有 り 得 な い 偶 然
第4章 B L EA C H



15.オレは相変わらず巡る





 失敗したなぁ〜と思ったのは、黄猿さんのそら恐ろしい攻撃をくらったとき。
ちょっと精神ストレスがMAXに達し、能力が暴走してその場にいた全員を殺しかけた。
そこで無理やり現実に引き留めたのは黄猿。
やつが背後からレーザー光線を撃ってきて、心臓を貫かれた。
死んだなこりゃと思った痛みと衝撃に、グラリと体が傾いた。

っ!!」

そんなだれかの声が聞こえた気がしたときには、《黒姫(クロヒメ)》が作り出した水溜りの中に落ちていて――







::: side 夢主1 :::







『ここはどこだー!!!』





 気付いたらオレは、ONE PIECE世界にいたのに、いかにも地球現在日本といった感じの住宅街のど真ん中にいました。
そしてポッカリ開いたはずのオレの心臓の穴はふさがっていて、かわりに身長が縮んでいたり。
服には穴開いてるけどな。
治癒のために退行したか?
それよりも――

『なぁ、《黒姫》ここどこ?』

一緒に空間を転移して、オレの視線の高さを泳いでいた黒い鯉に声をかけるが、返ってきたのは戸惑いの感情。

『だろうね。ここ、空気が違う。“世界”が違うみたいだ』

 さっきまでいた、海が中心で、戦争真っ只中の世界とは違う穏やかな空気。
そのかわり澄んだ海はなくて、少し淀んだ排気ガスのにおいがした。
たぶん。間違いなくここは前世のとき自分が死んだ地球という世界に、酷似した場所や年代なのだろう。
自分がいたのと“同じ”地球だと断定できなのは、以前にはない異質な空気を肌で感じるから。
まるで見えない世界がすぐ側に存在しているような――何か別の世界が交じり合っているような・・・そんな言いようのない違和感。
違和感の交じり合う場所、そこだけが戦場のように錆びた鉄の匂いを空気がまとう。

 周囲を確認しようとオーラを軽くひろげてみれば、広げた範囲の場所の情報がオレの中に流れ込んでくる。
 みつけたのは、ふたつのなにか。
一つは禍々しくも悲しい白い気配。
それを狩るように動く、強く黒い気配が、この街中に散っている。
二つが衝突すると必ずどちらが消える。
それを繰り返す不思議な街。
だけど周囲の人間達はそれらの存在に気付いていないようだった。

 だから断言できる。
“ここ”は違うと――。
【オレ】が、まだ【わたし】だったときの世界ではないと断言できた。



『なんか…やばそう。いや、まてよ』

 やばいといえば――HUNTER×HUNTERでジンに振り回された時や、ジン達グリードアイランド製作メンツに実験台にされたときとか。
ビスケに童顔うらやましいと襲われた時とか、ネテロ会長に凶悪な依頼をされた時とか、裏庭の生物に追いかけられて死にかけた時か。ジンに連れて行かれた遺跡で生き埋めにされたこととか。
そのあとなんか世界にまるっと拒絶されたぜ。あれは泣くって。
 次に生まれたのはONE PIECEの世界で、オレの生まれ凄まじく、島民皆殺しにしてもらったり、ロジャー海賊団に加わったり、ロジャーと金獅子のエッドー・ウォーの現場にいたし、彼の死刑をみたし、シャンクスにくっついて旅して、ルフィとあって…。
ようやくエースとの再会!は、なんと処刑場だし。エース奪還にとルフィと処刑を防ごうとマリンフォードに乗り込んでみれば、能力者である大将の一人に足撃たれるわ、心臓貫かれるわ。
そうそうさっきなんか、背後からボルサリーノさんの光線くらって・・・

『あー。なんだか何も怖いもんない気がしてきた』

 転生してからのおかしくもハード人生を思い返せば、怖いものはない。
だって今の今まで、歴史を変えかねないような戦場にいたし。
服に穴が開いただけで今ピンピンしてるのも気になるけど、たしかについさっき死んだと思ったほど。
それに今回は、世界に拒絶されたのではなく、あの世界に還れる保証がある…らしいので、もうドンとかまえて生きてける。

それらを思い返せば、“こんな状況”は「屁」でもない気がしてくるな。





 ――目の前に怖い物体がいます。
 仮面のオバケみたいな白い奴――BLEACHという漫画では【虚(ホロウ)】と呼ばれていたような…マンマソレ。

『今度はブリーチかよ!!』

 きっとこの世界に飛ばされたオレが悪いんだ。だからとくにオレがなにかしたわけではないのに喰われそうになってるに違いない。
、自分の命が惜しいので、状況から考えてここは下手に出るべきだと判断。

『オレがすべて悪い。ごめんなさい』

そんなわけで、目の前でよだれたらしている白い物体に、謝ってみた。
謝罪の効果は、案の定、全くもって、何もおこらなかった。
やはり自分がなにもしてないのにする謝罪は無意味か。

『ふー。とりあえず。


見下してんじゃねぞごらぁ!!』
 謝罪がダメなので、威嚇してみました。
でかいやつはきらいなのです。成長しないオレのコンプレックス刺激してくれるんで。
たとえそれがモンスターであろうと、むかつくことはむかつく。
半分本気半分は妬みで怒鳴りつければ、ようやく虚はオレと視線を合わせ――ニタリと笑った。

 おぅー、やべ。
逆にあおってしまったようだ。
だからといってオレがひるむ要因などありはしないけど。





 トリップ先は死神代行世界。
っで、オレはどうしたらいいのだろう。
戦うの?これと?オレが?
なんでできてるかわからない実態がなさそうなこの化け物と?

・・・オレ、死神じゃないんだが。

ただの、海賊の息子です。
 っていうか、オレの刀は斬魄刀ではないので、オレが殺したら、こいつら昇天どころか、消滅するぜ?
攻撃していいんですか?

返答がない。当然だな。
なら、

遠慮なく――



『“滅”します。ご覚悟を』











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そういえば《夜宴》はなんと言っていたんだったか?
あれ?オレ、この世界からどうやったら、父さんたちのいる海賊世界にかえれるんだっけ?
《夜宴》との出来事が強烈過ぎて覚えてない。
心にゆとりがあるから気が楽とはいえ――
帰り方わからないのは参ったなぁ
まぁ、いっか
なんとなかなる・・・ハズ








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