03.世界情勢×俺×ハンター試験 |
死んだわたしは、《黒筆字(クロフデアザナ)》という新たな名をもらった。 出身はジャポン。 この世界について調べた結果、〈原作〉とは異なる時間軸であることが判明した。 今の時間軸に、〈原作〉でキーキャラクターとなる “ジン・フリークス” は生まれておらず、G.I.さえ存在しなかった。 せいぜいオレのとぼしい原作知識で覚えている限りの名前で発見できたのは、ビスケット・クルーガーとネテロ会長、ゼノ・ゾルディックの三名ぐらいだった。 どうやら原作よりずいぶんと前の時間軸か、よく似た世界(にしては原作で出た名前がちらほら確認できる)であるらしい。 ちなみにこのまえゾルディック家に長男が生まれたらしいと、恐ろしいニュースがやっていたが…みてない、しらない、きいてないということにしておく。 そんなわけで恐怖の世界だというのは十分理解した。 元一般人で、ただの事務員女でしかないわたし、いやオレが、 この世界で生き残るためには、まずは身を守るすべを教わらなくてはいけなくなったのは必然ともいえた。 :: side 夢主1 :: 生きるために必要なのは、やはり力だ。 その指導は、まず両親にこうた。 ジャポンの侍たる父に剣の指導を受けた。 母からは・・・はじめはとくに教わる気はなかったのだが、 とある事故により 〈念能力〉 に必要な『気』の流れを無理やりひらかれてしまったことで、 予定にはなかったが 〈念〉 について修行をしてもらうこととなった。 できたオレの能力は――墨だ。 もともとは 〈念能力〉 の属性判別をすべく《練》をおこなったところ、水が墨になった。 それを能力として使うことにしたのだ。 単純な推理だ。 《わたし》が絵を描くのが好きだったからとか、苗字が【黒筆】だからとか、たぶん無意識にそれらが連結された結果、 そのような能力になったのではないかと――両親の言である。 単純思考で悪かったなというか、オレ自身も単純な連想ゲームだと思うから、反論も何も出なかった。 それからオレは、墨をもとにした 〈念能力〉 でもって「逃げ」の技をひたすら磨いた。 墨を出す能力なんて何か役に立つのだろうかと思っていたが、ようはなんでも使いかたしだいということだった。 現に、能力は墨を出すことなのに、使い方を工夫したら空間を超えたりできた。 その方法としては、たとえば墨を影と見立てて、影と影を移動するとか。 書いた絵を具現化するとか。 などなど…。 そういった具合に、 〈念能力〉 の応用に成功したのだ。 なぜそこまで【たかが墨を出す能力】を“とんでもない方向”に使うことになったかというと、 〈念能力〉 の修行と称して母につれてかれた裏山には、 怪物や珍獣がわんさかいて、なぜか彼らはオレを異物と判断するらしくやたらと襲ってくるのだ。 すべては、そこで身をも守ることから始まった。 それから間もなく、 〈念能力〉 に関しては、別の師のもとで念を学ぶこととなった。 その師匠がちょっとばかり危険な人であったため、オレはさらに自分の身を守ることに専念するはめになった。 母に念を、道場を開いている父に剣術を教わった。 剣術に関しては、オレはまだまだガキだし、チビだから、どうしても剣の一撃に重さをきかせるような攻撃をすることができない。 なにより元平和の国の平和な時代の日本の現代っこだ。人殺しとか人を傷つけるとか根本的にしたくはない。 そうしてたかが墨をだすという能力でありながら、「逃げ」の技になりうる 〈念能力〉 を編み出したていったのだ。 殺すことが嫌でも。サバイバルのときや生きるためには、やっぱり殺した。 必要に駆られたからしかたがなかった。 この世界は、とても【死】が近い場所に存在するのだから。 あ。あと、裏庭にいた恐竜とか、食べれるみたい。某七つの龍玉のアニメOPのごとく、シッポきったりした。 生きるためならば、嫌いなこともした。 攻撃でもする。 よけて逃げるだけではなく、攻撃をし相手の血を流させる。 時には命をも奪う。 奪う。殺す。 その覚悟はすでにできている。 それだけの年月をオレはこのハンター世界で生きた。 もうこの手は幾度も血に汚れた。 剣を学ぶことを決めた時点で、せざるをえなかった。 すべては生き延びるため。 生きたいから、必死になってあがいているんだ。 ********** っで。 そんなに頑張っていても逃げるため以外の能力などまだつくっていなかった――オレが十歳のころ。 剣術の兄弟子 服部保長 とともに、なぜかハンター試験へと追いやられた。 「師範も強い。だがその奥方様も強い。彼女は外から来たハンターだが、私はそれでも奥方様を尊敬してはいた。 私も奥方様のようにただひとりをみつけようと思っていた。 私の場合は、奥方様が師範と結婚したいという意味での“ただ一人”という意味とは異なり、この日の本で主を見つけ使えるのが使命と常々思っていた。 そのために技を磨いてきたつもりだ。 だが奥方様に、「ちょとお使いにいってきて」と頼まれ…」 『うん。保長兄よ、あんただまされてるようちの母様に』 「で、あろうな」 兄弟子が母にだまされた。 この時代ジャポンは、いうなれば江戸時代に近い。 ただ教えるだけの剣術ではなく、その剣で殺し、己が生きぬくすべを叩き込まれる。 その剣術を我が父から共に教わった兄弟子(オレより7つ年上だが父の道場における最年少である)服部保長が、困ったとばかりに深いため息をつた。 なにがあったかというと、まぁ、なんというか…。 オレはハンター試験に無理やり申請された挙句放り込まれ、同じ道場に通っていた兄弟子は母のお使いと称してこんなところにまで来てしまったらしい。 そして始まるハンター試験。 っと、いうオチだ。 本人たちの意志はすべて無視されたハンター試験です。 オレ達に死ねと? そうあの愉快犯たる母に言いたかった。 『オレ。死にそう』 「わたしもだ」 試験会場は、たくさんの人ごみにあふれておりました。 しかもむさい男どもの群れに、あまりのあつくるしさに酔いまして、オレはオレのこころのままにあがこうとしたわけだ。 つまりあっさりその場から 〈念能力〉 を使って逃げようとしたわけだが、オレとともにハンター試験会場に放置されていた保長に首根っこをつかまれ、 見事なアルカイックスマイルで「逃げるなよ」とおどされた。 結論から言うと合格した。 しかたなくというより、もうものすごくがんばってなんとか合格した。 防御と逃げはオレが担当し、攻撃は保長にまかせて二人でタッグ組んでなんとか乗り切った。 「あの赤毛のガキは、でかいのにくっついているだけで、なにもしてないだろ!」 「合格なんて卑怯だ」 と他の受験者にずるいずるいと言われたが、そいつらには素敵なオレの笑顔で黙っていただいた。 いや〜、なにね☆ちょいと最終試験あたりの時には、オレはきちがいのごとくずっと笑っていて、 いま話しかけたら理性が切れるんじゃないかという極限状態だったもので。 うん。キレたんだよ◇ 容赦とか、傷つけるための恐怖とかそういう言葉がいっさいうかばず、 そのまま背後に黒いものただよわせて笑顔で刀を抜いてそいつの首の皮に傷をつけてやったら――あっというまに黙ってくれたんだよね。 話の分かる人でよかったよかった。 保長があきれてたけど、しょうがないじゃないか。 それほど精神的に疲弊していたんだ。 ネテロと鬼ごっことか、ネテロと未開拓地調査とか。ありえん。 保長いわく、試験後半はオレは四六時中殺気だっていたらしい。 あとでネテロ会長の愚痴を「狸爺」やら「くそ爺など」と保長にぼやいていたら、どこからともなく狸の置物が飛んできてこぶができた。 オレの試験は狸の置物により意識が吹っ飛んだ時点で終わった。 試験合格後の説明はきけなかった(保長がきいてたから気にするきもないが)。 なおハンター試験の土産は、一部かけた素焼きの狸の置物をお持ち帰りさせていただいた。 ちなみにそいつは今道場の入り口にドン!とおかれている。 ちょっとファンシーなものが、人殺しを教える道場の入り口にあるとか、すごい違和感。 長年あればさすがにみな慣れてきて、いつしか狸には「鍋吉」という名前が付けられた。 いったいだれがそうつけたのかは謎であるが。 そうしてハンター試験を合格すれば、次に待ち受けるのは、 〈念能力〉 を用いた裏ハンター試験。 オレはもともと能力者であったため、裏ハンター試験はあっさりスルーで合格。 ただ保長はもともとハンターになりたいわけではなかったし、ジャポンでは念よりも気功や武術が一般的だったこともあり、試験そのものを辞退していた。 まぁ、ジャポンは島国であるため閉鎖的な国だ。 もとからハンターになろうと思う者も極限に少ない。 “外(島の外)”にでて仕事でもしないかぎりは、ハンター資格は必要ないものだった。 ゆえに使う機会はないと、保長がその後裏試験を受験することはなかった。 ――そんな順風満帆(?)なオレの人生の前半。 いま、思い返してもいろいろあったな〜って思うよ。 それはもういろいろと!ね。 なつかしい思い出だね〜 オレ、よく生きてたなぁ |