SP 01. 赤の遭遇 |
『』…有得 「」…ポケスペ 「えーっと…」 『……』 「その、君はだれ?」 『…』 シッポに赤いリボンをつけたまったりとしたヤドン――を腕に抱えた青年を前に、赤い帽子につんつん頭の赤いベストの少年 “れっど” はどう対応していいか困って動けないでいた。 なぜなら目の前の相手は、表情を動かさなければ口も利かないのだ。 「え、えっと!そうだ。おれは “れっど” !」 『…(コクリ)』 「え、えっと。そうじゃなくて、君の名前は?それにどうしてこんなところに?」 青年は不思議そうに首を傾げた後、 “れっど” と己を指差ししめす。 青年の動作はその一回きりで終わり、再びヤドンをだきしめて動かなくなる。 はっきり言おう。 “れっど” には理解できなかった。 むしろ、これは誰でなくてもわかるはずもない。 『……』 「ごめん。わかんない」 青年の方は相変わらずの無口無表情で、まるで人形が目の前に座っているような錯覚におちいる。 肩を落としうなだれた “れっど” を青年はしばらく無言で見続けていたが、青年はふいに抱きしめていたヤドンをズイっと “れっど” にくっつけるようにおしつけた。 -----なまえ、【レッド】 「え?」 『………』 頭に響くような 〔声〕 が突如聞こえた。 ふと “れっど” がヤドンをみれば、ヤドンの身体はうっすらと光を放っていて、どうやら何かの技を使ったのだと気付く。 意味が分からず “れっど” が青年をみやれば、青年は首を傾げた後、今度は “れっど” と自分をさす仕草を繰り返す。 そこでようやく “れっど” は彼が何を言いたいのかに思いあたった。 「あ!もしかして。おにいさんの名前?」 『…(コクリ)』 「お兄さんも 〔レッド〕 なのか?」 『……』 「っていうかいまのってポケモンのテレパシーを経由してるの!?ポケモンつかって自分の言葉届けたのか!? っていうか頷いてない!?名前じゃなかったの?いや、もしかしておれのことを呼んだだけだったとか?」 『…』 「どっちなんだ!!」 -----【レッド】、オレ 「だったらもっとしゃべってください!!心の中まで無言って!!!凄い技みせられてもそれじゃぁ意味通じないから!たのむよぉ。心の中だけでもいいからもっと単語でいいからもっと言葉をくれ!」 『うん。わかった』 「えぇ!?しゃべれるのっ!?」 『…?』 そんな二人の赤色の出会いは、数刻前。 “れっど” はマサラタウンで、モンスターボールを持つ黒服のトレーナーを追いかけ、西の森に幻のポケモンがいるときき、そこでヒトカゲをつかう少年と出会った。 桃色にしろく光るみたこともないポケモンとヒトカゲは、 “れっど” にとってみたこともない激しいバトルを繰り広げていた。 まもなく2匹のバトルはおわり、それに不満をかんじた “れっど” がヒトカゲのトレーナーをおしやって前に出た。 そうして長年の相棒であるニョロゾで、みたことのないポケモンに攻撃を仕掛けたが、逆に一撃でやられてしまい、桃色のポケモンはビューっと風を切るように飛んでにげてしまった。 おのれの力量をみあやまった “れっど” は、もうヒトカゲのトレーナが去り、あわただしく黒服の男たちがやってきたのも、追いかけることもできず負けたことに衝撃を受けてその場で動けないでいた。 ズボ。 「え」 『……』 落ち込んでいた “れっど” のすぐそばの草むらがゆれたかとおもうと、そこから赤い帽子をかぶった年上の青年が姿を見せた。 腕にはリボンをつけたヤドンを抱いて、サラサラの黒髪に大量のはっぱをからませてでてきた彼は、そのまま “れっど” の横にしゃがみ込むと、不思議そうに呆然とする彼を見ていた。 そして冒頭にいたる。 ********** 翌日。朝日が昇りはじめたと共に、 “れっど” は強くなる方法を求めてオーキド研究所に向かった。 その際、あのヤドンをつれた赤い青年になつかれたらしく、 “れっど” のうしろには無言&無表情の人形のような青年が親鳥にくっついて歩く雛のように続いた。 「年上っていうより、弟でもできた気分だ」 『…』 「えーっと。もしかしてそれでもいいのか?あ、もしかして【レッド】さんてひとりっこ? それにしても同じ名前だと、自分で自分を呼んでるみたいでちょっとはずかしいな。えーっと、【レッド】さんは、なんか他の呼び方で呼ばれたいのとかありますか?」 『……』 「ないなら別のよびかたでよんでもいいいで」 『…ついた』 「え?」 言葉を遮る意図があったかは不明だが、赤い青年が示したそこには 〔オーキド研究所〕 とかかれた看板。 赤い青年は、 “れっど” がとめるのもきかず扉をノックし、誰も出てこないとわかると、さっそくとばかりに取っ手に手をかけた。 「ちょ!ちょっと!!なにしてんだよ!」 『……』 「こういうときぐらいしゃべってくれよ!」 『あ…』 「『あ』って。『あ』ってなに!?おれがしゃべってって言ったからぁ!?」 ほとんど赤い青年のペースにのせられてツッコミまくっている “れっど” だったが、クイっと服を引っ張られ青年に「おちつけ」とばかりに視線を向けられ――そして青年は服をつかんでいない方の手を持ち上げ、 “れっど” の背後の扉を指差した。 そして、ひとこと。 『あれ、博士』 「は?」 「なんじゃいおぬしらは。ハッ!?もしやどろぼう!?」 赤い青年が静かに指差した方の扉はいつの間にか開いており、そこにはひとりの白髪交じりの老人が立っていた。 白衣を着た男は、二人のレッドを目にとめると、表情を険しくさせ “れっど” に掴み掛らんばかりの勢いでどかどかと近寄った。 「こんの!ドロボーめ!!」 「あ、あの、いや、!おれは…ちが!」 「その手にもっとるもんが何よりの証拠!!」 「え?手に?」 『……?』 つかまれた “れっど” の掌にはなぜかモンスターボル。 中身の見えないみたことのない形のボールは、すみっこに〔RED〕と名前がほられている。 それに気付いた赤い青年は、 “れっど” の服から手を離すと、自分のベルト、そしてポケットとなにかを探すようなしぐさをする。 そしてどこにもあのヤドンのモンスターボールがないのに気付き首をかしげた。 半日ほどの付き合いで、あらかた青年の性格を把握していた “れっど” は、彼の行動を見て、そして自分の手の中にモンスターボールをみて思わず顔が引きつった。 ちなみに二人がいるのは、ポケモン研究所。 彼等の前にはポケモンに案する資料が山積みになっていると同時に、ポケモンがはいったたくさんのモンスターボルの棚があったりする。 「ひとのポケモンを盗もうなんて、なんちゅーわるがきじゃ!警察にひっぱってってやるわい!」 「はぁぁぁぁぁぁーーーーー!?」 『……ボール…ない』 |