08 原作ユーリな彼の場合 |
おれの名はユーリ・ローウェル。 この世界の名はテルカ・リュミレース。 ひょんなことから仲間と共に世界を救う旅に発展してしまった。 その旅の途中・・・ だったはずだ。 っが、しかし。これはいったいどういうことだ。 誰か説明してくれっ!! ** side 原作ユーリ ** おれ達はアレクセイと対峙、戦闘した。 そのさなかに、災厄―――星喰みが現れた。 巨大魔核が落ちてエステル達と分断されてしまい…フレンの部下のソディアに刺された。 気づけば自室のベットに寝ていてた。 いつ移動したかも判らないうちに、見なれない一冊の書物。そして、デュークが現れ会話をした。 デュークは「テルカ・リュミレースを守る」と言いたいことだけ言うと、こっちが呼び止めるのも無視してあっさりと部屋を去ってしまう。 もちろんデュークのことは止めようとしたが、急激に襲ってきた睡魔に抗えず眠ってしまった。 次に目を覚ました時は朝になっていた。 そのままベッドの上に寝たまま、明るい青色をみていて、いや、まて。今、おれはなんと? あおい――空? 空に影ひとつないだと? 空に星喰みがみえない。 あれ? そんなばかなと思って、体をおこし―― 「いっ!・・・たくない?」 そして、さらなる異変に気づく。 刺された個所が痛くなかった。 いや、正確には刺された部分は痛い。けれど、自分が想像していた痛みほど強くもなかったのだ。 デュークが運んでくれたようだったので、ついでに怪我を治してくれたのかと思って、かけ布団をもちあげて服をめくってみれば・・・おれが刺されたと記憶している正面脇腹より箇所には、包帯ひとつなかった。怪我はすでにほぼ完治しかけていて、うっすらと新しい皮があるのだけが怪我をしたという証だった。 「嘘だろ」 痛み、というよりは、ちょっとだけ皮膚が引きつったような感覚。 それ以外の痛みがない。 刺された腹以外にも、サウデから落ちて重傷を負っていた気がするが・・・ 服をとっぱらって、体をひねってもまったく動きに支障はない。 無理な体制をとると、腹だけがひきつるように痛む。 傷跡がある。新しい皮がもう存在している。――ということは、エステルたちの治癒術で直した形跡もないということ。 つまり自然治癒の跡ということだ。 どれだけ意識を失っていても治りの早さ…いや、もはやこれは古傷といってもいいレベル。つまり、傷の具合が色んな意味でおかしい。 痛みもなく動けるのはありがたいが、位置が変わっていたことからして不気味だ。 「ん?・・・なんだ、あれ」 そして人間とは不思議なもので、馴染みある風景に異物があれば、すぐに少しの違和感としてそれを感じ、みつけてしまうものだ。 星喰みやら傷の具合が気になって部屋から出ようとした時、クローゼットから桃色の布の切れ端がみえたのに思わず足が止まる。 場所からして服だろう。 ただしおれのものであるとは考えにくい色だが。 服がクローゼットからはみでているなんてのは、まぁ、フレンなら怒りそうだが、日常的にありえる光景だ。 そのはずだが…色がなぁ。 なんだか嫌な予感がしつつ、恐る恐るクローゼットを開け――。 絶句。 何故か。 クローゼットの中は、カラフルな女物の服や下着やアクセサリーで埋まっていた。 はみだしていた桃色の布は、ブラだった。 「嘘だろぉぉぉぉぉ!?」 一通り叫んだあと、もう一度クローゼットを確認する。 おれの好みだった黒い服は一つもない。 むしろ女物オンリーだ。 大抵、男の部屋に女物の服が合った場合は、恋人と同棲というのがあげられる。 だが (おれに彼女はいない。記憶が吹っ飛んでんのか?いや、だけど) パタンとクローゼットを閉め、俯きながら頭の中を整理する。 確認のために、部屋を見回してみるが、日用品や家具は記憶通り自分のものだと確信出来る。 ラピードが普段使っている道具、窓からみえる下町の景色。 なにも変わらない。 異質なのはクローゼットの中身のみ。 女物にはあまり詳しくはないが、エステルとかリタのような仲間たちにくらべて 、明らかにサイズが一回り違う。 クローゼットの中身は、大女を想定せざるを得ないサイズしかない。 ジュディも背があるが、それよりもうちょい上くらいの…女物の靴も通常より大きい気もしなくはない。 (……まさか、おれの…いやナイナイ) 何となくおれが着ればピッタリなサイズでは?と、浮かんだのを全力で否定する。 なんでそんなことを思った自分! 勢いよく頭を振って、状況を理化すべく、一番話せそうな身近な存在を思い浮かべ、おれは部屋を飛び出した。 やはり空に星喰みはない。 下町の人々は相変わらず笑顔が絶えない。 しばらく走っていると、すぐにフレンと出会った。 しかし 無情にもそ先程の考えはドンピシャだったわけで―― 「ユーリ。ちょうどいいところに」 「……。 フレン…あえてきく。 その手に持っているモノはなんだ」 「なにって、君のために用意した服だけど」 「それ“女”モンじゃないかっ」 幼馴染の頭の螺子はぶっ壊れていた。 騎士様は忙殺の余り精神がイッたか?! 「おれは、男だろうが!」 「やだなぁユーリ。また性別隠そうとして。女性なんだから、その前開きの服はいただけないな」 ゾッと寒気がした。 微笑ましくおれを見る目が冗談じゃないと訴える。 目の前のフレンにとっての常識では、おれは女なのだ。 つまり部屋にあった服は、間違いなくおれのものだということ。 だが、おれの身体に異常はなく、間違いなくいまのおれは男の体だ。 どういうことだ? 「最近の君は、ちゃんと清楚に着こなしていたのに…」 一体誰の話だ。清楚などとおれに向かって言うな。 冷汗が止まらない。 一目見たときに君にあげたいから買ったとか、戦闘に支障はないシンプルだけどこのワンポイントがとか―― おれの知るフレンはおれの服装に苦言を呈しても服を買ってまで寄越さなかった! (この世界はおれが過ごした世界じゃない!!おれの世界であるはずがない!) その後、フレンを皮切りに女扱いするメンバー全員と遭遇。 彼らに、旅の経緯、出会いから今に至るまでの詳細を聞いた。 おっさんに至っては開口一番、おれの口調におびえられ、 「おっさん?タメ口?え、敬語じゃないなんておれ何かした??!あやまるから白い服はいやー!」と距離を置かれた。 事情をきいたおれは、人目も憚らず悲鳴を上げた。 ラゴウ達のことに至っては、おれの方の精神が強力なダメージをうけ打ちのめされた。 殺さない方法で奴らを排除出来たにせよ、おれなら絶対にそんな非道思い至らないし、ましてや絶対にその道だけは選ばない。 「みてくださいユーリ!ユーリに似合いそうなサマードレスを持ってきました。あと髪飾りも!」 「ユーリっ。またそんな男物を着て!粗雑に動き回って!君だって年頃なんだから駄目じゃないか」 「おれは男だって言ってんだろうがぁぁァ!!!」 こんな問答が当たり前になるほど女扱いされたまま、 おれはこの星喰みの事件もデュークが世界救う発言もなかった――なにもない平穏な世界で、 エアルや魔導器がなくなったマナのあふれる世界を生きることとなった。 絵本や物語なら、ここで新たな世界が訪れたチャンチャン♪と締め括る場だろう。 が、当然絵本とは違って日常という続きがエンド後にもあるわけで。 「大変です!ユーリの、ユーリの胸が縮んだです?!」 「なんだって!」 「あら。本当にまったいら。以前もあまりなかったけど、これじゃぁ男そのものね」 「あんたたち、タイラってところでこっちみるな!いい加減にしてよね!」 「リタのタイらな…はなしはともかく。でもユーリ、なんだか本当に男っぽくみえるよ?」 「ちょっとカロル。あんた今なんて言おうとした?」 「べつに?」 エステル、フレン、ジュディ、リタ、カロルの順におれの胸を凝視してくる。 レイヴンは不在だ。 ラピードはここで目覚めていこう、おれを一瞥してフンと鼻をならして、あまりかまってくれなくなった。 おもしろそうなものをみるようなジュディの表情から、彼女はおれが別人のユーリで、本物の男だとわかっている気がする。 でもそれを口にしないところからみるに、こちらの世界のジュディもそうとういい性格をしているようだ。 っにしても。 「ど、どうしたらいいんでしょうエステリーゼ様!?あれでもユーリ胸がないの気してたんですよ」 「どうしましょう?そうだ!なにかで読んだたことがあります!女性の胸はもむと大きくなるらしいですよ!」 「それだ!さぁ、ユーリ!」 「・・・・・・おい」 エステルとフレン。このこの天然主従コンビを前に、おれは自分が別の世界のユーリで、本当に男であると諭すはめとなった。 いつまでこのわけ判らんポジションをこなすことになるのやら。 いい加減、おれが別人だと聞いてほしい。 おれの胸じゃなくて、話を聞けよ。 そもそもさ―― 「胸晒している時点で気付けよ」 【 オ マ ケ 】 ユ「おっさんがシュヴァーンで敵で、アレクセイが裏切って、エステルが攫われて操られて、 生きてたおっさんと合流してエステル救って、アレクセイに挑んで、 アレクセイが星喰みをおこして世界の危機になって、巨大な聖核に踏みつぶされて死んで。 オレはフレンの部下のねぇちゃんに腹を刺されて、デュークにすくわれて…」 フ「?なにを言ってるんだいユーリ。 シュヴァーン隊長はずっとユーリたちといたじゃないか。 それにエステリーゼ様はアレクセイのもとから自力で脱出して、そのままユーリたちと一緒にシュヴァーン隊長の服について語っていただろう。 まぁ、あのあと、シュヴァーン隊長が怒ってサウデ不落宮を破壊してしまったからびっくりしたけど。 隊長の攻撃からユーリもアレクセイ団長も逃げ損ねて、サウデの崩落と共に行方不明になるとは思わなかったけどね。 でもあのあとみんな無事だとわかってよかったよ。 ユーリ、あのときはゾディアがすまなかった。君を“背後”から刺したときかされたときは。 それにしても、どうしてそんな昔の話を持ち出してどうしたんだいユーリ?もう半年以上前のことじゃないか」 ユ「はぁ?半年!?ってか、星喰みは!?」 カ「そもそもアレクセイ生きてじゃん」 ユ「は!?」 カ「ヨーデル陛下にこきつかわれてるよ。みていてあれはは酷い・・・・・あれ?ユーリも知ってるよねそれ。どうしたのユーリ、大丈夫?」 リ「ハン!星喰み?そんなものサウデが壊れた時に、光があふれて消えたじゃないの。あれやったのユーリじゃないの。なに言ってんのよあんた」 エ「ユーリ…。死んだなんて。そんなにアレクセイが嫌いだったんですね」 ジュ「そうねぇ、あのひと服の趣味わるかったもの。シュヴァーンにあんなタイツきせるぐらいだものね。ユーリはたしかナース服が好みだったものね」 レ「………ジュディスちゃん。嬢ちゃんたち。サウデのときみたいにもう一度、バウルなしで空のかなたに飛んでくかい? 俺様、マナと精霊のお蔭で今なら以前より元気よぉ〜」 カ「でもレイヴン!そんなこと言ったらまたじょ」 ジュ「あら。おじさま、またウェディングドレス着たいのね」 レ「Σ@Д@;」 カ「あーあ。だからやめておけばいいのに」 ジュ「どうするのおじさま?」 レ「…ぐっ。やるならアレクセイを生贄にささげるわ」 ユ「なんでおっさんとウェディング?いやいや、むしろまじでここはどこだ?おれの世界じゃねー!!」 リ「うっさいわねぇ。あんた、そんなにナース服が良かったの?」 エ「なら今度からアレクセイに女性騎士の服の改善を求めるとして、ウェディングドレスはユーリがフレンのためにきてくださいね!シュヴァーンには白い騎士服を着てもらいます!」 フ「え。ユーリがぼくのために着てくれるのかい。ようやく女の子らしくなってくれて…ぼくはうれしいよ!ユーリ!」 レ「シュヴァーンに白。ああ、これであいつは身体も真っ白な白鳥に・・・。俺様死にそう」 ジュ「ふふ。ならソディアさんをなんとかしなくてはね」 リ「さすがにあんな嫉妬のされ方はもうかんべんよ」 カ「ん?ソディアさんがどうかしたの?」 リ「なんでもないわ。あんたはしらなくていいことよ」 エ「教えてあげなくていいんです?あのときのこと。アレクセイはともかくユーリが落ちた原因って…」 リ「いいのよ。めんどくさい」 ユ「おれは…」 エ「ユーリ?どうしたんです?」 リ「やっぱり頭でも打ったのあんた」 ジュ「あら。どうせユーリのことだもの。きっと可愛らしかったおじさまの女装姿を思い出してるのよ」 ユ「ナース服より猫耳メイドが好みだー!!」 |