有り得ない偶然Side1
〜 .hack→ログ・ホライズン 〜



01:みんなと一緒に 強制転移

<軽い設定>

◆黒筆 (くろふで
・[有得] 転生主
・通称《夢主1》
・ハネ毛の強い赤毛、緑の目
・.hackの元となった「The world」の製作者の一人
・ハロルドに魂の公式を教えた張本人
・ハロルドの友人
・だれかの父親
・現在、電子精霊(アウラに近い自立型AI)
・元は人間であったが、「The world」のために肉体を捨て電子となってゲーム世界で生きていた


◆アウラ
・「The world」のアタラシキ女神
・「The world」そのものともいえる究極AI
・成長するために、プレイヤーによりそうようにしてその感情や気持ちを学んでいった
・映画編の2024年ので、カイト(有城そら)の恋愛感情を学び新たな成長をとげた
・映画編後ゆっくり復旧していく「The world」を茶を飲みながら見物していた


◆九竜 トキオ(くりゅう ときお)
・hack//Linkの主人公
・2006年生まれの少年
・「The world」に肉体ごと入り込める
・映画編で、カイト(有城そら)を監視したり助けたりしていた


◆三崎 亮(みさき りょう)
・.hack//SIGNの楚良
・.hack//G.U.の主人公 ハセヲ
・2000年生まれの男性
・「The world」の最初の女神モルガナのせいで、精神がスケィスとリンクしている
・「俺はここにいる」の名台詞通り世界を見守ることを誓ったため、アウラに巻き込まれた
・夢主のせいですっかり巻き込まれたげく、SIGN時代の仲間に病弱認定されたり勘違いされて困っている
・現実世界では天才のひとり

     









夢『アウラー!!!!!


呆然とするトキオ。
頭痛を抑えるように頭を抱えるハセヲ。
そんな二人の横で、オレは思わず元凶たる我らが“世界”の女神呪って、その名を叫んだ。








====================
side 夢主1
====================








オレたちはついさっきまで、白いハセヲと、赤い髪のトキオと、《The World》でお茶をしていました。


電子と魂の理論を知るがゆえに、親友ハロルドがエマ・ウィーラントの叙事詩をもとに《The World》を作り上げてしまったことで起こった黄昏事件。
本当の発端はオレにある。
オレが、前世で学んだ別の世界の技術をこの世界に持ち込んだことが原因だ。
《The World》が悲劇を生むと知っていて、それでもそれを産み出した。事件の片棒をかついだオレには、責任がある。
前世の影響で自分の肉体を電子化することができるオレは、それを利用して、ネットに解き放たれたもうひとつの世界――《The World》を見守り続けることを誓った。

それなのに、ついさっきまでアウラの秘密の庭園で、トキオ、ハセヲとのんびりと茶を楽しんでいたのだが、彼女がニッコリ笑って手を振ったかと思いきやオレたちの座っていた椅子の下に突如穴が開いた。
そして気づけば、見知らぬ街のど真ん中に落とされていたというわけだ。

夢『あの、くそガキ。やりやがった』
ト「・・・なぁ。ハセヲ、さん。ここ、どこ?」
ハ「はぁー・・・ありえねぇ」

その後、オレが、オレたちをここにおいやったであろう女神の名を叫んだのは言うまでもないだろう。



――気づいたら、オレたち。
異世界にいました。








**********








ト「こんな建物、《The World》にあったっけ?現実ならわからなくもないんだけど」

トキオが不思議そうに疑問を浮かべて言う。
あるわけないだろうとつっこみたい。
なんでそんなにおまえさんは、《The World》をしらないんだ。

そもそもなんだよ、あからさまに日本のビルの残骸が植物に覆われたみたいな都市は!!
《The World》はもう〈R:2〉とかとおのむかしに終わったんだよ!!
その意味がわかるか?
もう《The World》は〈R:X〉まできていて、その世界の中では、もう司たちの時代よりも数千年もたったという仕様なんだぞ!!
つまり、いまの《The World》は現実の東京のような建物はみじんも存在しない、ファンタジーな建物しかない世界だってこと。
それが廃墟になっているとはいえまだ存在しているとか。
間違いなくここ別世界だろうが。

ハ「《The World》にはないだろうな。あるのなら、せいぜい〈R:2〉ぐらいまでじゃないか」
ト「え。でも今ってバージョン〈R:X〉じゃ。まさかまた時を超えちゃった!?」
ハ「空を見ろトキオ、。この世界の空にはなにもない。艦隊だけじゃなく、飛行機さえないぜ」
ト「え」
夢『まじかよ。艦隊はどこだ!!オレの芸術品!CC社で唯一オレがごねて作らせたシステムがぁ〜!!!ああ、大空を舞う機械の船たち!オレの癒し!!オレの艦たちはどこいったんだ・・・。空を飛ぶ文明がないなんていや』
ト「はは。そうおちこまないでよさん。
それにしてもずいぶん久しぶりに見たよこんな景色。どこをみても空には船の一隻もないなぁ。あ、おれのグランホエールも・・・・・・ああ、やっぱだめ。来てないみたい」
ハ「それをいうなら、新生カイトもとい有城そらのじいさんの。なんてったっけ?」
夢『〈タケ!〉さんな』
ハ「〈タケ!〉さんの艦もないぜ」
ト「それよりなんでビックリマーク?」
夢『しるか』  ハ「しるかよ」

本当になんだこの世界は!?
まちがいなくここ《The World》じゃないんだろ。
そんでもって説明はないのかよアウラ!?
どうせどっかの電子世界だろうけどさぁ!!
もういい加減にしてくれよ!!!
つい二か月前に、カイト型PCソラによる《The World》の救世劇が行われて、オレやCC社がようやく一か月前に復旧したばっかだろうが。
また事件ですか?もう本当に、かんべんしてくれよ。

ハ「はぁ〜」

ハセヲのため息が重い。


そうこうしているうちに、オレたちに続くように、この場所にドサドサとプレイヤーたちが次々と転移してきた。

ト「え・・・」
ハ「またなんかでやがった」

まさにドサドサって感じ。ふってくるわふってくるわ。どんだけだよとつっこみたくなる人数がどんどんふってきた。
強制転移のようで、とばされてきたやつらは一瞬意識を失った状態で降ってくる。
そうやっておちてきたプレイヤーたちは、はじめはみんな寝てた。
その寝ている隙を突かせてもらって、PCとおもわれるその身体に触れて、データの解析をする。
しかしアウラのような電子生命体であるオレさえも拒絶するように、バチリ!と大きな音を立てて火花が飛んではじかれる。
その寸前に一瞬だけ視えた――世界の“記憶”。

ト「なんかわかったさん?」
夢『こいつら全員、最後にとどまった街に強制転移させられているようだな。やった奴と、そいつの目的は不明。こちら側からの接触ができない。
それとこいつらは“冒険者”とい不死の生き物らしいってことぐらい。
ハセヲ、スケィスそっちはどう?』
ト「なんでハセヲにきくん?」
夢『しらないのかお前。
トキオは〈ワイズマン〉・・・えーっと〈八咫〉っていうか。火野拓海くんって、頭のいい子しらね?じゃなかったら、〈ヘルバ〉。あいつらと同等の腕を持つハッカーでもあるんだ。
むしろハセヲって“楚良”だし。
ハッカーはCC社以外で《The World》における干渉権限があるやつらとは違い、個人の能力だけで《The World》にアクセスする。
知られている限りで、その干渉能力が高いやつらは複数いる。
なかでも“楚良”という存在は、〈ヘルバ〉や〈欅〉同様に五指にはいる。
さぁて、ここでトキオに問題です。
我らが唯我独尊な女神アウラの前の神様モルガナにケンカを売ったあげく、とりこまれて。助けられて。スケィスと一体化しちゃって。さらにはアウラの見守る世界で、絶大な力を誇るチート白い魔王〈欅〉さんによって魔改造を加えられ、あげくキーオブザトライワイトにもっとも近い男“三崎亮 ”くんが、別の電脳世界といえど無能であると思うかい?』
ト「・・・えーっと。は、はは。なんというか最初のハッカーのはなしだけで十分だよ。その説明」

オレとトキオが会話をしている間に、しゃがみこんで側らの木にふれるように手をかざして目を閉じていたハセヲがめをひらく。
どうやら解析が終わったようで、立ち上がってこちらに視線をよこした彼が首を横に振るのを目にする。

ハ「だめだな。オレがアクセスできないとは、やってくれる。
スケィスは意思はあるが、なにか透明な壁にはまれているようで、でてこれねぇ」

オレなんか肉体はずいぶん前に死んだ。今は肉体なんかないただの電気信号もとい電子生命体だから、まだいい。
トキオは、肉体を持ったまま電脳空間に入り込んでるから、これの母親とかその周囲はトキオの行方不明にも慣れている。だからそれを気にする人間はいない。
しかしハセヲは違う。
ハセヲはスケィスと魂でつながっているため、意識だけが電脳空間で分離した状態で存在し、偽物であろうと電脳空間で起きたことを“リアル”だと感じる。
しかしその肉体は、現実世界にある。
そのハセヲが電脳空間にアクセスできないということは、現実世界に帰れないということで――

ハ「はぁー。また意識不明で病院で目が覚めるオチかよ」

ハセヲのとんでもなくばかでかい溜息がもれた。

夢『いいかげんそんなに頻繁に入院していると、“三崎亮 ”は病弱だと勘違いされそうだなぁ。ドンマイハセヲ』
ハ「もう十分そう思われてる」
ト「まぁまぁ。ハセヲもさんもおさえておさえて」
夢『ハセヲってばこんなキャラだけど人望暑いからねぇ。司やスバル、カイト、カールとか、エンデュランスとかとかとか。
《.hackers》のメンバーたちで、〔亮くんを生暖かく見守ろうの会〕が結成されていて、実は連絡網が存在してたりするんだよ。だから亮くんがたおれたりすると、すぐに連絡が回ってこの子の知人が病室に押しかけてくるんだよ。知ってたトキオ?』
ト「へぇ〜そうなんだ。今度おれもいれてもらおっと♪」
ハ「なっ!?なんでまでそのこと知ってんだよ!!あとトキオはやめろ!!」

にがにがそうな渋面顔をしながらも耳が赤いハセヲに、オレは苦笑する。
本当に照れ屋なんだから。
プレイヤーキラーなんかしてた。
そんな“楚良”や“ハセヲ”だから、いっけん嫌われ者のように思えるけど、実際のところハセヲって面倒見がいいんだよね。
しかもリアルの亮くんは、根がイイコだから。
【.hack//SIGN】のみんなやカイトたちは、亮くんが大事で大好きなんだよ。
エンデュランスのハセヲ依存はちょっとヤバイけどな。
きっと彼の意識が戻ったら、現実世界では大変なことになりそうなのは目に見えるようだ。

ト「いっそ “カナード” でもつくる?もちろんハセヲがギルマスで!」
ハ「無理だろ。むしろおれらが “カナード” にはいりてぇよ」
夢『たしかに。いまのオレらは初心者と同じだもんなぁ。 “カナード” みたいな、初心者用のギルドってないもんかね?』

本当になんなんだろうねこの世界は。
アウラがなにかしゃがったのはわかるんだけど。

とりあえず、オレやトキオではできないのでハセヲに指示を出して、メニュー画面みたいなものがでないか確認してもらった。
なにげなく表示されたそれをみて顔をひきつらせたハセヲをみて、オレとトキオもソレを覗き込む。
ハセヲが少し操作をしてオレたちにも見えるようにしてくれたそれを見て、ハセヲの表情の変化の理由に納得する。
あらわれたハセヲのステータス画面は《The World》仕様ではなかった。

夢『なんだこれ?はーふあるぶ?』
ト「あ。さん!オレにもメニュー画面がついてる!!」

いわれて「でろ〜」と念じれば、メニュー画面がフォログラムのように現れた。



種族:法儀族
職業:付与術師(エンチャンター)
サブ職業:料理人


ふよじゅつしってなに?
そもそもなんだこの意味不明な種族は。
本当にこの世界は《The World》と違いすぎるようだ。

そうしてオレたちのわけのわからない終わりが見えない物語が始まった。
それはオレたちだけにとどまらず、《冒険者》と呼ばれるこの世界のプレイヤーたちもが等しく同じだった。
現実に帰る方法がわからない。
終わりがみえない。

それにハセヲが口端を持ちあげて言った。

ハ「まるで“キー・オブ・ザ・トワイライト”を探していた頃の旅団みたいだな」

ネット上に存在した噂。

――それは《The World》の至宝。
「あらゆる望みを叶える万能の鍵」、とも言われている、幻のアイテム。
それが“キー・オブ・ザ・トワイライト”。

あるかないかもわからないもの。
けれど、あると信じてそれを探していた――《黄昏の旅団》。

夢『いいかもしれないな。
どっかの眼鏡が言ってただろ?「ないからあきらめる」ではなく「あると仮定して探す」。とね。
噂が実は真実で、本当にあの世界に“キー・オブ・ザ・トワイライト”があったらいい。あったら何を願おうか。だから鍵を追う。鍵は夢だ。
いまは「ないという前提」ではなく、その「探す」という行為を楽しむべきさ。
むかしの《黄昏の旅団》はそういう場所だった。なら、この場所でもういちど楽しんでもだれも文句は言わないだろ。
どうせなにをして帰れるのかもわからないんだ。なら楽しんだもん勝ちだろ。
終わりが見えないからなんだ。
終わりをさがし続けるのが冒険者だ」

リコリスは「終わり」をさがした。けれど彼女の旅は「死」では終わらなった。彼女の記憶はアウラへひきつがれ、その娘のゼフィにうけつがれた。
彼女の心は、アルビレオとほくとが、新たな命として誕生させた。
シューゴは「あきらめない」ことを選択した。
アウラはひとに関ることで「成長」をつづけている。

オレの知る《The World》に、本当の終わりなんかいつもない。
ひとつの物語が終わっても。
そのさきに必ず新しい道がつづいているのだ。

だから――


夢『ハッ!帰れないってのがどうした。終わりはいつか来る。この世界の物語の終わりなのか。それともオレたちが「帰れる」か「否」かという終わりか。どちらにせよ結末という終わりはかならずくる。なにかしらの事象が起こり決着がつく。けどそのおわりがくるまでじっとしてるなんて面白くネェ』

きっと今のオレはあくどいぐらいの笑顔なんだろう。
腕を組んでクールに緑が覆う建物の壁に寄りかかっていたハセヲと、意味が分かっていないのだろうはじめはきょとんとしたトキオだったがすぐに真剣な表情となる。そのふたりの視線がオレにむけれらる。

夢『とことん遊んでやろうぜ。この世界をさ!』

オレの言葉にふたりともニヤリと笑って頷いた。




まずはこの世界を知ることから始めよう。













〜追記設定〜

【ハセヲ】
種族:ハーフアルヴ
職業:盗剣士(スワッシュバックラー)
サブ職業:追跡者


【九竜トキオ】
種族:ヒューマン
守護戦士(ガーディアン)



種族:法儀族
職業:付与術師(エンチャンター)
サブ職業:料理人
→前世からの刺青がまだ残っているため、必然的に法儀族になったと思われる








[TOP]  NEXT →