02:みんなと一緒に ギルドを作ろう |
<軽い設定> ◆黒筆 (くろふで ) ・[有得] 転生主 ・通称《夢主1》 ・ハネ毛の強い赤毛、緑の目 ・.hackの元となった「The world」の製作者の一人 ・ハロルドに魂の公式を教えた張本人 ・ハロルドの友人 ・だれかの父親 ・現在、電子精霊(アウラに近い自立型AI) ・元は人間であったが、「The world」のために肉体を捨て電子となってゲーム世界で生きていた ◆アウラ ・「The world」のアタラシキ女神 ・「The world」そのものともいえる究極AI ・成長するために、プレイヤーによりそうようにしてその感情や気持ちを学んでいった ・映画編の2024年で、カイト(有城そら)の恋愛感情を学び新たな成長をとげた ・映画編後ゆっくり復旧していく「The world」を茶を飲みながら見物していたが、何を思ったか夢主たちを異世界のゲームに笑顔で送り込んだ元凶 ◆九竜 トキオ(くりゅう ときお) ・hack//Linkの主人公 ・2006年生まれの少年 ・「The world」に肉体ごと入り込める ・映画編の2024年で、カイト(有城そら)を監視したり助けたりしていた ◆三崎 亮(みさき りょう) ・.hack//SIGNの楚良 ・.hack//G.U.の主人公 ハセヲ ・2000年生まれの男性 ・「The world」の最初の女神モルガナのせいで、精神がスケィスとリンクしている ・「俺はここにいる」の名台詞通り世界を見守ることを誓ったため、アウラに巻き込まれた ・夢主のせいですっかり巻き込まれたげく、SIGN時代の仲間に病弱認定されたり勘違いされて困っている ・現実世界では天才のひとり ---------------------------------- 「ねぇ、君たち。ちょっと話があるんだけどいいかい?」 世界を大きく動かすこととなる“一人目”の男は、怪しく眼鏡を光らせながら――オレたちに手を伸ばしてきた。 けれど なぜだろう。 腹黒眼鏡と呼ばれているくせに。 強気で町を旅立って。 しっかりやることやって戻ってきたくに。 後の偉大なるログホライズンの主は、オレたちに声をかけてきたとき その瞳が どこか、不安そうに揺れていた。 それを知っているのは・・・ オレたちだけ ==================== side [有得] 夢主1 ==================== アウラの爽やかな笑顔で、見知らぬ場所におとされたオレたちは、状況を知るために、 三人で町のなかをぶらついていた。 ト「なんだかハセヲの時代の《The world》の陰険な雰囲気をほうふつとさせるよなぁ。ここ」 夢『トキオ。あんまりハセヲの古傷えぐってやるなよ』 ト「あ。そういえばPKK死の恐怖だっけ」 ハ「うっせ」 トキオがいつものように頭上で手を組みながらキョロキョロと周囲を見ては、 ばつがわるそうにしかっめつらをしている。 ハセヲなんか、眉間にしわを寄せて、口をへの字にして、イライラしている。 ト「それにしてもこの町の人ってみんなうつむいてるね。なんていうか・・・」 ハ「辛気臭せぇ」 夢『まぁ、まぁ。ほら、現実世界に帰れないって恐怖に押しつぶされちゃって、 みんな周囲がまだ目に入ってないんだよ。 《The world》でもあっただろ』 たしかにトキオのいうとおり、ここのやつらはうつむいているひとたちばかり。 はじめは「死」に対しておびえていて、だからゲームの世界がリアルになったからと喜ぶこともなく、 〈冒険者〉という職業でありながら彼らは冒険にいくこともない。 それからしばらく様子を見ていると、街中でなにか事件があったらしい。 それによってはじめて〈冒険者〉が死んで、大神殿にもどったことから、 死んでも生き返るとわかった〈冒険者〉たちは、それでようやく町の外にも出ていくようになった。 それでも彼らに笑顔はない。 アウラがオレたちをとばしたのだから、ここは冒険の世界のはずなのに。 なんで彼らはうつむいたまま、つまらなそうに、今をなげいているだけなんだろう。 自分で動こうとしないのだろう。 夢『人間なんて、わからない生き物だな。まだアウラのバカ娘の方が行動力はあった』 ハ「・・・。ついに人間でいることを放棄したか」 別にオレが人間放棄しているなんてのは、ハロルドのように肉体を捨て、 数年前にオレも電子化して電脳世界に居座ってるときからだ。いまさらだろう。 ト「さんは俺の父ちゃん並みに年上なのにピチピチしちゃってる時点で、もう人外だって(笑)」 夢『肉体年齢は20はいっていたんだが、電子に還元されてからは縮んだんだ』 ハ「それって、結局電子化に失敗して部分的に身体データが消滅したんじゃ・・・」 夢『年齢が最盛期にまで若返ったと言ってくれないか?』 人間であろうとなかろうと、感情があるなら、それは生き物だ。 でも人間でないオレでも思うことがある。 オレなら・・・こんな世界いやだと思う。 この世界がゲームであったときは、こんな冒険を本当にしてみたいとひとは望んだはずだ。 だが、それがリアルとなると、怖気づいて先導者をまつだけ。誰かが動くまで待つなんておもしろくない。 それがおこるまでは怖くて動けない。 オレはそんなゲームもそんな不安しかない世界も嫌いだ。 これでも《The world》を作ったゲームプログラマーだ。 ゲームをゲームとして楽しめないなら、オレはもう一度自分が作った世界を破壊して作り直そう。 この世界の創造主がオレなら、冒険者(プレイヤー)たちに旅を楽しんでもらいたい。 ただの拠点である街をぶらつくにしろ、そのグラフィックを見て、 本当にその世界に入り込んだようだとさっかくさせるほどの感覚を味わせたい。 プレイヤーたちが喜んでくれたらそれだけでうれしいんだ。 否、むしろそのためにオレたちは、ゲームの設定や、背景画像にまでこだわるのだ。 けれど。 この世界はゲームがリアルになった途端、みな希望をなくしたように、うつむいてしまった。 なにを争っているのか、ギルド間ではピリピリした雰囲気が絶えないし。 下を向いていたり絶望とあきらめに支配されることはあってもこの街で夢をつかもうと空を見上げる奴はいない。 前を向いていた。その目が陰に覆われていなかったのは、 たまたまこの街でみた真選組みたいな羽織をきた青年侍たちぐらいだろうか。 いまだまっすぐ前を向いていたのは・・・彼だけだ。 夢『はぁー』 思わず頭痛を感じて眉間のしわをもみほぐすように手で押さえながらため息をつく。 この街の空気は重い。 ――プレイヤーたちの記憶によると、ここは〈エルダー・テイル〉とよばれるゲームだったらしい。 世界の名前は〈セルデシア〉。 現実の地球の地形情報を1/2にしたサイズで再現された世界。 この樹海にのまれたような街を基盤に作られたこの都市は、ヤマトにあるアキバ。 地球に置き換えるなら、日本だ。 ここでは、NPCは〈大地人〉とよばれるが、現在彼らはここに意思を持って動いているため、 同じ言葉だけを繰り返すことはない。 プレイヤーのことは〈冒険者〉とよばれていて、彼らは死ぬと神殿で復活する。 以前まではLv90までしかなれなかったが、バージョンアップによりlv100まであげられるようになる。 新システムの導入と同時に、各プレイヤーが最後によった街まで強制転移される。 いま、わかるのは、ここが日本サーバーの領域内だけ。 外国にあたる部分への接触ははじかれたので詳細はわからない。 ご飯は激マズ。味がない。ダンボールのような触感。フルーツ類は大丈夫。 切ったり焼こうとすると、ぼふん!と爆発して、でろんとなる。 (ただし、なぜかオレが料理をしても何も起きなかったし、味も匂いもあった。謎だ) 五感があり、ゲーム仕様のアバターがそのまま肉体になっている。 種族は8種。 ヒューマン エルフ ドワーフ 猫人族 狼牙族 狐尾族 法儀族 職業はおおまかにわけて4種。 戦士系、武器攻撃系、魔法攻撃系、回復系。 そこからさらに12種類にわかれている。 さらにサブ職業と呼ばれるものがつく。 ちなみにオレは、「法儀族」である。 「法儀族」とは刺青があるのが特徴なので、たぶんオレの顔やら腕やらに存在する刺青があったことで、 この世界に来た時に自動的に設定されたのだと思う。 【ハセヲ】 種族:ハーフアルヴ 職業:盗剣士(スワッシュバックラー) サブ職業:追跡者 【九竜トキオ】 種族:ヒューマン 守護戦士(ガーディアン) 【】 種族:法儀族 職業:付与術師(エンチャンター) サブ職業:料理人 種族や職業を調べて、なるほどと思うような設定に、オレたちは勝手に登録されていた。 これぞ世界の修正力だろう。 ――以上。 これらの情報は、たおれていたプレイヤーからオレが“世界”に アクセスしたことで得れた情報と、メニューパネルからの情報である。 メニューパネルや〈念話〉などの使い方は、そのときにマニュアルのようなものをたまたま見つけられたのでひっぱりだし、 トキオとハセオに教えたので、いまではふたりともこの世界の〈冒険者〉といっても違和感は何一つない。 強制的に転移させられ、画面越しだった世界が突如リアルとなったため、プレイヤーはとまどっている。 新システム導入と同時に新しくゲームをやりはじめたものもおおくいるため、初心者やレベルが低い者も多い。 世界の事情がよくわからないので、とりあえず町の中を見渡しアイダの暴走のときとか。 ハセヲはともかく、そのときログアウトできなくなってみんなパニックになってさ・・・ 夢『いやまてよ。サーバーがとまったあのときって。ハセヲ、青カイト追いかけてたときだよな。そんでデータドレインをだれが使って・・・その攻撃を浴びたハセヲはLV1まで下がったんだよなぁ』 ハ「サバー落ちは俺のせいじゃねぇよ」 ト「ふーん。そんなことがあったんだ」 夢『あー…なんちゅうか、もう面倒だから、カイトが解決するまでのあれは〈モルガナ事件〉。 って呼ぶことにするよ。 ハセヲ関連のは〈アイダ事件〉でいいや。 っで、そのアイダ事件のときログアウトできなくなってさ。1時間ぐらいゲームにとりこまれちゃってねぇ。 実際、現実では10分しかたってなかったわけだけど。 みんなパニックになってたよ、さすがにあのときは。 ハセヲやオレと違って、“とりこまれる”ってことに普通は耐性ないからね。 ついでにこないだのウイルス事件は、 〈マッチポンプ自滅しやがったざまぁ!茶などしてネェで女神早く何とかしろよ事件 ――略して“ソラちゃん恋愛事件”〉と命名する』 ハ「うぜぇ!!」 ト「いや、最後の長いよ!?すっげー恨みこもってるのがわかるなその名前だと」 夢『はんっ!世界のお空から暗黒物質がふってきたりしないだけこっちのやつらは幸せだと思うけど。 オレもアウラもあのときデータごと消されかけたからな!! もう勘弁してくれって感じ。AIにも痛みがあるってわかってほしいよ! なにが最先端ワクチンだよ! カイトなソラちゃんがいなかったらオレの作ったゲーム消滅して、 あわよくばネットクライシスに発展したからなあれ!!』 オレらが作った《The world》とネットのリンクの凄まじさ。思い知れ。 とはいうものの、本当におもいしらされると、 ネット中心の世界になった現代社会は一瞬で崩壊するだろう。 本当に事件解決してよかったよなぁ。 っでだ。 それらを踏まえたうえで、オレたちは今、新しくギルドを建てようってことになった。 アウラのせいとはいえ、せっかく剣と魔法のファンタジー世界にいるのだ。 ここで遊ばなくてどうする? っと、そこまではいい。 それで、まずはギルドを作ろうという話になった。 すでにあるギルドに加入しないのは、オレたちがこの世界を詳しく知らないイレギュラーだからだ。 初心者にしてはきっと戦い方に慣れている。 けれど知識がない。 そんなアンバランスな矛盾点を突かれては困るためだ。 しかし、そこで問題が発生した。 ギルド名だ。 ギルドを建てるにもコレが決まらないとどうしようもない。 夢『ギルドをつくるなら、〈カナード〉だろ?』 オレがひらめいたそれを言えば、ニカッとした笑顔でトキオが別の意見を言ってくる。 ト「おれなら〈黄昏の騎士団〉がいっかな〜♪ だって、オレもカイトと同じ〈ドットハッカーズ〉の一員はずなのに、 〈黄昏の騎士団〉には所属してないことになってるしさぁ。 ギルドつくるなら〈黄昏の騎士団〉がいいな〜。今度こそ騎士団に入りたい!」 ハ「・・・〈黄昏の旅団〉」 続いてハセヲがスィと視線をそらしながらもはにかみながら言った。 ハセヲめ、いつまでオーヴァンたちとの楽しい思い出にひたっているんだ。 そんなこんなで譲らないオレたちの意見は、見事に割れた。 夢『カナード』 ト「騎士団!」 ハ「旅団だ」 ギルマス経験者二人が反論する。 でもな。オレたちはこの世界では初心者で。 だから―― 夢『優しいギルドはカナードってきまってんだよ!!』 ト「さんはただのネーミングセンスなしだ!しかもパクリだし!! 却下!やっぱここはかっこよく騎士団で!」 ハ「“初めからないものとしてではなく、あると仮定して楽しむ” ――そう言ったのはだろうが!!!ならやっぱり旅団だろうが!」 夢『そのネタでくるか。嫌な子だな。ならこっちも! そもそも旅団とはいうが、 ネタバラシをすると《The world》における“キー・オブ・ザ・トワイライト”は存在』 ハ「ぎゃー!!!そこでネタバレやめろ!!オーヴァンの夢を崩すな!」 ト「そこで自分の夢じゃなくてオーヴァンの名前が出るじてんで・・・ハセヲぉ〜」 ハ「なっ!なんだよトキオその目は!! おまえなんか、高校生になっても勇者になるってほざいてたくせに!!」 ト「やめろ!!!黒歴史暴露反対!!」 夢『勇者ねぇ。そういえば双子の兄の方がさ。 勇者になりたがってたよな。 シューゴだっけ? シューゴとレナはなんか可愛げがあった。 だがトキオ。お前はだめだ。 チュウニビョーとやらにみえる』 ト「なんでおれだけ!!!!」 ハ「ざまぁ」 夢『そう笑っていられるのも今のうちだハセヲ。お前にはられた天才病弱児というレッテルはいまだはがれていない!』 ハ「病弱じゃネェし!!いやだー!やめろ!スバルたちに連絡網は回さないでくれぇ!!」 ト「れ、連絡網がトラウマに!?」 夢『ほい。撃沈完了。っと、いうわけでこの言い争いオレが勝ったので、 ギルド名は“カナード”に決定な』 ト「あ!ヒキョウ!!そ、そういうさんこそ!!」 夢『なんだよ』 ト「《The world》やゲームに入れ込みすぎて離婚されたあげく、奥さんに親権とられたんだろ!! ざまぁないね! そんなさんにギルド名までまかせられるわけないだろ! だからキルド名は騎士だn――」 夢『ほぉう。オレと同じ髪色と目の色で、あげくオレの子供と同じ年のトキオくんや。 ならいっそお前にオレを“お父様”と呼ぶ権利を与えてやろうか?ほらほら呼んでみろよ。 お前より長くいきてんだよオレは。年上は敬えと教わらなかったのか?』 ト「ぎゃー!!!なんでそうなる!?うやまうときの呼び方がちがうから!!」 ハ「・・・・・・いや、その姿では迫力ないからな。せいぜい兄弟か」 それからオレたちの論争は続き、頬をひっぱったりくすぐったり、 しまいには黒歴史のばらしあいに発展し、 互いにたがいを牽制しては顔を真っ赤にして悲鳴を上げるということを繰り広げた。 結論としては、自分たちの中に譲れない信念が ・・・とかどうでもよく、意地になっていて、さらなる平行線をたどったのだった。 ニャ「シロエっち。なにをみているのですにゃ?ずいぶん楽しそうですにゃ」 シロ「ニャン太班長。あの三人組ですよ」 ニャ「ああ。なるほど」 シロ「ここまではっきり声が聞こえるわけじゃないんですけどね。 どうやら彼ら、僕たち同様にギルドをつくるみたいなんだ」 ニャ「それはそれは。シロエっちと同じ考えってことですかにゃ。あのこたちにとって、この世界はただ嫌なだけの場所ではないのにゃ〜」 シロ「笑ってるんです・・・彼ら」 シロ「こんな・・・こんな状態なのになんで彼らは笑えるんでしょうね」 ニャ「にゃぁ〜。あのこたちなら、シロエっちのこれからやろうとすることに、手を貸してくれるんじゃないですかにゃ? いや、きっとですにゃ。 なんなら今から声でもかけに、いきますか? ――明日には動くんでしょうシロエっち」 シロ「・・・いいんでしょうか」 ニャ「にゃ?」 シロ「ただこの世界を楽しみたいと思っている彼らを巻き込んで」 ニャ「にゃぁ〜。それは難しい質問だにゃ。 でもシロエっちはそんなあのこ達同様に、この世界を楽しみたい。だから“変えたい”。 違うかにゃ? もしこの世界丸ごと、いやアキバの町だけとはいえ、シロエっちが変えるつもりなのなら、それはこの町の全員の気持ちを変えるということにゃ。 なら、もうあの子たちはシロエっちに巻き込まれたも同然。こうなっては、今でも後でもあの子たちに声をかけるのはもう決まっていたようなもの」 ニャ「にゃ〜ん。ならば次はどうするか。 答えは出ているはずですにゃぁ?」 シロ「僕は・・・」 ニャ「シロエっちはシロエっちのやりたいようにやればいいのにゃ。 結果なんてものは、どうせ後からくるもの」 ニャ「さぁ、どうするかにゃ?」 |