有 り 得 な い 偶 然
第4章 B L EA C H



21.「ユグドラシルの果実」とググルべし!





一言で言うなら“アレ”でした。

「あんた、こんなところでなにしてるんですか?」

思わず笑った私は悪くない。







::: side 夢主2 :::







 転校という形でこの【BLEACH】世界にトリップをしてからしばらくして、 学校の帰り道ぴょこぴょことゆれる赤い髪が、曲がり角からのぞいていた。


「…なに、あれ?」

隠れているつもりなのか、わたしたちよりも小さな10歳ほどの子供はじーーっと熱い眼差しで一護を見つめては、 一護が振り返るたびに塀の陰に隠れたりしている。

だけど強烈な赤色が少しずつ塀からこぼれている。
しかもこの現代において、和服。少し違和感があるが、ぞくにいう甚平という格好に近い格好だ。
もうひとつ目に付くのは、あの子、はだしである。なにも履いてない。
これだけみて、目立たないほうが可笑しい。
 本人だけでもこの日本では物凄く立つというのに、彼は背に30cmほどはありそうなシルクハットをかぶった黒い羊のぬいぐるみをはりつけている。
よけいに悪目立ちしているようにしかみえない。

しかも道行く人が、あまりの派手な髪の色に、外人さんだと振り返っているにもかかわらず、本人は気付いていないようだ。

 ただ、わたしはその独特の容姿に見覚えがあった。
と、いっても漫画のキャラとしてだが・・・。
でもあのキャラは【BLECH】にいるはずがない別の漫画だ。
ということは

「御子神(ミコガミ)さん?」

――では、ないかもしれない。

違うかもしれないけど。
それにしてもあの子は“御子神”っていうキャラクターによく似ている。

考えられるのは、わたしがトリップ体質となる原因の事故に一緒にいた先輩あたりが“成り代わった”か・・・。 あのひとならありえそうだ。

 案の定、漫画のほうの名前で振り返った子供も、その名に聞き覚えがあったのかこちらを振り返った。

『ミコガミ?ん〜?どこかで聞いたような…って、【ユグドラ】か。あの漫画ね。
ん?それがなんで今聞こえたんだ?』


 ユグドラ。
やはりビンゴのようだ。
御子神(ミコガミ)とは、【ユグドラシルの果実】というネットゲームを題材にした漫画の登場人物の名前だ。

しかし、それはこの世界にはない漫画の名前。

それをしっているということは―――

やはり・・・
同じ世界からの転生者かと思い、赤毛の少年に手を伸ばそうとしたら。
逃げられた。
なぜか物凄く慌てたように子供は逃げ去ろうとした。
なので、思わず肩をガシリと捕まえて、逃走を阻む。

まさかと思って。
さらには逃げられないようにと、慌てて子供に声をかけた。

「ああ、やっぱり先輩でしたか」

わたしが声をかけると、いまだにわたしが誰かわかっていないようで、 一瞬いぶかしげにまゆをよせ、先輩は不思議そうにこっちをきちんとみかえしてきた。
う〜ん。みればみるほど御子神のアバターにそっくりだ。

「お久しぶりです先輩」

鮮やかな黄緑色の瞳と視線が合った瞬間、怪訝げだった先輩(だと思われる子供)の顔が驚きにゆがむ。
どうやら相手も私がようやく誰かを分かってくれたようで、ポカーンとしたあとに

『お前まさか、なのか?』

っと、指まで指してたずねてきた。
驚きすぎな気もするが、たしか今の先輩とわたしの時間軸外れているから、わたしはすでに先輩とは別の世界であっている。
それをしらないから先輩はらしくなく慌てている。

「そうですよ」

珍しく慌てふためく先輩の様子が可笑しくて、笑いながら頷く。
そうしてわたしは二度目の。先輩にとってははじめての、会合を果たした。





 ちなみにいままでなにをしていたのかたずねたところ――

「先輩。なにしていたんですか?」
『死神代行観察』
「・・・・・・それ、ストーカじゃないですか?」
『でも目立ってないだろう?ほら、海賊よりも普通の一般人と同じ格好してるし』
「たしかに夏ならね」
『なんで?』
「今が夏で、さらには夏祭りの時期なら、あなたがきているような甚平姿でも違和感はないんですよ」
『え〜。これ私服なんだけど』
「まぁ、百歩譲って甚平衣装が目立ってないとしましょう。ですが、それをぬきにしても…目立ってますよ」
『まじ?どこがさ?完璧じゃね?オレ、一般人で向こうの世界ではとおってんだけど』
「そもそも先輩。いまの自分の姿、鏡でみたことありますか?」
『縮む前なら、あるけど?仲間はみんな父さんそっくりだねって』
「その仲間や父さんとやらがどんなひとかはしりませんが、ここは日本です。
そのまっかかの髪も明るい色の黄緑の目も物凄くういてますから」
『!?き、きづかなかった!!』

だって、最初の世界の故郷のジャポンでは、赤とか銀とか蒼色とかの毛色は普通にいたし。
海賊世界では、魚人から巨人とかいろんな人種がいたし…。


な〜んて言い訳が聞こえたけど、どんだけ危ない世界に先輩は行っていたのか気付いてない。
しかも向こう側の常識がしっかり根付いていて、普通の現代社会人とは程遠そうだった。

「だめじゃんそれ!?」









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久しぶりに会った先輩は、【NARUT0】にいたときの先輩とは違った。
あなたは、このあとの遠い先の未来、ナルトになるんですよ。
だけど先輩はどうやら、まだ自分がこの後どうなるのか知らないらしい。
では、わたしは未来でのあなたと出会ったのですね。

転生者とトリッパーでは、流れる時間がこうも違うらしい。








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