有り得ない偶然 Side2
++ P4⇔TOV ++




02 一人二役を継続中のある男の場合



あれはまさに突発的に起きた悲劇以外の何物でもなかった。



夢「何故、レイヴンは俺のこと青年って呼ぶんですか?」
レ「そりゃ青年が男だからでしょ。」
夢「俺、女ですよ」
レ「へぇ青年は女の子だったのぉ……って、はぁっ!?」
夢「ほら」

思わず青年のほうを二度見すると、青年は胸当て外す。
確かに膨らみ…膨らみがある。

青年が男でなく女だと知った日。





** side レイヴン **





朝、広場は騒然とした。
どうやらものとりがあり、そいつが御用になったというのだが…。


フリルのドレス(愛らしいピンク色)を着たラゴウの姿。
丁寧に足を剃って白い靴下とリボン付のハイヒール(これまたピンク)を着用しつ気絶していた。
ご丁寧に髪もセットしてある。

その側で震えて涙をこぼす“ドレス姿の二人の女性”の姿。

夢「あの人が私の荷物を無理矢理奪ったんですっっ」
ジュ「まさか彼女の服が目当てなんて」
夢「あの人が…怖く、て私…っ」

そう叫ぶは本来の女の姿でラゴウと似た〈ドレスを着たユーリ・ローウェル〉だ。
彼女たちの言葉にくわえ、ラゴウが着ている服が、彼女たちが来ている服と似ていることでより真実味を増す。
また同じくドレスを着たジュディスちゃんが心配そうに青年に寄り添ってることで、こうなってしまえばどこからどうみてもはかなげな美女二人。
もう街の中は青年…ユーリ嬢ちゃん達の味方と化した。

(本気だわ、この子っ)

普段は頑なに女物を着ようとしない、一人称を俺で突き通していた青年もといユーリ嬢ちゃんがあの演技。
完璧男性にしか見えないユーリもやはり女性だと実感する。
てか、声高いのが出るのね。

目を覚ましたラゴウは自分の無罪を喚くが、現状あの服で家まで帰らなくてはならない事実。
その間、周囲にその姿を晒さなくてはいけない。
哀れな。

いっそならとラゴウは裸を選択したらしい…俺は驚愕した。
そして皆も一斉に悲鳴を上げた。

なんとドレスの下にはブラとコルセットが!。

(惨い…惨すぎる)

カタカタと遠巻きで固まる俺を見つけたユーリ嬢ちゃんは不思議そうな感じで

夢「レイヴン、なに怯えているんですか?」

きょとっ
そんな音が似合う表情で返す嬢ちゃん…その雰囲気に戦慄した。

(まさか天然でアレやったのっ!?)

レ「なんで、“アレ”にしたのよ!?」
夢「え゛…殺すより良いと思うんですけど。死んだらそれまでだし」
レ「……す、すごい徹底的ね」
夢「当然でしょう。やるならこだわります。コルセットもしっかり絞めたから僅かですが括れあるんですよ」
レ「………」

暗殺も思案に入れていたらしい。
が、自分にはそこまでの決断は出来ない…かといって野放しは嫌だから、しょげた顔をしていたけども コルセット…って、あのドレスの下に着ける拷問どう―――いやいや男性にしたら内臓出るぐらいの難度じゃないのか。

レ「アレは精神的に死ねるわね」

拷問だ。いや、普通の拷問の方がどれだけましか。
男としての尊厳をすべて踏みにじられる。
俺ならむしろ、殺してくれと、死んだ方がましだと思うことだろう。





後日、ラゴウは死ぬよりも恥ずかしい新聞が一面を飾ることになる。

またこの惨劇はキュモールにも発揮されるとはその時の俺は思いもしなかった。








【 オ マ ケ 】

レ「ところでジュディスちゃんは、いつから青年が青年じゃなくて嬢ちゃんだって判ってたの?」
ジュ「アラ、最初からよ。やっぱり私とおじさま以外は知らなかったのね」
レ「女の子ばかりのパーティーなのに…。なんで役得って思えないんだろう俺様」

青年の衝撃事実にエステル嬢ちゃんは自然に受け入れ、少年とリタっちは固まっていた。








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