劇場版 『ビクティニと黒き英雄』 5話 |
-- side 夢主1 -- ビク「びぃ〜♪」 夢『大丈夫かビクティニ?』 ビク「びびび!」 夢『うん。 ひさしぶり」 ゼリィをさがして階段を駆け下りようとしたら、姿を隠していたらしい何かが派手にタルにぶつかって、タルが階段を転がっていった。 さらにそのタルが、階段下にまとめあられていた木箱を直撃し、大きな音を立てて整列していたそれが崩れ落ちる。 その大きな音にビックリしたらしいビクティニが姿を見せた。 あわあわと階下にひろがるタルや木箱をみているビクティニの背をそっと撫でてやれば、はじめはびっくと肩を揺らしたビクティニだったが、相手がオレだとわかると嬉しそうに抱き着いてきた。 背後で近づいてくるサトシたちの声がきこえたから、ビクティニを誘ってオレは脇道に入った。 ビクティニは不思議そうにしながらも笑顔でついてきた。 夢『・・・なぁ、ビクティニ。 オレが何度挑んでもこの結界を壊すことはできない』 ビク「びぃ〜」 夢『落ち込むな。事件に巻き込まれるのはオレ以上っていう、そういうスペシャリストが今日は一緒だから。きっとなにかあるよ。へたするとお前を開放させることも可能かもしれない』 ビク「ビ!?」 驚きにでかい目をいつも以上にひらいたビクティニに、以前ここにきたときのことを謝罪し、今度こそはと。 互いに共犯者の様に笑う。 それは互いに祈りにもに近い願いであることを隠すためだったかもしれない。 ビクティニの存在を知る何人もの人間が、あまたのポケモンたちが、ビクティニをこの結界のはられた町から彼を救おうとしたが、成功したものはいない。 かくいうオレもそのひとり。 手持ちにしてしまえば出してやることができるので花と思ったが、まずボールにはいらない。 たぶんビクティニの元主人である王様の権限がこの地では生き続けているのだろう。 ならばと、ギラティナをとおして反転世界から誘い込もうとしたが、ビクティニだけが入り口にぶつかってしまって中に入れない。 エスパータイプのポケモンに手を借りて、テレポートをさせてもまた何かにさえぎられるように、この街の外にでることができない。 いっそ空間をねじまげてやろうとしたら、町がなくなってしまうといろんな奴にとめらっれた。 つづいてミュウとミュウツー、ひいては伝説と呼ばれるヤツラに強力な攻撃をしてもらったのだが、結界はビクティニだけではなく、ポケモンの攻撃そのものを弾き返してしまう。 結界にはひびひとつはいらなかった。 こちらの世界でレッドがぶっつぶした初代ロケット団の元社長にして現愉快班のサカキに要請して、その権力と科学力で結界を突破しようとしたが、それもままならず。 実のところありとあらゆる荒業を駆使したが、ビクティニを結界から出してやることはできなかったのだ。 しかしこんな特別な伝説ポケモン。アニメの主人公が見逃すはずがない。 アニメでビクティニの話が出たら、たぶん映画化ぐらいしているだろう。 その場合、映画で死んだポケモンはいなかったはず。 オレの記憶なんてあてにはならないが、というか、オレが死んだ頃にはビクティニなんてキャラはいなかったから、確信は持てないが。 問題は、仲良くなったサトシが、自分の命もかけかねないところだろう。 それが映画で一番盛り上がる感動シーンなのだから、しかたないといえばそうかもしれない。 だが、こちとら現実世界なわけで、しかもあのサトシは同郷の家族同然の奴だ。実際やられたらたまったもんじゃない。 夢『なにごともなくスムーズに物事が進めばいいんだがなぁ〜』 無理だろう。 だって、タイミングよくうちのゼクロムとレシラムが家出中だ。 なんかレシラムの方は、オレが手持ちから解除したばかりに、すでにだれか別のトレーナーに権限が移動しているし。つまりもう誰かの手持ちになっているとの情報が入っている。 ゼクロムはこの街にいるとシェイミたちが言っていたわけで・・・。 夢『ビクティニ、ゼクロム、レシラム・・・ああ、うん。やっぱ無理だな』 イッシュ三大伝説が集結しちゃったよ。 オレの平穏はこの街では得れそうもない。 ――案の定である。 バトル大会もなかばで、サトシたちはビクティニと仲良くなったらしい。 マカロンでつられて姿を見せてしまったのだという。 しかもそこで遊ぶのに楽しくなって、そのままサトシがビクティニを結界の外に連れだそうとした。 そのせいで結界にあたったビクティニがおびえて、心が癒される場所へ行ったのではないかと。 きっと城付近にある果樹園にかくれてるんじゃないかと、サトシたちはオレのことなんかそっちのけで城へ向かったらしい。 あのあとサトシ達をさがして町中をかけ回ったオレの気持ちになれ。 バトル大会は終わったのにサトシたちがいない。 街の人たちにサトシたちの特徴を聞いて、いきかうひとたちに「見てないか」と街をさまよいながら探し続け、夕方ぐらいになってようやく城の方へ向かったという目撃証言を見つけた。 オレがサトシと合流してみれば。 あらまぁ、不思議。 サトシの主人公フラグのせいか、それともオレのあんまりついていない体質のせいか。サトシ一行がビクティニとお友達になっていらっしゃいました。 まじかよ。 つか、お前、さっきまでオレと一緒にいたのに。 テレポートか!? 姿消しけっこう。さびしいのもわかる。だけど、サトシくんとビクティニちゃん。早くね?お二方の遭遇早くね? ********** サトシたちはオレをさがしているうちにバトル大会の証があったせいで挑戦者に挑まれ、そのなかでポカブとズルックにビクティニが力を貸してくれたことでサトシがバトルに勝利した。 それがきっかけで、この町に住む女の子カリータとしたくなり、ビクティニはマカロンにつれられて姿を現したとか。 どんな経緯だ? そのまま日も暮れ、ビクティニと遊ぶのだと、夜は城の庭で寝るといってきかなかった。 まぁ、ビクティニはここからでれないから、できるだけ一緒にいてやりたいのもわかる。 サ「アザナさんはどうするんだ?」 夢『あー。オレ、ゼリィさがさないといけないからまたあとでな。明日の朝飯時には合流するさ』 ア「あ、そういえばゼレリィがいるんだっけ?がんばってねアザナさん。そんでもってあたしたちのことは巻き込まないでね。ドラゴンポケモンは好きだけど、好きだけどねぇ・・・アザナさんのポケモンにはちょっと近づきたくないんだもの」 デ「あー・・・うん。勘弁してくれるとありがたいかな」 夢『おまえら、オレのあつかいひどくないか?』 「「「伝説を相棒にしてる貴方にだけは言われたくない」」」 っと、ブーブー言われつつ、オレは城の果樹園をあとにした。 フードの中にはいっていたシェイミが、何か心配そうに城を振り返っていたけど。 シェ「しぇ〜いみ?」 夢『ああ、いいんだよ。いるんだろあの“城”にゼリィとタマが』 シェ「み!」 ピカ「ぴ。びぃ〜か・・・ぴかちゅ」 夢「いや、そんな嫌そうな顔するなよピカ。 お前が渋面顔するのが分かっていたからいかなかったんだよ。とりあえず今日はゆっくり寝ようぜ」 シェイミが心配そうに、御老体のピカチュウ“ピカ”がピカチュウとは思えない低い声で渋面顔をしていた。 わかる。わかるぞピカのその気持ち。 オレのっていうか、マサラのトレーナーのポケモンっておった方がいいかな。 みんな個性が強くてさ。 あの結晶塔事件以降サトシの妹になったミィの手持ちの色違いのエンテイは、ヘタレで気弱で臆病だ。 オーキド・ユキナリとお友達な、玉ねぎあたまのセレビィは、確信犯な愉快班だし。 ゼクロムのゼリィは、あのごっつい外見の割には、すぐにいじけてしまう。 レシラムのタマは凛々しい風体の癖に、我がままで、甘党で。 さらっとゼクロムをいじるの好きだし。 はぁ〜。 これはプリンに生クリームをそえるだけで、ことがすむのだろうか。 なんか大事になりそうで怖い。 ********** 朝です。 綺麗な朝日ですね〜。 夢『・・・・・』 別にさわやかな気分を味わいたくて、早起きをしているわけでも何でもない。 そんでもってオレの目が死んだ魚のようだと例えたピカ様よ。 そう思うなら、お前がアレをなんとかしろよ。 オレが起きた原因は、ズバリ。 “アレ”である。 ――城が浮いている。 山の上に刺さっていた剣の城が、もののみごとに轟音を立てていままさに上空へと飛び立とうとしているのです。 おい。町中に散っていた守りの柱が、いつのまにかひっこぬけて、あの白の上空を飛んでるぞ。 夢『なぁ、ピカ様。こういう展開ってさ、大概サトシたちあの中にいそうだよな』 ピカ「ぴぃーか」 だからヤだったんだよ。 そう言わんばかりのピカ様の不機嫌顔が怖い。 溜息がポケモンらしくないほど重いですよピカ様。 |