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- 元死神「夢主3」の異世界旅行記 -
【幽霊週間】七日目. 遭遇


「おまえ…」
『アハハ。はじめまして。それでは』
「え、あ、ちょっと待て!!」

いざ、自分探しの旅へ二日目!と思ったとたん。
なんかビックリした顔の黒い和服姿のおっさんが、オレの道をふさいでいました。
しかも軽くだけど、オレの肩つかんでるし。

こいつやだな。
黒いし。
着物がだけど、全体的に"黒いの"には変わらないから、なんか警戒してしまう。

オレは決めているのだ。
黒いものはぐろい(勝手な思い込み)。
だから近づかないと!!

なのにその"黒いの"に道をふさがれた。
ふさがれたふさがれたぁ〜。
しかも肩をつかまれている。
近づかない予定が、いまでは目の前にいてしかもつかまれてる。

オレ、幽霊なのに、触れるって――やっぱり"黒いの"は危険だったんだ!?

逃げ場は逃げ場はにげばはどこ!?
かんがえて考えて――

チラリと自分の肩に乗っかる手を一瞥し

『いやぁ、へんたぁーい。たすけておまわりさん(棒読み)』

警察を呼ぼう!幽霊の警察はどこですかぁ!?
とりあえず叫んでみた。
しばかれた。


だってさぁ、いまどき着物だし。
しかもめいいっぱい銃刀法違反してるし。

もしかして江戸時代あたりの幽霊か?
長生きだなお前。

まぁ、たぶんこいつ幽霊じゃないな。
なんかもっと別のもんな気がする。
いや〜、もちろん勘だけど。
オレたち一般の幽霊やお面オバケとも違う。そんな異様な物体が目の前にいる気がするから。

なんにせよ。
幽霊のオレが見えるって事は、幽霊か?それともオバケの同類か?
オレの中には"映画の撮影できた役者が霊感強くてオレが見える"という選択肢はない。
だってここ街中だもん。
普通の住宅街だよ。
そんなわけで――

いろいろめんどくさくなった。

見なかったふりをして、爽やかな笑顔で脇を通ってスルーをこころみた。

「わ〜!だから待てっちゅうとるじゃろ!!」
『え〜』
「そんないやそうな顔すんなや!!」

っが、慌てたおっさんにさらに強く腕をつかまれ見事につかまってしまいました。
おやおや。今度は手を離してくれる気はまったくなさそうなほど強くて…

めんどいな。


『ふ〜。やれやれ。こんなことだろうとは思いましたよ』
「なにがだよ!!」
『はて?なにがでしょう?』

つかまってしまってはしょうがない。
怪訝な顔をする相手を無視して、逆にふんぞり返ってみた。
オレは正真正銘の幽霊だよ。
さぁ、言いたいことがあるならとっとと言って開放しておくれ。

そう告げたら、おっさんは更に複雑そうな顔をして、おっさん自身の素性を話してくれた。
だけど腕は放してはくれない。

手を握るなら女の子とランデブーの方がいいのですが…。








『あ?死神?魂と世界の均衡を守るのが職業?』

しかたなく、話を聞いてやった。

なるほど。ではあの"黒いの"の正体はこいつらですね。
ふむ、死神でも日本のだから、黒くて着物なのか。
そういうことにしておこう。
現代21世紀日本の霊界が、19世紀ぐらいの江戸っぽい着物文化。
ならばきっと今の外国の霊界では、ヒラヒラレースの19世紀くらいの貴族が謳歌にしているに違いない。
つまり、かぼちゃパンツに白タイツの王子な死神ってことか。
はずいな。



その後、死神がなにやら念仏のような、魔法の呪文のようなものを唱えると、斬魄刀とやらの柄でおもいっきりなぐられた。
パッと光って。
一瞬世界が白くなって。
プッ!と吐き出された感じ。










目が覚めればそこは――



あれ?おかしいな。
なんでオレ赤ん坊なんだろう?








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"転生するまでは向こうに行って待ってろ" って言われたのに、もう転生しちゃったみたいよ?
いいのこれ?


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