06.一分一秒の攻防 |
-- side オレ -- いつも狐の人形を持っていたら、女々しいといわれた。 金色に赤のメッシュ。 悪目立ちするその髪のせいで、オレはじめられていた。 ときにはイジメられる原因に、あの鬼のような最恐の女【赤い血潮のハバネロ】の息子であることに対する言葉だったり。 「だってばよ」という、変な口癖のせいだったりした。 さらにはオレがしでかしたイタズラに対するものもある。 それはいい。 ドベでダメダメな風に見えるように、オレがそうなるよう仕組んだことだから。 だけどこれをあえて感受するのは、オレに秘密があるから。 オレとしては絶対に隠し通さなければいけない三つの事柄。 それがあるから、オレは原作のナルトのようにドベを演じた。 一つ目は、オレに力があること。 実際はミト師匠に扱かれたので、チャクラコントロールだけは尋常じゃなく巧いはずだ。 たぶん、上忍級のいろんな術も扱える。 それに新術の開発はもう趣味なので、たぶんオレにしかできない技とかいっぱいある。 もちろん家の中だけでしかやらないけどね。 ついでにいうと、実はすでに仙人モードにもなれる。 これらの実力はすべて隠せと、三代目のじいちゃんと母ちゃんに言われた。 二つ目はオレがいつも持っている狐のぬいぐるみが、実は生もので、実は封印されてるはずの九尾だということはばれてはいけない。 さらにいうと頭にのせているぬいぐるみが、自分の意思で動いているなんて事実は極秘だ。 周囲の皆は、オレが人形を操っていると思い込んでいる。 いわばクグツだと信じきっているし、そういう風に見せている。 もともとキューちゃんは実体化すると、【死式・環呪封】がフルに働くらしく余計チャクラを消耗するためほとんどぐったりしていて動かない。 なにせチャクラの塊であるキューちゃんは、生物としての機能は待ち合わせていないため生きている気配も呼吸のための動きもないのでぬいぐるみそのものだった。 だから普段から外に出している。 人の目があるときにキューちゃんを動かすときは、チャクラの糸を目に見えるようにして、操っている風に見せるのだ。 今のところ、この二つは問題なくクリアしている。 しかし最後の秘密がやっかいだった。 三つ目は、"アレ"と血の繋がりがあること。 何が何でも"アレ"とオレとのの関係をばらすわけにはいかない。 だからオレはとことんドベになった。 例え、わかるテストも変なことを書いておいた。 さらにはシカマルやキバなどの名家の子等とイタズラをすることで、"名家"という存在を引き立たせ、オレはただのドベになった。 いわば"名家"を盾にした隠れ蓑だ。 だというのに、アレは隙をついてはやってくる。 例えば、オレがドベだとか髪の色が変だとかいじめられると、どこからともなく現れたり。 そのたびにオレの肝が冷えた。 以前、あまりにしつこく"アレ"が近寄ってくるので、里をでていた自来也の元に身を寄せたことがあった。 しかしその策は裏目に出た。 あれ以降、父ちゃんは自来也を目の敵にするようになった。 しかも数ヶ月おいて久しぶりに里にもどれば、珍しい髪色に慣れることをしなかた子供たちからのいじめは増え、恐ろしいことにオレに対する"アレ"の過保護具合が増したのだ。 そうして段階を踏み、我が父にして四代目火影・波風ミナトは変態になってしまった。 ばれてはいけないのは、四代目火影の実態と、その変態とオレが血が繋がっているという事実だ。 最後の三つ目こそ、上層部にばれるより、周囲に知られたくない。 もうばれるうんぬんより、知られたくないという感情が強い。 ついでにあまりの過保護っぷりに、母ちゃんでさえあきれているほど。 【赤い血潮のハバネロ】といわれたほどの母ちゃんだ。 はじめはイジメっ子にギラギラと殺気を向けていたりしたものだ。 だけど最近では「子供の喧嘩に親がかかわるんじゃないってばよ!!」と、乱入しようとする父ちゃんを拳で沈めている。 っで、現在。 はっきりいって、オレは冷や汗が止まらなかった。 完全に気配は消しているが、教室の中に"アレ"が変化した"何か"がいる。 それだけはわかった。 ましてや頭の上でぬいぐるみになっていたキューちゃんが、一瞬身体をこわばらせて警戒態勢に入ったことからソレが錯覚でないとわかる。 「明日は学校の卒業試験だぞ!!お前は前回もその前も試験に落ちてる!!外でイタズラしてる場合じゃないだろ!」 「あー。ねむいなぁ〜。めんどうだってば」 「こぉら!!ナルト!!人の話をちゃんと聞かんか!!」 声と共にヒュッ!と音を立てて、チョークが宙を舞った。 「ギャフ!!」 飛んできたチョークをよけることはできたが、"アレ"に気を配りすぎていたためうっかり直撃してしまった。 しかし運がいい。 それにより一瞬だけ殺気が溢れた。 「ん?なんだか今日は寒いな」 「せんせーってば、怒鳴りすぎでのどを痛めたんだってばよ。それで風邪でもひいたんじゃなねーの?」 「って!怒らせてるのはお前だー!!」 「ニッシッシ。イルカせんせーのアホー」 「なっ!?なんだと!」 この場にいる誰も気付かないような一瞬。 殺気はイルカ先生のみに向けられていた。 だけどオレにはそれで十分。 『(とらえた!)』 『(どうするんじゃナルト?)』 『(このあと捕まえる)』 少しずつオレが知っている未来とは変わってはいるが、同じ部分もある。 今日オレは四代目の顔岩(のみ)に落書きをした。 今は卒業試験前の抜き打ち試験ということで、教室で変化の術の復習だとイルカ先生が宣言し、それにみんなから悲鳴が上がっている最中だ。 会話事態は少しずつ変化しているだろうが、未来への流れは何も変わっていない。 ならこの後の内容はわかっている。 「次!うずまきナルト!」 「へへん!ぎゃふんって言わせてみせるってばよ!」 オレはそういいつつも普通に変化の術など行う気はない。 実際にやるのは、変化ではなく影分身。 その術の効果で身体を煙が覆った瞬間、影分身を残してオレは瞬身で天井に張り付いていた一匹の小さな虫に蹴りをかまし、虫の変化が解けるよりもさきに瞬時に結界を張って自分たちの姿を見えなくさせる。 結界を張り終わるとほぼ同時に、虫だったものの変化がとけ目を回した金色のものが落ちてくる。 そこで床に落ちて生徒の前にアホな姿をさらされて、色々とばれる前に、チャクラの糸を出してぐるぐる巻きにする。 そのまま蹴り落とす勢いを利用して、廊下に金色の物体を吹き飛ばした。 とたんどこからともなく黒いものが数人廊下に降りて、情けない四代目火影が廊下にたたきつけられる前にキャッチする。 みると全員が干支を模した仮面をしている。 オレはチャクラコントロールで天井に張り付いたまま、彼らにさっさといけと合図を送る。 暗部たちはオレに頭を下げると、現れたとき同様にすぐに姿を消した。 慣れた手つきの彼らは、逃亡しまくる四代目捕獲のためにつくられた部隊であり、オレのことも必然的に知ることとなった哀れな苦労人たちである。 オレは彼らの気配がなくなるのを確かめると、影分身へと視線向ける。 「うふ〜ん…だってば」 そしてイルカ先生が、鼻血をたらして後ろへと倒れた。 オレは影分身が変化をとくと同時にその煙に紛れて分身を消して、原作同様にお色気の術なんてバカなことをやってくれた影分身とすぐさま入れ替わる。 この間、すべて一分以内に起こったことである。 その日、家に帰ると、久しぶりに父ちゃんが家にいた。 そして怒り狂った母ちゃんが父ちゃんをシメテイルところを目撃してしまった。 「ただい…」 「どこまで人様に迷惑かけたら気がすむんだってばね!!とくにナルトと暗部の皆様に!」 「いやだってナルくんがピンチだったんだよ〜」 「んなわけあるかっ!! 里の長が逃亡して仕事がたまる方がピンチだ!!」 ドッカ!という音が聞こえたけど、みなかったことにした。 |