有り得ない偶然 Side1
- 鋼.の錬.金術師 -



00.人体練成されましたが、ナニか?





 -- side オレ --





『ようこそ』

「ああ、どうも」


口も眼もないからよくわからないけど
なんとなく目の前の相手が笑っている気がして頷いた

気づいたら謎の空間にいて、謎のヒトガタが目の前にいる件。










**********









「真理・・・お前って本当にのっぺらぼうなんだな」

目の前にいるのは、白い光の塊。
なんとなく人型をしているけど白い塊にしかみえない。

そんな謎の生き物が徐々に、“オレ”の姿と同じになっていくのをみながら、いろいろ考えを巡らせる。

まずはここがどこか仮定をたてた。
いつの前世高は覚えていないが、漫画で見たことある光景に似ている気がする。
そうなれば目の前の相手が“オレ”を模倣するのも理解はできる。

わかってはいるんだ。

わかってる。
わかってはいるものの・・・本気でいやだ。こいつ。と、思ってしまうのも仕方ない。
貴様が“オレと同じ”だとわかっていても耐え難い。
なのでさっさと用件を済ましてしまうことにした。
どうせオレは死んだからここにいるのだろうから。

転生人生なめんなよ。

『なめてないよ』
「・・・さっさと本題に入れ」
『はいはい。まぁ、まず説明すると君は死んだ。おれがつれてきたから』
「だろうな。あんなうねうねした手にひっぱられたら……なぁ、オレ少し前まで猫だったきがするんだけど、なんで今ヒトガタ?いや、むしろ心理、なんでお前はネコではなくヒトガタなんだ?」

どうやら妖怪の猫生も終わってしまったらしい。
せっかく人気猫カフェにもぐりこんで、屋根と食事月の生活を満喫していたというのに。

これで十回を超える転生だ。
そろそろ回数も忘れそうだ。
そんなタイミングでどうやらこの真理くんによばれたらしいオレ。
真理がいるってことは、やはり“そっち系”なのは明白だ。
原作のある…いや、それだと語弊があるか。だれかがその世界のことを漫画にしたことがある世界――に、よく似た世界。そこへまたオレは転生するということだろう。
今回の世界はたしか錬金術系漫画だったきがする。とすると、19世紀ごろの地球イメージのファンタジー世界かな。

そういえばオレはなんで死んだんだったか。

『みごとなジャンプを決めていたよ』

ああ、そうだった。キャットタワーの最上から華麗なるジャンプを披露しようとしていた気がする。でも着地点の床にぽっかり黒い穴が開いていたんだよなぁ。
気がつけばうねうねとした黒い手の群れに体を掴まれていて――
どこのハガレンだよ!?と、激しくつっこみたくなるような状況で、飲み込まれた直後にはツッコミも無意味と感じるような場所に放り投げだされていた。
そして目の前には白い人型の謎の生命体X――通称真理といわれているものだとおもわれる――と遭遇していたわけだ。

なぜたかが尻尾が二つに分かれただけの猫をあの場から連れ去る必要があったんだ。

『ようこそ“こちら側”へ』
「ああ、どうも」
『随分・・・平然としてるな』
「これがオレですから。ってか慣れざるを得ないねぇ。ところでオレは只の猫又妖怪だったはずだけど、わざわざヒトガタに戻してまでなんのよう?」
『あぁ。さすが“魔女の契約で死ねなくなったもの”だ。話が早い』

ってか、本当になんなんだ。
むしろここはもう新しい別の世界ですか?
本当になんなんだろうね。

『君はいちおう向こうの世界では死んだことになっている。死因はさっきの大ジャンプに失敗だ。着地先に毛布が落ちていてそれにすべって頭部を強打して死んだ』

猫カフェのオーナーが泣いていたよ。と真理は言う。

・・・うそだろぉ。
オレの死亡原因、猫としてはあるべきことに着地の失敗なの!?
なんて嫌な死に方。

思わず額を抑えてしまった。
ちょっと何度か猫として生きてる身としてははずかしすぎる。猿も木から落ちる的な、結果猫も着地に失敗するんだぜぇ(笑)みたいな感じだ。
穴があったら入りたいとはこのことか。
いや、もう穴には落ちている。というか、ひきづりこまれたあとなんだが。

何度も転生してはそのつど死んでるけど、生まれてはじめてだよ、こんなアホな死因は。
せめてすべってこけて死亡じゃなく、寿命とかさぁぁ!!!病気とか何かかっこいい言い訳けはまだまだほかにあっただろうに。
だけど“これ”はないだろう!?
猫として屈辱以外の何物でもない。
死亡原因が、着地失敗。しかもすべってこけてだなんて・・・

本当に泣きたい。

『泣くなよ。しかたないだろう。“向こう側”のお前はもう死んだことになってんだから』
「よけいたちがわるいわっ!!これが泣かずにいられるかよ!」
『まぁ、安心しろ。あまりのお前のギャグな死に方のおかげで、あっけにとられた店のオーナーが整理整頓に目覚めたからな。
本当ならあと数匹猫が死ぬはずだったが、お前の死によって救われたんだ。
それだけの価値があった死だと思えば、お前は英雄だぞ』
「・・・いや。もう死んで別世界にきちゃってるし。そもそも猫だからしゃべれたわけじゃないからいろいろアピールとか無理だったけどさぁぁぁぁ。はぁ〜…もう、いいや。オレが死んでることは違いないし」

やるせないというかなんというか。
死ぬことよりも死亡原因が嫌なんだって。
しかも猫カフェのオーナーの整理整頓ができないせいで、オレが死ななかったら他にも猫が死んでいたとか。
はぁ〜。本当にもう、ね。ため息しか出ないよ。

うん。もう考えるのはよそう。
オレが惨めなだけだ。

そう今の話を締めくくったオレの心を読んでか、目の前の相手が苦笑を浮かべたのがなんとなくわかった。
こんな奴にまで同情されるオレって――


「えーと、話を戻すけど、なぜオレはお前に呼ばれたんだ?あと、お前は本当にオレがしる真理か?」

例えば、ここが本当にオレの知る某錬金術漫画と関係があったとしよう。
すると目の前の相手はやはり――真理になるわけで・・・

『ああ、お前が今までたどってきた転生人生の中で漫画に合っただろう?あの真理だ。
それにしても本当に変な奴だなお前は。おれを始めから知っている奴も珍しいのに、おれをみて驚かない奴なんてもっと珍しい。変な奴だ』
「変って・・・あぁ、もういいよ。聞き飽きた。
驚くも何も猫だった俺を人型にしている時点で驚くこともないさ。
ってか、オレの口調とか声とか容姿とか色々まねすんなよ」
『全は一、一は全。所詮おれはおまえで、おまえはおれだということさ』

だからといって

「鸚鵡返しがこの世で一番むかつく」
『最もだな』

おれはオウム返しはしてないだろう。ちょっと不安そうに真理がつぶやいていた。
そうだな。お前はまだしていない。
“したら”許さなかったというだけの話だ。
オレをまねた姿をしている時点で、会話までまねっこのようにオウム返しなどされた日には、さすがのオレも怒り狂っていたかもしれない。そういうことが嫌いなたちなので、許せるものではないのだ。


『さて。なぜお前をここに呼んだかということだが』
「あ。運命の女神がかかわってたら辞退するんでそこらへんよろしく」
『…転生し続けているとはいえ、神と遭遇する人間も珍しければ。神とやりある人間もそうそういないぞ。どんだけやりあったんだよお前ぇ』
「さぁてな。転生最中に人の話を聞かない女神の顔なら高頻度で見たが。やつとはなんど口論になったことか。ききゃぁしねぇが」
『それはご愁傷様。…えーっと、なんだったか。ああ、そそうそう。お前のこの世界に呼んだ理由だったな。安心しろ女神は関係ない。こっちの事情だ。
その事情にもっとも適する魂を探していたら別の世界にたどり着いた。そこにいたのがお前だ』



いつものごとくキャットタワーからとびおり、華麗に着地を決めどや顔をするはずだったその日――きづけば着地すべき床はなかった。
あったのはぽっかりと口をあけた真っ黒な穴。
気づいた時には遅く、オレはすでに空中に我が身を投げ出していた。
落ちている最中、今度は突然背後にガバリと門がひらき、そこからあふれ出たうねうねぐねぐねした黒い無数の手にひきずりこまれ――そこにいたのは、能面。否、顔のないひとがた
そうただの“ひとのかたち”をした“白い光のようなもの”だ。

いまは、人の姿のオレと同じ姿かたちをしているが。

みた瞬間気付いたよ。
今度は【鋼の錬金術師】かってね。

やっぱり目の前の相手は『真理』で、オレに等価交換をもちかけてくる。


『適合するお前をこちらにひきこんだのはおれだ。移動の代価は向こうの世界でのお前の肉体とお前の死。
そしてお前にはやってもらうことがある』
「それが取引?」
『今の内容だけではまだ取引にはなってないだろう?』
「オレは異世界の住人だよ?」
『正確にはお前の魂はどの世界にも属していない。だからお前だった』
「別の世界から連れてきて本当に何がしたいのさ」
きいたとたん、真理はそれをまっていたとばかりに口端を大きく持ち上げた。



『“おまえを”望む者がいる』





――What?


いま・・・
目の前の相手は、なんとおしゃった?

あまりのことに理解しかねて意味がわからず首を傾げていたら、ニヤリとオプションがつきそうな感じで真理の気配がゆれ、スッとオレの胸を指差すようにして“オレ”を示すと、先程と同じ言葉を繰り返した。

『“おまえを”望む者がいる』

「や。だからなんで?」
『なんでって――だから望む者がいるからだって』
「だってそっちは【鋼の錬金術師】の世界だろ?ってことは、異世界だ。
“オレを望んでいる”ってことは、いわばオレを知っているってことだよな。
なんでその“異世界でオレを知ってるやつ”がいるわけ?おかしいからそれ」
『実際先方はお前そのものを知っているわけではない。
ただ“器と百パーセント融合しうる魂”がほしいのだよ。それが偶然“お前”だったというだけのこと』
「あ、そーいう感じ。
まぁそれならいいけど。でもさ、どんな魂を希望していたか知らないけど、オレ頭悪いよ。 なにせどこかの世界では小学生と知能戦をやってぶちぎれてたぐらいだし、むしろついさっきまで妖怪だったし。というか人型でもない猫だったし」

『相手は別に何も望んでは・・・・・・いや、器は人間のものだから、さすがに猫っぽさは控えてほしいというか…たぶん先方も人間らしく生きてほしいと思うはず……』
「オレが何百年と、何個の世界を猫で生きていたと思っているだ?」
『おい、“オレ”よ。ちゃんと人間らしく振舞えるよな?』
「考慮しよう」
『考慮ではなく全力でたのむ』

「・・・で?」
『なんだ』
「それで?オレが行くのってやっぱり“ハガレン”の世界?」
『あ、ああ』

前世の影響で、変な知識があったり変なことができたりするけど、基本オレはバカだ。
思慮深くもなく、突発的な考えですぐに行動してしまう。
だからといって体育会系というわけでもないし、学者肌というやつでさえない。
いうなれば自分は野性の本能だけで動いているにすぎない。
今まで勘だけで生きていたようなオレだ。
いまさら学者肌しかいないような頭がいいやつらばかりの世界に放り投げられて、生きていける自信はぶっちゃけない。

そんなことを考えていたら、なにか視線を感じた。


ひとつのことに集中すると周りが見えなくなるのは、オレの悪い癖だ。

そういえば会話中だったと思い至り、この場所で唯一の話し相手たる相手をみやる。
チラリとみるとそこには哀れむような視線でたたずむやつがいた。
相手がいかにも「そんなに馬鹿なのか」とばかりに同情しているのがわかる。ぶっちゃけ同じ顔のやつにそれをやられると、自分でバカといった時以上に胸にグサリと衝撃がきた。
そのまま渋い顔をしていたら、オレの心を読んだのかハーと深いため息をついて真理がオレを案じるように言葉をつむぐ。

『お前の記憶でいう【鋼の錬金術師】の世界にいってもらう・・・がっ。お前の言葉どおりだ』

“あちら”は論理と計算式で成り立つ幾何学世界。

『大丈夫かおまえ?』
「いや。無理だわ。マジムリ。“ハガレン”とか本当に無理だわ。
いままで一度も知能高い人間になったことないし。そんな理論的な会話が求められる世界に転生したことさえない。
錬金術師がいっぱいいる世界とか、なにその天才しかいない哲学inファンタジーみたいな世界。無理だって。マジでそんなにオレは頭よくないから。あと記憶力もすこぶる悪いぞ」
『普通、錬金術師になる奴はみんな頭いいんだがなぁ』
「だろだろ。無理だって」
『でも先方からはすでにお前が生まれるための代価は受け取っているし、おまえのことはどうしても生まれさせなきゃならねーんだわ』

つまり他に転生先を指定るすることも不可能であるということか。
だけどここでいろんな経験をつんだオレの勘が何かを訴えた。

“まだ”――だ。

まだオレは対価とそれによる利益を聞いていない。

『ま。実のところ、あいつらからもらったぶんじゃぁ、お前を“器”と結合させるのは無理だけどな』
「結局オレってなにされるの?…けつごう?ってどういうことさ」
『そうだ。もらった代価では、あいつらは真理の一部を見るのが限界。
それ以前に普通なら人体練成はどれだけ代価を払おうと無理だ。それがあちらの世界の法則だからな。だからあちらの世界の魂をつかっても人体錬成は成功することはありえないんだ。
今回は運がよかった。お前という存在が“器”と一致したからな。ゆえにお前はこちらの世界で誕生したら、唯一の奇跡となるだろう』
「あ〜・・・なるほどそういうことか。
っで、“足らない分”はオレから奪うと?」
『半分はそうだな。さっきから言ってるだろう。普通ならな、とな』
「はいはい。オレは普通に当てはまらない変人ですよ。でわるかったな」
『まぁ、そうぐれるな』
「ぐれたくなるわ!!マリちゃんって呼ぶぞ!」

『たしかに字はあっているが・・・マリじゃなくてシンリだ』

見事なツッコミが返ってくる。
真理の姿は、自身の鏡。
つまりこのステキなツッコミ具合は、オレの影響か。

そして真理は――


『・・・・・・おまえは扉の向こう側に興味あるか?』


なぁ〜んてことをのたまいやがった。
扉って・・・まんま“真理”のことか?
そんなもの

「ない!」

『だろ?普通ならそこでみたがるもんなんだがな。
それに加え、お前はおれが知るこの世界の理があてはまらないほどの別世界の知識を知っている。
今更お前に真理を見せてもなぁ。
だが、代価は取る』

なんかオレに不利益な展開でなにか話が進みかけてないか。
こういうの等価交換じゃなくて、理不尽って言うんじゃ・・・
でもオレはその理不尽で持って転生を繰り返している。
いい加減慣れもするというものだ。

「時空の移動に代価をとられるのはなれたよ」
『時空の移動の代価はもらったぞ。向こうの世界のお前の未来だ』
「何に代価を払って何を取られるわけ?もう勝手にしていいよ。生きるなら生きる。死ぬなら死ぬでいい」

なげやりなオレに真理は意を決したように頷くと輝くような口調で

『よし。お前に真理を少し見せよう』
「断固断る!そこまでオレの脳みそに空き容量はねぇ!!」
『・・・・・・まぁ、そういうな。
はじめは前世や原作知識の記憶を代価として奪おうかとも思ったんだが・・・お前の記憶はおれの理の範囲外であり、オレにも世界にも無意味。
そもそもお前さ、これから先の原作知識ほとんどねーじゃん?
代価としては論外だし、価値が低すぎる』
「脳みそすっぽっぽんでわるかったな」
『いちいちつっこむな。そこでだ。お前はこのまま何もしなければ長生きをするだろう』
「経験上そうなるだろうな。それにオレは生まれ変わったら意地汚く生きるぜ」
『そのいかにも悪役的なアクドイ笑みをやめろや』
「これがオレなんだよ。
っで、さらにいうと自分の好き勝手にしか生きないからな。よく原作破壊といわれるがしったこっちゃない」
『それも知ってる。
まぁ、お前が行く世界は、お前が“誕生すること”で、原作とはまた違う未来に辿りついた世界だ。
お前は好きに生きていい。
だから代価はお前が自由に生きるための対価。それにふさわしい対価、“強さ”をもらうことにする』
「強さって・・・心の強さとかいうなよ。それだけがオレのオレらしいところなんだから。
それとも純粋に力のことか?自慢じゃないが前回の世界では見事に運動オンチのインドアだったぞ」
『いいや。お前の“生きる力”だ』
「生命力?」
『お前の生命力はほぼ貴様の意地でカバーされちまう。つまり心が、その意志が強すぎるからお前は意地汚くも生きながらえてしまう。まぁ、今回の場合、お前の魂があちらにある肉体に入ることが望まれている。だからお前という存在の生命力の源である心、すなわち魂を壊すわけにはいかないんだ。だからこそお前からは“生きる力”をもらう』

お前は生まれればその世界で自由に生きることを望む。
生きている限り、生きているならばと生きようとしつづける。
逆に死ぬときは、本当に“すべて”を終わらせてほしいと思っている。

「・・・・・・ごもっともで」
『なら殺すことも、記憶を奪って真っ白の一からはじめさせることも、それらはお前にとっての利点にしかならない』


「『だからその対価が“生きる力”』」


声がかぶる。

 ここはきっと笑うところなのだろう。
あぁ、本当にオレは君で。君はオレなんだと・・・今度は自然に笑みがこぼれる。

「それでもお前はオレに生きろというのだろう?」
『・・・・・・お前、本当はバカじゃないだろ?』
「バカだよ。計算は苦手。頭を使うのも苦手。物を覚えるのことも苦手。だけどね真理くん。ひとは感情を持つ生き物だ。
オレは長年の経験からそれを見る目に長けているだけさ。
残念ながらこれは、君がオレの記憶をすべて奪って引き継いだとしても、オレが経験から積み上げて感じたその“想い”までは得れないだろう。だから所詮君はオレの記憶を持った君でしかなくいっていう状況になっていただろうしな。だからオレから記憶を奪わず別の対価を求めたのは正解だと思う」
『なんというか、まぁ、あれだ。お前は本当にやっかいだなぁ』
「経験から来る勘。心。この二つがオレをオレたらせる」

だから気合いと根性でどんな逆境さえも越えようと足掻く。
それがオレの強さだ。



さぁ、最後だ。
これが世界を越えるための等価交換。
代価を教えろ。
そしてオレに道をしめせ。


『代価は・・・お前の“生きる力”これはいけばわかる。
そしてお前の“今の体”をすべて。
“血の絆をあらわす”もの』


「それによってオレに与えられるものは?」
『“生きる力”は、今から生まれる世界でのお前の自由の保証。俗にいう原作キャラへのチョッカイを許すための代価だ。
“今の体”は、お前風にいうなら前世でお前が得た肉体だ。
これは世界を越えるために必要な駄賃で、今からはおれの体となるから、お前が転生後はまた別の体になるってわけだ。
“血の絆をあらわす”ものとは、これからお前を生んでくれる両親と容姿が似ていないというだけだ。
だが血はつながっているぞ。なんなら生まれた後にDNA鑑定でもするか?まぁ、向こうの技術ではまだそんな技術ないがな』

「・・・・・・それでも。
たとえオレが“練成の末に生まれた”としても」
『やはりわかっていたんだな』
「人体練成のことなら想像はつく。それでさぁ」
『ん?』
「・・・オレには、血のつながった本当のオレの両親がいるんだな?今度こそ“家族”と・・・長く暮らせるか?」
「ああ。お前は望まれた子。そして向こうの世界における唯ひとつの奇跡となるだろう。
あいつら二人の血肉を分けて生まれた本当の子供であることは間違いない。
それはこの真理の名をもって保証しよう」

「そっか。家族が、いるんだ」

『・・・・・・』

思わず泣きそうになった。
何度も何度も転生を繰り返していたが、一番最初のハンター世界以降、オレは本当の家族というのに縁が薄い。
ちゃんと愛されて生まれても両親と早くにわかれることもおおかった。

だから――

「うん。オレさ。血のつながった家族ってまだ数回しかできたことなくてさ。他にも家族って呼べる人たちはいたんだけどね。
それに親になったことはある。あるけど、オレが親にはなれても親がいたことはなくてさ。そういう意味では家族ってあんまり縁がなくて。
しだいにね、オレがいたからこのひとたちは死んだのかって思うこともあって」
『・・・・・・お前がいたから生きている者のほうが多い』
「うん。あのさ、真理。オレに家族をくれて――


ありがとう


『お前を生みだす“あいつら”に言えよそれは』
「うん。でも今言いたかったんだ。
オレを生んでくれる人たちにはあとでちゃんと別に言うから。
向こうで生まれたら“オレを望んでくれてありがとう”って言うよ。きっちりとね」

家族をくれるという真理に。
長く一緒に入れるという、神よりも信頼の置ける保証という言葉に・・・。

嬉しくて笑い返す。
たぶんニヘラ〜ってヘンニョリした顔になった。
そうしたらため息を一つ疲れて、だけど頭を撫でられた。

「えっへっへ〜」

上を見たら。いや、上を見上げるという行為がおかしい。
さっきまでは視線が同じだったはずの相手が、きづけばかなりうえにある。
どことなくプニプニっとしたこどもならではの小さな手が視界に入った。
そこで自分の姿を見下ろせば、猫ほどのちいさな赤ん坊の姿になっていた。
自身の顔は見えないが、どうやらこれが今度の世界での姿となっているようだと理解する。

それにより、なにかしらの代価として真理に“支払われた”のだと気付く。


それからオレは背を押されるようにして門の前につれていかれた。

ギィーっと鈍い音を立てて門がひらく。
うかがうようにオレの姿をしている真理をみる。
コクリと頷かれ、「いってこい」と暗闇が広がるだけの扉脳向こう側へと押しやられる。

軽くポンとおされたせいでバランスを崩しオレは開け放たれた扉をくぐった。

そして落下中。

「って、えええええええぇぇぇぇぇぇーーー!?なんでまた落ちてんだよ!!!」
『あっはっは。だれも門をくぐってすぐに“あちら側”にいけるとはいってないぜ』
「わらうなどあほうがぁ!!」
『あ、そうそう。忘れてた。お前から“生きる力”を奪ったから、お前が【一番最初】に死んだのと同じく24歳までしか生きられねーからな。ま、せいぜい短い人生楽しめよ!』

それはもう爽やかな笑顔で“オレだったもの”は、笑って手を振った。

「“生きる力”って寿命かよ!!ってか、今更ふざけんじゃねーよ!!このバカしんりー!!!!」

『おうおう。威勢のいいことで。ま、気をつけてな』

ヘラヘラとしたあいつの笑顔が上へ上へと遠ざかっていく。
それにオレはいつまで落ち続けるのかわからない暗闇の中で、ムカツク笑顔でムカツク発言をしやがった真理を罵倒し続けた。
そうしてオレは思いつく限りの罵詈雑言を並べ続け――


やがて闇に呑まれて、その意識は散った。










今度はまっとうな人間なのにまっとうな生まれ方はしないそうだ。
まぁ、真理からの許可も得たし、原作破壊と、いこうかね(笑)

・・・ってかちょっとまて!

オレ、原作のこと9巻ぐらいまでしか知らないんだけど!? どうしろと?








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