08.仲間の絆 |
-- side オレ -- ミトナル式攻撃型封印式。 オレの結界が対象をさだめ、魂を攻撃する術式。 ミト師匠がオレの中にいるときは、封印式で相手の動きを封じてもらった。 いまはそれができないので、相手が動いてしまうと術がうまく作動しない。 まぁ、オレの場合は術よりも結界のほうが破壊力があるし、術自身は対象のチャクラを奪うものなのでターゲットは結局動けなくなるので変わらないけど…。 「一撃必殺っていやだってばね」 封印術のくせに、必ず誰かを殺さねば気がすまないといわんばかりの術。 キューちゃんのいうとおり、改良が必要そうである。 さて。オレたち下忍手前な七班は、どこの世界でもかわることのないらしい遅刻常習犯であるカカシ先生待ちである。 オレはキューちゃんをだっこして、こねくりまわしながら、術式の改良を考えていた。 サスケは一人鍛錬をしていて、サクラちゃんはそれをみながらボォ〜っとしている。 サクラちゃんに関しては、きっとサスケについていろ考えているのかもしれない。 時刻を確認するにこのまま原作どおりなら、カカシ先生はあと2時間はこないだろう。 仙術チャクラも使えるオレが探ってるんだ。気配もないことから本当に側にいないのだろう。 少しイライラしている二人をみて、オレはさっさと下忍になるため、この面子でチームワークをどうやったら呼びかけられるかと…まずはオレから近寄らねばと意を決めた。 「なぁなぁ二人とも」 「なによナルト」 「なんだウスラトンカチ」 「…え〜っと」 「なにか言いたいことがあるなら近くで話しなさいよ」 「ヴ…」 そうだよね。サスケに近寄れないからって、10メートル近く離れてたら聞こえずらいよね。 チラリとサスケをみると、いかにも不快ですと言わんばかりに眉間にしわを寄せてチッと舌打ちしていた。 オレは意を決めたんだ!この体が勝手に逃げ腰になるのを無理やり抑えて、キューちゃん頭に載せて、歩み寄る。 歩み寄れオレよ!じゃなければ下忍になんかなれないし!! 「ってか!いい加減にしてよ!あんたたちぎこちなさ過ぎるのよ!!! そもそもの原因は私がナルトにどけって言ったからじゃない!」 結局サスケもオレも一歩が踏み出せずグズグズしていたら、ついにサクラちゃんが切れた。 背後に「しゃー!!んなろ−−−−!」っていうのが見えた気がした。 原作のサクラちゃんは、綱手ばあちゃんに師事するまでは、かなり女の子らしい猫をかぶっていたから、こういう場面だったら「サスケ君もナルトももうやめてよ。私たち仲間でしょ」とか言って戸惑い気味にとめに入りそうだ。 だけどこっちのサクラちゃんは、自己紹介のときになにかを悟ってしまったらしく、もっと感情的ですでに綱手の弟子のとき並みの迫力を持っていた。 怒りに任せて側の幹に拳を振るっている様は、偶然にもチャクラが怒りで一点に集中したためすごい怪力を生んでいた。 シュ〜と音を立ててヒビの入る木。 肩を荒く上下させて怒るサクラちゃんに、オレ達は物凄い速さで歩み寄り、あわてて手を握って互いに謝罪をした。 肩まで組んで「オレ達仲良しだってば!」「あ、ああ…」とか無理やり笑ってサクラちゃんに仲良しをアピールしてみた。 それでやっと「よし!」と許可が出たので、オレとサスケはホォ〜っと肩から力を抜いた。 「とりあえずさ…オレってば、次からあんなことがあってもよけられるように努力するから! だから皆で強くなろうってば!!そ、そうすればあんな失態は二度とないはず」 「そうだな」 「そうね」 こうしてオレ達は互いに強さを競い合って、それぞれの特徴を伸ばして、立派な忍になろうと同じ目標ができ団結した。 「じゃぁ、まずは…とりあえずナルト!あんたは気配を読めるようにして足も早くしとききなさい!!」 「は、ハイ!だってば!!」 「……(サクラには逆らわないようにしよう)」 「さてと。まずはどうやったらいいかしら?」 「………強くなる方法か…」 「う〜ん。う〜ん。オレってば頭悪からわからないってば。やっぱ修行?」 「バカ。忍者は裏の裏を読むべしっていうだろ。なんでも修行で片をつけようとするな」 「それってつまりどんなときでも冷静な判断をなくすなってことよね?」 「ばっかだなぁ〜サクラちゃん。それちげーってばよ。裏の裏は表立ってば」 「あんたこそバカね。言葉のあやよ。例とかたとえ話のことよ」 とか話していて、原作とは根本的に違うこのチームならなんとかなるとかとほっとした。 たぶん二つの鈴を出されたとき、今の二人なら、もっと深く鈴の意味を考えようとするだろう。 あー、これでみんなで下忍になれるなと思っていたら・・・ 茂みの影に金色がチラリ。 「お、オレ帰るってば」 話の最中に突然立ち上がったオレを訝しげに見つめてくるサスケとサクラちゃん。 「おい、待てウスラトンカチ」 「そうよ。いったいどうしたっていうのよナルト」 これから演習だというのに、逃げるように立ち上がったオレのオレンジジャージをぱしっとつかんで引き止めるサスケ。 サクラちゃんも不思議そうだ。 だけど今は無理だ! 「後生だってば!!離して!!このままじゃやばいってば!!!」 またもや"あれ"がいたのだ。 どこから聞きつけてきたのか、表では木の葉で最高と誉れだかい金色の忍が手にカカシ先生の顔写真の貼られた藁人形と五寸釘を持って立っていた! 上着をぐいーっとひっぱられてありえないぐらいのびまくっているが、それよりも"オレ"がここにいることで、なんかいろいろとやばいことが起きようとしているのは理解できたので、サスケに離すように訴えつつその場を逃げようとあがいた。 「離すってばサスケぇ!!!ってか服が伸びる!!あの五寸釘の的がカカシ先生からサスケに変わる前に離すってばよ!!」 チラリと視線をサスケから父ちゃんへ向けると、今にも木の幹にくっつけられた藁人形へふりかぶったトンカチをおろそうとしていた父ちゃんと視線があった。 父ちゃんは藁人形など忘れたように、オレの方へヘラリとうれしそうな笑顔を向けてきた。 オレは口ぱくだけで、「いいから帰れ!!」と訴えた。 しかしそれがさらなる悲劇を生んだ。 『息子ラブフィルター』がかかった父ちゃんには読唇術なんて役に立たない。 自分のいいように読み違えてくれたようで「ナル君が来て!って呼んでる!!」とか騒ぎ始めた。 そのまま―― 「なっるく〜ん!!!よばれてきたよ〜!!」 と、両手を広げて、草むらから勢いよく飛び出してきた。 本気で出やがった!! しかも意思表示の激しい『四代目火影』の文字を赤色でデカデカとかいた羽織を羽織ったまま!! 「キューちゃんたのむ!影分身の術!!」 オレはあいつがこっちにたどり着く前に、手裏剣を取り出し、投降すると同時にキューちゃんがオレの頭の上で起き上がって手裏剣を影分身で増やす。 父ちゃんが一人でできる『手裏剣影分身の術』は本来なら花火のようにキラキラと増殖して敵を殲滅する。 まぁ、"うずまき"の血が濃いオレにはそこまで技量はなく、キューちゃんにたよるしかない。 それでもクナイは次々と刺さっていく。 手裏剣影分身で増殖した凶器達は、キラキラと土煙を裂いて怒涛のように浴びせられる。 たまに起爆札をつけたクナイも出したので、地面はえぐれ土煙がすごいことになっている。 突然の攻防にサスケもサクラも混乱しているようだけど、オレには説明している時間もかまっている時間もない。 だってオレの感覚が警告を告げている。 敵よりオレの方が危ないと! それに血のにおいがしない。たぶん怪我ひとつしていないんだろう。 このくらいいつも避けるから遠慮なく攻撃したけど、九尾の力も利用してるのに無傷とは…。 恐るべし火影の実力!! 「キューちゃん。"あれ"はどこいったてば!?」 「クゥ〜ン(わからん。あれだけのクナイを食らっても血のにおいひとつせん。おそらく瞬身…)」 がばっ!! キューちゃんと話していると、突然背筋に悪寒が走った。 気配も何もなく経験だけを頼りに振り向けば、そこにはあの白羽織の金色がいた。 そしてオレがまた攻撃態勢に入るまもなく、思いっきり抱きしめられた。 「あぁ!もう!!ナル君てばて・れ・や・さ・ん☆」 「ふぎゃー!!!!!!!!!!」 「照れてあんなに派手にやるなんて。父さんビックリだよ!でも息子の成長はすごくうれしい!!」 その後、いつもの暗部さんが父ちゃんをとめにくるまで、オレは骨がきしみそうな強さで抱きつかれ、長い間ほお擦りをされていた。 キューちゃんが果敢に挑んでいたが、ほとんどの力を封じられた九尾なんか四代目火影にとってみればただの子狐でしかなく、片腕で払われていた。 「「…ほ、火影さま!?」」 突然の火影の登場。 そして自分たちが知る憧れのまとたる威厳ある姿がまったくない姿に脳がついていけず、呆然と固まるサクラとサスケ。 あー、終わったと思った。 それから暗部によって取り押さえられた父ちゃんだったけど、記憶を消すなりして収拾をつけろと訴えたオレにもちろんだよと頷き、オレの横にニコニコと座った。 「え、えーっと、どうして火影様がここに?というか、さっきのは…」 「あ、"息子"とか発言?だってナル君、ボクのこどもだし。 あ、そうそう。いつもナル君がお世話になっています。これからもうちの子をよろしくね」 「「息子ーーーーー!?」」 突然の火影の登場にタジタジとしていたサクラちゃんとサスケは、父ちゃんのありえない挨拶にさっきよりも目を丸くしている。 収拾のつけ方がちげー!! オレはてっきりごまかしたり、記憶でも消してくれるのかと思ってたけど、父ちゃんてば開き直ったよ!? しかも見事に素性をばらしてくれた。 「ナルト!あんた火影様の子供だったの!?」 「ウスラトカチが!?」 「ばれたー!!!」 「あはは。仲良しさんだね〜。あ、そろそろカカシ君がくるからボクは帰るよ」 「火影様、仕事が…」 「うん。しかたないな。それじゃぁナル君をよろしくね」 「…それでは若」 「若。御前、失礼いたします」 ニコニコしたまま父ちゃんは、暗部のをつれて瞬身の術で帰っていった。 最後に爆弾だけを残して。 そしてオレはというと… 「……察してくれ」 なにかを二人に聞かれる前に、絶望に打ちひしがれていた。 知られたくなかった。 里の憧れたる英雄の実態があんなだなんて。 あんなのがオレの父親だなんて。 ・・・ばれたくなった!! オレは地面にうずくまりながら、涙をこぼした。 そこへキューちゃんが心配そうにオレの顔を覗き込み、ペロリと頬をなめたので、癒しを求めてぎゅぅ〜っと抱きしめさせてもらった。 気持ちは血の涙を流しているオレは、二人に視線を合わせられずそらした。 「ナルト。言いたいことはわかるわ」「(コクリ)」 「あんなんが親だなんて。知られたくないの…わかるだろ?」 「ナルト…あんたも苦労してんのね」 「ただの火影なら胸を張って息子だって言うってば!!"ただ"がつかないからイヤしなかったのに…あぁ、オレってばもうだめかも」 「まさかウスラトンカチが四代目の子供だったとはな。 まぁ、それ以上に"あっち"の方が強烈過ぎて、ウスラトンカチがいまさら強かろうが気にもならねーがな」 「そうね…まさか四代目がね。本当に予想外だったわ」 「…言わないでください。言わないでください。言わないでください。言わないでください。マジでお願いします」 「安心しろ。口が裂けても言わない」 「ええ、というか、むしろ言えないわ」 サクラとサスケは、しみじみと頷きながらオレの肩をポンとたたいた。 「がんばりなさいナルト!私たち七班の仲間じゃない。いくらでも力を貸すわ!」 「サ、サクラちゃん…うう〜、な、仲間ってこんなにいいもんだったんだってばね!」 「おれたちがついてる」 「そうよ!私、あなたの夢、心から応援するわ!!」 「おれも手伝う」 「サクラちゃん!サスケぇ〜!!ふたりとも…サンキューな」 「そのためには…」 「「「強くなろう(なりましょう)!!!」」」 こうしてオレたち、下忍第7班は強い結束力を得た。 目指すは、打倒四代目火影・波風ミナト。 「や〜諸君。今日もいい天気だ…って、あらま。どうしたの三人とも」 四代目打倒に燃えるオレたちに向け、のんびりとやってきたカカシ先生が首をかしげる。 「(目標のためにはまずはあれよね…)」 「(そうだってばね)」 「(奴は上忍だ。あいつをこせるぐらいに強くならねーと、とうていおれ達じゃ"あれ"の足元にも及ばない)」 「(しゃー!うなろー!!やってやろうじゃないの!)」 「(オレもやるってば!)」 「(ナルト!あとで修行つけてね)」 「(さすがにこればかりは修行しないと無理だな。おれも頼む)」 「(まかせろってば!)」 「(じゃぁ、まずは…)」 小声での会話を終え、ターゲットロックオンとばかりにギラリと目を輝かせるオレたちの脳内には、まずは目の前の忍びを倒すことしかなかった。 一番の原因は遅刻してきた鬱憤もあっただろう。 しかしそれはいまとなっては切欠に過ぎない。 なぜならオレ達には倒すべき遠い遠い目標があるのだから。 打倒火影! オレとキューちゃんの合作である"手裏剣影分身の術(起爆札付き)"を無傷でよけきった四代目火影をみているから、サスケもサクラも火影という生き物の強さを実に持って知っている。 ゆえにサクラたちも、昨日までカカシ先生をあなどっていたが、今は彼を弱いとは判断していない。 はたけカカシは、四代目火影よりは弱いにしろ相手は上忍。 まずは彼を超えなければ火影なんか倒せないと、オレたちには警戒心が生まれている。 獲物を見るような目で、ギラギラと目を輝かすオレたちに、なにを感じたのか。カカシ先生はマスクの下の顔を少し引きつらせていた。 オレたちのあまりの迫力に、先生が一歩後退した瞬間。 そのあと先生がなにかを言う前に、オレたちが持てる力すべてを出しきって襲い掛かった。 「火遁・豪火球の術!!」 「忍法・手裏剣影分身の術だってばよ!!」 オレたちが大技を繰り出している間に、サクラちゃんは自分ができることをみつけだし、すばやくクナイをなげていく。 「お、おまえらぁマジやめてぇ〜!!ちょ、ちょっと待った!! ちょっと遅れたぐらいでなにもそんなに本気出さなくても!? ってか、いつのまにそんなに結束力ついちゃったわけ!?ってか、ナルトのその尋常じゃない強さはなんなのぉー!?」 ヒィ〜!と悲鳴を上げながらカカシ先生があわてたように、必死でよけつづける。 だけどオレとキューちゃんの手裏剣は数打っちゃあたるをモットーにしているので、ほとんど隙はない。 それに誘導させられて行き着く先には、サスケが火遁の準備をして待っている。 それを援護するように、クナイに糸をつけたものを張り巡らせていくサクラ。 ちなみに糸はサスケから譲られたもので、油でしけっている。 そするとどうなるかというと―― 「や、やめろ〜!!!!」 ごぉーーーーー!!! どおーぉん!! 派手な音が演習場に響いた。 うん。オレたち、いいチームメイトだね。 オレ達、第七班の結束は固い。 「あ〜…おまえら」 「なんだってば?」 髪の毛までブスブスとこげたカカシ先生が、オレ達三人を丸太の前に集めて言った。 「……もう合格でいいから睨まないで」 |