ポケット モン スター
- 劇場版『ミュウツーの逆襲』 我ハココニ在リ -



02. のばされた手





 -- side ミュウツー --





わたしのまわりには、たくさんのコピーポケモンたち。
そしてあのとき、人間の少年と共あの島で記憶を奪ったはずの――赤紫の髪の女の人間に、紫の髪の男の人間。 そしてオリジナルのピカチュウとニャース。

広い世界にあこがれる彼ら。
けれどわたしたちはコピー。
かくれているのがいいと…
守りたいと思うのはわたしの勝手だろうか。

あのしゃべるニャースと共にいる人間が、外の世界と自由について語る。
わたしの仲間のピカチュウが、オリジナルのあの少年のピカチュウに
「ぴかちゅぴーか!」
「ぴかぴ」

広い世界を知っているんだろう?と聞けば、オリジナルのピカチュウからは“しっている”と返答が返ってくる。
ここにいつづけるのは、牢屋に入れられてるのと同じだと思うかれら。
外を世界を望む仲間たち。


わたしは――


答を見つけることができない。
そんな話をしていると、ふいにバサリっと翼を翻すっ強い音が聞こえて影が生まれる。
音に頭上を見上げれば、我々の頭上でなにか大きな者が舞った。




「広い世界を知りたいなら、オレについてこいよ」




この場にいるリザードンよりもガッシリとした体格を持つ巨大なリザードンが一人の青年を連れてそこにいた。
赤毛の青年は、この場の凍ったような空気を壊すように、満面の笑顔でかたりかけてきた。
ここをめがけて迫ってきているロケット団とは違う――あたたかい空気。
あのサトシという少年に似た雰囲気をもつ、赤毛の人間。
彼は知らないのだろう。
我々がコピーであると。コピーポケモンとして生まれた我々の危険性を。
だからわたしは彼の言葉に首を横に振る。

『だが我々はつくりだされたポケモンだ』

そんなわたしの言葉に青年はキョトンとくびをかしげるだけ。
そして意味が分からないとばかりに…
否、それがどうしたとばかりに――

「だから?」

あっさりと言い切った。


『!?』
「ぴ!?」「にゃ!?」「「「「!?」」」」


「全員まとめてオレが面倒見てやるぜ?
トレーナーつきの小さな世界が嫌だと言うなら。
広い外の世界を自ら願うというのなら。
おまえたちの望む地に届けよう。


――オレがその願い叶えてやる!」



そう言ってリザードンの背から飛び降りてきたのは、場違いなウエイター姿の青年。
彼はニヤリと口端をもち



「かわりにオレの願いを叶えてくれないか?」



その言葉に、なぜかわたしは落胆した。
一瞬なりとも、どうやらわたしは目の前の人間に気を許してしまっていたようだ。
しかし彼は私たちの自由と引き換えに、私たちを利用したいと言う。
まだ話して少ししかたっていないというのに。わたしは勝手に彼をサトシのような人間だろうと期待していたのだと気付く。
少なからず「やはり人間は…」そんな想いに、肺に積もった靄を吐き出すように溜息がもれた。
あの赤毛の人間も、また、サカキと同じなのだと思った。

「ぴか?(ねがい?)」
「ぴかちゅ、ぴか(どうするの、ミュウツー)」

『願い…所詮おまえも人間か。
また私たちを捕まえて、道具として使おうと言うのか』

仲間たちを捕えると言うのなら。
そこの無害な三人組のような奴でも、サトシのような心の持ち主でもないのなら。
容赦はしない。
そう思って攻撃態勢をとろうとしたら

「ん?道具とかそういんじゃなくて、助けてほしいんだっての!」


赤毛の青年はおかしなことを言う。
人間が我々に助けをこうと?

『たすけ?』

「そう!ストーカーに狙われて凄い困ってるんで、それを追い払う手伝いをしてほしいんだ!!」

「「「『すとーかー?』」」」
「ぴぃーか?」
「ぴぃ?」
「にゃんだと!?」
「にゃにゃぁにゃぁ?」

その場にいた全員が思わず首をひねる。
わたしもだ。
なぜそんなものに私やポケモンたちが必要なのかわからない。

そこで、次につげられた“単語”に、私は思わず目を向いた。





「オレ、ミュウに狙われてるの!たすけてくれないか?」





その場にいたポケモンも人間も関係なく、その言葉に驚きの声を上げた。
わたしは思わず彼の手持ちらしいリザードンへ視線をむけた。
リザードンは「いつものこと」とばかりに頷いた。



ミュウ。
おまえ、なにをしているんだ!?








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