09 P4主人公にして、ユーリな彼女の場合 |
TOVのユーリ(♀)だったり、世界を救おうとしたりして忙しかった。 実際のところ、現実では二週間だけのことだったらしいけど。 長かった。 そうして私は今、再びの現実世界で、マヨナカテレビと向かい合っていた。 そのはずなんだけど。 「あれ?」 空にウネウネと何かが見えるんですが。 たとえていうなら、そう、星喰みのような…。 え?あれ? あれれ? ** side 夢主2 ** 向こうの世界で、フレンの部下であるソデイアさんに"背後"から刺されてサウデから落ちた私は、それがきっかけで元のP4世界に戻ることができた。 私はどうやら二週間も寝込んでいたらしく、病院から退院するのに、さらに数日入院することになった。 その退院日。 外は霧に覆われていて、どうもこの数日この異常な濃霧は続いているらしい。 青い空は見えないのだろうか。 なにげなく空を見上げ―― 目が点になった。 瞬きを繰り返して、目をこすって、もう一度空を凝視してみるも、そこには"それ"がドンといる。 あまり遠く前視えないような濃霧の隙間、ドンヨリと暗い雲がかかる空には、なぜか木の根っこのような液体のようなものでおおわれていた。 それこそまさに、TOV世界で意識を失う寸前にアレクセイがよみがえらせてしまった星喰みそのもののようで…。 なんだこれ? 「…みんな、ちょっといい?」 「どうした?」 「空に…えっと、なにかみえない?」 「空?」 「霧が凄くてみえないっすよ先輩」 「くもりぞら、しかないわよね?」 「クマ!?あれは何くま!空をウネウネが〜!!気持ちわるいくま」 クマが眼鏡をかけるように全員すすめた。 とたん。この濃霧が晴れて、視界がはっきりする。 この霧はやはりマヨナカテレビからの霧か。 っで、そうして眼鏡を装着した仲間たちが空を見上げ…。 「うっげっ」 「なにあれ、気持ち悪い」 「木の根っこ?ゼリー状の?」 「ペルソナ関係っすかね?」 「先輩のペルソナで追い払えないかな?」 「クマー」 「・・・・・・」 えーっと。エアルもマナも精霊もいないのに、どうやってあれをたおすんですか。 え。ペルソナで、ですか?いやいやいやいやいや。どう考えても無理でしょ。 むしろなんであれがこの世界に? あ、もしかして私がトリップすると同時についてきちゃったとか…。 それはさすがにないよねぇ。 ・・・。 でも、目の前に星喰みいるし。 え?もしかしてマジですか? そういうオチで、あっちのテルカ・リュミレースが救われちゃったとか? そんなー。 じゃぁ、こっちの世界はどうやって救えばいいんだ! なんだかんだ悩んでもしょうがなくて。 結果として、星喰みは放置するしかなかった。 それでもこっちの世界のTVと霧にまつわる事件はすすみ、足立さんとも決着をつけたら、霧も晴れてそれと同時に星喰みが消えた。 そのころにはすっかり星喰みの存在を忘れていたわけだけど…。 いいのだろうかそれで。 本当に星喰みはなんでこの世界に現れて、なんで消えたんだろうと、私はのんびり空を見上げながら歩いていて。 上をみすぎて、足元がおろそかになっていたらしく、足元に転がっていたクマにひっかかりそのままうしろむきにこけた。 「いたいくま〜。って先生!?」 ああ、クマよ。 なんでお前はそこに転がっていた!? そして私はゴンと路上と頭をぶつけて、意識が吹っ飛んだ。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 何度目かもうわからなくなってきたが、目が覚めたら、知らない天井だった。 そんでもってとんでもなく、“腹”が痛かった。 痛みに顔をしかめてもう一度目をあけて周囲をよくみれば、そこは知らない部屋ではなく―― 「ワフ」 「や、やぁ、ラピード」 ユーリ・ローウェルの部屋だった。 またかよぉぉぉぉぉ!!! 起きた私にラピードがシッポを振って、駆け寄ってくる。 ラピードをでようとお腹にまかれた包帯に手をあてつつのそりと起き上がれば、少し動いただけで痛い。 やはり夢というのにはあり得ないレベルで、痛みがしっかりある。 もはや、こっちも現実じゃないのか? え?じゃぁ、ペルソナ世界に戻れたと思っていた方が夢? それ凄いショックなんだけど・・・。 でもまじで体中が痛いのは現実な気がする。 ベットから身体を起せば、何が何だかわからないのに、身体はあちこち傷だらけ。だれが手当てしてくれたのか、包帯人間とかしている。 一番痛いのはお腹だけど。 痛みに顔をしかめつつ、頭がうまく働かなくてただただ呆然と、ラピードの頭をなでる。 なにか状況が分かる者はないかと見渡せば、テーブルに一冊の本と書置きがあり、なにげなくそれを手に取ると、原作通りの星喰みに関する本。 そして 『ユーリへ。 サウデ不落宮の上に現れた星喰みを消してくれてありがとうございます! どうやら照れ屋さんなデュークが不落宮からおちた貴女をみつけ、手当てしてくれたようです。よかったですね! はやく元気になってくださいね! そうしたらみんなで ハルルでピクニックをしましょう! PS:ユーリが寝ている間に、ヨーデルが皇帝になりました』 なんだかとんでもない内容のエステルからのメッセージが、可愛らしい絵付きで書かれていた。 星喰みより、その重要事項がとても軽く書かれているそらに呆然としたのは言うまでもない。 この世界、本当にゲームの原作から話がそれまくってるなぁ。と思った。 部屋を見回せば、空いたクローゼットからは、私やフレン、ジュディの手によって集められた女物の衣装の数々が見える。 こちらもあちらも現実だとするならば、どうやら私はP4世界でクマによるあの衝撃で、再び女ローウェルに成り代わってしまったらしい。 日付を確認すれば手紙にあるとおりサウデ不落宮のアレから日付が少し経っていた。 そういえばあのソディアさんに“背後”から刺されたのが最後だった。つまりこの痛みはその怪我の・・・・あれ?おかしな。刺されたのは背中というか腰あたりだったはずなのだが。なんでだ?・・・おかしいな。背中が痛くないぞ。 最期に意識が途切れた時から、この夢は継続してると思ったが、それにしては怪我の位置がおかしい気がする。 あれ?刺された場所は私の勘違いだったろうか。 それとも別の時間軸に飛んで、腹を刺された後に意識を失った? 詳しく怪我を確認しようとして、ふと、違和感に気づいてしまった。 「・・・・・・あれ?」 布団をはいだら、男性らしい体つきが横たわっていました。 あれ? 「え?」 もう一度自分の身体だと思われるベッドの上の自分を見て、衣装ケースからあふれている女物の服をみて見覚えがあるのを確認し・・・・。 「なんじゃこりゃぁ!?」 体が男になっていました。 しかも刺されていた部分が背中からお腹になっている謎。 もうやだぁ!なにこれ!!! というか、もしかしてこれって、私が憑依する前のユーリ!?一度憑依がとけたからもしかして、体が戻ちゃったの!? ええええええええぇぇ!!!!!!ど、どうしよう!? とりあず、服でなんとか声もできるだけ高めにして、あ!のどぼとけ隠さなきゃ!皆に会うときはダボってした服で男らしい部分はできるだけ隠して・・・・ つか、男装はよくしたけど、男に成り代わったことはないよ!!! ペルソナ世界では男装に気付かれなくて、奈々子にはお兄ちゃんって呼ばれてたけど、体は女だ。 転生しようがトリップしようが女だったんだよ!!!!b 男とか・・・・やめて。本当にやめて。 男になっちゃったよ!!! どうしたらいいんだこれ!!!! ワタシノココロニクリティカルヒット・・・・_(:3」∠)_ それからしばらくして、あまりにショックすぎて、散々わめいて、鬱って、もう心が死んでた。 それでも生きるためにはじっとしてるわけにはいかなくて、なんとか心もち動けるようになると、憂鬱な気分で女物をうまく着こなせるように頑張った。 ガンバッテ、ガンバッタヨ・・・男の生活も慣れてきたころ、うまく(?)男らしさを化粧と服でごまかしつつ、ラピードをつれて下町へでた。 目的は現状を把握することだ。 そのためにあの旅の仲間たちに順繰りに会いにいった。 話を聞いてきた。 まず星喰みは、私がサウデから落ちたとき光と共に消滅したらしい。 つまりP4世界の空でウゴウゴしていたのは、本当に星喰みだったというわけだな。 しかし、いまはもう星喰みはないとはいえ、このまま魔導器を使い続けていては、星喰みが再度現れないとは限らない。 そのために帝国とユニオン、始祖の隷長は手を組み、新たなマナを産みだし、エアルをマナに変換するための研究が始まったとか。 私は原作のことを知っているので、精霊やマナのネタを軽くリタにつぶやいて、あとはなげてきた。 現在旅の仲間たちは、それぞれが個々に活躍しているようだ。 カロル、ジュディ、バウルは、いま凛々の明星としてギルドで。 リタは、エアルに変わるエネルギーの研究中。 サウデ不落宮は、レイヴンの特大の技が炸裂し、建物の軸になっていた石を割ってしまっていっきに崩落したらしい。 あー…。うん。なんというか原作であの巨大な聖核が落ちてもある程度の原形をとどめていたサウデが木端微塵になるなんて、よほどレイヴンは女装が嫌だったのだろう。 アレクセイはちゃっかり生きていたらしいが、サウデを破壊するほどのレイヴンの技の余波を喰らって海へ落下。ただいま静養中とのこと。 彼は傷が完治しだい、マナの研究に加わることが決定している。 エステルは副帝に決まったらしいが、基本はハルルで暮らしつ、凛々の明星を手伝っているらしい。 ヨーデルがどうやって皇帝即位の儀式に必要な「宙の戒典(デインノモス)」をてにいれたかというと、ふらっと歩いていたデュークを捕獲して奪い取ったらしい。 そのときにはすでに、始祖の隷長やユニオンとも協定を結んでいたため、デュークもそれを容認して、こうしてあっけなく世界はヨーデルのものとなったようだ。 いっちゃぁ、なんだが、とんでもなく原作から違ってキャラが濃い。 とくにヨーデル殿下。 彼は原作では、ユーリにさえ「天然殿下」と言われていた。 しかしその彼がこの世界においては、一番黒い。そして最強だ。 そう思うと、今頃レイヴンとシュヴァーンは、素敵なヨーデル陛下の笑顔のもとこき使われているに違いない。 フレンは騎士団長になっていた。 そして相変わらず女物の服を買ってくるので、ソディアの視線が悪化しているという恐怖。 私、またさされる!? それだけは勘弁してほしくて、最近は少し大人しくしてみた。 フレンやハンクス爺さんらに、ようやく女の子らしく清楚になってくれて!と歓喜の涙を流されて、思わずひいた。 でも今の私。というか、多分この世界のユーリって本当は男だと思うんだけど!!! え?いいのこれで? そんでもって、時は流れる。 私は一度P4の世界から戻ってきて、気付けばもう半年も私はユーリ・ロウェル(肉体男の女装版)として過ごしていた。 最近エステルやハンクスじいさんらからいただくとある書籍で机が山になっているのを私はうろんげにみて、意識を逸らすように窓から外を眺める。 下町の子供たちの楽しそうな声を聞くと、無所に菜々子に会いたくなってくる。 いつになったら帰れるんだろうと思うようになって、バサバサと山積み鳴った"それ"がテーブルから落ちる。 最近、お見合い写真をやたらおしつけられるんですが。 「はははは。本物のユーリがもどってきたらどうするんだろうね〜」 床にちらばったおとこどもの写真と視線があい、思わず乾いた笑いがこぼれた。 視線は青い空に固定。というか定まらず彷徨っている。 そんな私にラピードが心配そうにクゥーンと鳴いた。 いっそのことまた頭でもぶつければ元の世界に戻れるだろうか。 夢「そうだ。京都に行こう!」 エ「ユーリ大丈夫です?キョートってなんです?」 夢「うん。冗談です。私、今から頭をうってこうようかなぁって思います。そろそろ帰えりたいんで。なのでとめないで」 エ「!?みんな、大変です!ユーリが!ユーリが自殺を!」 カ「はやまっちゃだめだユー…」 ドスッ!バタン カ「・・・・・・(汗)」 エ「よ、ヨーデル?」 ヨ「いやぁ、あぶないところでした!いま、ユーリさんの首に蚊がいたので退治させていただきました。命を奪う危険な蚊だったので、ユーリさんをすくえて…よかった。警護のため、ユーリさんが目を覚ますまで騎士を数人見張りにつけます(絶対逃がさないようにしなくては)。 フレン、いまのうちにユーリさんを部屋に戻してあげてください 」 フ「はっ!」 カ「……え?殴った?ねぇ、リタ。いま、ヨーデル陛下、ユーリを殴ったよね!?」 リ「…がきんちょ。あたしは何も見てないわ。あんたも命が大事なら、蚊には気をつけなさい」 ジユ「ふふ。まだ着せたい服があるのに死ぬなんて、そんなことさせないわよ」 フ「あ、僕もありるんですよ。このあいだユーリに似合いそうだなって買った服が。だからヨーデル陛下は蚊のせいでユーリを傷者にしないために!なんておやさしい」 ヨ「ふふふ。今、世界は不安定なことに変わりはありませんからね(そんなときに英雄の一人である聖騎士たるユーリ・ローウェルを手放すのはおしい)。彼女には民の代表としてわたしも必要としているんです。大事がなくてなによりです」 ジュ「まぁ、すてきね」 ヨ「あなたとは気が合いそうで何よりです」 ジュ「ふふ。わたしもよ」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 夢主「ハッ!?ここは…」 クマ「先生ー!クマがわるかったくまー!!」 夢主「クマ?道端?」 クマ「うわーーん!!ごめんくま。くまが、くまがこんなところで蟻さんと仲良くしてたばっかりに先生がぁ」 夢主「あーうん、もうだいたい事情は理解できたよ。ところで、どれくらいここで寝てた?」 クマ「10分くらいだくま。もう大丈夫クマ?」 夢主「あー…。菜々子にあいたい」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ フ「ユーリ、きみはまたなんてはしたない恰好を!」 エ「ユーリ、今日はこの方の写真を見てください!騎士団の方なんですけど誠実で」 ジュ「あらユーリ、髪が傷んでるわよ。せっかくだから今日の化粧は私にまかしてくれないかしら。青いワンピースなんてどう?」 カ「ユーリ!うさぎギルドからまたバニーガールをやってって依頼がきてるよ」 リ「あの女騎士に刺さらないように、服の下に鉄板仕込んでおくことを進めるわ」 ラ「ワォン!」 ユーリ「オレは男だー!!!!」 |