『ザ・ロストタワー』
- N ARUTO -



02.オレと龍脈の都





 -- side オレ --





 『龍脈』の光に飲み込まれたあと、目が覚めたのは、どこかの地下。
首元が涼しいから、やっぱり光の中で外れた額宛は幻じゃなかったようだ。

 楼高く昇る光
 沸き立ちたる想い
 守るべき竜の脈(ミチ)よ
 白刃刺す 空を仰ぎ


 オレの目を覚ますように聞こえてきたのは、どこか遠い昔に聞いたことのある歌声。
歌を歌っていたのは髪の長い女の子。
彼女は瓦礫の上でソラを見上げて、なんとなく聞き覚えのあるその懐かしい歌を口ずさんでいた。

 砂 風 荒ぶとも
 咲き誇る煌(コウ)の陽よ
 華に舞い散らん


「螺旋につたう・・・」


(あぁ、映画か・・・)

 前世やらNARUTOの原作知識があるオレは、曖昧な記憶を辿って、この歌をはるか昔に聞いたことがあったのを思い出す。
このイベントはきっと映画だ。
だけど内容はいまいち覚えていない。前世におけるNARUTOの映画でオレが見たことがあるのは、三日月島のなんたらかんたらみたいな・・・ふっとた人と、眼鏡の子と動物がいっぱい出てくる奴だけ。
あとはあいまいすぎて覚えてさえいないし、映画も見ていない。
たぶんこの歌は、TVのCMとしてみた程度だろう。

いい歌だ〜とか、しみじみと聞き入っていたら――

泣いたー!!!

女の子がこんな地下で、光が漏れる天井を見て泣いてるよ!!
って、ことは地下は地下でもただの地下ではなく、まさか牢屋なのか!?
じゃぁ、彼女は、外にあこがれる乙女設定!?
囚われの少女!?なんて濃い設定なんだ。
どんな映画だったんだ!?
覚えてないのが悔やまれる。

しかもよくよく見てみると、オレが大の字で倒れていたのは、誰かのお墓じゃないですか!?
どうする?どうすればいいんだオレは!?
そもそもオレは今どこにいるんだろう。

 少女のことはひとまず置いておいて、とりあえず頭や首にあるはずのいつもの感覚がないほうが怖いので、慌てて周囲を探す。
キョロキョロとしていると、ふいに視界に銀色の光が目にはいった。
すぐにそれが龍脈の中に飲み込まれた際に、手離してしまった“渦の国”の額宛だと気付きほっとする。だけどなんとなくだけど今、それをする気にはなれなくてポシェットの中にしまいこんだ。
本当になんとなくだった。
今は、ただの木ノ葉隠れの里のうずまきナルトでいるべきな気がした。
 額宛は見つかった。
あとはキューちゃんとヤマト隊長だけど・・・。
 さらに周囲を見回すが、側にはヤマト隊長の姿さえない。
いつもオレのふところにいるか、頭の上に載っていたぬいぐるみのような九尾のキューちゃんもいない。
キューちゃんがいないとオレはほとんど何もできない。
額宛はないと気になるけど、こっちはこっちで、むしろ生まれたときから一緒にいた相方だ。
だからキューちゃんがいないほうが胸がモヤモヤしてしょうがない。
これが俗にいう、不安という奴だろう。


『ナルトぉ〜』
(キューちゃん!?)

 キューちゃんをみつけたあとに泣いている赤毛の彼女に話しかけよう。そう思っていたら、キューちゃんの念話が届いた。
どこにいるんだろうとキョロキョロとみやると、オレのすぐ側の小さな岩がゴトリと動き、その下から相変わらずプリティーな人形のような容姿をしたキューちゃんが出てきた。

「キューちゃん!!」「クゥ〜ン!(ナルトォー!)」

 視線があった瞬間二人で抱き合って、涙を流して再会を喜ぶ。
お互い魂つながってますからね!あんまり離れるなんてとんでもない。

「うわ〜ん!!キューちゃんどこいってたんだってば!!一瞬とはいえ、一人にするなんてひどいってばよぉ!」
「キュ〜!キュイキュイッ!!!(わしも!というか、お前が手を離したんじゃぁ!!!)」
「いや。だってあの『龍脈』の圧力に逃げようとしたのおまえじゃん。キューちゃんに逃げられたらオレが困るんだって知ってるだろ?」
「キュイ(条件反射じゃ)。クゥ〜ン(四代目に関しては体が先に動いてしまうんじゃ)」
「あ〜それはわかる」


「・・・・・・あの・・・だれ?」


 オレが叫んだことで側にいた少女がとっさに逃げようとしたが、人形のようなキューちゃんとオレのラブラブな包容をみてピタリと足を止めた。
そして不思議そうに首をかしげた。

「オレ?オレはうずまきナルト。こっちは相棒のキューちゃんだってばよ」
「いつから?どこからここへ来たのですか!?」
「わぉ!オレ達完全無視みたいだってばよ!?」
「ですから、アナタは誰かとたずねているのです!!ここはお母様の眠る場所!神聖な場所をけがすとは・・・!!」
「や、ちょ、待つってば!!お墓の上に載っちゃったのはわざとじゃないから!!しかもさっき名乗ったじゃんオレたち」
「名前じゃなくて素性を聞いてるの!」
「あぁ、そっか。オレは木ノ葉の忍で、ムカデっていう悪い奴を追いかけてる最中にとうちゃ――じゃなくて、変な術式に巻き込まれて、気がついたらここにいたんだってばよ」

「・・・そんな可愛い人形を持った忍なんてしりません。本当に忍なのですか?」

 ジロリと睨まれた。
弁解しようとしたら――

「そもそもヤクザみたいに髪まで染めて。赤いメッシュなんて!!そんな自己主張が激しい派手な忍者なんかありえるはずがありません!!」
「ンナーッ!!!!?」
「なると?ラーメンがどう関係あるかも、あなたがどなたかは存じません。 ですが、あなたが忍のわけがないのは一目で分かるわ。もっとまともないいわけでも考えてから出直しなさい」

 ラーメンのナルトちがーーーう!!

 オレンジの服は、黄色と赤色の両親による趣味だ!!
オレは黒が好きだ!
しかも髪は地毛だー!!

そんなオレの訴えは完全に無視され、彼女はアッカンベーと舌を出してオレに背を向けると、「あなたなんか信じないわ!」といって走り去ってしまう。
慌てて後を追おうとしたら、ムカデが操っていた土偶にそっくりなものが迫ってきた。

「「ふえっ!?/きゅ!?」」

やってきた二体に攻撃をしようとして構えた瞬間、二体の土偶はバラバラと崩れる。
それに何が起きたんだと呆然としていたら、赤い髪の女の子が扉の向こうへと消えてしまい、唯一の出口だった入り口が壁でふさがれてしまった。

「しまったー!!出口がなくなった!」

頭を抱えてパニクになっているかのようなセリフを言ってみる。
だけど頭の中に、呆れたようなキューちゃんの「言動と行動があっていない」とつっこまれた。

『そう、叫ぶ割には視線が天窓を向いているのがお前らしいのう』
「そう言うない。オレってばいつもどこでも最良を選ぶのさ」

オレの視線は、今となっては唯一の出口である天井へと向けられている。
必然、焦るふりをしてもすでに興味がそがれた出口に対しては棒読みとなってしまう。

 あのこは自分から外に出た。
入り口もあそこだけ。あの子も言っていた。ここは神聖な場所。お母様のお墓だと――
つまりここは地下ではあるが、オレがはじめに考えたような地下牢屋やそういうシリアスな展開じゃない。
なら、オレはここから抜け出ても問題はず。
前世のあいまいな記憶からだと、この感じはどうも映画だとは思う。
なら原作どおりに動けばどうになかなりそうな今日ばかりだが・・・残念なことにオレはNARUTOの映画の記憶がほとんどない。
なのでこのままオレがどんな動きをしても問題ないのではないかと思う。
シリアスではない。ここはただの地下。
なら、出る場所は?

 オレの視線が再び頭上の天窓らしき場所へ向く。
見渡す限り、今外に出れそうな場所はあそこだけ――


『いくのか?』
「あそこからしかでれねぇってばよ」

「キューちゃんしっかり捕まってるってばよ!いくよ!」
「キュイ」

了解というキューちゃんの念話とともに、キューちゃんがスルスルとオレの上着の中に入ってくる。
ふんわりとした温もりがふところに入ったのを確認すると、しっかりジッパーをしめると地面を蹴り、壁を蹴って天井にあった丸い天窓を目指す。

 壁を蹴って、さらには目の前に壁が迫ってきたところで、空中でクルリと向きを変えて迫ってきた壁を足蹴にする。
そうやってじぐざくと壁を蹴って、上まで登っていく。
術を使わずにこんな芸当がいけるのは、忍者として足腰を鍛えてきたからだ。
こういうときだけは、忍者でよかったなぁ〜とか思ったり。
のようだったガラスを割って外に出た。

 外に出ると上着のジッパーをゆるめて、シュルリと襟の隙間からキューちゃんが顔を覗かせる。
現れた光景に二人でポッカリと口を開けたまましばらく閉じることもできず呆然としてしまった。
ガラスを割ってでた場所は原っぱのような緑地だ。
しかしここから見渡す限り、塔が建ち並んでいる。

目の前に広がったのは、先程まで任務できていた遺跡と化した楼蘭ではなかった。
あの女の子の歌のように、天高くそびえる塔の群れが、オレたちの前にあった。

「【楼高く昇る光。沸き立ちたる想い。守るべき龍の脈よ】・・・…か。
たしかに。これは凄いってばよ」

 『龍脈』の暴走に巻き込まれ、気がつけば知らない場所でした。
笑えねぇ。

 ここがどこかはわからないが、間違いなくサクラちゃん達といた遺跡とは違う。
今まさに栄えている最中のここは、高い塔が建ち並び、廃墟にはどうしたって見えない。
だから違う。
原因は父ちゃんの術が何らかの作用をしたのだろう。
どんな術か聞いてから里を出ればよかったと、脱力したが、こうなっては後の祭りというやつだろう。
 今、わかっていることは二つ。
この都のどこかにムカデがいるだろうこと。
そして、ここがたぶん『龍脈』を使って栄えた都だということ。
チャクラが普通の忍者より少ない分、オレは気配に敏感だ。
だからキューちゃんの中で力が増していくのを感じる。
ないはずのオレのチャクラもじんわりと上昇している。
忍術を使えるだけのチャクラ量を持つ普通の忍にはこの微かな変化は分からないだろう。
周囲に張り巡らせた糸のように、“力”の流れを感じる。

これが『龍脈』の力。


 ―――暖かいな。

「キューちゃんはどう思う?」

『お主だからそう感じるんじゃろうて。
普通の人間が直に龍脈を身体に取り込むことはできん。なにかしらのプロセスが必要なはずなんじゃが・・・やはりお主は変じゃの』

「普通じゃなくてわるかったな」


 オレがここにいることも
ムカデがここにいることも
この地で何かが起こるような気がするのも

すべて――
『龍脈』が大きくかかわっていそうな気がする。

そう思わせるのは、さっきの彼女の歌にもでてくる「リュウノミチ」という言葉からか・・・。



何かが起きるのだと・・・そんな予感がした。












もっともっと 歌って・・・
その歌は君の道を照らす光となるだろう――

それは龍脈の力が君に惹かれているあかし

君は委ねられた想いに 答えを返さなければいけない
その時は―― きっと すぐそこだろうから








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