有 り 得 な い 偶 然
第2章 モ ノ ノ 怪



09.大丈夫の言葉の先にはきっと





それは突然の出来事だった。







::: side 夢主2 :::







「なにすんですか師匠ー!!!」



目の前にとても大きな生き物がいます。
あれは、「狡(コウ)」と呼ばれる生き物で、本来なら日本にいるはずのない物だった。
体長は5メートルはあろうか。
本来なら中国の玉山に住む神獣で、犬に似ており、豹のような模様と、牛のような角を持っている。
泣き声は犬のようで、これが現れると大豊作になると言われている。
しかしこの妖怪はたまたま人の念にひかれ、憑いていた人間が日本へとわたってきて、この日本で暮らす間に、「人を蹴落としてでも自分だけには富を」そう願った人間の浅はかな思念に飲み込まれ、あげく悪いもの――妖(あやかし)――となってしまっていたらしい。
たまたまあてのないこのたびの中で寄り道した場所でそれと出会い、薬売りさんが浄化しようといいだした。
否、「弟子なら浄化してきてください」とのたまった。

わたしは薬売りさんとがって、スーパーさんにはなれない。
よって、教わった祓い札を大量に使井しか方法はない。

薬売りさんの攻撃で弱ったところを、わたしが札をひろげてとらえる。
異形の姿の獣を取り囲むように宙にうかぶなか、札と札が祝詞に呼応して輝き、赤い光を放ちそれらは結ばれ陣を描き出す。
異形の獣に赤い呪がからみつき、邪念が少し払われたことで、獣の大きさも3メートルほどに落ち着く。

そこまではよかった。

しかし窮鼠猫をかむの言葉通り、怪が最後の最後とばかりにあばれだしたのだ。
その動作で、空間が一部避けた。
獣がここから逃げようとその亀裂へと這いずっていく。

「いけません!」

獣の前に広がる緑のきれつ。
それにいち早く気付いた薬売りさんが、封印を施そうとしたが、それより先に獣は空間の亀裂へと身を滑り込ませ―――

「追いなさい
「わたしがですか!?」
「あの獣をおってください
むこうで怪がなにをするかわかったものじゃありませんからね。貴女は責任を取ってあれをきちんと処理してきてください。
きっと貴女なら、この先に私がいなくとも大丈夫です。
さぁ、いってきなさい
呼ばれても無理ですって!」
「いいから、いけ!」


ドン!


「あ〜れぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」



そのまま亀裂に落とされた。
とっさに上を見上げれば、亀裂が閉まる前に笑顔で手を振る薬売りさんがいらっしゃった。



―――きっと、この先には貴女が望む道があるはずです。



「え?いま、なんて」


・・・・・・きを・・つけ・・・ぇ・・・


「ちょ、まってください師匠!!ってか、いやぁ〜おちるぅ!!!!」

そばにいた獣にしがみついたわたしはおかしくない!!
だけどふいにクイっと誰かにひっぱられたような感覚がした。
離すもんかと、とりあえず術にがんじがらめになって呻く怪にしがみつきながら、わたしたちはその引っ張られるような感覚に身をまかすしかできなかった。








* * * * * * * * * *








。短い間でしたが、楽しいときをありがとうございます」

「え?彼女が心配じゃないのかですって?そりゃぁ心配ですよ」
「ですが貴女なら大丈夫でしょうよ」
「なぜって。ふふ。だって――」



――彼女はわたしの弟子ですからね。











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ただいま謎の緑の本流の中に流されてるわたしです!
おちてます!
まさに落下中です!
次元の穴が竪穴なんて聞いてないぞ!!!

『日本でテロなんてな』

時空の本流に身を任せながら、意識が途切れる間際、懐かしい声を思い出した。
それは先輩の最後の言葉。
ええ、そのとおりです先輩!
いままさに――

「有り得ないわっ!!!!」

そんな状況でした。
そうしてわたしは、ぎゃおんと声を上げる怪と一緒に、渦巻く緑の本流に飲まれていったのです。

つか、だれか助けろい!!
ヘルプミーーーーー!!!








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