不思議お兄さんは何役者?
- ポケット モン スター -



08.ポケモン保護区のバイト





 -- side 夢主1 --





マサラタウンから数々の街でショップでレジ打ちしたり、喫茶店でウェイターをしたり、レストランで鍋を振るったり、ポケモンセンターで雑用したり。
地味ではあるがそうして着々と軍資金をためながら、旅を続けているオレ。
なぜか行く先々で、遭遇するサトシたちご一行。
そんなサトシ曰く、ロケット団よりも遭遇率が高いとか何とか。
同じ町にいるんだから仕方あるメェ。
しかもオレは旅をしているんだ。
色んな地方の味をもとめてな!だから長居してる時間もなく、すぐに別の場所へ移動する。
それがたまたまカントー地方で、たまたまサトシたちがいるというだけにすぎない。
進展がありそうなシンオウまで行かなきゃいけないんだけど、まぁ、急ぐたびでもないからいいかと地味に稼いでいる最中だ。
そうしてタマムシシティで炎上したジムの消火を手伝い、ヨヨヨタウンで人手不足で火の車状態だったポケセンを手伝って―――なんやかんやあって今はサファリゾーンにいる。

ヨヨヨタウンをでてからしばらくは、知り合いのジムリーダーに呼ばれていてそのひとのうちにやっかいになっていた。
というか、ジムリーダーのところまでたどり着けないように存在する弟子らが食中毒で倒れたため、緊急でヘルプにきてくれといわれ、向かったのがとんでもない山奥にあるセキチクジム。
そこは忍者屋敷で、弟子がいないため、日常生活がうまくまわらないのだという。
ジム以外だめって、ひととしてだめだろ。
迷って出れなくなった挑戦者も多いらしく、しかたなくオレはジムリーダー(弟子は全滅したがキョウとアヤは無事だった)とその妹の生活(家事一般)を面倒みつつ、ジムに挑みに来たトレーナーの案内役もやっていた。
数日したら、サトシがきた。
透明の壁(ポケモンの技で出された即席のもの)に正面からぶつかるサトシにふいた。
声を上げて笑ったせいで、サトシ一向に見つかり、しぶしぶ案内をした。
ロケット団が乱入したりしたけど、セキチクジムリーダーのキョウからジムバッチをっもらったサトシをみおくり、ちょうど彼らの弟子も戻ってきたので、オレは次の街へ向かった。

タマムシシティー、ヨヨヨタウン、セキチクジム。
そしてサファリランド内のポケモン保護区で密漁者が多くて困っているからきてと、知り合いのジュンサーさん経由でバイト代をはずむと連絡が来て、オニドリルでひっととび。
まずは保護区にいるララミー族に、ポケモンの護衛を頼まれた。
それと行われるポケモンレースの監視。危険が高いからできるだけ怪我人とかでないようにとの依頼だ。
それでポケモン保護区にいけば、なぜかララミー族の人たちそっちのけでポケモンたちに群がられた。そのままヒーヒー言っている間に、またもやサトシ達が登場。
フウコちゃんのポニータでレースにでるということで、応援したり。
レース後もしばらくそこにいたけど、サファリ保護官のジュンサーさんから新たな連絡が入り、ベツン保護苦へ向かう。
ガルラーの群れがいる地帯で、火事が起きたとか。水ポケモンとか草ポケモント化を連れて行けば、そこには壊れたロボの破片とヘリコプターとターザンのようなかっこうをした人間の親子が家族愛をはぐくんでいて。
「なにごと?」と聞けば「一足遅かったわね」と、サファリ保護官のジュンサーさんに肩を竦められた。
そこにもサトシがいたんだって。
もしかして同じ順路をたどっているのかなぁと一抹の不安を覚えるが、今度はサファリゾーンの爺さんが一人じゃ限界があるから手伝えと言ってきたので、また飛行。

そんなわけで、今ここで受付のバイトをしつつ、園内のポケモンの面倒をみている。

実はこのサファリゾーン。奥に龍の谷と呼ばれる場所があり、そこにはミニリュウがいるということになっている。
30年前ここの管理人カイザーが、はじめて伝説のミニリュウをみつけた。それにより一時期トレーナーがおしかけ、このサファリゾーンは荒れに荒れはて、それ以降ポケモンをつかまえるのには、専用のボールでのみ可能。それも30個という制限がついたのだ。
ぶっちゃけていうと、このサファリゾーンの復旧には、かのポケモンマスターレッドも大いにかかわっているらしい。
しったこっちゃぁないがな。
そして現在そのミニリューはいるのかというと、いる。
しかし聞かれたら「いない」と誰もが口をそろえて答えるだろう。
それは30年真似の悲劇を起こさないため。

ちなみにカイザーは知らないが、龍の谷にいるミニリュウは進化していまはハクリュウになっている。
角に傷のある――カイザーが出会ったあいつである。
さらにいうと、その子供のミニリュウもいる。

サファリゾーンの見回りをしている最中に、オレはよく会うんだよ。
なんか以前ここに来たとき、言葉がわかるせいかそのまま懐かれたみたいでさ。
でもハクリュー自身がカイザーに言わないでほしいと言うので、言わないままにしていたんだ。

ん〜、それにしても今日は騒がしいなぁ。

『おーい、カイザー。むこうで縄張り争いしてたコイキングが一匹さギャラドスに進化しちゃったぞ。あれ、まずくね?』

いつものように肩に二匹の小さなピカチュウをのせて、一緒にサファリゾーン内の見回りをしてもどってきた。
受付がある小屋の裏口から中に入れば――

『「「「あ」」」』

カウンターでサファリボールの入った籠を前に、カイザーに銃をつきつけられているサトシとその仲間がいた。

『あー。本当によく会うなぁ。やぁ、トラブルメーカーども』
さん!?」
「なんでこんなところに…って、それはもう聞かなくても十分ね。こんな場所にまでバイトしに来てるんですか?」
「こやつは手伝いじゃ。ああ、それとルールは守れよ」
「はぃ!」

っで。うっかりカスミがみつけた。というか見えない場所にしまえよとカイザーにつっこみたくなるような、ミニリュウとカイザーの写真をみつけたカスミが、「ここにいるのかなぁ」って発言をしてしまい、きれたカイザーが写真を奪って、「ミニリュウはいない!!」と叫んで出て行ってしまった。

『やれやれ。あの爺さん、へんくつだよなぁ。守りたいならそういえばいいいのにな』
さんはなにか知ってるのか?」
『こういうのはユッキーが得意なんだけどねェ。三十年前にカイザーがミニリュウをみつけたんだよ。でも伝説級のポケモンだ。それゆえこのサファリゾーンはミニリュウをつかまえようとするトレーナーであふれてさ、この園内はボロボロ。
もうそうならないようにするために。ボールも入場者も制限がかけられた。
カイザーはそうやってあの写真にうつってたミニリュウを守ってるんだよ』

まぁ、それ以上は聞いてくれるなと苦笑を答えとし、ちょっと落ち込んでいる子供たちの頭をポンポンと撫でて、このサファリゾーンの説明をしてから中へといれてやった。

サトシ隣の部屋に行ってしまった爺さんが、いつのまにかいたロケット団につかまってくすぐりマシーンにかけられてるなんて気付きもせず、オレは思い出と向き合ってるだろうカイザーをおもって少し小屋を離れた。



「にゃぁー。いいタイミングだにゃぁ」
「しめしめ。ジャリボーイたちに“正々堂々といどみにきた”って言う手間が省けたな」「正々堂々挑んでポケモンのゲット数で競う。なぁ〜んてメンドウなことしないですんでよかったわぁ」
「とはいえ、それももちろんフリだがにゃ」
「いいのいいの。なんにせよこうやってミニリュウのことを知ってる爺さんを捕まえて吐かせられればいいんだから」
「それもそうにゃ」

「お前たちに言うわけないだろう!」

そんなロケット団のいつものトリオと、カイザーが笑い声をあげていたなんて、そのときはまだしるよしもなかった。





あっちにはどんなポケモンがいて、あっちの沼にはなにがいる。そんなナビ的説明をしているさなかにもサトシは、すぐにボールをなげる。
しかもどこになげてもどこからか現れたカンタウロスにあたるとか。
こいつ変な意味スゲェとか思った。
おかげでサトシのサファリボールはあっという間に30個がケンタウロスでうまって涙を流していた。
沼でカスミが自分の姿をしたルアーをなげれば、進化したばかりで気が立っている沼のギャラドスをつりあげた。
カスミのポケモン・ルアーの“カスミシュペシャル”ってまじでつれすぎだろう!?
オレがさっき水害とかなわばりのことを考えてギャラドスを捕獲しようとちりしたけど、まったくだめだったんだぞ。
そういえば前世の隅っこにあるアニメの記憶も振り返えるに、あの“カスミシュペシャル”ってすごいひきがいいんだよなぁ。
ちょっとあれ、オレもほしいなぁと思った。

『なぁ、カスミ』
「なぁに」
『そのルアーさ』

「たすけてくれ〜」

『カイザー!?』
「カイザーさん!?どうしたの!」
「あれは…」
「ピカチュウ。電撃を頼む!」

さっそくカスミに交渉だ!そうおもったんだけど、それをさえぎるように、カイザーの声が響いた。
あの銃をところ構わず連射するような強面の男の悲鳴など聞こえるのはおかしい。
声が聞こえた方に駆けつけると、なんとカイザーは何かの機械を取り付けられて笑いながらフラフラ歩いている。
それをみたサトシが素早く支持をだし――

「ぎゃぁ〜!!!」

カイザーごと機械に電撃を加えたのだった。
も、もう少し人間には優しく丁寧な生き物だと理解してほしいものだ。
ポケモンたちは技をくりだすために技にあたることを想定した身体をしているが、バトルのノリでトレーナーまでやられたら…命まで危なくなる。
十歳の子供にそれを理解させるのは難しいかもしれないが、どうかわかってくれサトシ!その電撃は超弱でも痛いんだ!!

とめろよ年長者。と、タケシに視線を向けたら「止める暇もなかったんだ」と引きつった笑いが返された。

ほんの少しだけど、こげたカイザーからでたのは

「龍の谷行ってくれ!」

というものだった。
ミニリュウが危ない!という。

ちなみにカイザーにくすぐりマシーンをとりつけたのはロケット団らしい。
ロケット団、またおまえたちかと頭が痛くなった。
それをきいて慌てて飛び出す正義感あふれる子供サトシ。と、その仲間たち。

オレはカイザーといくからと子供たちに手を振って見送った。

『サトシー。でっかいのとちっこいのによろしくなぁ』
「え?よくわかんないけどわかった!」

それでよろしい。
わからなくともいけばわかる。
トラブルメーカーにして伝ポケホイホイなサトシなら、必ず会える!
ハクリュウとミニリュウにな。

『さぁオレたちもいくぞ。あんたに会わせたい奴がいるんだ』
「あ、おい!どういうことだ?」
『互いの想いがすれちがってんだよこのバカ爺!』

まだ腹筋がいたいのか、それともピカチュウの電撃が聞いているのよろめく身体を、肩から腕を回して半分オレが背負うようにして歩かせると、オレはキャンキャンわえく爺さんとともに龍の谷を目指した。

互いに互いをまもりたいとおもっているから会わないと誓ったバカ、カイザー。
バカ2号ハクリュウ。

うん。そろそろ二人は互いの意思を理解した方がいいと思うんだ。
それにサトシがいる。
お騒がせロッケト団もいる。
ってことは、必然的にハクリュウも姿を見せるだろう。

『頃合いってことさ』

風の向くまま気の向くままってね。運命も縁も気まぐれな女神のいたずらでいつもむすびつくものなんだ。
だからさ、いってこいよカイザー。



案の定。
竜の谷と呼ばれる渓谷に付けば、爆弾を止めにサトシが水中に潜ったまま出てこないとか。
まじかよと!?と、思わず肩を貸していたカイザーを地面に落としてしまうほど驚いた。
このわずかな吸う不運の間になにがあったんだ!?
ハナちゃんに殺される!?
そう思って慌ててオレも水の中に飛び込もうとしたら、ちょうど水面がうずをまきそこから、サトシを背に乗せたハクリュウがとびだしてきた。
爆弾はそうしてロケット団にかえされ、あいもかわらず自滅したロケット団トリオはそのままお空のかなたにとんでいった。

カイザーもつねに傷のあるハクリュウをみて、いろいろなっとくしたらしい。



こうしてハクリュウとミニリュウとサトシの命は守られたのだった。




その後のオレはというと――

「あ、もしもし?くん?わるいんだけど今度は××地区で密漁者よ!手伝って!!」

またジュンサーさんによばれて、広大なポケモン保護区を飛び回っていた。










【注釈】
無印 第32話:セキチク忍者対決
無印 第33話:炎のポケモン大レース
無印 第34話:ガルーラのこもりうた
無印 第35話:ミニリュウの伝説








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