09.アドレナリンと命のない街 |
-- side オレ -- 「この街、少しおかしいよな」 聳え立つ塔の群れは、人の知が栄えた証。 はりめぐらされた龍脈は今もなおチャクラを町中に送り込んでいる。 けれど実際街の中はともかく、その地下に広がるのは生活感のない街並みが続く廃墟のような場所で、 中には、やはり人の気配はなかった。 それに首をかしげつつ、オレは治っていない怪我をかばうようにひょこひょこと歩く。 そこでふと塔やら天井やらで覆われてみえなかった頭上に、青空の見える切れ目を見つけ、 いまはとにかく地上にでなくちゃなと、塔の基部を足場にして、上へと飛んでみる。 上からなら何か見えるかもしれない。 「あ〜ヤマト隊長に誰か近寄ったな〜。小さな気配・・・だれだろ?」 成り代わりで、しかも前世の記憶のあるオレには、前世の能力の一つであるチャクラを視覚化し探査する能力がある。 だけどこの街は龍脈があちこちにはりめぐらされているので、この能力を駆使するほうがやばい。 目が潰れそうだし、方向感覚も狂う。 なので、その能力を使わずに気配だけを探るように心がけた。 せめて同じ時代の仲間である(だろう)ヤマト隊長の居場所だけは常に確認しておかなくちゃなと、 気を配っていたら、そこへ極力気配を消したなにかが舞い降りたのに気付いた。 その気配は本当に微弱で誰か分かりづらいけど、感覚的に最近はあんまりあってないけどカカシ先生のような気がした。 そんななじみのある気配を感じて、そういえばここは過去だったと思い出す。 つまり子供時代のカカシ先生がいてもおかしくないということ。 むかしからそうだけど、どうもオレは一つのことに集中すると、ほかの事を忘れやすいようだ。 オレのおばかさん! な〜んて一人でつうこみをいれてみる。 今日は相方がいないので、かなりテンションがハイだ・・・っていう、自覚はある。 気分的には焦るべき場所で、なぜかオレの心は燃えていた。 この塔のてっぺんまでいけたら、オレは天才! 怪我してるのに登ったらそりゃぁ、えらいだろ? それにうおー!!!!って叫びたいところをがまんして、口を閉じてエンやこらと登っているのだ。勲章ものだと思う。 塔から世界を見下ろして、砂漠に向けて次はヤッホーと叫ぶんだ。 そうして高笑いをしながら空を見よう。 青い空はきっと心を癒してくれる。 ささくれだったケガは足ではなく心の中〜♪ オレはなにも悪くない。だっていろいろやっちゃったのは、ムカデだろ? そうだキューちゃんをさがさないと。きっとキューちゃんも同じ場所を怪我してる気がする。 ハハハ〜☆あっれぇ?ヤマト隊長?だれだっけソレ? あぁ、そうそう。アドレナリンがでていてオレはヒーハーで・・・ うん、なんかおかしいかもしれない。 とりあえず気を抜くと頭がおかしな回転を始めて感情が暴走しかけるので、オレは廃墟と地上とを隔てる天井に切れ目から地上に出ることにした。 地下からでるにも、まずはこの塔の土台ともいえるココを登る必要がある。 そこはやはりチャクラ不足という問題と、完調ではない左足のせいもあって、かなり時間がかかってしまった。 思わず舌打ちしそうになったほど。 なんど落ちかけた分からないながらも、ようやくのことで地上に出たら足に走った苦痛にうずくまってしまった。 「つ・・・・・・」 キューちゃんが離れてさえいなければ味わうことさえなかっただろう。 普通なら簡単に治るはずの傷。 ああ、この痛さの生で普段は出ないようなアドレナミンが脳内で大量に放出されて、オレはハイなのか。 とか、痛みに顔をしかめながらもボォ〜と周囲を見回し、自分が今、何本もの尖塔に囲まれているのに気付く。 「それにしても・・・・・・すげーな・・・・・・」 それらの頂上はまだはるか上で、どれほどの高さがあるのかわからなかった。 思わず塔を見上げたまま、ため息をついた。 さっきのオレはあそこに登ろうとかしていなかっただろうか? ヒーハーとか叫びながらダッシュで行くぜ☆とか思っていた気がする。 おそるべきハイテション・・・。 「それにしても・・・本当にここが、あの楼蘭なのか? 変わるにしてもさ、十年か二十年そこらでこうも変わるものか? あーでも、たしかに。さっきまでいた楼蘭のまわりも、砂漠だったな・・・・・・」 言いながら、自分いた時代の廃墟というよりも岩と微妙な遺跡の名こるだけの楼蘭を思い出して思わず首をひねる。 先程つかったチャクラを視る探査で、人がいなくと龍脈が街を支えているように見えた。 だというのに自分がいた時間と今の楼蘭との変わりようは、まるで巨大な災害か、地震があったかのようだと思えた。 だけど周囲を見回して、ならび立つ塔の間から、わずかだが砂漠がのぞいているのがわかった。 「あ・・・そういえばヤマト隊長って、無事なのかな?気配は分かるけど怪我まではわかんねぇな」 本当にうっかりしていた。 もしかすると自分と同じように傀儡に負われたかもしれないのに、だめじゃんオレ。 でもオレにとってはそれよりもキューちゃんがいないとダメ人間だという自信があるので、一番はキューちゃんさがしになってしまう。 だってヤマト隊長の側にはお助けマンよろしくカカシ先生(たぶん小さい)がいると思うし。 「うん。がんばれヤマト隊長!オレってばキューちゃんと合流するか!せめてそれまではいきのびてくれってばよ!!」 とりあえずヤマト隊長のことは保留にすることにし、ちょうど足の痛みも少しひいたので立ち上がり、また別の塔に飛び移ろうとした。 そのとき―― ドーン!ドーン!ドドーン!! 突然響いた破裂音に、とっさに身構えたけど、音の聞こえてきた足もとを見下ろして、驚いた。 警戒?なにそれ?おいしいのとつっこみたくなるようなにぎやかな光景が、さっきまでは 音の正体は、その群衆の上に打ち上げられている花火だった。ドーンという音とともに、光の花が眼下に広がる。 人影さえなかったあの広場にはあった。 一種のパレードといえばいいのだろうか。 あの人気が一切なかった場所には、どんだけー!!と叫びたくなるような人でひしめき、チカチカ明滅した色とりどりのライトに飾られた山車が、人々中をゆっくりと練り歩く。 「だから人の気配がなさすぎだっての!!こえーってばよ!死者の祭りかよ!?」 オレの成り代わりナルトとしての、前世クオリティーをなめないでもらいたい。 チャクラはなくとも、生物の気配と、チャクラコントロールだけは敏感なんだ。 そのオレがまったく人の気配を感じなかった。 なのに音に反応してみた足元には、突然現れたとしか思えない山のような人だかり。 少しおかしかった脳が一気に冷えて、冷静を取り戻すぐらいにはオレはびびった。 「・・・・・・い、いったい、なにしてるんだってばよ?」 亡者の行進にしては、やたら明るい声と、にぎやかな華のある雰囲気だ。 その場に隠れるように身体をかがめながら、恐る恐る声が聞こえる高さまで降りてみると、人々が口々にひとつのことを叫んでいるのが聞こえた。 「女王さまー!女王さまぁー!!」 (おうじょ?王女?普通、街を治めるやつを女王って呼ぶか?まさか自意識過剰な領主あたりが自分を王と呼べといってるとか!?) 自来也やカカシによくずれてるといわれたオレの思考が、やっぱり少しずれた回答をはじき出す。 とにもかくにも広場に集まった人々の目的はその女の人が関係あるらしい。 相変わらず龍脈が邪魔で、チャクラや生命反応をほとんど感じないけど・・・(汗) とりあえず人であると仮定し、話を進めるに――彼ら民衆は、広場に面したこの街で最も大きな塔にむかって、連呼し、バルコニーをみつめている。 やっぱり権力者って高いところがすきなんだな。 民衆の視線の先にはバルコニーがあり、どうやらそこから女王さまとやらが出てくるらしい。 「女王さま、か。よし、じゃあその女王さまの顔でも拝むとするか!」 龍脈を街の運営にいとなむ豊かさ。 光をさえぎり、けれど光を渇望するかのような塔の先端につけられた太陽のシンボル。 けれどその豊かさのただなかにあるというのに、まったく人の気配のない街。 けれど人が山のようにいる現状。 目にはたくさんのひとが山車をひいて完成を上げているが、そのどれからも生来の人らしい気配を感じない異質さ。 これだけ違和感のある街を治める者とはどんなやつなのだろう。 お も し ろ い―― オレは口端を持ち上げると、正面に見える塔にむかって飛び出していた。 ※『成り代わりナルトによるザ・ロストタワー』なかなかすすまない(汗) なにせ映画のシーンとはいえ、まんまはつまらない。 なら、うちの成り代わりナルトならどう思うか、どう動くか。 でもナルトはナルトだし・・・ ナルトっぽいのに、成り代わり君の性格のままで、ロストタワーネタ・・・。 そんなわけで微妙に第三者から視たら原作そのままのシーンにみえるけど、 やっぱりナルトの中身が違うよね――みたいな感じで執筆中。 これが意外とむずい(汗) セリフをかえたり、かえてなかったり。 かえつつも原作の雰囲気をどこまで壊していいのか、 壊さないほうがいいのか、ひじょうに悩む。 なかなか進まなくてごめんなさい。 |