白と赤色の物語
- 銀 魂 -



22.粉と猫な、おとんたち
第28話「 いい事は連続して起こらないくせに悪い事は連続して起こるもんだ」より





義理と人情が世だろうがよぉ。

っとはいうが、世の中はアレだ。アレ。
ナガイモノにはマカレロと言うだろ。

あと金。
金で世界が回ってんだよ。
あと、かわゆぅ〜いぃおねぇちゃん!だっ!!

俺の娘が一番だけどな!栗子ラブ!



あ、でも・・・。
どーもねぇ。断れないのいるンだよねぇ。
〈天導衆〉 とか 〈天導衆〉 とか、おかみとか。
ああ、一番やばいのはアレだ。
こっちの弱みを握ってくれっちゃってる怖くて黒くて人外の奴とか、黒い奴とか、黒い奴とか、真っ黒けなのに目だけ緑な黒い奴とか!黒い奴とか!!
おばけとおなじくらいこわい。
うん。怖さの種類が違げぇこつうぐらいしってんだよ。つっこむんじゃねぇ。
いや。こわいのは上司で。
まぁ、黒いのも怖い。

黒いの怖い。
くろいの、こわいなー。っと。まぁ、怖いだけでないので困るんだが。







 -- side 松平片栗虎 --







ゴリラに用があってもうダッシュでもって真選組に乗り込もうとしたところで、カランカランと涼やかな音がして思わず足を止める。
なにげなく足を止めれば、ニャーニャーと猫の声が耳につく。
鳴く猫たちに群がられているのが、さっきの音の主だろう。
周囲にはほかに下駄をはいている人間はいないから、間違いない。

そこには黒い着流しを着た男が、まるで猫と語るように道端にしゃがみ込んで猫に餌を与えていた。

黒い髪に、黒い服。
黒が好きなのは相変わらずのようだ。
本来きれいな白い色の髪を真っ黒く染めて、こんな屑組織のむさい男たちの中に紛れ混んでいる“人間じゃない生き物”をみとがめて、あわてていた足を止める。


「あっれぇ。 “親父様” じゃないのぉ」

声をかけ振り返ったその緑の瞳がこちらを向いた。
群がってきたうちの一匹の灰色の猫を優しく抱き上げると、黒い男はこちらをみてまぶしそうに眼を細めて、カラリコロリとゲタをならしてやってくる。

ゲタも猫も、日本人離れした緑の目も――本当に様になっていて嫌になる。

「なぁにしてんのぉ?相変わらず憎たらしくなるくらい若いネェ」
『おー。っていうか、その呼び方やめい。 とっつぁん。あんたの方が今は年上にしかみえねぇよ・・・で、ないですか』
「ん?まぁー。そうとも言えるか」

いやでもあんた、いつみても俺より若いだろ!?
外見は!外見はなっ!!
自慢か?
うらやましすぎるぜチクショウ!!!
いや、うん。ねたましくないぜぇ。俺の方が渋さがあるからな!
憎いよねぇ。憎たらしいよあの若さが。
しかも既婚者だろあのネコ!
外見は黒いのに。
ただの長生きしただけの猫だろ。
まぁ、全身黒いかというと、そうでもないが。実際、あいつの目は緑だ。 それにくわえて、あの左薬指に鈍く光る指輪、あっちは青。髪も服も黒い中だと、そのふたつは強烈に目を引く強いカラーとして映りやがる。
重要なので何度でも言ってやる。
イケメン死ねぇい!!

まぁ、どうであろうとこのイケメンな化け猫なんかに娘はやらんけどな。
ん?でもあの指輪のあの位置って、結婚指輪だなぁ。
あ、結婚指輪してるから、俺の栗子がこいつに嫁ぐことは絶対ないか。
ってぇ、ことは、もう嫁さんいるから、もててもフルのか?
やっぱりイケメン死ね。


既婚者かぁ。そういう意味じゃぁ、俺と同じなんだよなぁ。
だから“親父様”って俺も呼んでるし。
そういえば、あいつの子供っていくつになるんだっけか?

子供といやぁ・・・このまっくろけと、《最初》に会ったのはいつだっけかねぇ?
あのときこの人外生物の猫は、こんな真っ黒ではなく、まだ真っ白だったっけか。
子連れで子供と一緒にいて、『うちのこ可愛いだろ!!』とか、あいさつがてら自慢してきやがった記憶がある。

んん?ありゃぁ、近藤と会う前だなぁ。

この黒いのが、おのれの子どもだという銀髪のガキをつれていたが、あれのときはまだ子供の性別を聞いてなかった気がする。
こいつのガキって、娘だっけ?男だったか?
あの時いた子供をやたら『かわいい』『かわいい』と連呼してたから、あれは娘だったのか?
だったら娘を持つ同じ親同士語るのも一興。今度、酒でも誘うかねぇ。いいキャバクラしってんのよぉ。
まてよ。こいつのガキって、娘だっけ?男だったか?
もし男だったら、栗子の婿に・・・・・・いやまてよ。このむかつくイケメン遺伝子を継いだ男を栗子の?
ないな・・・憎い。憎すぎる。
栗子はやらん!!
絶対会わせん。


なんだっけなぁ。
俺もあんときゃぁ、若気の至りというか。
「強そうだ」と、一勝負を挑んだんだ。まぁ、しょせん子供自慢されたあげくの乱闘だった気がしなくもないが。 あっけなくこの俺が負けたがな。いやいや負けてやったんだよぉ。
そのあとが最悪だったんだ。
こいつ情報収集能力がすさまじくて、いつもこっちが後手に回っちまう。

マジこの親父様コワイんダヨ。


しまいには道場が潰されたとかで、この真っ黒黒助 “こちら側” を脅してきやがった。
俺が地位を得た途端のこれだ。
恐喝だよぉ。恐喝。まじ怖いのは、普段穏やかにわらっているような奴。
俺ら官僚が逃げて逃げてどれだけまこうが、気づけば横にいる。おまえは「メリーさんかぁ!!」っという感じで、数々の人間が悲鳴を上げまくった。
あげくには『おいかっけっこはあきた』『年寄りにはつらいのでそろそろ王手といこうか?』とか言って、 イモ侍どもの出自の保証を書き連ねた書類や、どんだけと叫びたくなるような官僚たちの数々の弱みやらをつきつけてきた。 そしてさまざまな種類の物的証拠により、俺らは逃げ場を失ったのはいうまでもない。
メリーさん・・・怖かったンだよぉ。
あれは、もう思い出したくない。

そういう裏工作があって、しかたなくヤツラを拾って真選組とした。
しらないのは、当の真選組という芋侍や野生のゴリラぐらいだ。
情報という名の盾を片手に、ニヤリとあくどいぐらいの笑顔で乗り込んでくるとか。
ほんとこの人、化け物だよ。まじでかなわねぇ。

あのゴリラや田舎の芋侍のために、家族さしおいてそこまでするとか。
俺にはさっぱりわからねぇ。
俺なら娘かわいいから、絶対やらねぇ。


ま。たぶん、そんなあの意気込みに、おりゃぁ、惚れたんだな。
こいつがいるなら。
こいつが守ろうとするぐらいの奴だ。
まぁ、田舎侍でも雇ってやろうじゃネェのって思ったもんよ。





だがねぇ。
このあいだの “アレ” はだめだ。
〈煉獄間〉 に手を出して 〈天導衆〉 にケンカを売るようなまねをされちゃぁ、こちらの首もやべぇ。
かばうどころじゃぁねぁよ。

「っで “親父様” よ。ゴリラはいるかぁ?」
『ゴリラ?だれだそれ?あんたのことか?』
「・・・・・・イケメンくたばれぇいそんでぇ爆発しろぉい」

おとなしく抱かれている猫を撫でる真っ黒黒助が、不思議そうに首をかしげる。
え?それでわかんないってどうなの。
ゴリラといえば、あいつしかいないだろ。
なんでアレをゴリラと連結できないんだろうこいつ。
どうみてもゴリラじゃん。世間の皆様はみんなそう思うだろ!?なぁ!?

『イケメンって。かぶき町にいる“ホウイチ”みたいな粋な猫(やつ)のことだろ。 わかるぜそれ。あいつの狩りのしかたって尊敬するよなぁ』
「・・・・・・」

ああ、だめだ。
こいつの価値観や美的センスは “猫” だったわ。
子供は五匹ぐらい同時に生まれるとか信じてるやつだった。
ものすっごい忘れがちだけど、こいつ人間じゃなくて化け猫だったな。
そりゃぁ、アレをゴリラと認識できないわけだ。

俺がそれを忘れてたってのもあるけど、おもわずため息が出てもなぁ。これはどうしようもねぇってもんだろぉおい。


「・・・はぁ。近藤はいるか?」

『あー。・・・ゴリラって局長、のことか。
あのひとなら、今頃歯でも磨いてる頃だろ。
隊士たちは四時にはたたき起こして訓練させてるけど、局長は別行動だから。今頃テレビで占いでも見てる時間帯・・・じゃねぇか?』
「あのゴリラ・・・」




「自分だけくつろいでるとか何様だぁぁつってんだよぉぉ!!ごぉーりぃーらぁぁぁぁっ!!!!!!」

“親父様”に迷惑かけてんじゃネェ!!!










『・・・なんだぁ?』
「にゃぁ」
『そうだな。とっつゃんも忙しそうだ。
それにしても、あの走りっぷりはすさまじいな。どんな体力だって感じだわ。いつも思うが、まだ現役で前線でもやってけそうだなぁ』









第28話 いい事は連続して起こらないくせに悪い事は連続して起こるもんだ








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