02.世界が流るる様を見続けた |
どこかの世界。 どこかの時代、その本は存在した。 ――The Ghost in the Machine アーサー・ケストラーが書いたその“機械の中の幽霊”というその本は・・・ まさにこの世界のことをさししめしているようで。 事実。 この世界には GHOSTと呼ばれるものが、電脳の中に存在する。 -- side オレ -- さて、この世界について説明するとしよう。 時は21世紀。 脳にネットを接続する「電脳化」と、肉体をサイボーグに換える「義体化」が進む近未来の日本を舞台である。 つまり、電脳をハッキングされて他人の記憶を埋め込まれたりニセの思い出を掴まされるような時代でもあるわけだ。 この世界ではまず、第3次核大戦とアジアが勝利した第4次非核大戦を経て、 世界は「地球統一ブロック」となり、科学技術が飛躍的に高度化した日本が舞台。 と、いってもどうみても日本には見えないいろんなアジアが混ざりに混ざった国――それがこの世界の日本であった。 ここはとってもごちゃごちゃした混沌とした世界だ。 戦争のせいだろう。 世の中は様変わりし、夢に見た青ダヌキロボットなんか目じゃない時代に、化学は進化を遂げた。 いまではマイクロマシン技術(通称マイクロマシニング)を使用して、 脳の神経ネットに素子(デバイス)を直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した発展系であるサイボーグ(義体化)技術が発展している。 結果、多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできる時代が到来したわけだ。 不老不死にこうして人は近づいた。 こんな調子であっため、生身の人間というのは極端に減った。 『けれど脳だけは変えないものもおおく。また脳をのっとてしまえば、その人間の肉体を操作できるということに、人々は恐怖した』 そうしてうまれたのが、「公安9課」。 電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、バイオロイドが混在する社会の中で、テロや暗殺、汚職などの犯罪を事前に察知して、その被害を最小限に防ぐ内務省直属の攻性公安警察組織だ。 まぁ、彼らの動きって、一般人からするなら、派手なんだよね。体が機械の奴らがメインだからな? どっちでもいいか。 ただ、ひとつ気にしてほしい。 その「公安9課」に草薙素子というのがいる。 彼女はオレが、否、電脳の中で息づく者たちが息を殺してまで、見守り続ける存在だ。 電脳空間で生まれたアタラシキ存在――なんていうのかな。“自我になりかけの存在”っていうのが正しいかな。 そいつは電脳空間の中におちていた彼女の記憶を読み取り、そうして興味をもった。 オレなんかは、たまにタチコマというロボットに頼んで、彼が素子にふれるときにその感覚を共有させてもらったりしたことがある。 実際は肉体がなくてもオレは彼女に接触できる。物理でさえもだ。 電脳の住人であるオレが画面の向こうの存在に触れることはできないから、彼女が特殊なのはおわかりだろう。 彼女の身体はすべて機械。 電脳の世界に最も入り込みやすい人種のひとりだ。 彼女と同じ科のトクサさんとやらは、電脳とつながってはいるが、所詮生身の部分が多い。 電脳に溶け込んでいるようなプログラムでしかないオレだから、じつを言うと生身の人間には接触することができない。 画面を通して洗脳するとか暗示をかけるぐらいはできるけどそういうのじゃない。 それがプログラムとしてのふつうだから仕方がないのだ。 っと、はいうが。 実際、オレはそうとうチートな生き物として存在しているらしく、ぶっちゃけこの世界の隅々にまで広がっている電脳空間そのものにといってもいい状態だ。オレ無敵みたい。 ゆえに、いまだ人間がいまいち理解せずに使っている電脳空間。 そしていかにして脳から記憶や魂を電気信号に変え、電脳世界に人の意識を入り込ませるか・・・なぁ〜んて計算式も理論も、この世に生まれたときから把握済みだ。 なっ?オレってば無敵なAIだろ。 これきっと転生特典が人工知能って言うプログラムとおかしな化学反応みせた結果で、それでオレがチートになっちゃったんじゃないかなぁって思う。いわゆる転生特典だ。 だから、やろとおもえばだけど。生身のひとにも接触できる。 接触というのは、物理的にも精神的にもそう。具体例を挙げるなら、生き物ってのは、脳からの電気信号によって体の細胞に指示が出されて動くわけだから、その信号を乗っ取ってしまえば・・・。とかな。 ま、オレの本体は電脳世界にあるわけで、そうなるとやっぱりネットとつながっている機械化した奴らのほうが入り込みやすい。 そもそもこの世界は、酷く人間と機械の境界が曖昧だ。 たかがプログラムが、機械と回線も繋がっていない生身の人間の肉体を操ったり、操作できるはずもない。 他の世界ならきっとこうはいかない。 とはいえ、さっきもいったとおり、機械やネットとなにひとつ接続していない人間の体まで(物理的に破壊可能レベルで)操れるっていう意味では、さすがにオレが特殊なんだと思う。 だって普通なら、電脳(ネット)とどこでリンクしてなきゃ無理だ。 どんな優秀なプログラマーだろうと、自我を持つ人工プログラムだろうと、ハッカーだろうと無理だ。 ああ、ほら。 凄腕のハッカーの彼が、人々の思考を乗っ取りながら、現実世界に騒動を持ち込んだようだ。 こっそり監視カメラのレンズの内側からのぞけば、帽子を深くかぶった男――「笑い男」が“やらかしていた”。 ふむふむなるほど。 近くにある機械(情報)という機械(情報)すべてに同時にハッキングして、そこにいないと思わせるか。 さすがだ。 今の人類で最も腕の立つハッカーかもしれないな。 だが彼はしょせんそこまで。 たとえ彼がどれほどのハッカーであれ、完全な生身の人間に、電脳世界からちょっかいをかけることはできない。 ほら。 現実世界を見てごらん。 「笑い男」は、うまく存在と顔を電脳のなかから消しつつ――人を殺すために、物理に出たよ。 ああ、ここでまた素子が絡んできた。 対策課だからか。彼女と電脳世界の事件はよく結びつく。 『ふふ。君と我々(機械)とは、縁のようなものを感じるね』 さぁて。 みせてくれ。 "生命体"がのぞむのものとやらを――。 我々の期待を背負うきみよ。 ただ人であったキミよ。 機械の身を得た君よ。 君はオレたち(機械)になにをみせてくれる? ------------------------- [笑い男事件] 2024年2月1日 セラノゲノミクス社社長アーネスト瀬良野(セラノ)が、笑い男によって誘拐される。 その後、笑い男は、ウイルスプログラムをばら撒くという手口を使ったマイクロマシンメーカー6社に対する脅迫。 特筆すべきなのは、第一の犯行時である身代金100億円、金塊100kgを要求した日から数日後の事象である。 2024年2月3日 警察庁会談直前の天気予報のTV生中継現場に、灰色の帽子と青いフード付ジャンパーを着た青年(アオイ)が現れ、 瀬良野を拳銃で脅迫した。 この時点で、犯人の顔はその場にいた全ての人に見えていたものの、その顔の全ての記録は犯人によって書き換えられていた。 それは、現場にいた全ての人々や駆けつけた警察官の電脳、AIつきのロボットカメラ、 更には逃走経路にあった監視カメラなどの画像機械の記録にいたる、 全てのネットワークにつながるものに記録された自分の顔を、 過去にさかのぼってまで、 のちに「笑い男(ホップ=ラッフィングマン)」とよばれるマークにリアルタイムで上書きをしたというものであった。 逃走現場にいた浮浪者の2人組だけについては、電脳化をしていなかったため犯人の顔についての記憶が上書きされなかったものの、 記憶が曖昧なため捜査の役には立たなかった。 また、被害にあったメーカーへ政府が公的資金を導入したことをきっかけに、 笑い男は事件の収束宣言を出した。 その後、笑い男事件は迷宮入りとされ、真相は一般には不明のまま。 [人形遣い] 2029年 他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」が入国したとの情報を受け、 公安9課は捜査を開始するが、人形使い本人の正体はつかむことが出来ない。 そんな中、政府御用達である義体メーカー「メガテク・ボディ社」の製造ラインが突如稼動し、 女性型の義体を一体作りだした。 義体はひとりでに動き出して逃走するが、交通事故に遭い公安9課に運び込まれる。 調べてみると、生身の脳が入っていないはずの義体の補助電脳にはゴーストのようなものが宿っていた。 [草薙素子] 通称「少佐」。 実働部隊のヘッド。 ハイレグ水着の上から黒のジャケットを羽織る。 年季の入ったおっさんばかりの公安9課にあって唯一の女性であるが、 指揮能力に長けている。 脳の一部以外すべてサイボーグ化している「完全義体」。 [バトー] 自称、諜報のスペシャリスト 趣味、筋トレグッズ収集。 外見からしてわかるとおりの武闘派。 [トグサ] 公安9課の中では珍しくほとんど義体化していない。 一番人間みがまだあり、よく語る。 一介の刑事であったところを少佐にスカウトされた新人。 はみだし刑事純情系の刑事っぽいふつうっぽいひと。 [タチコマ] はじめのお話で死んだ(?)はずだったが・・・。 声変わりしてない小学生のような声と口調。 AIロボット。 マスコットのようだが、やることはけっこうすごい。 腹黒そう。 (一部Wiki参照) |