白と赤色の物語
- 銀 魂 -



28.猫びより
第34話「恋にマニュアルなんていらない」より





『オレはたしかに猫にも人にもなれるけど』

その両方をまぜた中途半端な姿にはなれない。
っというか、猫耳な人間モードなんて、やろうとおもってやったことはないな。

え。
だって、オレがキャサリン嬢みたいな猫耳なんかあっても気持ち悪いだけだろ?





 -- side 夢主1 --





はいどーも☆
銀時記憶喪失の一件以降、オレと銀時が親子だって真選組のみんなにバレマシタ。
とはいえ、もとから隠していたつもりはあまりないけどな。
隠すなら、オレとしては騒ぎにしたくないから、オレが人間でないことぐらいだろうか。
ただ、なんというか。オレ以外の周囲の奴らの方が、土方十四朗と坂田銀時の家族関係を隠したがるんだよ。

原因はなんだったかなぁ。
童顔すぎって言われたなぁ。

あとは、年齢が人間の平均年齢をはるかにオーバーしているから、実年齢は決して言ってはいけないとオレの素性を知る者たち全員には言われているのでできるだけ守るようにしている。




「ところで土方さん。あのゴリラ、なんとかしてくれません?」
『ブッ!!!グ!?ぐホッ!?』

目の前には桃色の着物に身を包んだ笑顔をきらっきらっとふりむいている女性。
うちの息子のところで働いている眼鏡君の姉、お妙だ。

その笑顔に思わず顔が引きつる。
っていうか、飲んでいたコーヒーがのどに詰まってむせた。
ゴホゴホやっていたら、「あらあら大丈夫ですか?」とお妙が優しげに声をかけてくる。
というか、いつから彼女はいたんだ。

むせてうつむいていた顔を上げても・・・・・・いる。

オレは、基本は猫だからか、匂いのいいものが好きだ。
コーヒーは猫や犬にはよくないかもしれないが、人間の姿の時には玉ねぎも問題なかったからきっと大丈夫だろう。

そんな理由でコーヒーのうまい店に来ているのだが。

ファミレスとかとはちがって、ちょっとこじゃれた喫茶店の中はかなり静かで、雰囲気がいい。
ただし江戸の町にはちょっとばかり不似合いな西洋風の店だが。それもまたオレてきには気に入っていて、こうして巡回の途中でたまによるのだが。

現在、正面にはなぜかお妙が。
気配からして、お妙にくっついてきたのだろう。机の下に近藤さんの気配がするのは、黙っておこう。



オレは一人でこの店に入ったはず。

うーん。なぜだ。
なぜ、ひとりではいったのに、気付いたらお妙が目の前に笑顔で座っているんだろう。

しかも話の流れで、そんな彼女にスイーツをおごってやらねばならなくなったとか。
ちなみにとびっきりの笑顔で彼女は言った。

「ここはもちろん男のあなたがおごってくれるのよね?当然よね?」
『は?なんでだよ。おまえさんが勝手にきたんだr』
「あらあら。ごめんなさいよく聞こえなかったわ」
『だから近藤さんとかオレは関係な』
「あ゛ぁ?なんか言ったかこの童顔。こちとらなぁそのゴリラのせいでいつも面倒かけられてるんだよ。しかもうちの新ちゃん、あんたんとこのガキからまだ一回も給料もらってないんだけど」

っと、さっきの笑顔から一変。
女性がする顔じゃないそれで一段も二段回も低い声でもって睨まれた。
しかも机の下で足を思いっきり踏まれた。

「っで。土方さん。“なにか”言ったかしら?」
『ねぇよ。
・・・ありがたくおごらせてもらいます』


――っと、いう経緯により、オレは彼女に紅茶とケーキのセットをおごっている。
帰りにはバーゲンダッツのアイスもおごらなければいけないらしい。



とりあえず八つ当たりも勘弁してほしい。
机に頬肘をつきつつ、足元の隅っこの方にある気配を足でつっつき、目の前の女性には聞こえないように、ボソリと声をかける。

『なぁ近藤さん。オレ、そろそろあんたを捕まえなきゃいけないらしいぜ?』

面倒をかけんじゃねぇよ。
お妙にばれる前に、さっさとそこからどいとけよ。
まだお妙には気づかれてなさそうだし。

そう思って足でつっついていれっば、微かな振動が足元から伝わってくる。
どうやら近藤さんは泣いているらしい。

だからそんなストーキングなんてやめろっていったんだよ。

っと、思っていたら

「土方さん」
『あ?』
「その足元にかばってるもの。はやく殺すか埋めるかしないと・・・」
『!?』
「潰すわよ?」

どこをだっ!!!
というか、なにをだっ!!


瞬間、足元の気配が消える。
近藤さんもようやく理解したようだ。
というか、忍者のようだなぁ。

そう思って苦笑しようとしていたら、今度は真横から濃ゆい気配がしてびっくりした。

「おった、えさーーーーーーーーーーーんん!!!!そんないけずなこと言わないでぇぇ!!!もっともっとののしって!そんなお妙さんも好きだ!!」
「さっさと消えろって言ってんだよこのゴリラァ!!!」


『・・・』


いつまにか机の下から飛び出ていた近藤さんはそのままの勢いでお妙に抱きつこうとしていたが、物凄い反射神経をみせたお妙が信じられない怪力でもって殴りとばした。
静かなはずの俺のお気に入りの喫茶店は、いつのまにかプロレスの会場になったようだ。
お妙と近藤さんのやり取りに、とまどってオロオロとする店員さん。
オレは他人のふりを決め込み、席を立ってドタバタする彼らから視線を逸らして、コーヒーのおかわりを頼んだ。







***********







そういえば最近“寺門通”以外に、猫耳なアイドルが流行っているらしい。
銀時のところの眼鏡君、もとい新八くんがたまたま電車の中で救ったという女の子とお付き合いを始めたらしいが、猫耳なんだそうだ。
ごめん。オレ、猫だから、ニンゲンの価値観よくわからない。
だって人間の姿のオレに猫耳付いていたら怖いだろう?


『なぁ、銀。人間に猫耳つけてなにが楽しいんだ?』

猫耳は猫についているからいいと思うんだけど。

たまたま居合わせた銀時にそこらへんをきいたら、「萌えがあんだよ!!」「萌えこそすべてだ!」「男のロマンは萌えに始まって萌えにおわるんだ!」とか激しく突っ込まれた。
服のエリを引っ張られ、そのまま勢いよくガクガク揺らすもんで、脳が揺れた。

こらこらそんなにしたら脳がはじけ飛んじゃうよ。パーンだぞ。パーンはいやだろ。
いろいろはみでちゃったら、後処理とか大変そうじゃないか。

『オレはあんな偽物をつけてまで自分が猫になりたいとは思わないがな。むしろあのこより、乙女さんの方が美人だと思うし』
「あー・・・あんたはそういうひとだよな大串君。たしかに。乙女さんきれいだよな。それとあれとはべつだけど」
『ロシアンブルーを彷彿とさせるあのロングコートがいい』
「・・・・・・再婚はダメですからね」

母親が猫とかオレいやだよと、銀時に遠い目をされた。

乙女さんは、ロシアンブルーのようなきれいな銀灰色の猫だ。
オレの話し相手で、よく一緒にお散歩をするので、銀時もよく知っている。



現在俺たちは何をしているかというと。

オレは松平のとっつぁんが、痴漢にしたてられたから、とっつぁんの奥さんからの言伝「痴漢をする旦那はいらない」
というの銃とともに手渡して―――なんやかんやしたわけだ。

そのあと『怪盗キャッツイヤー』とやらの置手紙ならぬ置きカードに爆笑しつつ、そいつをさがしていたわけだ。

そのとちゅうでたまたま新八をおいかけている銀時一行に出会ったのだ。
はなしをきくと

「じつはなぁー新八もはじめはただの猫耳なんか邪道だ。とかなんとか、いちゃもんつけてたんだけどよぉ。
それがまぁ、アレだ。本物の猫耳を見たら・・・おちた」
『ああ。だからつけ耳してんのか』

っと、いうことらしい。
オレは松平のとっつぁんと総悟をまたせているので、そこでわかれた。

その後、猫耳な彼女ができた新八はどうしたかというと、どうも詐欺師だったらしく。
みごとにサイフを奪われ騙され、みんなで成敗したらしい。

それはよかったね。

























【後日談】

その後のオレはというと・・・。
べつに猫耳人間モードなんて中途半端な真似はしていない。
いつもとおなじように、のんびりと縁側に座って空が青いなとか思っているわけで。

思うにやはり人間に猫耳があるより、本物の猫がいいよね。と、思うわけさ。

「にゃぁ〜」
『そうだね。いい陽気だ。こういうときはひなたばっこにかぎるよなぁ』

乙女さんをだきあげて、その美しい毛並みをブラッシングする。
ああ、今日も平和だ。


「副長副長副長!!!!大変です!」
「局長が!!!」
「土方さぁ〜ん。この書類の締め切りっていつでしたっけ?」
「あれ?副長どこですかー!ふくちょー!!!」
「大変です!副長!!歌舞伎町で強盗犯人が!!」


『・・・・・・』

平和で、あればいいなぁ〜。









第34話「恋にマニュアルなんていらない」より








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