02.ああ、あの日の空は青色だった |
[アニメより] 第269話「年号暗記より人間焼きつけろ」 ---------- いやいやこれはないでしょ ありえないよ いや・・・聞いたオレがまちがってたけど たしかにそれも“歴史”ではあるけどね 歴史は歴史でも、歴史違いだ!! -- side 坂田銀時 -- 苦手な歴史の勉強を月詠に教わっていた晴太だったが、その教え方がもう肉体に教え込む形だった。 たまたまと晴太に声をかけたのが間違いだった。 気付けば、俺まで晴太の勉強に巻き込まれていた。 いや、だって家庭教師代くれるって言うから、つい・・・さ。 っで。 寺子屋に通っていたからといって、必ずしもまっとうに授業をうけていたとは限らないわけで、むしろそんな十数年前のことを覚えてられるほどおれは来ちゃいない。 教科書があってもうまく説明できるわけもなければ、覚えやすい方法なんて・・・しるわけないだろうが!! 結局いろいろ話を捏造していたら、歴史の授業だけど、地球が一回ほろんだことになってしまった。 様子をうかがっていた日輪によって、1からやりなおしをくらった。 それから晴太と月詠と休憩がてら外にでていくときには、やっぱり晴太は包帯まみれだった。 それで血走った目で歴史の年号をブツブツかたる晴太に、思わずためいきをつきつつ、この後どうするかと月詠と話していたら、 いいタイミングで土方十四朗をみつけた。 のんきに肩に灰色の綺麗な猫をのせて、鼻歌うたいながら、団子片手に歩いていた。 あれでもたしか幕府の犬。真選組の副長をやってるぐらいだ。きっと頭はいいに違いない。 しかも200年以上生きている歴史の生き証人。 これならいけるのではないか? 月詠に視線で問えば頷き返される。 そのまま土方を捕まえ―― ********** 銀「たのむ!」 月「わっちからも頼みたい」 晴「シロウさん、お願い!」 いままでの年号の覚え方についてを語り、三人で拝みにかかれば、土方は肩の上の猫をなでながら、困ったような顔をしていた。 銀「このとおり!!」 土『うーん。いや、オレなんかじゃ無理だと思うぜぇ』 拝み倒して教わった土方十四朗による歴史の授業は、やばかった。 土『そうあれはざっと72000回太陽が昇るよりもはるかに前のこと』 晴「ななまん・・・って、ねぇ、銀さん」 銀「何も聞くな」 晴「一年って360日だよね?太陽は一日に一回しかのぼらないよね?ねぇ、七万回ってそれって何年前だよ(涙)」 銀「おれに聞くなって言ったよねぇ!?銀さん、今言ったよね晴太ぁ!」 月「・・・・・・わっちはどこからつっこめばいい?」 銀「聞くな」 土『オレは自分が犬だとばかりおもっていた。だが目を開けたら猫がいて、彼女が自分の母親だと言い、周囲にはニャーニャーとなくオレの兄弟たちがいた。そこでああ、オレは猫として生まれたんだなと理解した。それから少しして、生きていくために何が一番いいかと言うことを母に教わり、人間の街にいった。といっても当時の人間たちは、それは質素な暮らしをしていたものだ。建物など蹴り一つで倒れそうな物ばかりで・・・』 たしかに200年以上を生きた生き証人ではあったが、このひと二十年ぐらい前まではただの猫だったわ。 そこから猫視点による人間社会の移り変わり事情を語られたが、こんままじゃダメだとおもった月詠が話題を変えた。 もっと人間の教科書にも載っているようなことを教えてとこえば、年代と人名を尋ねられた。 晴太が二百年以内に実在しているはず大名の名前を告げれば、少し考えたあと、思い出したとばかりに明るい緑の瞳を楽しそうに細め―― 土『あーしってるしってる。もやしみたいに細くて目が糸目の奴だろ』 晴「外見言われても誰かなんて知らないよぉ」 土『いやぁ〜なつかしいなぁ。××将軍といえば、△△大名!△△さんは面白かったわ。あのひと、オレが庭にはいりこんだら、庭の鯉を食べられるんじゃないかとあわてだしてさー。わざとオレが鯉をつっついてみたら、よほど鯉を大事にしてたんだろうな。館を揺るがせる大騒ぎ。あ、だけど△△さん、実は泳げなくて・・でも落ちちゃったんだよすべって池に。もちろんオレは逃げたけどな。そのあと△△さん家の娘に飼い猫として5年ぐらい飼われてたけど、姫がさ14歳の時に左大臣家に嫁いじゃったから館は出たんだよ。それで××将軍の飼い猫に転身して。いや、あのひとのこされた自画像ほどイケメンじゃないぞ。実はな小太りでまぁダルマのようでさ。ヒゲがちょび髭薄くて。刈り取るのさえかわいそうな毛だったんだ。今、世に残されてる自画像はやっこさん見えはったんだよ。ちなみに美術館とか教科書で見る××将軍の自画像の隅の方に書かれてる白い猫、あれはオレがモデルな。昔からイケメンだったろオレは。 次は・・・○□△将軍?ってーと、誰だ?教科書にはなんてかいてるんだ?・・・ふんふん。あ、これも覚えあるわ。このときもまだ城で飼い猫やってて。げっ。それ間違い。すごい秀でた政治をしてたのは、やつの部下。○□△自身はただのどこにでもいる道楽息子。バカのつくのうたりんで、いわゆる天下りによくあるタイプかな。親のすねかじってきただけのただの虎の威を借る狐。実際政治の案を練ってたの、やつの部下。というか、実はあいつつきの侍女な。○□△の愚痴に一つ一つ答えていたそれを○□△がそのまま政策に採用したのがあの時代。当時のオレはその侍女に密かにえさをもらいにいっていたノラの一匹だぞ。人間って、オレたち猫の区別なんかそうそうつかないだろ。五年から十年ぐらい姿をくらましていれば、同じ猫だなんて誰も気づかないからな。余裕で居座ってたぜ。 あ、この★★将軍は、かわいそうなことをした。歴史書の通り、有能で本当に民の暮らしをよくしようとする素晴らしい人格者だったんだけどな。そうそう早死にだったな。あれは不運な事故だった。あいつはいままでのなかで一等反応が面白いから気に入ってたんだが。頭脳戦や政には有能でも、あいつ迷信に弱くて。非現実的なことや、心霊現象とか本当にうのみにしちゃうんだよ。ほら、だからこの時代は宗教改革がさかんだったのはそのせいな。神も信じる。だけど幽霊も信じるってぐらい、信じやすくて。夜なんかだと鯉がはねた水音だけで悲鳴を上げるほど。あまりに繊細すぎて体壊しちゃって、っていうか、反応が面白すぎてオレが毎夜毎夜家鳴りのふりしたり、天井や床下をねずみおいかけてはしりまわってたら幽霊と勘違いされて。いつしか経をくるったように詠み始めて、あげく不眠症になっちゃってねぇ。三回しかいたずらしかけてないんだけど。うん、しょうじきすまなかったと思ってる』 さらっと、世に残してはいけないし、聞いてはいけない事情を聞いた気がする。 むしろ知りたくなかった。 さらには戦争が始まる前に、侍どもの髷がヒョコヒョコ動くのが楽しすぎて、その鋭い爪で切り裂いて落ち武者に変えているうちに“髪狩り(カミガリ)”と呼ばれたとか。 天人がくると将軍がどこどこで○○をしたとか、西郷さんがフンドシをあらってるところで自分は水浴びをしていたとか、まだ若かりし松平片栗虎が、鼻水垂らしてやんちゃしていたとか。 そんな逸話いらない。 しかもしだいに年代が五十年ほど前までくると、あきらかに聞き覚えのあるような会話まで聞こえてくる。 町で猫になってからはじめて、団子をもらったこと。そのときの娘のいた店はデブばかりだったとか、はじめて食べた団子のうまいことうまいこと。などなど。そのときの感想を熱く語られ(ってか、それあれだろお登勢さんの櫛事件の団子の話かよ!?)、「さいですか」としか返答できなかったのはなにもオレに限ったことではない。 そうしてまだまだ彼の話は時が流れ・・・ 上位戦争が始まって頃になると、だんだんと内容が詳細な描写で語られるようになってきた。 土『そこでオレはオレの宝と出会ったんだ』 月「ん?ああ、お前のなれ初めとか銀時が生まれたところはいい。こどもの情操教育よくないからな」 土『そうか。まぁ、とりあえず母親はいないしでオレひとりで育てる羽目になったんだけど』 月「旨い具合に飛ばしたな」 土『オレ、メスになったことないし、赤子ってのをどうやって育てるのかわからなくてさ』 ああ、そういえば。 覚えてなくともその時代、普通じゃないもの食べさせられてたらしいですね俺。 あまり知りたくないんでその辺も省いてほしい。 土『なんとか育てていくうちに、ふと銀時が人間の言葉を話せずニャーとしか言わないのに気付いた。オレや普通の猫でさえ人の言語をしゃべれなくともある程度の人間語は理解していた。だけどこの段階で、銀時は森で育てたから、人間を見たことなかったわけだ。つまりまったく人語を理解してない。触れたこともないんだからしょうがないよな。でも世界は人間であふれてる。なのに人間語が理解できないのはまずいと思って、文字を書いて教えようとしたけど、赤ん坊に文字なんか読めるわけもなく。考えに考えた末、人間の寺子屋に銀時をあづけたんだ。それで・・・』 土『しばらくして戦争が激化してく。オレや西郷さんは、そのあいだに、血を浴びすぎたんだろう。 気付けばただの化け猫でしかなかったオレは、人の姿になれるようになっていた。 いまでもオレはあの日観た空の色を覚えてる。 忘れられるはずがない。 あのとき、人間になって、初めて、世界に色がついた。 見上げた空は、澄み切っていて、どこまでも高くて――綺麗な青色をしていた。 まばゆいぐらいの色であふれた世界は、なんてすばらしいんだろうって思ったよ』 晴「・・・土方さんって化け猫だったの!?」 土『ん?晴太はまだオレの正体しらなかったのか』 月「そういえば・・・話してなかった」 土『まぁ、機会がなかったからしょうがないな』 晴「それよりさ!なんで人間になったら、空が綺麗だって思ったんだよ。空はいつも同じ色じゃん」 月「晴太はしらなかったのだな」 土『ネコも犬も色の区別ができないんだ。 だから世界に色がついたその日は、オレにとって忘れらない思い出ってわけだよ』 そこからは・・・ はは。当然わかるよな? 話の流れ、時代背景的に、次に何が来るかってさ。 ああ、そうだとも。 歴史の生き証人は、それはそれは饒舌に細部まで語ってくれたさ。 なにをって。 おれの赤裸々らな過去をだよ!!! あああ!!!!もう! 恥ずかしい! あ!やめろそれは言っちゃダメー!! こうして晴太の勉強は報われないほうにどんどん進んでいく。 おれも報われてないけどね! なんでたかが日本史の授業で、歴史は歴史でも猫視点の世界史とか。 あと、自分の息子の黒歴史を語るのよあのひとは!! ネタにはことかかない人生だったのはよくわかったけど。 色んな意味で“歴史”違いだ!!! おねがいだからもう俺の黒歴史を暴露するのやめてーーーーーーー!!! 【その後】 夢『・・・っと、いうわけなんだよ』 晴「え。銀さんそんなときまでおねしょしてたの!?」 月「それはまた・・・予想以上にひどいな」 夢『ああ。それで世界地図を書いて、おれは世界を制覇するんだとか言って松陽先生から苦笑をもらっていたもんだ』 晴「しかも世界制覇wwww」 月「晴太。ああはなるなよ」 銀「もうやめて!!!おれのライフはゼロよぉ!!!!!!」 |