02.オレと主人公な彼ら |
この世界はかの有名なポケモンの世界である。 とはいえ、オレが覚えているのは、おおまかな内容であるため、本当に有名かどうか聞かれると即答はできない。 この世界でわかっていることは、ポケモン世界とはいえ少しばかり複雑ということ。 なにがどう複雑かというと、歴史の流れがだ。 原作があるのなら、それにそって流れというものが存在し、もし原作の記憶があるのならば、それに介入するかしないかとか判断することもできるだろう。 しかしながら、この世界は、ゲーム軸とアニメ軸が過去と未来という形で存在しているのだ。 頂点にして原点と名高いゲーム主人公もいれば、やつといれば伝説ポケモンに必ず会えるとさえいわれるアニポケ主人公もいる。 たとえ原作知識があったとしてもその記憶通りに物事が進むかは怪しい。 ましてや、この世界には異端な(自然発生したっぽいし)オレもいる。 まぁ、最後の“オレのくだりウンヌン”はおいておいて。 つまりはこの世界は、ポケモンと呼ばれる生き物はしっかりいるのだが、原作とは異なる世界であるらしい。 同じ名前の人が出てきても、それがアニメキャラなのか、ゲームキャラ名なのか区別がつかない混沌とした世界だ。 たとえていうなら、レッドがアニメ主人公サトシのルートをたどって、カスミとタケシと仲間になっているとか。そういう状況がありえるのだ。 もちろんこの世界のレッドは、レッドとしてちゃんとゲーム軸の流れをたどった旅をしているので、いまのはあくまで《例》だ。 ただし“ありえたかもしれない”ことが“おこりえる”ことは、間違いない。 アニメやゲームでみたことのある名前であろうと、その彼らが原作通りの道をたどっているとは限らないのである。 この世界は、そういう世界だ。 原作改変したいトリッパーからしたら、融通がきいているのかわるいのやら・・・。 そもそもそういうのに興味がないオレからしたら、その辺は謎である。 巻き込まれなければいいなとオレは思って、日々を生きている。 この世界におけるオレという存在は、あんまり運がない。 よく事件に巻き込まれるし、よくポケモンにふっとばされるし。 ふぅー。 まぁ、運がないっていうのは、これは前世からもそうなので、あきらめもついている。 ちょっとした不運体質なんだ。 しかたない。 こうなると、オレが《原作》に介入しようがしなかろうが、意識してないのにもかかわらず、どちらにせよ、 この不運体質により原作に影響が出てしまうのは必須。 はたまたオレが《原作》が崩壊するようなイベントに巻き込まれる確率が高いか、原作そのものに巻き込まれるのがオチだ。 面倒事はかんべんだよ。 だけどなにがあるかわからないのが生きるということ。 そもそもこの世界で長く生きているので、すでに《事件》とよべそうなものには当たりまくってるし。 この世界は基本が穏やかな世界なので、アニメやゲームのような《原作》どおりの事件が一つでも起きると、大騒動に発展する。 そういったイベントはすでに何度も目の当たりにしてきたから、事件に遭遇する心構えはできている。 だからといって、オレは変人ではない。“あいつら”より、オレは変人じゃないと叫びたい。 だってマサラタウン出身のトレーナーには、非常識極まりない奴らばかりなのだ。 とくに【レッド】とかレッドとかレッドとか【ユキナリ】とか、レッドとか【サトシ】とか。 いま、名前を上げたあいつらの方が、非常識極まりない事件に首を突っ込みまくったり巻き込まれまくったりしているし、 伝説ポケモンとの遭遇率が半端なく高いし!! オレはあんな《主人公》ほど、非常識なトラブルメーカーではない!! ・・・まぁ。なんだ。 オレは不運ではあるけれどな。 そのせいで色んな事件に遭遇したが。 少ないようで数多く存在する伝説ポケモンたちのうち、白くて桃色っぽいのにストーカーされていたり、 虹色な鳥さんを自分の相棒にしちゃってるオレが言えた義理じゃないけどね。 だけど。これだけは断言したい。 絶対にオレは《主人公》たちと、オレは違う! ――と思いたい。 side 夢主1 .。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+ ★ポケットモンスター。 縮めてポケモン そこでは日常に死の危険がない世界。 友情、バトル、冒険、リーグ。そんな心躍る日々が待ち受けるであろう世界。 っが、しかし。 そんなこどもが憧れるような世界に転生しつつも、今のオレはトレーナーではないし、旅もしていない。 枯れているというなかれ。精神年齢はもう二百を優に超えてるし、肉体的にももう十代はとっくに過ぎたからね。さすがに冒険はやめたんだよ。 それに十分オレは自由に、そんでもって気楽に生きている。 オレはトレーナー修行とかポケモンドクターとかコンテストとか、ポケモンにかかわる夢を一切持たず、なぜかレストランでバイトなウェイターなんかをしている。 ずばりバイト先がほぼ飲食関係であるのは、オレの趣味だ。 なのでバーテンだろうがウェイターだろうが問題ない。 むしろ生前の影響ですっかり料理にはまっている。 そうしてオレは現在、自分の店を持つ夢に向け、料理の新レシピを開発すべく各国を渡り歩いているのだ・・・・・・っと、いうことにしておいてくれ。 実はもう店を一つ任されてたりする。 とある大手会社のオーナーである知り合いが、社内食堂を任せてくれたのだ。 まぁ、その会社は派遣会社のように、社員のみなさんはあちこちを飛び回っているので。 はっきりいって、オレの店としてひらいたはいいものの、社員食堂はいつも閑古鳥が鳴いている始末。 オーナーが爆笑してたけどな。 激しく腹を抱えて笑いころげるオーナーの頭にチョップをくらわして、『そうさせたのおまえだろ!』と、飛び出てきたのは――ちょうどサトシがマサラタウンを旅立った日のこと。 あの日はたまたま幼馴染みと連絡が取れて、もとからカントーに帰る予定だった。 なので家出のように食堂をしめてカントーに戻ってきたものの、もとから休暇届を出しているので問題はない。 オーナーなんかオレに殴られたくせに、生暖かい目で「きをつけてな〜」と見送ってくれるほど。 いいのかそれで?と思っても。あの社員食堂に人が来ないんだから問題ないだろう。 そんなわけで、うまいコーヒーや紅茶を入れる店があれば、そのときのオレは喫茶店の素敵なお兄さん。 どこぞやに珍しい料理があると聞けば、そこで働くオレは、笑顔の張り付いたウェイターだ。 今日も今日とて、バイトをして金を稼ぎながら、オレはどこぞやで料理の技術を盗んでいることだろう。 盗むといっても、ちゃんと『教えてください!』って頼んでからその店のレシピを教わったり、働きなあら技術を学んでるのであって。そこは勘違いすんなよ。 今回のオレは、サトシの旅立ちの日にようやく実家のあるカントーに戻ってきた。 理由は簡単。 久しぶりに、幼馴染みに近況報告とばかりに連絡をすれば・・・怒られた。 【さっさと戻ってこい!どんだけ留守にする気だ! そういえばお前の家、どこもかしこも埃だらけでさぁ。本当によく燃えそうだよなぁ。そうそう、最近だれかさんのリザードンがストレスたまっていてなぁ】 ――と、電話越しに低く野太く、威圧感まるだしの殺気まじった声を出されてしまえば、さすがに帰らざるをえず。 はっきりいって、あの迫力に負けた。 家やポケモンを任せっきりにしていたから、これはきれられてもしかたないと思っていたし、やつなら本気で家を燃やしかねないこともあり、急遽カントーに舞い戻った次第だ。 マサラタウンについて早々、サトシを空から見送り、すぐに幼馴染みに会いに行ったのだが、あいつはオレの家の前で仁王立ちをして、形容しがたいほど黒い笑顔を浮かべて待ち構えていた。 それからは長い説教が続き、たまには連絡入れろだの、家の掃除ぐらい自分でやれよとか。ポケモンの面倒を押し付けるなだとか円会陰と続き、終わった時にはすっかり夕日がみえていた。 ようやく解放された後は、疲労困憊。 ポケモンに会いに行くことも研究所に行く気力も起きず、そのまま寝た。 翌日は、久しぶりに感じたカントーの空気に、ほっとした。 やはり自宅が一番落ち着くというもの。 たまにはのんびりするのも悪くないかもしれない。 カントーは緑が多く、空気が澄んでるから、嫌いじゃないんだ。むしろ好きだ。 家的にはご近所さんであるサトシの家のハナコ(ハナちゃん)に挨拶をして、予定通りオーキド研究所に向かった。 やっぱりマサラだけあって、預けていたポケモンたちには都会の施設に預けるより元気で生き生きしていた。 そんでもって実家の家族に怒られた。 オーキド博士(ユッキー)の家では、困った顔と疲労のあふれる顔で、お前は少し自分のポケモンをかまってやれと、二匹のピカチュウを押し付けられた。 ユキナリがちょっとやつれ気味に目の下に隈を作ってぐったりしていたのは、預けていたポケモンのうちとある電気鼠が、名前のごとくネズミ算式に増殖していたらしく、増えて群れをなしていた一部が野生にかえされ、また数匹が各地方の研究施設などに派遣されたらしいがまだ残っているらしく、その世話で疲れ切っていたようだ。 むろんそれはかの《レッド》からオレが借り受けるという形になって手元にいたピカチュウの“ピカ”と、その一族御一行様のことである。 “ピカ”の親はオレじゃないにしても、なんだか申し訳なくなり、オレはユキナリがおしつけてきた小さなピカチュウ二匹を新たに仲間に加えることとなった。 そんなこんなで、たまの里帰りを終えたあと。 せっかくカントーにきたのこともあり再び別地方にまでもどるのは気が乗らなかった。 また旅という名のバイトざんまいの日々を送りながら、再びカントーを転々とすることにした。 本当はオーナーのところに、帰る予定だったんだけどな。 オレにも目的があったから。 目的はあるが、それほど急いでいる旅ではない。急いでもしょうがない旅ともいえる。 でも今年は大きなイベントがカントーで待ち受けているから、各国からカントー地方にひとがたくさんくるんだ。 オレはあまり人混みが好きじゃないから、本当はできるだけ早くカントーを出たい。 しかし金がない。 トレーナーじゃないオレは、政府に優遇されない立場であるため、稼ぐにはバイトしかない。 さすがにトレーナーじゃないとはいえ、手持ちのポケモンだっている。 現に他地方から空を飛んで運んでくれたのは、話が相棒だ。 それに里帰りでユキナリからピカチュウの子供を二匹もらってしまったし。 マサラタウンにいるやつらの食事代も稼がないといけない。 夢である料理店を建てるにしても金は必要だ。 お金というものは、どこの世であっても“あって損はない”わけで―――現在せかせかとタマムシシシティで働いていたりする。 ********** 飲食店で働いていると、よく十代の少年たちが足を運んでくる。 旅先で立ち寄った者、あるいはこの街の住人など来客である少年少女たちのいでたちは様々だが、彼らはみな、ポケモンとの共存に心躍らせる初々しいトレーナーたちである。 オレにも少し前はそんな時代もあったと思い、微笑ましくなる。 そのときの相棒は、ヤドキングだったっけな。懐かしい。 そうして仕事をしながら、なにげなく彼らの話に耳をかたむけていれば、とある名前を耳にして、ちょっとげんなりする。 その名を聞けば、誰でもこの世界がどんなポケモン世界か、すぐに理解するだろう。 話題の少年の名を――サトシ。 事件にやたらと首を突っ込みたがる少年である。 どうやら彼もまたこの町にいるらしく、なんとこの町のジムリーダー本人にいちゃもんをふっかけたのだとか。 そのせいでジムの出入りを禁止されたらしい。 いやはいや。見ていないようで、見てる人は見てるねぇ。 ★ そう。この世界には《サトシ》がいる。 あの某ネットサイト○チャンにおいて、リセットマンと呼ばれる少年だ。 本当に今まで旅の経験を忘れることがなければきっとチャンピョンなど軽くなれるだろうと数多の観衆が、彼を残念と称す。 なにせお子様向けアニメ。 次の週には、今回覚えた体術とか必要でなはないため、すぐに忘れてしまう。 応用があんまりないと感じてしまうのもざらだった。 オレ的には、ゲームでは技は4つまでしか覚えられないから、翌週には忘れるんじゃないかというのが本音だ。 どちらにせよご苦労様なこった。で、ある。 まぁ、そんなこんなで嫌われてはいないが憐れまれてはいる主人公マサラタウンのサトシ――オレの故郷のご近所さんである――が、なにをしたかというと、この町のジムリーダの店で、本人に喧嘩を売ったらしい。 有り得ない。 これだけきくとこの世界はアニポケのようだが、実はそれは大きな間違いだ。 以前オレが【原作と言う意味では『サトシ』以外にもまぁ色々あるんだが、面倒な説明が増えるだけなのでそこは今ははぶいておく】といった原因が“これ”なんだ。 なんとこの世界には、かの「原点にして頂点」といわれた“レッド”がいるのだ。 正確には“いま”ではなく“過去”だが。 彼、レッドがいた――活躍していたのは、今から何十年も前の話になる。 当時十歳だったレッドは、突然現れたちまちのうちに、その名を世界にとどろかせた。 それもそのはず。 とんでもない強さでジムを勝ち進んだらしいのだ。 そのままリーグで優勝してしまい、あげく四天王もあっさりと倒してポケモンチャンピョンに怒涛の勢いであっというまにのぼりつめたのだ。 当時十歳という年齢だったから、よけい世界は彼に注目した。 しかしその後、彼は行方をくらました。 それでもレッドの名で、伝説や噂、逸話はとどまることをしらず流れ、その名前だけが広がっていった。 今でさえその尊敬や憧れを抱く子供たちは絶えず、最年少の伝説のチャンピョンとしていまだ世に語り継がれているのだ。 ここはそんなレッドが「歴史」として存在している――原作とは異なるアニポケ世界。 ゆえに子供たちの語る夢は『ポケモンマスターになりたい』という言葉ではなく、『レッドさんのようになりたい』というものに変わっている。 レッドがチャンピョンになった頃、まだ十歳でジムに挑む者はなく、十歳になった子供が旅立つルールはなかった。 それが法で認められるなり、こどもたちは十歳になるとだれもが、彼(レッド)の後を追いかけるように一匹目のポケモン(相棒)を手に旅立つ。 そして今日もまた、この店に「レッドさんのようになるんだ!」と意気込んで家を飛び出た少年が―――― カランカラン。 「いらっしゃ・・」 「あ」 「・・・いませー」 ベルが鳴り、ニッコリ営業スマイルでオレが迎え入れた客は、オレをみるなり動きを止めた。 前回の店でもその前のそのまた前の店でも遭遇したこどもたちは、こちらをみて驚きに変な顔をしている。 こないだまでいたバイト先をやめ、相方のポケモンの背にのって適当な町へひっととび。 町の近くで降ろしてもらうと、オレはおいしそうなにおいのする店に入るやいなや、そこでバイトを始めた――オレ“”。 目の前には、今裂き子供たちの話題に上がっていた少年がひとり。 グルメなオレが選んだ店であるからには、ここの店も捨てたもんじゃないわけで。 オレが味を盗もうと仕事をしているぐらいの店だ。飲み物にしろ食事にしろ、味はいいに決まっている。 なによりオレがバイトをするというのは“そういう”ことだ。 そこへ必ずサトシ一行がくることから、彼の嗅覚と味覚はグルメリストといっても問題ないんじゃないかとか、ひそかに思っている。 思っているだけで口には出さないが。 そんな味の保証のされた店ばかりに訪れる目の前の少年の舌は、きっとあの美人で料理がうまいと評判のハナちゃんをママに持ち、なおかつ旅の道中は美味すぎる飯を作るタケシがいるからよけいだ。 そういえばカスミはジムリーダーの娘、ある意味お嬢様だし…カントーメンツ、サトシを筆頭に全員の舌が肥えている。絶対。 うん。やっぱりグルメリストと呼んでやろう。 そんなグルメリストな、この世界の今の時代の主人公であると思われるサトシ少年が目の前にいる。 肩には相変わらずピカチュウ。 とりあえず。 客だ。 客が来た。 「あ〜…一名様とご一匹様、ご来店〜。 いっらっしゃいませ?」 こちらへどうぞって言いながら、外に追い出してはダメだろうか? テレッレ、レ〜♪ 疫病神というのなの首つっこみたがり(主人公特権)やがあらわれた! な〜んてね。 でも事件には、巻き込まれたくないなぁ。 エリカの怒りを買ったっていうし。 目立つの嫌いなんだよね。 さて。どうしようか。 |