有 り 得 な い 偶 然
第4章 B L EA C H



29.天とはこんなものか





『っふ。また、つまらぬものを斬ってしまった』


 「わたしが天に立つ」とかいいながらスポットライトによって上へと持ち上げられていくヨン様のようなイケメン男―――だった人物は、ただいまスッポンポンで地面に転がっている。
うん。哀れだな。
容姿にコンプレックスをもつオレの前で、イケメン具合を声高に笑って聞かせるからそうなるのだ。
ざまぁ。







::: side 夢主1 :::







 時間は少し戻り、剣八さんたちとわかれ、黒姫の生み出す影の中にとびこんだオレとがでてきたのは上空で――。
そして眼下には、呆然として身動きを止めているたくさんの死神さんたちと、「私が天にたつ」と言いながら、見下したように死神の皆さんを見やる男。
頂上にいけるほどのイケメンだと――そう彼が言っているのだとオレは解釈し、ならばと、天へ登って行こうとしていた奴を逆に地にたたきつけてやることを瞬時に決意した。

 笑ってエイリアンのごとくスッポトライトにさらわれていくイケメンズら。
スポットライトを照らしているのは、どうやら時空の裂け目から顔をのぞかす超デカ物の虚の群れのようだ。
名前は・・・忘れた。
それをみたの第一声は――

「大虚(メノスグランデ)!ギルアン!?しかも藍染眼鏡無!?反膜(ネガシオン)ォォォーン!!?
また時間が飛んでる!?そろそろわたしどれだけ学校休んだことになるの!?」

――だったので、また少し時間が飛んだようだ。
この世界では黒姫の力はどうも歪曲されやすいようだ。
そしてなんとはなしに、眼下で繰り広げられてる光景を見やる。
 ふと、オレは、思った。
空からのスッポトライトによって運ばれる男の図―――これはどうみてもエイリアンにさらわれる人間にしかみえないことに気付いてしまった。
ずーっとみてたけど、あのひと首に刀突き付けられようが、初めから微妙に笑ってるんだよね。
しかも眼鏡をはずしてよけいにイケメンになりやがって、光がふれば笑みを深める――その人物が笑っていることから、キチガイをエイリアンは誘拐しているのだろう。
あるいは攫われたことで気がふれたか。
――そんな感じに見える。
なんか間抜け。
 しかもはかまもだからねぇ、着てる服。
下からのぞいたら、あのイケメンのふんどしとかみえたりして。
みえてしまったら、イケメンもさぞかたなしだな。
あ、だから下にいる死神さんたちが身動きせず固まっているのかもしれない。
たしかにな。
男のふんどしなんか見たくない。
あわれな(眼下にいる者達が)。

 その瞬間、オレは決意したね。
可哀そうな眼下の死神さんたちの目をかばうべく、そしてオレへの挑戦状を買おうと。
だってあんなに身長あるし、ぞくにイケメンの部類だし。
チビで童顔でくっせけがツンツンで、身長低いし。まさに真逆を行く男がそこにいりというだけで、オレへの挑戦状のようじゃないか。
オレは意受け取った。
その嫌味とやらをさ。
 それに一護が倒れてるってことは、死神にとっても敵なんだろ?だったらたおしていいってことで、あれ、オレの獲物に認定!
 そうときまればやることはひとつ。
《斬鉄剣》と命名した剣の絵を具現化し、それを手に、なんだかんだで遥か空の上にいたので、そのままオレは空飛ぶエイからとびおりた。
そしてスポットライト、否、デカ虚が顔をのぞかせる次元の穴ごと、ついでに光とイケメン(の服だけ)を切り裂いてやった。
さすが『きれぬものはないといわれた斬鉄剣』と同じ名を与えただけはあり、オレの真っ黒な刀は、空間の裂け目ごとイケメンの服を切り裂いてくれた。
《斬鉄剣》に感謝するつもりで、斬鉄剣の正当所有者である某侍のセリフをぱくって、チャキと音を立てて鞘にしまってみる。
案の定、それととともに服は破け、イケメンはスッパに様変わりして倒れた。
気絶してるなぁ。
さすが斬鉄剣。
人は斬らず、その意識を服と共に刈り取ったか。

『よっし。イケメンひとり打ち取ったり!
オレがちびだと童顔だとか見下してきそうな、真逆の男を地に落としてやったよ!これでもうオレは見下されないね!
自分じゃ高く飛べなくてエイリアンにさらわれて高笑いしてるような男なんか地べたで十分だよ!!自分がてっぺんとれるほどイケメンだと思い込んでる本当にイケメン野郎なんか、オレが今度は蠅たたきで叩き落としてやる!
そしてイケメンはすべてオレにわびろ』

 いまならきまりすぎて、オレでも天下取れそうじゃない?
さすがに白ひげやガープとかセンゴクさんにはかなわないけど。
このくらいの優男ごときに負けるつもりはない。
あ、でも黄猿のようなレーザー人間には、かなわないだろうなぁ。
もう心臓貫かれるのは勘弁だなぁ。あれ、いたいし。
光の速さとかよけられないからまた死ぬだろうし。
とりあえず。常識も非常識もすべてぶった切れるんです。オレの斬鉄剣。

 呆然としている死神さんたちのところにスタンと降り立ち、そのまま気絶しているスッパな変態を足蹴にして、能力で紐を作り出して簀巻きに縛りあげる。
それをみはからったようにがエイとともにおりてきて、それを目にした現世組が目を大きく開いてポカーンとして口をひらいて固まった。
鯉のように口をパクパクしているものもいるが、誰も声を発さなかった。











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「そうだ!先輩先輩!宝玉は!?あれがあるのがやばいんですって!」
『……なにそれ?』
「貴方が“イケメン狩りだ!”と言って、今まさに刈り取ったその元眼鏡なイケメンが持ってたはずのものですよ」
『それってこれのこと?』
「それですそれ!ぜひこわしちゃってください!…っていうかどうしたんですかそれ?」
『落ちてたから拾った。綺麗だったし』

「めぇ〜〜〜〜!!おめでとーマスター!そして今すぐ死ねばイイめぇ!!」


(((((((((なんかでた!?――))))))))))


『あ、夜宴…また勝手に出てきて』
「…先輩。いま、どっからでましたその子?ほ、宝玉からでてきたような(顔ひきつり)」
「めぇぇ〜。宝玉はいただいためぇ。これでマスター任務終了めぇ!ご苦労だったな」
『いつも思うんだが、お前態度デカすぎないか?マスターはオレだろ?』
「なんだマスタァ。帰りたくないって?わかったメェー。マスターがそういうならしかたないめぇ。
せっかくこの宝玉があれば、マスターは元の世界に帰れたんだけど。メェ〜。ソッカぁ、イライナイ、か。
しょうがないめぇー。
じゃ!これはコウしてバッキと割って、そんでもってエイヤって捨てて・・・」


「「「「「『ちょっと待った―!!』」」」」」








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