03.呼んだのは誰だ? |
[アニメより] 第271話「同窓会は遅れてくると入りづらい」〜 ---------- 僕が百数える前に 僕が本物の鬼になる前に―― 黒子野太助。 どこか某青春バスケを彷彿とさせる名前の“あいつ”。 あまりに影が薄くて、その存在のことさえ思い出せない。 だから“あいつ”は、接触をしなければすぐに自分のことなど忘れてしまうから。と、おれたちの前から姿を消した。 ちげぇだろ! お前は、忘れれるのがいやだから。忘れられて、自分が傷つくのが嫌だから。忘れられたショックで悲しむのが嫌だから。 存在感がないと自分を正当化して、自分から背中を向けたんだ。 逃げんなよ。 お前が逃げるというなら―― 「ひとりぐらい覚えていたって罰は当たらないだろ?」 おれはお前を絶対に忘れてなんかやるもんか。 -- side 坂田銀時 -- 大事な話があるから来いと言われ、いぶかしんできてみれば。 ついた料亭では、「攘夷志士同窓会」などと弾幕が張られ、なかですでに坂本と桂がいた。 思わずふすまをしめた。 だけどすぐにおいかけてきた二人によってひきとめられた。 ひきづり戻されたところで、この同窓会が、桂たちがかんがえたものではないのだと教えられ、おかしな手紙を手渡される。 ――お久しぶりです。 元気にしてますか。 実は私も今 江戸に上京していて、 よかったらまた 昔の仲間で集まって 一杯飲みませんか。 黒子のタスケ 銀「・・・これ、もう違うアニメだよな?」 え。父ちゃんのいたずらとかじゃ。 ないよなー。 だってうちの父ちゃん、アニメとかわかんないし。 そもそもが文字の書体が違うし。 しかも正式には、黒子野太助と書くらしい。 っで、彼がどんなやつか誰も覚えてなくて。 でも同窓会をわざわざひらいてくれたのだから、 奴のことをまったく覚えていないのは失礼だと。 過去を思い出して、黒子野のことを思い出そうということになった。 そうして無理やり絞り出すように、過去編へと。 なんか歩狩汗(ポカリ)と、ヤクルコの借金の話になった。 どうでもいいけど、それ、全部オレには記憶はありませんから! そもそも戦場になんで自販機があるんだよ! っていうか、歩狩汗4500円ってなんでだよ! 高いっつーの!! っていうか、当時消費税あったか!?消費税8%で計算してんのはなんでだよ! っで。 そうこうしている間に、 もう一人参加者が登場――っと、 黒子野がキター!?と思っていたら。 高杉が・・・・ 高杉が。 と、おもったら、そこらへんのロリコン。 いや、しつれい。高杉の恰好をした鬼兵隊の・・・なんだっけ? あ、ロリコン。武市変平太だっけ、わりーわりー。 そいつがきて、高杉の伝言を置いていった。 思うに伝言残すためなら、なんでわざわざ高杉のかっこうをしてんだよ。 っていうか、ヤクルコ・・・。 お前あの顔で、ヤクルコかよ!? ヤクルコキャラなの!? それで固定しちゃうっていいのかよ!!! 結局あのロリコンやろうは、「同胞よ。やすらかにねむれ」とかかれた文章と、 歩狩汗を置いていった。 よけいに意味が分からなくなっただけだった。 結局残されたのは、意味のわからないものばかり。 銀「歩狩汗と・・・"安らかに眠れ"?・・・・どういう意味だ!!!」 よけいこんがらがっただけじゃねぇか!厨二クセェ、思わせぶりなセリフも大概にしろってんだあいつ! 坂「まつぜよ金時」 坂「この歩狩汗は・・・」 桂「は!?」 坂「わしもヅラも黒子野のことを思い出そうとするとき、いつも歩狩汗が邪魔をしとった。しかし」 桂「あれは間違いじゃなかったんだ」 桂「俺達と黒子野の過去は繋がっていたんだ」 銀「ん?」 坂桂「「この歩狩汗に」」 ふいに坂本と桂から、武市が置いていった歩狩汗をみて、なにかを思い出したような表情を見せた。 銀「こんな歩狩汗で、ねぇ」 いや。まてよ。 そういえば―― 父ちゃんが、戦場から抜けた頃。 戦が硬直状態になったことがあった。 いや、よくあるはなしだけど。 それで敵とやりあって。 そのとき、敵の軍隊をあるていどおいつめた。 けれど、こちら側の兵たちも怪我人は出て、双方ともに身動きができなかった。 敵に襲いにかかるにも、こちらにも余力はなく。 山の中ということと、長く続く戦と・・・負傷兵たち。 気がめいるのもよくわかる。 だからなにか気分転換はないかと話しているうちに、なぜか遊郭の話になり、 そのあとはデリカシーのない坂本のせいで、 俺と高杉、桂で、女の好みやら何やら言い争いを始めて しまって。 銀「なぁ」 桂「ああ」 坂「なんか思い出してきた」 喧嘩を始めた俺をとめてくれたのは・・・。 《あの、みなさん。どうですか?気分転換にこれで缶蹴りでもしませんか》 缶蹴りでもしようと、歩狩汗の空き缶を持ってきたのは・・・。 銀「あのとき、缶蹴りしようって言ったの誰だっけ?」 桂「・・・」 坂「・・・」 《はやくお二人も隠れてください。僕が鬼、やりますから》 銀「あのとき、鬼をひきうけて」 《いーち、にーい、さーん・・》 銀「寺の中で100まで数えてたの、誰だったっけ?」 桂「・・・」 坂「・・・」 あのとき、負傷兵が敵の間者で、間者をあぶりだすため、敵をおびきよせるために、そのまま寺を爆発させた。 爆破した寺で、最後に聞こえたのは71という声。 寺の中で、100まで数えていたのは・・・。 坂「あのとき」 桂「爆破した寺で鬼をやっていたのは」 銀「だれ、だっけ?」 そうなると。 この同窓会は誰が開いたのだろう。 まさかあの爆発で逃げられず、恨んだあいつが本物の鬼となって俺たちをよんだんじゃ・・・。 まさかな。 そんなことあるわけ。 桂と坂本はあるわけないと、ビールをあおり、笑ってことを流そうとする。 だけど俺には信じられなくて。 だって幽霊本当にいたし。 カッパもいたし(天人だったけど)。 それに神様とか化け猫(うちの父)もいたし。 妖怪だっていそうな世の中だ。 あいつが幽霊になってでてくるぐらい有り得るだろう。 まさか。という考えで、寒気が走る。 やだ。もしそれがほんとうだったらどうしよう。 ちょっとまって。 まじ幽霊怖い。 ま、まぁひとりじゃないからいいかな・・・ とかおもってたら。 桂「あ、ちょっと厠へ」 銀「どこいくの!?」 何で怖くないの!? 恨まれてるかもしれないって話したばっかなのに!?本当の鬼になってしまって、いまだ缶けりをしているのかもしれないとか話したあとなのに!? 顔が引きつるのが止まらない。 なのにそこへなんともないとばかりに桂が立ち上がりさっさと廊下に出てしまう。 幽霊が怖いなんて言えないから言い訳しまくっていれば、おいてかれてしまう。 せめて坂本! 助けろ。 そう思っても、遠回しな言い方は坂本には通じなくて。 っで、なんだかションベンのくせに桂は帰ってこないし。 それを言ったら、坂本が一人でさがしにいこうとするし。 おいていかれたなくて必死にくらいついて、なんとか厠まで到着したが、桂いないし! オバケこわいから一人にしないでほしいのに、放置されたし!? しかも頑張って「そこにいろよ!」と声をかけたのに、厠から坂本が出て行ってすぐに・・・ 「さかもとさん、みーっけ。缶、ふーんだ」 って。声が廊下に響くし!!!!!! 「あと、もうひとりだね」 いやー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! こわいこわいこわいこわいこわい こわいこわいこわいこわいこわい こわいこわいこわいこわいこわい こわいこわいこわいこわいこわい こわいこわいこわいこわいこわい こわいこわいこわいこわいこわい こわいこわいこわいこわいこわいぃぃ!!! ドラ●もんの歌とかうたって頑張ってみたけど怖いのはかわらない。 しかも廊下には坂本の影さえなくて。 ドラえ●んの歌を歌いながらものすっごいダッシュで暗い廊下を走り抜け、元の部屋まで戻る。 とりあえず怖さを歌ってごまかすことにした。 なのに、どれだけたっても桂も坂本も戻ってこなくて。 やっぱり幽霊にやられたんだ。 そう思ってふるえがとまらなかった。 二番目の歌詞まで行ったところで、もうドラえも●どころではなくて、恐怖のあまりもう歌詞なんか出てこなくて。 でも歌ってないとこわい。 そうおもってたら、背番号11のユニフォームを着たとおりすがりのひとが、歌詞の続きを教えてくれた。 っで。 「銀時さん、みーつけた」 歩狩汗の缶。 そして血みどろ包帯まみれの黒子野と思われるヤツラが現れて。 ミスディレで缶をなげとばしまくるし。 こわいし。 もうだめだー!!! と思ったときには、目の前に複数の缶を置かれていて、そこからでた煙で・・・いしきが・・・・・・ * * * * * ――攘夷戦争真っ只中。 俺たちは敵から逃げて。 寺に攘夷志士の仲間たちがいるという情報を流し、負傷兵の中に紛れ込んでいる間者を探していた。 黒子野が敵を引き付けている間に、間者をあぶりだしあとは、仲間たちを裏口から逃がした。 そうしてほうぼうのていで仲間と一緒に、森の中を走った。 ある程度拠点にしていた寺から離れたところで一息つこうということになって、足を止める。 もうみんな走れるほど元気な奴はいなくて。 座り込んだとたん、足がいうことを聞かずどっと疲れがのしかかってくる。 怪我といままでの疲労と、おわれているという危機感が、さらに精神にも負担をかけていたのだろう。 仲間たちは木によりかかるようにして、その場で倒れこむように休む。 俺も疲れていなかったわけではなく、木に寄りかかるようにして少しだけ目を閉じた。 それだけでどっと襲いくる疲労に、眠気に負けてしまいそうになる。 けれど完全にオチてしまっては、追跡者が来た時に逃げられなくなる。 警戒だけは怠らず、ちょっと身体を休める程度に、刀を抱き込むようにして眠る。 黒「銀時さん」 カサっと聞こえた小さな足音。 警戒する必要はない。 野生のネコだった父ちゃんに育てられた俺は、たぶんひとより気配に敏感だ。 彼は今回の功労者。 けれど少しでも体を休めたかった俺は、相手が敵でないとわかっていたから、 近づいてくる足音にもとくに気にすることなく、そのまま目を閉じていた。 黒「銀時さん。眠って、しまいましたか」 やはり黒子野のようだ。 何のようだろう。 あいつにはいつも世話になってる。 また敵さんとの追いかけっこが始まる。 お前も休めよ。 黒「おわかれ前に、挨拶がしたかったけど。 こんなわかれかたも僕らしいのかもしれませんね」 黒子野は俺が本当に寝ていると思っているようで、独り言を漏らしていく。 おわかれ? なんのことだ? 黒「なにをとっても凡庸で、影の薄い僕は、みなさんの後ろで些細なお手伝いしかできなかったけど。 皆さんの影になって働けたこと。みなさんと一緒に戦えたこと。・・・忘れません」 足音が一歩遠ざかる。 こちらに背を向けた黒子が、そのままどこかへ行こうとしているのが分かった。 顔を上げれば、黒子野の背中。 ああ、いくのか。 黒「みなさんは僕のこと、わすれちゃいますよね。 でも。それでいいんです。 それは僕の誇りですから」 そんな誇りいらねぇーよ。 なぁ、黒子野。 おまえは、どこにいくんだ? 銀「影はどんなチッポケでも光がねぇと、地面には映らねぇよ」 でもお前の決意は固いんだろうな。 とめられないのなら 銀「一人ぐらい覚えてたって、罰はあたらねぇだろ」 肩越しに一瞬だけ振り返った黒子野と視線が合う。 とめられないのがわかってるから。 しかたない。 見送ってやるよ。 銀「――だから、また何かあった時は、助けに来てくれよな。黒子野」 黒「ええ」 きっと奴の口端は持ちあがっていたことだろう。 黒「僕はいつだって貴方たちと共にいます」 * * * * * ああ、そうだった。 はじめからあの寺を爆破するのは作戦のうちだった。 声を上げて数を数えれば、敵はその声の方に行くだろうとふんで。 だから黒子野は100まで数えた。 黒子野なら逃げられるとわかっていたから、あいつにあの囮を頼んだ。 だからあいつは―― 目が覚める。 その勢いで、催眠ガスを吐き出している並んだ四つの歩狩汗の缶を蹴り飛ばす。 手ごたえあり。 なんだ。幽霊じゃなかったのか。 ビビッて損したわ。 そもそも黒子野は死んでなんかいない。 だから幽霊も何もないだろうに。 銀「悪かったな黒子野」 あんなこと言ったのに、忘れちまって、ごめん。 おもいだしたよ。 銀「てめぇのこと忘れてくれなんて言うやつが、化けてまで俺たちの前に出てくるなんざ、誇りにかけてねぇよな」 この騒動の原因は、どうやら高杉んとこのやろうの単独プレーだったようだ。 違う部屋でのびている桂と坂本を回収したとき、隠しカメラがあの同窓会の部屋にあったのを知った。 桂「あれ?朝だぞ」 坂「いつのまに寝てしもうたんじゃ」 どうやら高杉のところのやつらはきまえよく前払いで部屋代を払ってくれていたようで、朝までゆっくりすることができた。 朝日が昇り、チュンチュンとスズメが鳴いたころ、ようやく桂達が目を覚ました。 俺は縁側で空っぽの空き缶の横に腰を降ろし、眩しいばかりの朝陽の光を眺めていた。 坂「記憶が飛んどるぅ。飲みすぎたか」 なんだなんだ。 せっかく静かなひと時を堪能していたというのに。 あいつらが起きただけですぐに騒がしくなっちまうな。 たかが朝日でも。 目覚めたこいつらのうるさいこと。 “光”は、こんなにも人を引き付けるほど騒がしい。 本当に昨日の“夜”とは大違い。 桂「は!?そういえば黒子野は!?」 坂「そうだった!同窓会は!?いったいどうなったんじゃ!?」 どうやらようやく頭が回りだしたみたいだ。 気絶させられる前まで記憶を取り戻した二人は、あせったように立ち上がってこちらに迫ってくる。 なんだよ前ら。今更幽霊が怖くなったか? ばぁーか。幽霊なんかいるわけないだろ。 変な奴らだなぁ。 桂「おい銀時、お前なにか知らんのか!?」 坂「お前は起きとったがか?昨夜のこと何か覚えてらんのか?」 銀「忘れた」 自分が飲んでいた歩狩汗の空き缶片手に、横にあった“もう一つの缶”も拾って立ち上がる。 じゃぁ、俺、もういくわと、騒がしい同級生たちをおいて、店を出る。 さぁーてと。 空き缶はちゃんと指定の場所に捨てないとな。 【後日談】 銀「忘れねぇよ」 夢『――っと、内心はあんなことおもちゃってるみたいだぞ。そこのところどう思う黒子野よ』 黒「そうですね〜。忘れてもらわないと困りますよね。ねぇ、親父さん」 夢『だよなー』 黒夢「『だって』」 夢『本当にあいつらの傍にいるもんなお前』 黒「ええ。いましたよ」 黒「(クス) “ずっとまえ”からね」 |