28.君が泣くから |
ひとが涙を流す時というのは、どんなときかしってるかい? 哀しいときが8割なんだそうだ。 残りは、嬉しいときとびっくりした時。 では、いま君が流すそれは、なにに対してのものだろうか? ::: side 夢主1 ::: 絨毯でおりたさきはなにやら騒がしく、リョカがなんたらとあわただしい雰囲気をかもしだしていて、十一番隊隊長がオレンジのリョカにやられたとかさわいでいる。 リョカってなんだろうかとを振り返れば、「まさかのルキア奪還編!?お墓参りのネタとか夏祭りとか!!せっかく先輩が着物作ってくれたのにお祭りはどこ行ったの!!白夜くるシーンもすべてふっとばすとこなんで!?」とブツブツいいながら打ちひしがれていた。 ふっとばす・・・ねぇ。 つまりオレたちはかなり時間をすっとばした先の世界にきてしまったらしい。 オレ 、雨竜と一護がデカ虚たおすまでしかしらないんだよ。 がオレなら卍解できるんじゃないですかと投げやりに視線を向けてくるが、だからバンカイってなにときいたら、瀞霊廷を知っててなぜ知らないと飽きれられた。 だってたまにしかテレビつけなかったから、チラ見したとき瀞霊廷はやってたから知ってる程度で…。 そもそもさ、オレ。原作見たの百年ほどは前だよ。 さすがに覚えているわけないだろう。 ちなみにここちよいいほど“力”の強いものにあふれた世界だ。 目を閉じて感覚を研ぎ覚ます。 そうしてあふれんばかりの死神たちの気配から、最近馴染んだ気配を追う。 やがてオレの息子と同じ色の髪をした青年 黒崎一護の、そんざいを確認できた。 なんてことはない。 オレたちの道を挟んだ一本隣の道に、なにやらトゲトゲしたいかした髪のセンスをした死神のおっさんと対面中だった。 ―――これ。あそこで鬱っているに言うべきかな? * * * * * ただいま再び空を滑空中。 今度はエイにのっています。 オレの横では、一部ほこりをかぶったままのがシクシクとないています。 なにがあったかというと―― * * * * * 一護のことを言おうか言うまいか考えている間に、横から当の本人たる一護が走ってきて、しかものすぐ背後の壁がみしりとひびがはいったかと思った瞬間には、そこからトゲトゲ頭のオッサンがとびだしてくるというシュールさ。 は瓦礫と砂煙で見えないが、オレの目の前で剣を交差したり、逃げたり斬ったり、血をまき散らしていく一護と変な頭のオッサン。 目の前にいるんだけどね、オレ。 最後の最後まで全く気付いてもらえることさえなく、壁や地面に赤い流血痕と破壊を繰り広げて、そのままオレたちに気付く間もなく、二人の死神は打ち合いながら去って行った。 『おーい、―。無事なのはわかってる。でてこい。もう大丈夫そうだぞ』 気配ががれきの下でゆれ、そこからオレの名を呼ぶの声が聞こえた。 のことはオートでオレの墨が守るように設定しといてよかった。 おかげで彼女は無事だ。 それでも少しだけ怪我をしているらしく、微かに彼女からも鉄のにおいがして眉をしかめる。 オレには治療する当てがない。 彼女自身は治癒術というか、薬剤師としての腕と払い人としての腕は一流のはずだが、痛みとかに慣れすぎているらしく、肉体的痛みに関しては現状でさえ平気だと首を振る。 しかし心の方は相当の衝撃だったようだ。 ガレキにうもれ、ほこりだらけのをひっぱりだしたとき、彼女は泣いていた。 『無事か?』 「やっぱり現実はこわいですぅ〜先輩ぃー」 『オレの能力、自動型でよかったなぁ』 「わたし、ワダジ…少しばかり祓い札と忍刀(チャクラ?たぶん使えますが)が使えるだけの一般人なんですよぉ」 『うん。じゃぁ、そのなにもできない一般人は一般人らしく』 「先輩?」 『世界の破壊に一緒に行こうじゃないか』 「はぁ!?」 そんな感じで、嫌がるをひきつれ、彼女の原作知識をもとに、数々の原作に乱入しようと思っていた。 まぁ、激しい生の戦いや霊圧にあてられちゃったはいやがるので、とりあえず見つかる前にこの場からは逃亡するかなと、彼女を引っ張ってオレはその場を離れた。 泣いているははなしをきいてくれなかったので、とりあえずめだつばかでかい白い塔へむかってみることにした。 あの上からならこの場所をある程度瀞霊廷を一望できると思ってさ。 そうしたらとちゅうで下まつ毛が凄いおっさんと、気弱そうな死神の二人組に遭遇した。 「旅禍!?」 「うぉ!?一護たちのほかにもいたのか!?」 「いったいどうやって瀞霊廷に…」 『なあ、リョカってなんだ?』 「「はぁ?」」 『どっかいくところなんだろ。どうせなら、オレのこと連れてかない?オマケでなんでも自動防御してくれるをつけちゃうぞ☆』 「わたしちゃう!やってんのあんただっ!!」 っと、いうわけで、には医療方面で頑張ってもらいつつ、オレがというかオレの能力が盾となり、志波岩鷲(シバガンジュ)と山田花太郎(やまだはなたろう)とルキアを救う協力をすることになったのだった。 なお、リョカが、《旅禍》とかき、それが侵入者のことであることを教わった。 そしてあの遠くに見える白いものがルキアをとじこめている牢であることも。 が“ルキア奪還編”って言ってたから、ルキアを浚いに行くわけで、そのために一護たちがこの瀞霊廷に乗り込んできたようだ。 なんだ。目標があれか。 迷子にならなそうで何よりだな。 あ、遠くで一護の戦いがヒートアップしているようだ。 どうでもいいかな? ――っで、そこからが問題だった。 「すげー目立つなその髪」 「そうですねぇ。さんやさんのこと、どうしていままで誰も気づかなかったんでしょう」 「なぁ、その赤い髪。染めてんのか?おまえ年齢のわりには随分とツッパッテンだなぁ」 『おいまて小童。これは地毛だ。そんでもってツッパッテんのはお前だ!! そもそも人生一度しか生きていない若造が、オレに指図すんなっての。 だいいちオレは子ども扱いが好きじゃない』 「先輩先輩、暴力に出ても迫力ないですよその外見じゃぁ」 なんてのんきな会話をしつつ、なんだかんだで白い塔についたとき、オレたちの出番は、協力者となった二人の姿を周囲から隠すことぐらいで、基本は彼ら二人で進んでいった。 薬とか、肘鉄とか。鍵とか、とんとんびょうしだなぁと思った。 みんなが助けに来るぐらいだからルキアはよほどの美人なんだろうとこぼした岩鷲の言葉に、ふいにが思い出したように顔を上げる。 花太郎がもってきていた予備の鍵のお蔭で徐々に開いていく扉のなかと、岩鷲を交互に不安そうに見るをみて、ルキアと岩鷲の間で何かあったのだろうと察する。 死線を向ければ、「肉親の敵ってやつです。すぐにわかりますよ」と苦虫をかみつぶしたような表情が返ってきた。 にくしんの…かたき。ねぇ。 『なるほど。オレもやったなぁ。 目の前で身内を殺されて、二十年は怒りを抑えていたが。エースまで殺されるとあっちゃぁ、さすがにブチギレたわ。 っで、あのあとロジャーを殺した世界に喧嘩吹っかけて、その最中にあっけなく殺されてさ。いや〜笑い話だけどな。その衝撃でこっちにとばされてなぁ』 「は?」 「ん?」 「え?」 『ん?なんだその顔は?』 肉親を殺されるってのはどれだけ苦しいだろうか。 ああ、耳に痛い単語だ。 オレも自分を認めてくれたロジャーやシャンクスを肉親のように思っていた。 彼らが傷つけられたときの衝撃は忘れない。 彼らが死のうものなら、オレは錯乱しているだろう。 とはいえ、別に目の前の相手やこの世界の誰一人として、いや、をぬかしてだが、オレの肉親でも身内でもないわけで、この世界にも実はあまり愛着を持っていない。 たぶんソールソサエティーと現世とか関係なく、まったく理も世界の在り方も違う場所から来たオレだから感じる――“そこ”に存在する“矛盾”が好きじゃないのだ。 思うに、この世界に、オレの心の支えである《世界(ロジャー)》の存在がどこにもないことが、愛せない理由かもしれない。 まぁ、さすがに目の前でなにかおきたら、寝覚めが悪いから、今この場にいる範囲ぐらいは守ってやろうかなとは思う。少しぐらいは手出しはしてやるよ。 ――その前に。 数刻前からついてくる気配の方が気になるんだけど。 気配を殺してるってことは、見逃されてるのか。はたまたオレたちはおどらされているのかどちらかだな。 が岩鷲の方ばかりみているので、大きな原作のイベントが控えているわけじゃなさそうだ。 とくには気にしなくていいのだろうな。 とりあえず念には念をと、《黒姫》をよびだし、ひそかにオレたちの影にひそませた。 その後。 案の定というか、岩鷲はルキアをみて怒鳴り、それに対しルキアは否定をせず「志波海燕は私が殺した」とあっさりみとめた。 『言い訳しないか。まじめちゃんだねぇ』 「先輩?」 ルキアの目は濁っていない。陰はあるが。 しっているかい少女よ。 そういう目ができる人間は、“好きで殺したわけじゃない”っていう理由が存在するんだよ。 あ、そっか。なら、とめるべきはルキアではなく、岩鷲だね。 まずは話を聞かなければ、うらむこともお門違いではないか?たしかに身内を殺されれれば、その怒りをどこかへ持っていかなくては気が済まないだろうが、まだ彼には家族がいるのだから。 ひとつのことにとらわれて狭いものしかみないのはよくない。 オレはそれで泣いてわめいて、いつまでたってもバカをして、あげくシャンクスになぐられて、ようやくそこで前を観ようと思ったしね。 決して、ルキアのためではない。 ルキアに謝罪を指せるチャンスを与えるためではない。 ただ岩鷲の気持ちのやりばをさがして、ルキアの話もきくよう声をかけようとして―― やめた。 そこに“シスコン”がきた。 『ふむ。シスコンの執念の恐ろしさよ』 「ヒィー!く、朽木白夜っ!! って、真顔で語ってますけど、先輩!!それ絶対、違いますからっ!!」 朽木白夜はシスコンではないらしい? とりあえず、気配を消すのをやめて、覇気を垂れ流して、威圧感たっぷりに現れた彼によって、オレたちは捕縛された。 なお、オレはとくになにもせず。 はすみっこで悲鳴を上げて「わすれてたー!」と縮こまり、花太郎は顔をひきつらせながら凝固し、暴れた岩鷲ただひとりがけがを負っていた。 ・・・・・・なぁ。これってさ、《ルキア(妹)が殴られそうになるのを見てとめにはいった兄の図》ってやつじゃないのか? 殺気が凄すぎて、感情表現が疎いからおびえられてるけど、オレにはそうみえるのんだけど。 なら、黒姫の出番はないね。 「……兄(けい)らは?」 『あ、たぶんオレもそこにいる彼女もリョカってやつになると思うので、同じく連行よろしくお願いします』 「……」 『やさしいね。お兄ちゃん』 とつかまって、牢まで連れていかれるときに、白夜の横を通り際に声をかけたら、ギロリとこっちをにらんできた。 それだけで十分感情が出ているじゃないかと、なんだか小さな子供ががんばっている姿に思えて、思わず笑みが漏れた。 ――そういえばだれか気づいているだろうか。 あの白い塔の近くにあるおかしな空間の気配に。 ああ、この世界のどこかで、必死になって頑張ってる“あの子”の存在を感じるよ。健気だねぇ。 ルキアを助けるために、黒崎一護は修行の真っただ中のようだ。 オレは参加しないよ。 しばらくお休みもらいます。 なので、休憩ついでに、数日の衣食住を確保すべく、ちゃっかりオレも連行されてみることにしたのでありました。 牢にいくと花太郎はいづこかへつれていかれたが、オレたちはひとまとめにして四番隊・綜合救護詰所 地下救護牢〇七五番にいれられた。 ちなみにそのとき、がいまだ男装していたこと、剣八と一護の戦いに巻き込まれておった傷があったことで、みんな同じ牢である。 なお治療をしてもらったは、涙を滝のように流して、治療してくれた死神さんたちに怠惰なる感謝を述べていたため、救護班の人たちの方が渋い顔をしていたのは・・・いうまでもないだろう。 「もういうやだ!!帰りたい!リアル流血こわいよ!なんでこんな世界に来ちゃったんだ!?これもすべて先輩が穴に落とすから!! まだ真夜中に薬草の畑を荒らす猪と戦っていた方がましだ!!なにここー!!」 『そうだな。ここは非常にむさい。そしてだまれ拡声器』 「先輩ひどっ!?」 そんなこんなでただいま牢の中で、眠り姫のごとく眠る眼鏡少年の額に能力で「肉」とかいているオレです。 この子、こんなこともして起きないの。 っと、いうより、霊力が封じられているうんぬんをぬかして、気の流れがおかしいんだよね。 『精孔開けば…いや、それはいまやると死にかねないか。の治療薬は…無意味かな?なんだろうなぁ。こいつだけこの死神世界で浮いてる感じがする理由は』 そもそもオレが見た限りだと、死神と“くいんしい”とやらも根源は同じだ。ただ気の使い方、気のだしかたが異なるだけで、ぶっちゃけ基本はオレがオーラをあやつるのと大差ない。 つまりこいつのなかに違う穴をあけてやれば、“くいんしい”とやらの使い方はできなくなるが、オーラじたいはもどってくるわけで…。 そっか。必要以上のオーラを出す穴が閉じてるからおきないんだ。 じゃぁ、放置で。 ――そんなことをしていたら、彼は起きた。 「あ、どーも石田君」 「え?なんで神崎さんが?」 がそれはもうひきつってもどらなくなった顔で挨拶をし、それをみて石田君とやらが呆然と目を見開いて固まった。 どうやら、石田というのはや一護のクラスメートだったらしい。 「君は、どうして?」 「それがですね。近所に住まうそこの赤毛のお子様にいたずらされ、足を引っかけられて、穴に落ち、気が付いたらなぜかこの瀞霊廷とやらにいまして。呆然としていたら着物姿で血まみれの黒崎君と、頭がツンツンした和服の侍が決闘をしていて――巻き込まれました」 「黒い着物ってぇと、死神か!?どんな穴に落ちたらそれだけ不幸になれるんだ?」 「不幸体質は先輩の専売特許です…グス。泣きたい」 「いやいや、君、もう泣いてるよ神崎さん」 「なきたいんです。それで石田君や黒崎君はなぜここに?」 なんて本音をまき散らして涙を流しつつ、はさも原作など知りませんとばかりに話を誘導する。 ・・・昔のはこんな子じゃなかったら、数々の異世界トリップ体験で強くたくましく育っているようだ。 そうしてチャドや岩鷲やらの話を聞き、みんなで牢の中でホワホワしていれば、石田氏がしまいには窓から入ってきたもんしろ蝶を見てコチラの世界は春なんだなとステキなボケをかましてくれたりした。 そうこうしているうちに、あのときを瓦礫に埋めてくれたトゲトゲ頭の侍が、織姫をくっつけてやってきた。 どこからって 天井から落下してきました。 『あ。を瓦礫に埋めた人』 「ひー!!!!実物怖い!!」 「ざーーーーーざざざざざざざざざざ更木剣八!!十一番隊隊長!!!」 オレが牢の隅で公私の隙間から空を見上げつつ指を指せば、同時にと岩鷲が解説付きの絶叫を挙げた。 っで、ルキアの処刑が早まったから迎えに来たとかなんとかで、さらにのご学友が現れ、剣八の部下とか数名あらわれた。 やちる、一角、弓近――がウキウキするほどの、原作キャラらしいのだが はっきり言おう。 だれもしらねぇよ!? っで、剣八やらにつれられて脱出する際に、オレはの襟首をつかんで、彼らにわかれをつげた。 『こいつ一般人で。(暗部の忍みてきてはいるが)血みどろ劇には巻き込まれたくないっていうんで、オレたちはここで別行動とるよ。だれかを助けるんでしょう?頑張ってねお姉さんたち』 子供らしい無邪気な笑顔と口調を装って、そのままをかついで逃亡し、すでに発動している能力を使い、黒姫に指示をだして影に飛び込んだ。 え?首がしまるとかが騒いでる?うしろのひとたちが呆然としてる? そりゃぁそうだろう。だってオレの能力は、この世界では異色なものだからな。 あ、違う? 知ってるけど、めんどいから細部事情にまで補足する気も、気を病んでやる気もないの。そこまで興味はないからね。 っが、しかし。影から出た先は案の定空の上でした。 しかたないので、墨で宙に四角をかいてまた空飛ぶ絨毯を具現化した。 はずっとないてました。 えーっと・・・ とりあえず ごめん。ね? -------------------- でもね。 この物語が終わるのも佳境もまだまだ先だ。 ――君が泣くから 世界は変わっていってるのだと知る |