17.君の気持はよくわかる |
え?現状? そうだな。 目の前にひとを変人呼ばわりする、白い化け物がいたりするんだが。 ::: side 夢主1 ::: 虚(ホロウ)と遭遇した。 戦闘にはいった。 ここでこの世界の主人公なら、死神になったり、卍解(バンカイ)したりするんだろうな〜。 あいにくオレには斬魄刀(ザンパクトウ)なんてものはもちあわせていないし、腕の中にあるのはさわり心地最高の偽非ぬいぐるみだけ。 武器になりそうなものは、身体のあちこちにある刺青と、先刻予備にと作成したできたてほやほやの墨ぐらいだろう。 なので残念ながら、オレが虚を地獄か尸魂界(ソウルソサエティー)に送ってやることは不可能だ。 だから絡まないでほしい。 そもそも虚というのは、生身の人間をじかに食らえるものなのだろうか? 一度気になると、無理やり食わせてその経過を見てみたくなるものだ。 やらないけど。 生身を食わせるウンヌンはやらないけど―― 『邪魔』 「マスターシンラツメェ〜」 『お前ほどじゃない』 さっきから虚がオレに対し、ゲヘヘヘと笑ったり、お前は死神か?とたずねてくる。 たしかに和服だし。虚が見えるし、死神と誤解するのは仕方ない。 しかたないが、若干ひとつ気になることがある 『オマエがオレを笑う原因はなんだ?そういう鳴き声なのか?それとも…』 《そんなもんきまってるぜぇ〜!!おめぇみてえな、霊圧もなにもかも小さな死神に、 オレ様が負けるわけねーからよぉ》 オレの言葉に対し、虚はさらに下卑た笑いを浮かべて、手ごたえのない死神とのたまった。 死神ではないし、生身だし。 ましてやこの世界の住人じゃないし、霊圧なんてないかもしれない。 霊圧というのが、オーラや気の大きさを指すなら、目の前のヤツはとんだバカだ。 オレはハンターだ。オーラを断つことなど基本中の基本。できて当然。 なにより覇気使いであるオレが、気をもらしたら、普通の人間は気絶するか死んでる。 だからおさえてるんだけどな。 とりあえずね。 オレは腕に抱いていた夜宴を離すと―― 『てめぇがでかいだけだこのくそやろう!!!』 どガスっ!! 異世界で鍛えた逃げ足の速さをふんだんに使って、瞬間移動のごとき速さで移動し、 アホ面した虚の頭上をとると、そのまま落下の勢いを利用して思いっきりカカトオトシを食らわした。 ついでに本気で仮面ごと潰す気で、足にオーラを集中して強度を高め、さらに悪魔の実の能力さえ無効化する覇気をまとったので、破壊力ははかりしれない。 消すとか魂をどうこうするのは無理だが、物理攻撃を当てるくらいできる。それが覇気とオーラだ。殴るだけならなら、能力は不要。己の力だけでなんとでもなる。 とりあえずオレの心境を理解している夜宴は、何も言わないにもかかわらずオレの邪魔にならないように、オレの背中の荷物に張り付いている。 虚がゲフっとか、《こ、こんなやつに〜》とか色々と文句をいってくるが、すべて無視。 そのまま虚を踏み台にて空中に飛び上がると、そのまま宙でクルリと一回転して、足から地面に降りる。 トンと軽い音がしてオレが着地する前には、ぼろぼろの虚がいて―― 《くそぉぉ!!こんなチビに!!おれがこのオレ様がぁ!!》 ハイ。いまのオレには禁句ですよおにいさん。 プチンときたので、腕に描かれたとある刺青に触れてオーラをながす。 そうして“頑丈”と能力を一つ付与して――能力を発動。 予備の瓶に手を出さなくてもいいね。こんなのろい奴相手なら、些細な能力で十分そうだ。 ――ざわり。 片手がふれたのは、一匹の蛙の絵。 そして絵は青い光を放って、それは見事なカエルの置物へと姿を変える。 大きさは1メートルほどのそれが具現化された。 その黒いカエルの置物を手にとって、それごと再び跳躍する。 そのまま勢いよく吼える虚めがけて投げつける。 『人間辞めたやつとサイズをくらべるんじゃねー!!!』 ドッコーーン!! さっきよりも派手な音を立てて、オレのカエルの置物は虚をつぶして地面へとめり込んだ。 あらかたやってスッキリしたオレは、カエルを消して、そのまま街探検に戻った。 虚?知らないよ。 消えたかも“向こう側”にいったかも、死神にひきとられたのかさえしらん。 なにせその場所を離れてから、巨大カエルを消したので。その後なんて知らん。 いまなら、原作にいた小さい子――トシローだか、トウシロウだったか? あいつがいつも子ども扱いを嫌がる気持ちが少し分かる気がした。 あまりに周囲に小さいって言われて、きっと彼も腹がったのだろう。そうしてうさばらしをするために強くなったんだね。 なるほどなるほど・・・ -------------------- なにで虚をたおしたって・・・ カエルの置物ですが それが な に か? |