世界に笑顔を
- N ARUTO -



07.原作との違い





 -- side オレ --





 下人班が決まった。
それまでに起きた中で、原作と同じようで違うことがいくつもあった…。

 まずはじめに、三回も卒業できなかった理由。
それは試験日前後を狙って色々と奇襲やらなにやらの妨害を受けていたからだ。
まぁ、裏の任務とでもいおうか。本当に色々あったんだ。
それを終えて戻ればいつも不合格。


 今年やったことでの原作との相違は、オレがした火影岩のらくがきが、四代目限定であったこと。


 さらに卒業試験のとき、「息子の雄姿」が見たいと窓に張り付いていた四代目火影の姿を見つけてしまい、あまりの驚きにびびって噴出した瞬間、得意なはずのチャクラコントロールを間違いおかしな分身ができた。
オレでも唖然とするほどのヘニャリ具合は、まさに原作そのままだった。
心の底からオレはへこんだ。
ここまで同じ歴史をたどらなくてもいいじゃないかと思ったが、やはり失格となった。


 そのあと、あの親父を何とかできないだろうかとブランコにのってため息をついていたら、ミズキがやってきた。
いろいろオレについて誤解しつつも、ミズキはやはり"あの話"を持ちかけてきた。
話に乗るのも面白そうだと、馬鹿なふりをして話をあわせた。
 とりあえず禁術書は、父ちゃんに借りた。

「里抜けをたくらんでいる奴が『ドベのナルト』を使って禁術書を持ち出して、里に害をなそうとしている。
捕獲ついでにオレのストレス発散のサンドバックになってもらいたいから、禁術書貸してほしいんだってば」

そう言ったら父ちゃんは、「里のためなんてさすがは僕の子だ」と泣いて喜んだ。
そしてあっけなく禁術書を借りることができて、西の森に行った。
 そこでわかったことは、原作とは違いミズキは九尾ではなく、四代目火影を憎んでいたということ。
所詮ただの嫉妬だ。
なんたって父ちゃんは人望もあるし、天才的な忍者だしな。
しかもどうやって知ったかしらないが、オレが火影の息子と知って声をかけてきたというのには驚いた。
オレが火影の子だと知っているのは、父ちゃんや母ちゃんの親友である名家や旧家の人間だけだ。
緘口令だってその人たちに向けられたものだ。
まぁ、九尾のことは、オレたち家族や上層部あたりの秘密なので、どこからももれてはいないだけまだマシだろう。
 とりあえずミズキにはオレのストレス発散に付き合ってもらうことにした。
原作を見て常々思っていたけど影分身の術は、実に使い勝手がいい。
便利そうだし、せっかくだから、ミズキが来る前に覚えてみた。
後はオレのストレス発散および、新術の実験にミズキを使った。
ドベなオレを利用して、四代目を落としいれようとしてきたが、逆にオレが八つ当たり気味にミズキをぼこってみた。
変顔になった相手は、暗部の方に連れて行かれた。
 卒業はやっぱしイルカ先生が来て助けてくれたのでうまく合格となった。
その間、以下のような会話があったりなかったり…。

「そいつは四代目の息子なんだよ!!
三年も卒業できないようドベで、同じ血を引いてるなんて火影もどれだけ尻拭いしてやったことだろうな。
お前なんかさぞ里の恥じだろうぜ!!」

とかなんとか。

イヤ…ね。尻拭いをしているのはこっち。
しかも卒業できなかったのはすべてあなたが言う火影のせいで。
って、言いたかったけどこらえた。
そうしたらミズキは、よくそれだけ悪態が出るなと思うほどいろんなことをべらべらしゃべった。
とにかく悪口が出るわ出るわ。
おかげでミズキのセリフなんか少ししか覚えていない。
だけどそのせいで、イルカ先生にあいつの息子であることがばれてしまった。
もちろん黙っていてくれることになった。

「まさかお前が火影様の息子だったなんてな。でもお前はお前だ」

そうしてイルカ先生から額宛をもらえた。
アホな父親の奇行のせいで卒業試験に四度も落ちたオレとしては、これでやっとアカデミーをでれると本気で泣いた。




 
 原作で物凄い変な顔で忍者登録書を提出して、その後木の葉丸と会うシーンがある。
あれは現在火影が四代目だったこともありなくなると思ったが――ふつ〜にあった。

「お前…本当にそんな顔で撮るのか?」

写真屋の爺さんに言われたが、オレには顔をつくろうことも取り直すようなそんな気力も力もなくて頷いた。
 もうなんというか、昨日のミズキ事件のせいで、家に帰ったあと父ちゃんが暴走して暴走しまくって…すっかりオレの精神は擦り切れてしまった。
うちのこを傷物に!よくも!ミズキを殺す!とか…里長がそれじゃぁ、ダメだろうとか思った。
おかげで今なら術を使わずに、封印術・屍鬼封尽の死神が見れる気がした。
そうこうして出来上がった写真は、今にも魂が抜けそうなものすごい衰弱した幽鬼のようなオレが写っていた。
写真屋の親父の顔が引きつっていたのが今ならわかる。
さすがにこれはと思ったけど、気力のないオレはその写真を書類に貼り付けた。
 こうなった元凶とこれからさしで会わなければいけないなんて…さらに憂鬱になった。
 四代目の執務室へと向かう途中で、木の葉丸と偶然ぶつかった。
どうも三代目のじいちゃんの執務室に向かう途中だったようだ。
本当に…引退したのにまだ仕事場まで持っている三代目がかわいそうで仕方ない。
チラリとみやると、木の葉丸はオレをみて「ヒー!」と悲鳴を上げて尻餅をついた。
そこまで怖がられるとは、自分はよほどすさんだ顔をしていたらしい。
本来なら木の葉丸が三代目に勝負を挑んで飛び込んだ際にこけるシーンが、なぜかオレの顔を見てこけた。
ついでに「ギャー!!オバケ!」と叫ばれ、そこでやっと我に返った。
それからすぐあのグラサンエリート教師がやってきて、オレをみて軽蔑するような目を向けてきた。

「こ…こいつは確か……」
(暴力しかとりえのない他国の女の息子。しかも三年もアカデミーを卒業できないドベか。私の大嫌いな落ちこばれだ…)

オレ、読心術が微妙にできます。
そこでこいつが今の言葉を声に出して言わないでくれたことに、心から感謝した。
オレも母ちゃんもなんといわれようと気にはしてないけど…。
気にしては切れる人が一人いるんだよ。
それも今、グラサン教師の背後の扉からこっちをみてる奴とか。
音もなくいつのまにか四代目火影の執務室の扉は少し開けられていて、そこからじーーーーーっと見ている青い目をした金色。

コワッ!!!

ちなみにグラサンが振り返ったときには、もうそこには誰もいなくて扉まできちんと閉められていたりして…アンタ怖すぎだよと思った。

 ついでにいうと、その後一人で室内に入るとどんな目にあうかわかっていたので、無理やり木の葉丸の背を押して四代目の執務室に入った。
恐ろしいことに物凄く爽やかな笑顔で席についている威厳ある火影様がいた。
こういうときばっかり見事な仮面を被っている金色をみると、視線を思いっきりそらしたくなるのはなぜだろう。
とりあえず木の葉丸を盾に、オレはソクサクと書類を出して声をかけられるより先に逃げ出した。





 翌日。
 母ちゃんの作ったご飯を食べて、アカデミーに向かった。
あんまりに眠くて、だらだらとひなたぼっこをしながらウツラウツラとしていたら、横にサスケが座った。
そういえばこのあと何かイベントがあったようなと首を傾げていると…。
サクラちゃんがきた。
眠たかったし、どけと言われたから軽く譲ったけど――そのとき側を通った生徒の一人におされた。
やばいとは思ったけど、眠気でふらついていたオレはそのままたおれ…
恐怖の惨劇は原作とずれつつも発生した。

ブチュ。

音がして、オレの方は柔らかいものに顔を覆われていた。

「きゅぅ〜」
「ゲホ。毛が…」

キューちゃんの悲鳴と、サスケの咳き込む音。
なぜか先程まで頭上にいたはずのキューちゃんが、オレの顔を覆うようにはりついていた。
そういえばキスシーンなんてものもあったなと思い返して、顔に張り付いた黄色の塊をはがしてその優しい心に涙して抱きついた。

「キューちゃん!!助けてくれてありがとうってば!!」
「きゅう!(無事でよかったナルト!)」
「うん。オレも死んだと思った!本当にありがとうってば!」

キューちゃんの自己犠牲により、オレのファーストキスは防がれた。
それからずっと。その日は、オレはキューちゃんを抱きしめていた。いわば心の盾だ。
ちなみにキス未遂事件からは、サスケから距離を置いて、とっととシカマルたちの横に移動した。
昼飯?そんなものシカマル達と食べたさ。





 っで、ただいま担当上忍待ち。
時計の針の音だけが、カチコチと音を立てている。
下忍班のメンツを聞いてから、はや数時間。
オレはサスケからとにかく離れた位置で待機中。
さっきは事件のせいで寝れなかったけど、こうも待ち人が来なくては、まったりした空気の中では眠たくもなるというもので…。
ウツラウツラ。ガッ!
オレはハデに机に頭を打った。けど、そのまま寝た。
離れた場所にいたサスケとサクラが物凄く引きつった顔をしていたが気にしなかった。
 それからさらに1時間後。
なんとなくオレの感覚の範囲に、かなりの手誰と思われる気配が近寄ってくるのを感じた。
黒板消しでも仕掛けようかなと〜思ったけど、扉の隙間があるのがいやで代わりにキューちゃんを紐でつるしてみた。
キューちゃんはぶら〜んとなされるがままにぶるさがっていたけど、その心の声はかなり焦った風だった。

『(な、なにをするんだナルト!?)』

う〜んと。オバケやしきでコンニャクが顔面にたたきつけられたのと同じ感じ?
そう心の中で返すと同時に。

ガラリ、バフッ!

見事にキューちゃんの腹に顔を突っ込んだカカシ先生の姿がありましたとさ。
カカシ先生はクリーンヒットした狐の人形をつまみつつ、こちらを一瞥してあの一言を言った。

「ん――…なんて言うのかな。お前らの第一印象は」

嫌いだ。

そのドストレートな言葉に、大人気ないなーとか、カカシ先生以外の全員が思ったのは間違いない。
 キューちゃんだけが泣いていた。
聞こえていたのはオレだけだけど。





 自己紹介?
カオスだったよ。

「じゃぁ、自己紹介を……っていうか、その黄色くて赤いの。なんでそんなに離れてるんの?」

 屋上につくなり、サスケからおもいっきり離れて、しかもサクラちゃんの後ろに隠れるようにいたオレに、いち早く気づいたカカシ先生が、ものすごくあきれたような目でこっちをみてきた。

「いや…そのなんていうか、つい体がに勝手に動くんだってば…」

嘘じゃない。
さっきのキス未遂事件を思い出してしまい、ついそばによると危ないんじゃないかという恐怖感がでて…。
そんなオレにサスケが眉を寄せてどこか腹立だしそうにしてたけど、オレが避ける理由に気づいたのか、チラリとオレの頭の上のキューちゃんをみて「おぇー」っと口元を抑えて視線をそらした。
サクラちゃんはオレたちの様子に思い当たる節があるのか、オレをかばうでもけなすでもなく、好きなようにさせてくれた。
 そんなオレたちをみて、カカシ先生は「こりゃぁ、この後の演習なんかしなくてもこの班だめだな〜」みたいな遠い眼差しで宙を見上げていた。
 ごめん。カカシ先生。
だって、あの事故は、ファーストキスもまだな青春まっしぐらなオレたちにはきつい。
たとえ原因のひとつにオレの寝ぼけ具合と、暴れていた生徒が押したという現実があったとしても……。

あぁ、本当に未遂でよかった。

そんなわけで、サスケとはギリギリ2メートルの距離をとって、オレは二人の傍に近づいた。
それ以上はどうしても近寄れなかった。

それからカカシ先生の謎の深まる自己紹介を聞いて、次にオレの番がきた。

「オレさ!オレさ!名前はうずまきナルト!好きな物はラーメンと母ちゃんとじいちゃんと師匠。
嫌いなものはラーメンができるまでの待ち時間。あと借金と四代目火影。
将来の夢は、今の火影を越す!!
ンでもって四代目をひきずりおろすんだ!そんでじいちゃんに今度こそ楽させてやるんだってばよ!」

「え?あの…借金?嫌いな物が火影様って……」

「なんだてば?知り合いのばあちゃんの借金を押し付けられたことがあって、それ以降オレってば節約人生を生きるって決めたんだってばよ」

 四代目?うん。いつか引き摺り下ろすよ絶対にね。
じゃないといつか木の葉がなくなりそうだ。
そう思ってカカシ先生達のツッコミを無視をしていたら――なんかいた。
オレは見てしまった。
カカシ先生の遥か背後。火影岩の上に、キラキラと輝く金色が今にもカカシ先生を射殺せんばかりにハンカチをかみ締めて、クナイを投げようとしている光景を…。
カカシ先生に危ないというべきか。かばうべきか。くるだろうクナイをドベの演技をやめて叩き落すべきだろうか?
でもこの距離なら、たぶん避雷針の術でなげてくるとか思うよ。あの金髪。
だってカカシ先生って父ちゃんの弟子でしょ?絶対すでに避雷針の術がどこかにマークされてるはず!
そうするとさすがのオレでも防ぎようがないよ。
確実にカカシ先生死ぬよね。
 どうしようかと思っているオレの顔は青く、血の気が引いていたらしい。
みんなに心配されてしまったけど、あの怒り狂った金色を仲間たちにばれるわけにはいかない。
あわてて父ちゃんから視線をそらして、なんでもないふりをする。
 だけど四代目の父ちゃんがクナイを振り上げたのを視界の隅で見つけ――とっさにカカシ先生を守ろうと立ち上がったところで、慌てたような暗部が四人到着し、必死に押さえ込んでいた。
遠くからオレが見ていると気付くと、悔し涙を滝のように流している父ちゃんをひきずって暗部たちは去っていく。
その際にオレにもう大丈夫ですと合図を送ってきてくれたので、それにホッと息をつく。
 オレの顔色や言動がおかしかったせいか、カカシ先生が何かを言いたげな表情で見てきた。
しかもサクラやサスケにまでなんか変人のレッテルを貼られた気がする。

なんてカオスだと思った。


 さらに、次にあったサスケの自己紹介だが…あれもまた凄かった。
一族が全員生きていて、里も一族も仲が良好だと、あそこまで人って違うんだなって思った。

「好きな物は兄さん。嫌いなものは兄さんが嫌いなもの全部。
それから…夢なんて言葉で終わらす気はないが野望はある。
兄さんの夢を一緒にかなえることだ」
「えー。おまえってばおまえってば、ブラコンだったのかよ!?」
「違う。オレ兄さんを心から尊敬しているだけだ」

「………あー。まぁ、じゃぁ、次。女の子ね」

「え。あー…えっと春野サクラです。
好きな物は…(チラ)今はもうなにもありません。嫌いなものは…今の現状です」

「「「………」」」

サクラちゃんがシュールだった。

 そしてカオスでした。
なんか色々カオスだった。










「かあちゃーん!!!!うちの班やべーってば!!絶対絶対いろいろやばいってば!」

 あまりのカオス具合にこの班もうだめなと思って、オレは家に帰るなり母ちゃんに今日のことをすべて語った。
サスケとのキスジーンの話では、どこからともなく父ちゃんがあらわれてキューちゃんにGJとウィンクつきで親指を立てていたり、うちは滅ぼすとか馬鹿げた発言が聞こえたけど、それは横で笑顔だった母ちゃんが瞬殺した。

とりあえず明日は頑張るのよと励まされた。
あまりの衝撃の数々に、オレは次の日にはカカシ先生が言っていた「ご飯は食べるな」という言葉が頭からすっかり抜けていた。
ついでにミトナル式(以下略…)を使われたわけじゃないのに、魂も抜けた気がする。








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