焔は七番目の夢に抱かれ
- Ta les o f the A byss -



01.死んで生まれて逆行だった





 手っ取り早く言うと――生まれました、オレ。

世界に生まれて一番びっくりしたのは、オレが『黒筆 』というひとりの存在ではなくなっていたことだ。


“もうひとりのおれ”の名をルーク。ルーク・フォン・ファブレ。

赤い髪に翡翠色の瞳の……

 生まれて七歳の小さな子供。








 -- side 夢主1 --








 目覚めたとき、というよりは、自我が芽生えたとき、『オレ』という存在は、〈黒筆 〉であり [ルーク] でも

あった。
オールドラントに存在する『オレ』を構築するのは、その二つ。
二つの存在が混ざって、今の『オレ』という魂が形成されている。



 ――オレには、前世の記憶がある。
それもひとつではなく複数のだ。
 その記憶の中で最も新しい記憶は二つ。
そのひとつが、オレが [ルーク] であった記憶だ。

 むかし、おれは「レプリカルーク」として、このオールドラントに生まれた。
そのときの記憶が感情付きで、オレのなかにある。

 対して〈〉の前世は、【家庭教師ヒットマンREBORN!】におけるXANXAS成り代わりであった。

 レプリカルークとマフィアのXANXAS。
どちらもオレの前世である。

 簡単に言うならば、混ざった。
それも魂と呼ばれるようなものが、だ。


 ――魂も記憶も何もかも混ざっているのは、いままでにないことで、とても奇妙な気分だった。


 混ざるというのがどういうことかというと、たとえば“だれか”の記憶が自分のなかにあるとする。
しかしそれは、あくまでその“だれかの記憶”でしかない。
ゆえにそのとき起きたことや“だれか”が見たことを見ることはできても、そこで“だれか”が感じたことを知れ

るわけではないとする。
いうなれば本を読んでいるのと同じだ。
本の文章を追いかけるうちに感情移入し、自分が物語の主人公のような気持になったとしても、本当のところは主

人公たち自身の心などわかるわけもない。

――ようするに、自分の中にある“だれかの記憶”とは、感情を伴わないことからただの“知識”でしかないとい

うことだ。


だけど『オレ』の場合は違う。


 この世界において、被験者とレプリカの完全同位体の間でのみ“大爆発”という現象がある。
どうやら〈〉と「ルーク」の間で、一度それに近い現象がおきてしまったようなのだ。

 魂の融合――記憶と感情が分離しているのであれば、問題はなかった。
それならば、自分の中に [レプリカルーク] という人生を、本で見た――それに近い知識がある状態ですんだ。
オレはその本を読むことで「彼」を知ったということになる。
しかし今の『オレ』にとって [レプリカルーク] とは、ただの知識にはなりえない。
やっかいなことに、まさしくその記憶も知識も自分自身のものであると言えた。



 実のところ。『オレ』となったいまも、なにをどうしてそうなったかよくはわかってはいない。
 生まれて、気が付けば、なぜかオレ自身が [レプリカルーク] であったという――感情を伴った“記憶”が、自

我が芽生えた時には自分の中に存在していた。
これを〈〉風にいうなら、“前世の記憶”といったところだろう。
それは [レプリカルーク] として生きたこともないはずの〈黒筆 〉に、自分自身が経験し、感じ、想い、体験し

たとだと認識させた。
 けれどその記憶は、『オレ』が生きる“ここ”とは明らかに違う。
異なる世界の… [レプリカルーク] の記憶。
その記憶での経験は、今『ルーク』として生まれた『オレ』とは、異なる順路をたどるがゆえに、このオールドラ

ンドは平行世界か、あるいはオレ達のせいで歪んだ世界だと確信が持てるのだ。

 ただし、問題がある。
〉や [ルーク] にしろ、オレは、彼らの体験したことをそのまま自分自身で経験したかのような感覚を味わっ

てしまうので、前世の時間軸において、自分が二人いる――同時にオレがそれぞれ別の世界で存在しているかのよ

うな―― 同じ時間軸に二つの体験をしてきたかのような、なんともいいがたい、いままでにない変な感じの転生と

なっていることだ。
 おかげでたまに [レプリカルーク] らしい部分と〈〉らしい部分で、意見の食い違いが生まれる。
自己矛盾があまりに激しいと、自分という存在そのものがよくわからなくなり、そのままドツボにはまって出れな

くなることが多々あった。

最近はようやく折り合いをつけて、オレは『オレ』でしかないと、どちらの考えもうけいれようと努力はしている

が・・・。

 気がふれかける寸前、それをくいとめるのは二つの存在。
まずは〈〉の指輪。魔女との契約の証で、転生しても存在するの指輪には、〈〉にとって世界そのものともい

えるゴールド・ロジャーの魂が宿っている。
〉は彼を「爺様」や「セカイ」と呼んでいたが、まぁ、いうなれば守護霊だろう。
その彼の魂が宿ったその指輪が、いびつなオレの魂を一つにまとめてくれているのだ。
だからこそ、指輪に触れると心が落ち着いた。
 もうひとつは [レプリカルーク] を見守ってくれていたローレライの存在。
まぁ、ローレライのことはあとで細かく話そうと思うからひとまず置いておく。

 そんなわけで。魂が半分 [レプリカルーク] のものであるのに、〈〉の青い指輪は相も変わらずオレの左薬指

にはまっている。
今回の場合は、母にある日の誕生日、「お前はその指輪を握って生まれたのよ」と言われ、何かの縁があるかもし

れないと手渡された。
それ以降、指輪は常に身に着けている。

この存在があるから、壊れかけのようなオレが、オレとして自我を保つことができている。



 そして――
今の『オレ』は“ルーク”だった。


 この世界に生まれた『オレ』は、〈〉にしてみればひどく懐かしい髪や目の色合いをしていた。
少しハネぐせがある髪は、赤く、燃える紅蓮の業火のような緋色。
目は鮮やかな緑。
光の加減では黄緑といってもいいほど煌めくそれは翡翠色。

 うん。この姿はどうみても〈〉の一番原型の姿に近い。
だけど違う。
この世界のこの色合いには、意味がある。

いまの魂の半分を担う [ルーク] の色彩。

 なぜならば、この世界は [ルーク] の生きた過去の世界。

 この世界には〈〉が体験したような特殊な能力はない。
念能力、イノセンス、チャクラ、死ぬ気の炎 など。そういったものがない代わりに、魔法が存在した。

 世界を循環する大いなる力の流れ。それが魔法の源なるそれを “音素” と呼び、文明をささえる動力源となっ

ている。
魔法技術もこの音素が元となっているほど、世界は音素によってなりたっている。
その音素を使った機械は “譜業”。


――世界の名はオールドラント。


 そしてオレが知る“ルーク・フォン・ファブレ”とは、このオールドランドの未来に生きていた青年である。



 〈〉だった俺には、相変わらず前世の記憶があり、同時に自分が [レプリカルーク] であった記憶も存在する


 そう、今のオレの名はルーク。
だけれど“以前”もおれは、 [ルーク] であったことがあるのだ。





 俺の複雑な事情はまだまだある。
特に [ルーク] のこと。
[レプリカルーク] は、何度も死んだもうひとりの自分。

 今の『オレ』になる前の「ルーク」について、話しておかなければいけないだろう。
〉に関してはまた転生した程度の認識で十分だが、もうひとつの前世である「ルーク」についてはそうもいか

ないのだ。



 ―――生前の“おれ”は「ルーク」として一度死んでいる。



 レプリカたちの命と引き換えに、瘴気の中和をしたレムの塔のこと。
その時点で音素乖離をおこしていた身体に鞭打ち、師匠にして最大の敵たるヴァン師匠を倒し、そこからローレラ

イ解放までこぎつけ・・・白い光の中落ちてきた [アッシュ] の冷たい身体を抱きとめ、その眠るような顔を見て、お

れは・・・いや、“おれ”達は音素に還った。

 生まれてからずっと屋敷に閉じ込められていた [レプリカルーク] にとって、あの世界救世の旅は信じられない

ようなことばかりの日々だった。
たった一年の、屋敷以外の外の世界。
結局、そこにも本当に意味での自由はなくて、いつも誰かにひかれたレールを歩いていた。

 そうして、絶対帰ってくると――“みんな”と、約束したけど。
結局 [おれ] は、先に死んでしまった [アッシュ] を蘇えらせるために、このちっぽけな自分の命をすべて投げ出

して、光に、音に還るだけだった。


そのはずだったのだが――



 なぜかまたこのオールドランドに、『ルーク』として生まれ変わっていたのだ。それも [レプリカルーク] とは

違う〈黒筆 〉という魂を呑みこんで。

ひとはこれを逆行と呼ぶのかもしれない。








**********








『なぁローレライ』
《なんだ?》
『オレって“ルーク”なんだよな?』

 生まれて数年目。指輪を手渡されてから数えれば、幾度太陽と月が入れ替わっただろうか。
 ある日を境にオレの横にいるようになったブウサギもとい、“ブウサギにのりうったローレライ”にニッコリと

笑顔を向ける。
返って来たのは、それがどうしたという不思議そうな思念。
夕焼け色のブウサギ姿のローレライからの通信は、いまでは慣れたので、頭痛もしないので楽でいい。
そんなローレライをヒョイっとだきあげ、笑みを深める。

《おぬしはルークじゃろう》
『どこがだこのウソツキ』
《なにをいう。嘘ではないだろう。ワタシは嘘は言わん》
『・・・俺は〈〉でもあるんだが。音符帯でまちがってつれてきたくせに?それでも俺を“ルーク”って呼ぶんだな



 笑顔のまま、小さなブウサギを抱きしめる腕に力を込める。
赤っぽい色のブウサギがブギュゥっと顔をしかめる。
それにかまわずオレは笑う。

《あ、あれは嘘ではなく・・・そ、その、そう!あれだ!!ちょっとした手違いというやつだ。
なにより、 [レプリカルーク] の記憶も魂も今はおぬしの中であろう。ならばお前は [ルーク] で間違いあるまい


たまたまそこに〈〉としての記憶があるだけで・・・。
こ、こうしていまを“ルーク”とすごせるのだからいいではないか!
それが今の『お主』という存在であろう!?》
『うん。オレはたしかに〈〉で [ルーク] で『オレ』だな。
そうだな。たしかに、オレの中には、なんか微妙に [レプリカルーク] としての記憶があるなぁ。
おれはたしかに [ルーク] だった。ただし“レプリカルーク”だ。
乖離したあとは [アッシュ] と一つになって、魂は音符帯に混じり消えたってのも理解してる。っが・・・』

ギュウ!!!

《ヒィッ!!》



『オレ、今の立ち位置“アッシュ”じゃん』

 現在のオレは、ルークはルークといえど、被験者ルークである。
そしてローレライはというと、ブウサギになりかわっているのだる。



『もう一度訊く。なんでオレは今“アッシュ”に成り代わっている?
本来ここにいるべき [アッシュ] あるいは“アッシュとなるべき奴”はどうなったんだ。ええ?答えろよ全知全能

の第七音素集合体様よぉ』

《そ、それは・・・む、むこうの時間軸のとき、 [アッシュ] を助けるにしてもお前は乖離していたし、ほぼ“大爆発

”は進んでいて。
そ、そのなルーク。
お、おぬしはほとんど我と融合していて、被験者の方にも記憶や感情はすでに流れておって・・・。
おぬしの魂を見つけたときには、 [アッシュ] の影響が強く・・・ゴニョゴニョ》

 だんだん小さくなるローレライの声に、いらだちが先につのる。
[レプリカルーク] としてみてきた限り [アッシュ] は、本当に王族かと疑いたくなるほどに口が悪かったが、ぶ

っちゃけマフィアの暗殺部隊のボスなんかを経験している〈〉のこともある。
現状としては、オレの方が口もガラも悪いのはどうしよううもない。

そのままガクガクとおもいっきりローレライを揺さぶると、ぶぎゅ〜っとなさけない鳴き声が響く。

『このまんまこの立場にいたらルークとしてやり直すどころか、アッシュじゃねーかよ!!!被験者じゃんオレ。

ええ!?どうしてくれんのこれ!?
じきにレプリカルークが生まれるだろうが!!そうしたらなにか?オレに自分(レプリカルーク)と共同して、ま

たお前を解放して音素になって死ねと?
話が違うだろうが!!
[おれ] の願いと幸せを願ったくせに、この位置づけはおかしいだろうがよ』
《だ、だが、今回は、我はすでに(一部だけだが)解放されておるし!! [前回] とは状況がちが…》
『ああ?うっせんだよカスが!食うぞ食材がわめくな』
《ひー!》

 過去の [おれ] はたしかに生きたいと、やり直したいと、過去に帰ることを望んだ。
しかし一番幸せにしたかった [おれのオリジナルルーク] がいない。
やり直させたかった相手がいないのに逆行とか・・・。
無意味だ。

これでどうやりなおせと?








**********








 そもそもこんなブタなローレライとの会話をしていることの始まりはなんだったのだろう?
オレが『ルーク』であったとか、はたまたローレライが [レプリカルーク] を逆行させたことか。
それとも・・・オレが他の前世の記憶を持ったことか。
ローレライinブウサギをみることになったのは、間違いなくオレが〈〉としての前世の能力の影響を強く持って

いたせいだ。


 それは何度も転生しているせいだろうか。
それとも魂が混ざるなんて、驚異的な現象を引き起こしてしまったせいか。
なんだかいろいろ視えてはいけないものが、“視える”のだ。
 困ったことに〈〉は、転生をする前からオーラや幽霊というものが視えていたふしがある。
さらには今までたくさんの転生をしてきたせいで、変にそういった“不可視の力”に敏感だ。
 おかげで、物体の大本たる“音素”もしかり。
見えてしまうのだ。
 おかげで世界が眩しくてしょうがない。
 最近では、オレの視力が落ちてきているのがわかる。
これ以上“音素の流れ”を肉眼で追うと、眩しさのあまり失明しかねない。
極力見ないようにチャンネルというかそういう“視える”波長と自分の中の波長をずらすようには努力しているけ

ど、そのうちこの落ち続ける視力のせいで“流れ”以外の普通のものが見えなくなるのは間違いない。
まだオレの目は、“見る力”は落ちているものの、眼鏡など必要ないぐらい視力はいいのだ。
以前の経験から硝子などを一枚はさむだけで、視界から本来なら見えるはずのないものが見えなくなることをしっ

ているので、近頃では眼鏡をかけている。
なんだか眼鏡で音素の流れを抑えるとか、ジェイドっぽいけどそこはいたしかたない。
そうでもしないと“音素の流れ”がみえすぎて、逆に普通の景色が見えなくなるのだからしょうがない。それのお

かげで、光から目をかばうことができ、視界がクリアになるので、裸眼より視力はアップする。
だが、それを知るはずもない周囲の人間は、オレという人間は“目が悪い”のだと誤解している。
まぁ、どちらにせよ。目が悪いというのは間違いがないので、誰にも詳しい事情は話していない。面倒だし。





 オレがこの世界に生まれてから、ローレライの同位体であるからしょうがないことなのだが、今回被験者のはず

なのになぜかちょくちょく激しい頭痛を感じた。
そのあまりの痛さに何度倒れたかわからない。
いくつもの前世の記憶を持つオレだから痛みには慣れていたとはいえ、痛みを感じないわけではなく、その偏頭痛

が起こるたびに毎回意識を手放している始末。
そしてその頭痛の原因も [ルークとしての前世] を通じて理解している。

なので――

ある日。オレにむかってどこからともなく発信される人害電波――もとい、ローレライのコンタクトにより頭痛が

起きた瞬間、オレはブチぎれたのだ。



《――・・・ぃごぉ・・ょ・・・・・ルー・・・――聖なる・・・の――》

『・・・いたい』

 突如襲ってきためまいと吐き気を伴うほどひどい頭痛。
そして聞こえるノイズ交じりの声。

 オレは痛む頭を抑えつつ、なんだか感情がいっきに冷めていくのを感じつつ、ぶちりとどこかで何かが確実に切

れる音を耳にした。

そして冷えていた感情が勢いよく“状況”の確認を促し、前世の記憶から答えを照合し、痛みに倒れたとき落とし

た眼鏡のせいで普通以上に明るくみえる視界で周囲をみさだめる。
沸点を一時とおり越したオレの脳は、めまぐるしく演算を始め、すぐに求めた回答をはじき出す。

『・・・っざけんなよ』

 オレに接触してきたあの“声”を、その音素の流れの形跡をたどり、もっとも音素が濃い部分をみつけて、まだ

地殻に封じられている“奴”と繋がっていることを確認するやいなや、怒りのままに手を伸ばす。
伸ばした手は、常識的には有り得ない音素を掴む。
周囲の音素を気合いと意思だけでもって操り、本来ならつかめるはずないものを捕らえ
そして――

『このドカスがっ!!響け!ローレライの意思よ!!』

引きずり出すことに、見事な成功をみせたのだった。


 一度沸点を越え冷めたはずの怒りが、普通の沸点に戻り、烈火のごとくオレに死ぬ気の馬鹿力という奇跡をおこ

した。
怒りのままに“ソレ”をひきずりだしたが、一度弾き出したオレの計算によると、ひっこぬくという判断は間違っ

ていなかったようだ。
まさか音素なるものが手でつかめるとは思いもしなかったが、ギャー!というなんとも情けない悲鳴とともに地面

からスポンと小さな何かがぬけたとき、こんなが神でいいのかと、この世界をひそかに心配したのは秘密だ。

 地面からひっこぬかれた小さな人魂のような音素の塊は、第七音素意識集合体ローレライ(の一部)だった。
正確にはその精神の欠片にすぎないらしいが・・・。
本体はさすがにでかすぎてあれくらいの力技で開放させることはできず、相変わらず地殻の奥底で眠っているらし

い。
オレに接触を図っていたわずかな回線と繋がっていた部分だけが今の火事場の馬鹿力で本体から抜けたらしい。
ひっこぬけたって・・・おまえは畑に植わった雑草か何かかよと内心激しく突っ込まずにはいられなかった。
たぶん、あながちこの発想は外れていないのだろう。
雑草は表面部分をひっこぬくのはたやすい。しかし地中に埋まり張り巡らされた根をすべて取り除くのは難しい。

それとローレライは同じだ。

 いかにもな人魂はヤバイだろうと、側にいた生まれたてのブウサギにその光をつっこんだら、あらまぁ不思議。
なんとブサギの亜麻色の毛が一気に夕焼け色に変わり、ブヒブヒと何かに驚愕するような動作を見せてオレに抗議

をしてきた――ブウサギが。
驚愕のブウブウという鳴き声と共に、オレの脳裏に頭痛なしでローレライの「なにをしてくれとるじゃー!!」な

んて意味になる悲鳴じみた罵声が思念として届いた。

なんだ。ある程度地殻から出てしまえば、俺への負担(頭痛)なくなるんじゃんとか思って笑ったもんだ。








**********








 そんなわけでただいまオレはルークです。
ただし今度はレプリカルークではなく、オリジナルルーク――アッシュ――の位置に成り代わってしまっている。

『オレはまたアッシュの居場所を奪ったのか・・・』

  [過去] を思い返し、精神的にタフで常に前向きな〈〉もさすがに [ルーク] の記憶が入ってきてしまえば、

若干マイナス思考に性格が変わるというもの。
 過去に戻るというなら、誰からも何も奪いたくなどなかった。
被験者とレプリカ。できればそんな境界線がない時を過ごしたかった。
[前回] のような憎しみあうような関係ではなく、はじめから仲良くしたかった。
だって [前回] で [アッシュ] は、おれが“ルーク”でいることを最後には認めてくれた。
おれのことを認めてくれたのに・・・。

 だからこの世界では、はじめからアッシュ(被験者ルーク)に陽だまりを返そうと、そのために世界を変えよう

と思った。
だけどこの世界には、オレの知る [アッシュ] も、同じ経緯をたどるであろう“オリジナルのルーク・フォン・フ

ァブレ”もいない。
なぜならば、オレこそが“オリジナルルーク”だから。
 それに悔しくて、どうしたらいいかわからなくなっていた。
だから原因たるローレライに、八つ当たりをしてしまうのだ。

ああ、もう・・・頭がおかしくなりそうだ。

 ちなみにこのローレライ。 [前回] のローレライの意識が逆行し、今のローレライと融合したので、 [未来] の

記憶もしっかりあるそうだ。
本人いわく、癒しを司る音素集合体ではなく、星の記憶を司る精霊――つまるところ時間をたどっているからこそ

、“癒す”ことができ、さらに [おれ] を“逆行”させることができたのだいう。
ブウサギの姿でそう胸を張られた瞬間

『かっけす』

 思わずオレの口から漏れたのは、〈〉が前世でよくつかっていた口癖だった。








―――その日。
眉間に恐ろしい皺がよっていると言ってひきぎみなガイの指摘を無視して、“ルーク”がブウサギをいじめている

姿がその日はみかけられたらしい。
ハイ、オレですね。わかります。

っが。

それがどうした。
本当にまじで



『オレの平穏という望みをかえしやがれぇ!!!』



今日もファブレ邸は、オレの絶叫とブヒブヒという鳴き声が響いている。











※Abyssはたぶんネタとして書きやすいんだろけど、Vesperiaの方が好きだ。
昨日TVでTOAみたよ!
展開が突然すぎるな〜とか思った。
やっぱりつっこみどころしかない作品だよなぁ〜TOA。









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