ここまできたらぐれたくもなるさ
- 名 探偵コナ ン -



07.元電子精霊はAI(愛)がゆえに愛を願う





工藤字。
絶賛、事件に巻き込まれいます。

『もういいじゃん。そいつが犯人ってことで。それでおしまいにしよう』
「「はぁ!?」」





 -- side オレ --





たまたまその場に居合わせた眼鏡をかけたこどもその2。
そう思ってくれればいいのに。
その1はいわずもがな。うちのチビだ。

オレのことはどうか無視してほしい。オレは空気空気空気くうき・・・って、まぁ、無理なのは、もうわかってる。

っというわけで、現在コナンの保護者としてついてきたら、これだ。
血まみれ殺人事件に遭遇しました。

もういっそそこの被害者じゃなく、一思いにオレを殺してくれと、 犯人に期待のまなざしを向けるが、死んだ魚のような目をしていたらしく犯人におびえられた。げせぬ。
ならば、もう諦めよう。

とっとと事件解決して帰りたい。
その思いから、“オレだけがすでに知っていたトリック”を思い浮かべ、犯人はこいつですーと告げてみた。
だが、つぶやいたら全員の視線を浴びてしまいあげく、その場にいた全員につっこまれてしまった今となっては平穏とかめっちゃ遠のいたし、無駄だったね。
あのつぶやき一つで、逆にオレが注目の的となってしまった。

何人かが、オレの顔を見て歓声を上げたり、とある女性は顔を赤らめたりしてる。
なかには「わたしサインほしい!」とかなんか殺人現場には場違いな声まで聞こえるしまつ。
おいおい、本当にこの世界の基準はおかしくないか?
探偵になると、ここまでアイドルと同じようにファンがつくのかよ。

「あ、あれ工藤君じゃない!?」
「きゃー!うそぉあの工藤新一!?」

いえ。人違いです。
その弟です。

っと、言いたいが、それもこの際、まるっと無視しよう。

はぁーっととんでもなく重い溜息をついてみせる。

“こんな”だからおかしいのだ。
この世界は異常だ。
あまたの戦場、生き物が死ぬ様を見てきたが、この世界ほど死が軽い世界は視たことがない。
この世界では死や事件は、探偵というスターを輝かせる舞台かなにかにすぎず、その「死」に関して深く嘆き続ける者はいない。
まるで死などたいした問題ではないとばかりに、だれもが推理の方を気にする。
コナンと一緒にいるこの小さな子どもたちでさえ、死体に慣れすぎてしまったのか。死体と遭遇してから少しすれば悲鳴ではなく、いかにして事件を解決するかに胸を躍らせている。

悲しみが継続しない世界――オレはそう思う。

大丈夫かな?こどもたちの将来は大丈夫だろうか。
このこどもたちが大人になったのなら、 “悲しみ”をしらない大人になるのではないだろうか。
生きることがすべて“楽しい”“おもしろい”ことばかりではないとしれるだろうか。
理解できるだろうか?
どっかのバカ探偵のように、周囲が悲しむことさえ考えず自分の身を危険にさらし、 ことあるごとに優秀の美を飾ろうと事件に自ら首を突っ込むようなまねをするのではないだろうか。

命の大切さを。
命の尊さを。
生という儚い一生の意味を・・・
殺人とは、それを無理やり他人の手によって奪われるということ。

「工藤君どういうことかね?」
「なぜあのひとが犯人なんだ?」

だがオレは、彼らが期待する工藤新一ではない。
バカ兄の様に華々しく名乗る気もなければ、深くかぶっていた帽子をぬぐきはない。
オレは目立ちたがり屋のどこかの誰かではないのだ。
「どうして犯人が分かったのかね工藤君」と言ってくる目黒警部に言いたい。 あんたのその“工藤君”って新一のことだろ。絶対勘違いしてんだろ!と。
残念ですが、オレはオレの平穏を取りますよ。
だから推理ショーなんてしませんよ。

ありのままの事実を告げるだけ。それがオレの今の役割だ。

『犯人は血のにおいをべったりこびりつかせてるので、あのひと以外には有り得ないってことで』
「お前は犬か!?」
『不愉快です。オレは犬は嫌いです。猫が好きです』

「そんなそんなくだらないことで犯人にされる覚えはない!!!!自分が犯人だというなら証拠をみせろよ!」

『ありますよ。証拠なら』
「え」
「そんなはず・・・」

『向こう側に隠しカメラがあるようです。位置的に今回の犯行が全部記録されてると思いますよ』

警官のひとりが、オレが示した場所にあったビデオを発見した。
騒ぐ犯人をあっさり口と体術で抑え込んで、さっさと警察に引き渡した。
なんか犯人は、よくあるミステリーのエンディングのように、殺した経緯をブツブツ語ってるけどどうでもいい。

はい。これで事件解決。

名探偵コナンの世界だから推理ショーをしろと?
誰がするか。
そんな倫理的な問題ではいのだ。
オレが犯人が分かった理由は、先程この家の主と思われる幽霊にお願いされてしまったのだ。
いわく、犯人あいつ。向こうに趣味で隠しカメラをつけていてそれが今回の殺人状況を全部記録してるから、犯人つかまえろ。とのこと 「ばってん承知!」とばかりに今の光景さえも記録しているビデオカメラさんからの「役に立ちますぜ旦那!」とばかりの 嬉々とした電波反応。
もう二人(?)から犯人何とかしてよといわれたオレの身にもなってほしい。

推理なんかねぇーよ。
ただオレは犯人を知っているだけ。
だって犯人がどうやって殺したとか知らないし。

たとえ幽霊さんと機械たちが犯人を教えてくれなくとも、きっとオレはあいつが犯人だと断定しただろう。
あまたの戦場をくぐりぬけてきた転生人生なんめんじゃねーぜ。

平然としているふりをしても、その微かな目の挙動、微かな仕草。
ばれないと思っているのは、お前だけ。
とはいえ、その不審な動きを“不審”だと気付いたのはオレぐらいだろう。
他の者たちは、別のことに視線を向けていたはずだ。
たとえば事件現場。あるいは全体の空気。警察の挙動。自分が犯人にされないかの不安。あるいは・・・探偵。
それらの心情が混ざり合った現場で、あの犯人の微かなサインを見切れる者などいはしない。

まぁ、コナンという小さな探偵がここにいる以上、目黒警部とて事件解決にきっとこの小さな探偵を頼るのだろう。
探偵がいれば必ずと言っていいほど事件が解決するのがこの世界であるならば、それは必然。
事件現場に居合わせた者の視線は、探偵の一挙一動に向かう。

しかしオレは思う。
優秀だからと、事件解決の糸口になるからと、こんな小さな子供を頼るなんて。
警察よ守秘義務はどうした?とかそういうのもちょっとあるけど違う。
中身は高校生とはいえ、コナンはこどもだ。
そしてその側にいる子供たちも正真正銘の子供。

そんな彼らに頼る大人が許せない。
こどもを長くこんな人が死んだ場所に居させる気持ちもわかりたくない。
とめるべき大人がこどもに判断させて、こどもに頼り切っているところが信じられない。
本来、こどもとは、守ってやるべきものであるのに。

気に食わない。

『・・・やっぱり、嫌いだ』

大人が正常な判断をなくし、探偵という華麗なショーを演じる者がいて、死が舞台で。
ああ、いやだ。
オレはたぶんこどもが好きだ。何人もこの手で育ててきたという経緯もあるが、自分より年下の生き物は守ってやらねばいけないと無意識に思ってしまう。それはオレが懐に入れた者たちすべてを守る手段を持っていたから。

けれど、そのオレの認識をこの世界ではことごとく覆いされてしまう。

愛されるものを守ろうとして何が悪い?
なのに大人がその子供に意見を問うてしたがっている。

たぶん彼らにその在り方は違うと言っても、なんか通じない気がする。
あと、オレが工藤新一じゃないっていってもダメな気がする。
勘違いって絶対ぬぐえないんだろ?知ってた(遠い目)

運命を握るは、運命の神の所業。
ならばこの世界に飛ばした運命の神を恨もう。
どうしてこういう世界にオレをとばすのか。
この世界にオレを呼び込んだ神はいたら三枚下ろしにして、こいつらの前に飯の代わりに突き出してやろうか。
むしろオレはあまりこの世界そのものが好きにはなれそうもない。

『じゃ、これで』

むしろもうこの場にも犯人の憐れみを誘いそうな独白も興味もない。
だからあとは全部なげて、オレはその場を後にした。

まるなげしたことで頭を抱えたコナンがいたが、そんなにオレの態度が気に食わないのなら、お前が全部推理してとけばいいだろ。
オレは平穏が好きなんだ。
事件なんか・・・・関わりたくないんだよ。

だからひきとめようとするコナンをギロリとひとにらみして、「よくもオレを巻き込んでくれたな」と視線だけで訴えるのは忘れない。

そのままコナンたちを置いて、その場を去る。
警察が「仮にも容疑者のひとりだから」と、すぐに追ってきたが、しったこっちゃない。
さっさと気配を消してそのまま人ごみに紛れこんでまいてやった。
あと現場を犯人の独白もまるっと録画していた隠しカメラには、オレから“お願い”して、どのカメラのデータからもオレの姿は消してもらった。
オレの姿はどこにも映っていない。
そもそも日常的にカメラにはオレは映らないから、まさに居合わせて会話をした人からすると、カメラをみてビックリするわな。
あの場でうまくコナンがオレのことを「ここにいた」と断言できなかった場合、 あの部屋をずっと録っていた隠しカメラにもオレだけが映っていなくて―― へたすると録画を確認している者たちに、オレの方が幽霊とおもわれてその場の皆様にゾッとされているかもしれない。
べつにそれならそれでいいけどな。
でもそうなると、あそこにいたのは工藤新一の幽霊ってことになりそうで・・・・・・笑える。

最近表に出てこなくなったと思ったら工藤新一実は死んでいて、事件が起こる先々で事件を解いては消える――とか。
いわれてたりしてね。

この場合は黒の組織に工藤新一は目を付けられずに済むのだろうか。
幽霊だから死んだと思って探さないでくれるのか。
それともオレというそっくりな奴の存在を突き止めて、工藤新一は死んだと思って、コナンとかの存在を見逃してくれてたりしないだろうか。
むしろオレって、いま黒の組織に狙われてるのだろうか。
監視対象ではありそうだよなぁ。
わからん。



黒の組織・・・かぁ。

ま、これもどうでもいいことかな。


“今は”――まだ、ね。











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