不思議お兄さんは何役者?
- ポケット モン スター -



劇場版 『ビクティニと黒き英雄』 4話





 -- side サトシ --





ピカ「ぴーか」
カナン「み?」
ピカ「ぴかちゅ?ぴかぴかぴかちゅう」
カナン「しぇぃみ」

町についた途端、ボールのなかで休息を取っていたはずのさんのピカチュウ“ピカ”がボールからとびでてきた。
キョロキョロと不思議そうに顔を左右に動かし、さんのフードの中でまるまっていたシェイミ“カナン”になにか声をかけていた。
ひょっこりとフードから顔をのぞかせた“カナン”は、“ピカ”の問いに首を傾げた後、首を横に振った。
どうやら“カナン”は“ピカ”が知りたいことを知らなかったようだ。

二匹は少し話あったあと、いつでもバトル大会に向かえるぜとばかりに意気込みあらわにポリゴンをボールからだしていたさんの服を引っ張って何かを訴えた。

とたんさんの表情が変わったんだ。

夢『な、なんだと!?』
サト「ど、どうかしたんですかさん」

あまりに突然険しい声を出すものだからこっちもっびっくりりだ。
思わず共どもてしまったが、こういう時に限ってさんならなにかしでかしかねないと長年の付き合いで理解したから警戒は必要だろ。

夢『ふたりがゼリィの気配がするってするって!』
ア&デ「「え」」
サト「本当ですか。やったじゃないですか!」

オレ、ちょっとさがしてくる!そう言って、さんは大会の出場者がつける札をはずしてデントにおしつけ

夢『ゼリィー!!!どこだ!どこにいるんだ!ゼリィーーーー!!」

大会開始直後、絶叫をあげてどこかへ走り去っていった。

どんな奇行だ。

タマとゼリィとも旅をしたらしいピカやシェイミが敏感に“ゼクロム”の気配を感じたため、 家出っ子(ゼリィ)を探し続けていたさんの普段では見られない焦り具合が、手に取るようにわかったっが、家出娘を探すその台詞が微妙だった。

夢『特売品のプッチンプリン(三個入り)なんてケチなことはいわないから!帰ってこい!』

まだ、プリンネタ、ひきずってるんですね。
まぁ、相手もひきずってなければこうも長い間家出をしたりしないだろう。
ってかプリンって――ゼクロムってどんだけ安いんですか!? プリンごときで釣れるようなら、それじゃぁまるで野生のポケモンより簡単に手に入るスーパーの野菜みたいじゃないか。

うーん。さんといると色々モノノの価値観がおかしくなってくるんだよなぁ。
さんの元来のパートナーって、ヤドキングとホウオウだしなぁ。
そもそも手持ちにホウオウのホウサクさん以外の数多くの伝説ポケモンがいるほどだし。
それに実家にいる義妹のミィの手持ちにも伝説と言われるエンテイがいるんだよなぁ。
こうなってくると、何が異常で、何が凄くて、何が普通なのか・・・。

サト「ってぇ!?待って!待ってください!さん、バトルはどうするんですか!?」
夢『ぜりぃー!!』
ポリ「×◆△△××♯♯―!!!!・゜・(ノД`)」

アイントオークの収穫祭記念バトル。
それの参加証を放り投げ、ゼリィを探し続けるさん。
置いていかれたことに気付いたポリゴンが涙を流しながら、もうダッシュでさんをおいかけていったので、それを目印におれたちも後を追った。


サト「まってください!さんってばぁ!」

思わずついていってとめようとしたおれはわるくないんだぞ。


サト「はぁー。待ってと言って、おいつけるわけじゃないのはわかってはいるんだけどなー」
アイ「そもそも、あのひとがバトル大会なんてのに参加したらここら一体更地になってるわよ!その辺理解すべきよ」
デン「そ、そうだね」
サト「アイリス!デントも!なにのんびりしてるんだよ!早くさんをとめるのてつだってくれよ!」
サトピカ「ぴ、ぴかちゅう!」
デン「だ、大丈夫かな。この街」
アイ「ねぇ、デント。えーっとあのひとの今の手持ちってなんだったかしら」
デン「ピカチュウ、シェイミ、ポリゴンがベストメンバーかな。それにホウサクさん。こないだ卵からメラルバが孵ったよね?
バトル大会はサトシはズルックでいくみたいだったけど。それでさんをとめられるとは到底思えないからね。 しかもポリゴンは今、僕たちと一緒だよ。残るは最強レベルのポケモンだけ」
サト「うっかり大会の余波食らってきれたりしてなければ大丈夫なんじゃ」
アイ「……だといいけど」
デン「…でもあのメラルバ。うまれたばかりのくせに〔でんじふゆう〕や〔サイコキネシス〕使えるんだよね。僕、それが心配で」
アイ「だもんね。普通の使い方はしないわ」
デン「普通の育て方もしてくれないけど」

もうなになんで街中で“伝説ポケモンゼクロム”の気配なんかするんだよ! はやくしないとこのままだとこの町、危ないんじゃないか!? それを考えらいてもたってもいられなくなった。

サト「ふ、ふたりともはやく!」
デン「はいはい。いまいくよ」
アイ「そんなにあわてるなんてこどもねぇ」

サト「なんでそんなのんびりなんだよ!“ゼリィ”が本当にこの土地にいたらどうすんだよ! さんのいうゼリィって“伝説ポケモン”だぞ!!その伝説がさんの呼び声に反応しちゃったりした方がパニックになるだろうが!」

ア&デ「「・・・・・・」」

さんの濃すぎる手持ちのことを忘れていたのか。
告げた途端、アイリスとデントの顔色が変わる。
バトル大会は始まってしまったが、オレたちはそれよりもさんを必死になって追いかける羽目となった。




やっと追いついたと思ったら、違う事件が発生。

ここは崖の上にある。
それゆに階段や段差が多い。
つまり――

夢『ぜりぃーーーーーーーーーーうおぉぉおぅっ!?』

案の定、勢いが付きすぎたさんが段差につまづいてこけた。
しかもそのすぐ先が階段で、わー!ドンガラガッシャンという悲鳴と騒音がした。
ああ、落ちたなと、デントやアイリスの乾いた声が響いた。

でもチャンスは今しかない。
このすきをついて、さんをつかまえないと!
じゃなかったら、せめて大声で“ゼリィ”の名前を呼ぶのをやめさせないと。

伝説なんかが降臨しちゃった日には、街という物理的損害と、バトルをしかけたトレーナーとそのポケモンの・・・・・・
ああ、なんて地獄絵図。


だけど。
音がした方に向かった時には、もうさんの姿はなかった。

サト「え?」

デン「おーいサトシ。
彼はいたかい?」
アイ「ほかくできた〜?」

ようやく追いついてきた二人におれはなにもない階段を指差して
サト「きえちゃった」

ア&デ「「はぁ!?」」

モンスターボールからでていたさんのポケモンたちの姿さえない。
階段の下は、崩れた木箱だけが、そこについさっきまでさんがいた証明であった。








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