッコミするから、こいつに遊ばれんだよ』

黒い羊がめぇと笑った。
一瞬殺意がわいた私は悪くない。

『まぁ、いいや。どこまでその置物がそちらの世界で存在してられるかわかんねぇけど。
おわかれだ。記念にもらってくれよ』

ふいに先輩が視線を遠くへ向けた。
あれほど口の悪かった羊も先輩が視線を向けている方へ振り返っている。
あちらには何があるのだろう。
そう思っていたら、海の漣の音が聞こえた気がした。
それと同時に、赤と黒のコートを着た男が、いつのまにか先輩の横に立っている。

《ほら、帰んぞ。お前は向こうで変えなきゃいけないことがあるだろ》
『うん』

立派な髭の男はニカッとばかりに笑うと、小さな先輩に手を伸ばした。
嬉しそうにその男の手をつかむ先輩の姿は――

小さな子供ではなくなっていた。

赤毛の青年は、その肩に黒い羊をはりつけ、「またな」と再開の言葉告げてきた。


『オレはオレの世界に帰る。あっちで“変えたい未来”があるからな。
オレとお前が体験したのもまた“有り得るかもしれない未来”。お前のこの先の道は、あのとおりの未来にはつながっていないかもしれない。 だけどなにかを“変える”ことは、だれにだってできることだ』

―――がんばれよ


先輩が楽しそうに笑う。
黒い羊が、先輩の肩から手を振ってくる。

「こいつが世話になったなぁ!」

とおいどこかで、なんとなく聞いたことがあるような声が響いた。



待ってくれと。

未来とか、帰るとか意味が分からない。
一緒にあのボロアパートに帰るんじゃないのか。

とっさに手を伸ばそうとして・・・・・・





* * * * *





目がさめる。
ひらいた目がはじめにとらえたのは、ここ最近でようやく慣れた【BLEACH】でのわたしの居場所。
ここは浦原さんの裏にあるボロアパートで、わたしの部屋。

目を覚ますと、わたしは自分の部屋の布団の上で寝ていた。


布団の中にいると、なにが夢で、どこまでが現実だったのかわからない。
混乱する記憶に頭を振りつつ、この部屋には先輩も一緒に暮らしていたのを思い出し、あわてて彼をさがす。
しかし部屋にはカエルの置物以外には、先輩の私物は何一つない。

夢で見たように、いつのまにか先輩はいなくなっていた。
では、あのソウル・ソサエティーのことも夢だったのだろうか?

首をかしげつつも見回した枕元には、先輩がつくってくれた浴衣・・・と、カエルの置物があった。
カエル?


「これは・・・」

「おはようございますさん
「あれ?浦原さん・・・ここは、あの、いまはいったい」
「ここは貴方の部屋ですよ。明日は夏祭りの日ですね」
「え。もどって」

時間が穴に落ちる前に戻っている。
なのに、先輩だけがいない。
訳がわけなく内心激しく焦っていると、訳知り顔で浦原さんがクスリと笑った。

「あたしもくわしいことはわかりませんがね。
どうも貴女とあたし以外はどうも“彼”のことを覚えていないようなんですよ。
さんは、こうなることを以前から予想していらしてねぇ。あたしとあなたにと伝言をあづかってるんですよ」

よっこらしょと、わたしが座る布団の横に腰を下ろす浦原さんから、折りたたまれた手紙を渡された。
そこには先輩という存在が、前の世界でどういうものであったのかが書かれていて、これからおこりうるだろうこともあらかたわかりやすくかかれていた。

そして。

わたしは先輩とはともに“帰えれない”のだともわかった。

あのひとが今、帰るべき場所は、この【BLEACH】の世界ではないのだ。
わたしの生きる世界が、今ここであるのに対して、先輩の世界は、きっとあの海の音が広がる世界なのだろう。


読み終ると同時に、ふわりと青い光が目の端をよぎる。
なんだろうと思っていると、わたしたちの見ている目の前で、先輩からの手紙が青い焔につつまれるようにして・・・。

持っていた手の中の感触が徐々に徐々に薄くなっていく。
そうして最後には、小さく弾けた青い粒子だけを残して、幻だったように消えてしまった。



「本当に、あのひとは帰ってしまったんですね」
「そうですね」

わたしは浦原さんと一緒に、その青い光が消えるまでをずっと見続けた。





「ところで浦原さん」









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「浦原さん」
「なんですか?」

「乙女の部屋に勝手に入り込まないでください!!!家宅侵入罪でうったえますよ!!!」








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