終話. 届かない×拒絶×死 |
:: side 夢主1 :: どうして どうして? どうして!! なんでオレが・・・ ・・・いや、わかっていたことだ。 やはり、針はすすんでしまった。 オレがこの世界で築いたすべてが、壊れる音とともに。 崩壊の音は、止まっていた時計の針をも動かした。 ――オレは傍に身内がいないと生きていけないだろう。 だれかが側にいてくれなきゃ泣いてしまうよ。 だって寂しいのは好きじゃない。 誰かを残していくことのつらさも、残されるつらさも知っているから…。 死ぬのが怖い。 ひとりはいやだ。 みんなと同じ場所で生きていたかった。 みんなとおなじ世界のただの人間なんだって、思いたかった。 けれどやっぱりだめだったみたい。 オレは大切な誰にも、ことばひとつ残せずこのHUNTER×HUTER世界から“排除”されたんだ。 ジンと共にいった遺跡で、調査の最中、念による罠が発動した。 その罠はまるでこのときをまっていたのだとばかりに、まるでオレをとらえるためだけにそこに存在していたかのようだった。 罠のあった扉をひとめみたときから、危険だと、勘が囁いた。 いち早くオレはその部屋を後にしようとしたが、学者ともめ、罠を発動してしまった。 それとともに能力が勝手に発動し、空間の歪みが広がった。 だがオレの能力と、その扉にかけられた念の相性は最悪だった。 罠は時空のひずみに関するものだったらしく、同じ力ゆえに反発しあうのに引き合い、そして爆発を起こし、空間は裂けた。 裂け目があったのはわずかの間だったが、オレを飲み込んで亀裂は閉じた。 目から、何かが零れ落ち、上へと流れていく。 本当は、ジンは最後までオレを助けようと、手を伸ばしてくれていた。 けれど届かなかった。 オレも一度伸ばそうとしたけど、伸ばしてたが光って透けているのを見て、諦めた。 そして巻き込まないように、オレが突き放したんだ。 必死に伸ばされた手を取ればよかったのだろうか。 それをとってはダメだって、わかっちゃったのに? とれるわけないだろ。 “わかっちゃった”から、さ。 【扉】がひらいたそのとき、オレは、魂で感じた。 すべてを理解しちゃったんだ。 あの世界から追い出されたことを。 世界はオレの存在をよしとはしていなかったことを。 ずっとオレを消すための機会を図っていたことを。 ぐらぐらとゆがみ、きらきら瞬く不思議な空間。時空のひずみの中をおちながら、オレは先程までいた世界からこぼれる光に手をのばす。 せばまっていく亀裂に、世界そのものに拒絶されているのがわかるようだ。 のばしたこの手は、やはり届くことはなく、完全に閉ざされた向こうの世界の光を前に、オレの目からは涙がこぼれた。 世界から拒絶されたんだ。 つらいよ かなしいよ ひとりはいやだよ でも―― いまさら手を伸ばしてもだれもとってはくれない。 とじた光はもう届かない。 こうなるって、心のどこかでわかっていたのにな。 心の準備なんかしてなかった。 “そうでなければいい”と、ずっと目をつぶっていたから――。 本当は自分が異分子だって知ってた。 どんなに気配を殺しても動物や猛獣たちが、オレに気付いた理由が“それ”だろう。 動物は勘がいいから、異分子であるオレを本能でかぎ分けていたんだと思う。 でも“それ”に目をつぶって、五十年、世界とオレ自身をだました。 それももう限界だったんだね。 世界はオレのことが嫌いだったんだって。 ずっとオレを排除するタイミングを狙っていた。 オレがすべてのゆがみになりうるから。 だから原作が始まる前にオレは、消された。 魂ごとあちらから追い出されて、オレは世界に嫌われていたんだって改めて知った。 思い知ったのは、絶望。諦め。納得するしかなかったよ。 ああ、でも。ごめんねジン。 “またね”って言ったけど、それはかなわなそうだ。 だって二度とオレはその世界には帰れないのだから。 『ごめん』 届かないとわかっていて、その言葉を口にして、目を閉じる。 あふれ続ける涙が頬には濡れず、どこかに消えて―― そうしてオレの意識もそこで途切れた。 これが、オレの二度目の『死』だった。 |