01. ピュアーズロックと赤毛の |
-- side サトシ -- ジョウドリーグ出場を目指して旅をして森の中を歩いていたら、目の前に広がったのはピュアーズロック。 このピュアーズロックを越えなければいけないけど。 次の街に行くためには、バスがでているらしい。 山の周りを一週間がかりかけて一周しているバスがあって、停車場が山の麓で、発車の時間はなんと今日の午後。 しかもみてるうちにそれらしいバスが走っていくのをカスミがみつけて、急いで丘をおりた。 だけど途中で雨が降り始めちゃって、目の前でバスは行ってしまう始末。 次に来るのは一週間後と言われ、他の方法はないかときいたら、川を下ればいけるとのこと。 その際に水もおいしいと言われ、河からくんだ水をもらった。 カスミやタケシが、「身体があられるようだ」とか「おいしい!」と言っていたけど、ママのいれてくれたココアやさんのいれてくれたカフェオレの方がおいしいと思った。 それを二人に言ったら、「水知らず!」なんて言われてしまった。 そんなぁ〜と、じゃぁ「オレと見ず知らずじゃないピカチュウに!」と頼んで飲んでもらえば、ピカチュウもトゲピーも目をキラキラして、水を飲んでいた。 そんない美味しいかぁ。 そうこうしている間に川下りは決定し、向かったら…。 得意そうにしていたカスミが、ムシポケモンの大群を見て、悲鳴を上げてしまって。 おかげで逆走して、元の場所まで戻ってしまった。 ロッジに戻ったところで夜になり、タケシが山を登ると言いはじめ、それが一番進められないと言われた。 人を寄せ付けない絶壁に囲まれ、豊かな自然が残っている。 広大な木々に囲まれたクリア湖というのがあって、あのおいしい水の湧き出るところがあるらしい。 水は山の中をとおってピュア側に流れ込んで、いろんな野生のポケモンがいるという。 智「どんなポケモンがいるのかな。おれ会ってみたいな」 そう思った。 ふいにピカチュウが何かに気付いて月の出ている空を見上げれば、バタフリーの群れがわたりをしていた。 それをみて、わかれたバタフリーがどうしているか、ふいに思い出した。 ロジのお姉さんが言うには、ピュアーズロックにはバタフリーの生まれる場所があるという。 武「ここはバタフリーのふるさとのひとつなんだな」 智「ああ」 霞「ねぇ、ちょっとまって。あれ、なに?」 武「え?」智「は?」 タケシの言葉に去っていくバタフリーたちをみていたとき、ふいにカスミが岸壁を指差した。 なんだろうと思えば、たしかに岸壁に何かが張り付いて動いてるのがわかる。 ロッジの裏の切り立った山の斜面を登る姿があって。 じっくりと目をこすれば、なんだか見覚えのある黒と白の服が見えて。 はねた髪の毛とかの形まで見えてきて。それがとても見覚えがありすぎるシルエットで、思わずオレは呆然としてしまった。 智「、さん!?」 霞「うそ。なんでいるのあのひと!?」 武「うーむ。さすがというか、なんか鬼気迫る雰囲気を感じるなぁ」 「え、えっと、おしりあい、かしら?」 智「あ、ははは・・・。すみません。おれの身内です」 「「「あ。おちた」」」 智「!?さぁぁーーん!?」 ピ「ぴか!?」 武「あ…ポケモンだした。とんだな。あれは…“トモシビ”じゃないか」 「っていうか、あのひと、トレーナーだったのね。ふー。とりあえず無事でよかったわ」 智「あんなんで凄腕トレーナーなんです。うちの同郷の者がすみません!!!」 ピ「ちゃぁ〜」 カスミがさしたところには、なんとさんが壁をよじ登っていた。 有り得ないほどの風が吹いているというとおり、途中で吹き飛ばされかけていた。 そこで赤い光が走ったかと思えば、リザードンが飛び出してきて、相変わらずあんなところをウェイター服姿で登っていた彼を、飽きれたような表情をしたリザードンの“トモシビ”がキャッチして、人工的な光があるこちらを目指して飛んできた。 燭「グォ!」 智「“トモシビ”!!いつもごめんなぁ。さんは!?」 「…その声は。よぉーサトシ、カスミ、タケシ」 「あ、あの。あなた。大丈夫なの?」 「ああ、大丈夫。お姉さんは…そっか“ルナ・カーソン”だね。オレも随分遠くまで来たもんだ」 トモシビがおれたちのもとまでとんでくるなり、背中にはりついていた赤毛の青年さんをこちらに落としてきた。 ゴロンと転がり落ちたさんは、なんか濡れていて、話を聞いてみればまたポケモンの抗争に巻き込まれて、川におちたらしい。 そのまま流されていたがひとが死にかけているさなかにもストーキングをするポケモンがいたためついにブチギレ、唯一あのストーカーポケモンをとめられる存在のもとにいく途中だったという。それでロッククライミングとか…絶対おかしい。 そんなさんの看病をしている最中に、夜も遅いというのにロッジの扉をノックする音がして、二人組の客がやってきた。 ひとりは医学博士のペニシリーナさん。 ロッジのお姉さん、ルナさんのポケモン論文を見たとか言っている。 智「ポケモンの、論文?」 お姉さんの名前を知っていたということは、さんもその論文を読んだのかな。 どんな論文なんだろう。 「あれ。サトシ、シゲルからきいてないのか? 彼女はピュアーズロックの停車所だけじゃなくて、この周辺の自然、そしてポケモンの調査もしてるんだ。けっこう有名だぞ」 智「へぇ〜」 ル「あら。赤毛の子に先をこさされちゃったわね」 さんはタオルで髪を拭きながらベランダから室内に入ってくると、そのまま疲れたように壁に寄りかかってしまった。 ルナさんの言葉にタオルの下から苦笑を返したさんをみるに、たぶんオーキド一家が研究資料を無理やりさんに読ませたんだろう。 おれもそうだけど、誰かに言われない限り勉強とか苦手だし、さん自ら文字ばかりの資料をみることはなさそうだから。 記憶を探るように「あー」とか「うー」とか「グリーンとシゲルがぁ」「資料の束」「研究資料」「仕事が…」とか呟いているさんに、おれも気持ちがわかって、返す言葉もない。 なぐさめるように肩をたたけば、うろんとした目のさんが乾いた笑いを浮かべた。 そんなおれたちをよこに、お客さんのひとり、女性の方がルナさんの自己紹介に甲高い声を上げた。 ド「ドミノ感激ぃ!!ステキ!有名人!?わたしはまったりしちゃうかも!あなたが自然学者のルナさんなのよね!?」 ル「あ、はい。え、えっと貴女は?」 あまりのハイテンションぶりにルナさんがじゃっかんひいている。 空気が変わった気がしておれは横を見てみれば、タオルで顔を隠してうつむいたままだったさんがおどろいたように顔を上げていた。 その顔が物凄いしかっめっつらだ。 知り合いなのだろうか? 肩にいる“ピカチュウ”をみれば、ピカチュウも同じことを思ったのか、おれの方を見て、けれどわからないとばかりに肩をすくめた。 智「どう思う“ピカチュウ”?」 ピ「ぴーか」 智「だよな」 ペ「彼女は国立ポケモン研究所のドミノさんです」 ド「ドミノでぇす!」 甲高い声の女性の正体は、ペニシリーノさんが教えてくれた。 瞬間、おれたちの前を茶色い風が走り 武「どぉーみのさん!いいお名前です!よかったら一緒にドミノだおしを!いえ!貴女となら一緒に倒れてもかまいません」 ドミノさんの手をつかむなり、タケシがルナさんにもやったのと同じことをした。 ド「・・・・」 霞「はいはい。一日に二度も同じことしないのねぇ〜」 チョ「ちょっげぷり!」 武「いたたた」 おれたちはタケシのお姉さんへの愛情表現に慣れてるけど、やっぱりドミノさんも顔をひきつらせて固まっていた。 お姉さんに向けてハイテンションになっていたタケシは、これまたいつものようにカスミに耳を引っ張られて退場していった。 智「タケシのことは気にしないでください」 ル「バスが戻ってくるまで一週間かかりますけど」 ペ「私たちの目的はバスではありません。水です」 ペニシリーノさんは、ピュア川の水の研究をしていたらしい。 どうやらあの水は、生き物が生きるのに必要な特別ななにかがふくまれていたようで。 そうしてたどりついたのが、あのピュアーズロック。 でもルナさんが、それによって人があの山に立ち入ることになることをおそれているようだった。その後に自然環境がどうなるか。気になったようだ。 ル「それに、あの山を登るには難しすぎますわ。さっきだってそこの赤毛の子がおちてきたばかりですもの」 「ね。オレの名前」 ル「無理、だったでしょう?くん」 「…無理でしたねェ。見事落下。途中でひこうタイプのポケモンにキャッチしてもらわなきゃ、確実に下まで落ちてましたよ」 ルナさんはさんを例に出して、苦笑を浮かべながら告げた。 それにさんは、いつもみたいな騒がしい雰囲気ではなく、なにかを見定めるような真面目な顔で、やってきた二人の来客を見つめていた。 壁に寄りかかるようにして立っていたさんは腕を組んで壁に背をあずけているが、その鮮やかな黄緑の瞳だけはまっすぐにペニシリーノさんとドミノさんをみつめている。 そんなさんとルナさんに、ペニシリーノさんが言葉を飲み込む。 さんがふいに何かを話そうとしたとき、 バチバチバチ!とハナビが投げ込まれた。 驚いて目をつぶったその隙に、いつものロッケト団が、ベランダに舞台役者かなにかのように立っていて―― いつものごとくノリノリで名を名乗ろうとしたが。 「“トモシビ”。そいつら捨てろ」 燭「ぐぉぉぉぉぉぉ!!!」 ニャ「ニャ!?リザードンだとぉ!!なんでいるにゃぁ!」 ム「あ。ちょ。いたい!いたいっての!!赤ジャリのポケモンのくせに!!はなしなさいよ!」 コ「はぁ〜、ついてない」 壁際に立っていたさんが、そちらを一瞥もせずに、リザードンに指示を出した。 外で待機していたリザードンがベランダに飛び移り、ニャースとコジロウ、ムサシをつかまえると、彼らが騒ぐのも構わず勢いよく三人を投げ飛ばす。 っが、あいつらも随分あきらめが悪くて、リザードンに放り投げだされる間際に、おれの肩の上にいたピカチュウを絶縁ロープで捕まえていってしまった。 しかも彼らを待ち構えるように気球がベランダの下に待機していて、ピカチュウを連れてあっさりと逃げ出してしまった。 気球にジェット噴射つけるとか重力に潰れるぞ!お前らはアホか!なぁんてさんの声が聞こえたがそれもあとのまつり。 「あそこは気流のみだれがはげしいんだっての。じゃなきゃぁ、オレは落ちたりしなかった!!」 ル「そうね」 ペ「あんな気球で。ピュアーズロック周辺の気候は変わりやすいのに」 ル「じきに風が吹きます」 大人三人のいうとおりで、気球は上にいったり下がったりを繰り返している。 おれはいてもたってもいられなくなりやつらを追ってピュアーズロックへ登ることにした。 それにはペニシリーノさん、ルナさん、ドミノさんもついてきた。 途中で強風にあおられて、ピカチュウをものせたロケット団の気球が、ロープを命綱にピュアーズロックを登るおれたちにむかってきて―― 「たのむ“トモシビ”!」 智「あ、レ。じゃなくてさんだけずりー!!」 「君達さ、基本的にバカだろ!オレもそうとうバカだけど、縄につかまって、風にあおられてなんで無事なの!?腕力だけであの暴風を耐えられるってあんたら人間!? ポケモンをつかえよ!なんのためのモンスターボールだ! それとそこの金髪の手下ぁ!!お前、オレの獲物を捕まえる気だろ!! あいつはオレにこそ必要なんだ!!ストーカーをたおしてもらうためには必要なんだ!!ロッケト団なんかにやるわけねぇーだろ!手を出したら容赦しないぞ!」 フォックが気球に引っかかってしまったとたん、おれたちはそのまま気球と気流の影響でワイヤーにつかまったまま上空へ打ち上げられてしまって。 さんなんかは血相を変えて、モンスターボールから“トモシビ”を取り出してとびだしてひとり脱出すると、なぜかドミノさんにいちゃもんをつけ始めて。 ドミノさんはというと、サルもびっくりな身体能力で一番下からあっというまにおれたちを踏み潰して上へと向かい、ロッケト団の元まで到着してしまった。 彼女はなんとロッケト団の幹部クラスの人間らしく、したっぱなムサシとコジロウ、ニャースのことさえしらなかったようで。 そのご気球に穴をあけてとびたってしまった。 おれたちはそのまま湖に落ちて、ピカチュウは三馬鹿トリオの方のロッケト団とともにクリア湖の中心にあった島に落ちてしまってばらばらになってしまった。 「君達さ、本当にアホだろ!?」 そんなさんの声が聞こえた気がした。 |