05.あれから |
-- side オレ -- ::: 拝啓 ::: 前世の赤い髪のお父様。 オレはナルトとして生まれました。 でも元気です。 新しい両親ともうまくやっています。 それとオレの中にいた祖母のようなミト師匠の 妙な頼まれごとを引き受けてしまい キューちゃんと日々泣いています。 だけどすごく楽しいです。 今はとても平和です。 あ、オレってば、医者を目指しています。 応援していてください。 オレが本当の意味で、この世界に誕生して早13年。 九尾襲撃事件もなく、凄腕の忍達がいなくなることもなく、木の葉の里は威厳を保ったまま四代目火影のもと安定している。 オレが生まれてすぐにキューちゃんとミト師匠の力を借りて変化をし、マダラを殺した理由とその術について話した。 はじめのうちは九尾にのっとられたとか思われたようだけど、きちんと両親や火影様たちにオレのことから色々と話した。 ミト師匠のことキューちゃんのこと、新術のこと。そしてうちはマダラのこと。別の世界のうずまきナルトのたどった未来のこと。 知っていることを全部話し、いまではすっかり仲良し親子だ。 オレの話をきちんときいてくれ、プライドがやたら高いうちは一族のこともダンゾウの"根"のことも、波風ミナトはうまく誘導している。 おかげでいまのところ里に反乱分子はない。 でもオレはやっぱり里の中で、『波風』姓を名乗れない。 父ちゃんは四代目火影というだけでも問題ありだが、それに加えて九尾のことを知る上層部から圧力が来るらしい。 そのせいでオレは『波風』姓を名乗ってもいないし、親子だとは公表されていない。 まぁ、一部は知っているようだけど、そこには緘口令がしかれている。 原作とは違った世界。 だけど同じようにやっぱり、オレの存在については緘口令が敷かれている。 意味も立場も何もかも違うけど…歴史ってそう簡単には変わらないんだとおかしくなった。 そう、その緘口令はオレを守るためでも、原作のように罵りや罵声は聞こえない。 聞こえるのは里の大人達が、上層部からオレを守ろうとしてくれる温かさだけ。 もちろんそこに彼らのいろんな意図があったとしてもだ。 オレを罵る者は相変わらず数多くいるが、それは九尾とは関係ない。 ここまで原作と里の対応が違ってくると…なんだか原作のナルトに申し訳ない気がする。 それでもこれがオレが勝ち取った別の未来。 そして―― 勝ち取ったがゆえに厄介なものも発生しているわけで……。 『ナルト!くるぞ!』 「わかってる」 すでに指定位置となったオレの頭の上で、人形のようなかわいい九尾が、耳をピンとたてて警戒態勢に入る。 オレもすぐに"ソレ"の気配に気付いて、術を発動させようと構えたが―― どん!! 間に合わなかった。 「もう!ナルくんってば!結界張ろうとするなんて酷いよぉ!!」 「ぎゃー!!!離すってば!」 「ガルルルゥゥ!!!(ナルトから離れろ!!)」 さすがは"木の葉の黄色閃光"。 すっかり子煩悩になってしまった波風ミナトが、抱きついてきた。 ついでに腕を突っ張っても離れなくて、逆にギュウギュウ抱きしめられ、あげくに頬擦りまでされた。 頭の上にのっていたキューちゃんが牙をむくもムンズと掴まれ投げ飛ばされている。 あーあー!!!!オレの癒しが! そう。多くの≪NARUTO≫信者が悲しむだろうことに…。 我が父は、物凄いスキンシップの激しいアホと成り下がってしまった。 おかげで仕事をほっぽりだしては、オレのところにやってくるしまつ。 それもオレが結界を張る前に避雷針の術を使ってくるので、結界も罠も何もあったもんじゃない。 ただ腐っても火影というだけはあり、人が見ているときには現れないのが救いだろう。 たぶん火影として失態をみせないようにしているわけではなく、人柱力オレの存在が誰かにばれて上層部に狙われることの方を危惧しているはず。 だってこの人、『ナルト命』を地で行くんだもん。 火影だからどうこうしなくちゃなんて、最近のコイツが考えているはずもない。 そのせいで仕事をおろそかにし、引退したはずの三代目が泣く泣く火影の仕事を手伝っている始末だ。 もちろんすべてを知っている人間は里中でも数えるほどだ。 ミトさんはオレが誕生してからも十年ばかり一緒にいた。 消えたのは三年前。 かくいうオレは、チャクラがなくなったため消えたミト師匠の遺言を遂行すべく、普段はアカデミーに通いつつも影でいろいろと動いている。 ミト師匠の遺言。それは―― 『孫の金遣いをなんとかしてほしい。悪いけどよろしく頼むよ』 で、ある。 初代の妻が孫といわせる人物。そんな奴はこの世で一人しかいない。 その名も綱手。 三忍の紅一点といわしめたなめくじの綱手姫である。 ちなみになぜオレに彼女の"金遣い"に関して頼むのだと、身体を自由に動かせるようになってからは何度頭を抱えたことか。 おかげでオレは、里の外にいる自来也と連絡を取り合っては、綱手の情報をさぐっているわけだ。 だけどみつからない。 たまに影分身を残して、里の外にオレ自身で旅をしてみるもダメ。 たぶん原因はあれだ。 アカデミー前には忍術を軽く使えるようになっていたオレは、医療忍者になりたいと思っていた。 それに"うずまき"の血が濃いので、戦闘術よりチャクラコントロールの方が得意なんだ。 そんなわけで綱手姫がちょうど里に戻ってきたとき師事を仰いだ。 そこでしばらく綱手姫にくっついて医療忍術を学んでいた。 といってもすぐに賭け事の話でもめたので、オレは彼女に何かを学ぶ前におさばらしたのだが…。 問題は、オレがやたらめったと金遣いの荒い綱手をとめようとしたため警戒されてしまったことだ。 次にオレが笑顔の二代火影達からの命令で彼女を探そうとしたとき、こちらの気配を察して逃げられた。 血のつながりが少なからずはあるので近状報告と称して手紙は来るので、元気だとは思う。 しかし血縁関係があるからと、最近では近状報告の代わりに借金の請求書がうちにくる。 本当にありえないよあの人。 そんなわけで。ただいまアカデミー生なうずまきナルト。 現在進行形で、綱手姫に逃げられ頭が痛いだけではなく、波風ミナトに襲われています。 こんなことなら影分身で逃げればよかった。 「離せ!!そもそも父ちゃんってばオレのどこに避雷針の術をつけてるんだってば!!」 どこをどう探してもみつからないのに、避雷針の術でもってやってくる変態ファザー。 本当に術式はどこ!? 解除しようにもそれがどこにあるのかわからない。 父ちゃんも教えてくれないしね。 そんなこんなでオレがバタバタもがいていると、さらにバタバタと何かが駆け足でやってきて―― 土煙と共にやってきた姿に、オレは助けをもとめるように手を伸ばした。 「じーちゃん!!助けて!!」 やってきたのは三代目火影・猿飛ヒルゼン。 じいちゃんは父ちゃんの姿を見ると、目を釣り目にして物凄いとび蹴りをかまし、オレにすまんのうといってから、気絶した父ちゃんを持って帰っていった。 そんな日々――。 |