『ザ・ロストタワー』
- N ARUTO -



08.十年前のボクと十年後の君





 -- side ミナト --





 そのときボクは――
どうやって意識を手放すかその方法を模索した。








**********








「クゥ〜ン」

 楼蘭の街中を駆けているとき、ふとなにか異質な気配がした気がした。
カカシがいない今はスリーマンセル状態であることから、 その二人の仲間に待ったをかけ、先程オレンジのこが傀儡と戦っていた付近で足を止める。
そこでみつけたのは、瓦礫のそばで動けなくなっている一匹の子狐。
左後ろ足からは血が流れていて、なんだかさっきのオレンジの木ノ葉の子と同じような場所に怪我をしているなとひそかに思った。
 だけど違いづいて、何か言いようのない違和感を覚えた。
異質な気配はこのキツネから。
これはただのキツネではありえない。

否、触れてはいけないもの――そんな気がして、手を伸ばすことができなくなった。

 しかし、そこで、ケガに気付いたシビが 「お前も、怪我をしたのか」とキツネの子に近寄って、 相手に警戒心がまったくないことからそのケガの手当てを行った。

そのキツネがおかしいって・・・異様だと、わかっているのはボクだけのようだ。

 手当てをおえたキツネは、先程とは違っていた。
痛みにかうまく働いていなかったような雰囲気が一変し、元気に飛び跳ねるように動き出す。
 そしてボクと目が合った。
その瞬間たちのぼる殺気と強い警戒のチャクラ。
だけどそれはボクだけに向けられているようで、チョウザやシビは何も感じていないようだった。


そこで目にしたのは――赤い・・・チャクラ。


 キツネのこは、シビの足元に隠れるようにしつつ、そのつぶらな瞳でまっすぐとボクをみてくる。
しだいに何かに気付いたのか、コテンと何度か首を傾げる。
そのあと、宙の匂いをかぐように鼻を動かしたあと、殺気をといて、シビの影から姿を見せる。

 かわいらしく首をかしげてたり、パサリとゆれるシッポはふわふわで触ったら気持ちよさそうで、 黒と黄色のコントラストがこれまた普通のキツネよりも似合っていて可愛い。


 ――だけど、だけどさ・・・これって

「でもなんでこんなところにキツネがいるんだ?」
「これだけの街だ。誰かが飼っていたのだろうと予測ができる」

 チョウザやシビが目の前でクリクリと目を可愛く開いて、嬉しそうに近寄ってくる子狐。
姿は人形のようで、「大丈夫だ。敵意はない」と 手を伸ばしたシビにすりよってその頬までなめているキツネを見て、ボクは思わず冷や汗が流れたよ。

「・・・・・・うわぁ〜」

「「ミナト?」」

 視線を反らしたいのに、そらせない事実に、思わず声がもれた。
それに仲間が不思議そうに声をかけてきた。

言えない。
言えるわけがないだろ!?

だってこれはあの伝説といわれた三忍でさえしらない情報。
じつはクシナは九尾の人柱力だとか、ボクは九尾と話したことがありますとかさ!!
そう、目の前のめちゃくちゃ可愛い生き物。
これが、まさか九尾とまったく同じチャクラを放っているなんて!!

いえるわけないだろ!





 ことの発端は、やはりあのオレンジの――ボクを殴って変なことを言って逃亡していった――あの子の捨て台詞。

『紅いチャクラをだす狐のぬいぐるみを探して!!可愛くてまがまがしいから一目瞭然だってばよ!
あいつがいないとオレは忍術が使えないから!』

人形というからには、あの子は傀儡師かなにかなのだろうかと思っていた。
だけど違う。
たしかに一見人形にしか見えないけど、これはどこからどうみても生きてる。動いてるし。
しかもあの子が言っていた『可愛くてまがまがしい』の意味が、今なら分かる。

だってこれ九尾じゃないか。

ボクは二代目人柱力として九尾を体内に封じているクシナの側にいるから、九尾のこともそのチャクラに触れたこともあるのでわかる。
そのまがまがしいと表現する以外知る由もない・・・赤いチャクラを。

「貸してくれる?」
「どうしたミナト?」
「いいから」

 本当は触るのも嫌だ。
食い殺されるような気がするし、そうじゃなきゃ、精神を攻撃されて焼け死ぬとか・・・されそうだ。
触るなんて言語道断。
それぐらい負の塊といっていいほどのチャクラをたれながしに纏っているキツネ。
なんでチョウザもシビも気付かないのかは、たぶんうまく隠してるからだろう。

「このこが、さっきの子がさがしてた相方みたいだよ」

 ボクの言葉に納得したように、シビたちは頷き、そのキツネを疑いもなく手渡してきた。

こ、こわい・・・

 心の中でどうか殺さないでと念仏のようにその言葉をボクはくりかえす。
震えるなボクの体。
恐れていることを気付かせるな。

だ け ど ・・・


 ―― ニヤリ


 ゾワリと全身に鳥肌が立った。
九尾可愛い顔を酷く恐ろしげにゆがめて笑った。
そして動けなくなったボクにかわって、自ら近寄ってくると、そのままボクの肩にのった。

『ひさしいな。その姿のお主を見るのは』
「っ!?や、やっぱり“君”なのか」

 突然頭に響くように聞こえた声は、どうやらボクにだけしかきこえなかいようだ。
チョウザたちは不思議そうな顔をしていた。

『なぁに。今のお主ならわしの願いをかなえてくれると思うての』

二人のことを考えてか、まるでなついているかのようにボクに嬉しそうに頬すりをしつつクゥ〜ンとキツネらしい声を漏らす九尾。
その九尾にボクは本気で背筋の凍る思いがし、このまま意識をとばすにはどうしたらいいのだったかと、気絶の方法を考えてしまった。

『なぁにたいした用ではない。おぬしらか主のにおいがしたのでな。ぜひ、つれっていってもらおうと思うての。
いまの封じられたわしではあやつのチャクラや気配さえわからんのでのう』
「主・・・あの子のことかい?」
『特徴で言ったほうが分かりやすいか?
赤いメッシュに目立つ黄色っぽい金髪に、 これまた珍しい青い目に、 さらにはもっと目立てと言わんばかりの、 忍とはかけ離れたオレンジの服のお騒がせ忍者じゃ。 本当のところあやつは黒がすきなんじゃがのう。 まぁ、今日もいつもどおり、たまたま、オレンジだったというだけじゃ』
「あぁ、そりゃぁご親切に長い説明どうも・・・・・・ハハハ・・・」

 九尾からはじっと〜っとした視線を物凄く感じるし、物凄く耳が痛い箇所にばかりトゲがふくまれた言葉だったとボクは思う。
思わず乾いた笑いと一緒にごめんなさいと言いたくなったほど。

オレンジ色とか黄色とか赤とかって・・・。
やっぱり、ボクとクシナのせいですよね〜。

「すみません、自重します」
『そうしてやってくれ』

 なんか九尾の印象違すぎないか?
そう思ったボクは悪くない・・・はず(未来のことまでは自信がないなぁ)

なぜか、あの子に対して素敵な乳母か家庭教師のような九尾に、ボクはにらまれっぱなし。
未来でボクはなにやっちゃったのかな・・・。
気になるけどいろんな意味で聞けない。
 あのオレンジの子が、本当にボクとクシナの間にできた子だとしたら。
なんとなく自分に子供が生まれた後の未来を想像して―― 簡単に想像できてしまったボクは、そうとうダメ親父になるんだろう。
あまりのことに思わず九尾と未来にボクらのところへきてくれるだろう子に土下座したい気持ちになった。

「ボクは親馬鹿になるのか・・・」
『なぜ、いまのおぬしのまま、まともな思考のままに成長してくれなかった!?』
「やっぱなるんだ・・・」

 九尾の心の絶叫に、ボクは思わずその場に膝を着きたくなった。
だけどさ・・・

ボクはボクだろうし。

やっぱりこどもが生まれたら、かまって、かまって、かまい通したくなるだろうし。
頬擦りとかしてみたいし、やっぱりオレンジの服を着せてみたいし!!
おそろいとかいいな〜。
赤とか黄色もいいかもしれない。
それにクシナと三人で一緒に手をつないでピクニックとか行きたい!!

 ごめん九尾。
ボクはボクだ。
未来でもボクはなにも変わってなんかいないようだ。


そんなボクの気持ちが伝わったのか、九尾からあの強烈な殺気がオレに向けられた。










 その後、九尾の頼みを聞いたボクたちは、九尾をあのオレンジの子のもとにかえすまでつきあわされた。
その間中、ボクは九尾を抱きしめつつずっと殺気を浴びていた。

殺気=恐怖=血の気が下がるという術式が誕生し、ボクは巨大な氷でも抱いて移動しているような気分だった。


あ〜・・・
もう貧血でボク死ねるかも・・・。












 九尾さん。少しでいいのでその殺気を緩めてくれないだろうか?
あ、無理?だめ?
そこをなんとか・・・








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