白と赤色の物語
- 銀 魂 -



06.銀髪の侍を追え!
アニメ第9話「喧嘩はグーでやるべし」より





 -- side 夢主1 --





「副長ぉぉぉぉ!!」
「局長が女に振られたうえ、女をかけた決闘で汚い手を使われて負けったって本当なのか!!」
「局長が女にふられるのはいつものことだが喧嘩で負けたってしんじられねーよ!」
「銀髪の侍って何者なんだよ!」

近藤局長が女を取り合った決闘で卑怯な手で銀髪の侍にやられたと、どこかできいてきたらしく、細かい詳細を知らない真選組連中がいきり立って迫ったきた―――朝の会議こと。

銀髪の侍ってだれと聞かれて、思わず顔が引きつりそうになったが、そこは長く生きてきたがゆえについた無表情をこころがけて、不動の体制を心がける。

・・・・・・。

ぐわっ!!!だめだ!?
気を抜くと口が滑りそう!!!
現にこの場には、ぶしゅうの道場時代のそれも事情を知る仲間はいない。
みんな道場から発った後の仲間ばかり。

『会議中にやかましんんだよ。
あの近藤さんがまけるわけねぇだろうが』

っと、こうでも言っておけばいいだろうか。

いや、近藤さんは負けたけど、目撃したのオレだけだし。
あの顔の腫れがひいていればきっと、真選組の威信とか威厳とか大丈夫だよな!?近藤さんを尊敬するこいつらもおちつくよな!?そう、なにもないはず・・・。
そうだ!そうだよオレ!このままごまかして流してしまえばいい!あれは嘘八百の噂に過ぎないのだと。

『だれだぁ。くだらねぇうわさたれながしてんのは』

やれやれ。なにを“町民たち”ごときの噂に振り回されてるんだ。そう思って告げたのだが、帰ってきたのは予想外の返答。

沖田隊長が!」
「スピーカーで触れ回ってたぜ」

集まってたやつらの視線が後ろの方に座って茶を飲んでいた総悟をいっせいに指差した。

なんと“外”からの噂ではなく、“身内”からの噂だったらしい。

それに思わずあんぐりと口が開きかけるのを懸命に抑えて、事情を知ってるくせにぃ〜!とうらみがましく睨めば

「俺は土方さんにききやした」

総悟は茶を飲むのをやめて、それは優雅にニッコリと爽やかに笑いながら言った。
たしかに言ったのはオレだけど。
オレだけどぉ!!!!!

『っく。こいつにしゃべったオレがばかだった』

だって銀時とオレの関係知ってるの近藤さんと、総悟と他数名だし。
ぶしゅう時代からの仲間でも知ってるのと知らないのに結構別れるし。
思わずオレが頭痛を覚えて額をおさえていてもしかたない。
っが、そんなオレに部下共が苛立って声を上げてくる。

「んだよ!?結局あんたが火種じゃんか!」
「えらそうな顔なさって、ふざけんじゃねぇよ!!」
「てことはなに!?まじなのあの噂!?」

っで、だれだれがどうの。だれがいったと論争が始まり――

『っるせぇんだよ!!』

会議中に何馬鹿な論争してんの?
『なにいっちゃってくれてんのこいつ!?』とか内心思ったけど、副長という立場上ツッコムのをこらえていたら、調子に乗られたので、立場というものをわきまえさせてやることにしました。
ってか、オレに文句付けてくる内容の幼稚さとうるささに腹がった。
ブッツンきちゃったけど問題ある?ないよね。当然だよね。
だってオレ副長だし。

自分に都合がいいとこだけ美化するような、人に罪を押し付けるな、自分はわかりません、関係ない――と、ばかりのちいせぇ発言ばかりするから「これだから芋侍は」と言われるんだ。チクショー!
オレが仕込んだ文法や礼儀作法や丁寧語はどこいった!?
たしかにオレは松陽先生のように教え方はうまくネェけどさぁ!!

やまない騒がしさに短いオレの我慢の緒がブチギレたのもしかたない。

怒りのままに目の前にいるやつを力いっぱい蹴り飛ばす。
そいつをオレの怒りの生贄にしたことで、一瞬で周囲が静かになる。

『これ以上ごたごたぬかすんじゃネェ!
会議中に私語したやつはぁ切腹だぁ。オレがかえぞえしてやる。

――やまざきぃ、まずおめぇからだぁ

「ええ!?俺!?なにもしゃべってな」

『喋ってんだろうが!現在進行形で』

まずは元凶たる総悟からみせしめだぁ!っと思ったのだが、いつの間にかいなくなっていた。
そんな逃げ出した総悟の代わりに、その総悟の暴走を止めなかった山崎を八つ当たりもかねてしめあげようとしたところで。


「ちーす!こりゃぁいつになく白熱した会議だな」

噂の当人たる近藤さんが、それはもうのんびりとやってきた。

白熱した会議なんかじゃネェ!ちげぇよ!っというツッコミは・・・
腫れも引いてない近藤さんのほっぺたをみたら何も言えなくなった。

しかもこのひと、みんなが近藤さんのことでもめているというその真っただ中に、なんでそう爽やかな笑顔でくるかなぁ。
それをみてたらなんだか怒りとかやるきがなえてしまった。

「うっし!じゃぁ、みんな。今日も元気に市中見回りにいこうか!」

近藤さん、空気もう少しだけ読もーよ。
だから警察のくせにストーカーなんて奇行に走れちゃうんだゾ。





**********





えーっと。
本当にきみたちなにしてくれてんの!?
っと、叫びたい状況に陥ってます。

なにがあったかというと。
あの会議のあとに、部下共が“銀髪の侍”をさがすべく、とんでもない張り紙をとんでもない枚数書きまくって、町中に張り出してしまったのだ。

「どうしやすー土方さん?こりやぁ、“銀髪の侍”を探さないわけにはいかなくなっちゃいましたねぇー」

総悟がニヤニヤ笑いながら、呆然と固まっていたオレに言ってくる。
近くには銀時のことを知る仲間たちが苦笑を浮かべて指示を待っている。
この場にいない“事情を知る連中”は、他の奴らに悪乗りしているようだ。

いや、ほんと。これ、オレたちまで探さなくちゃいけない状況になってるよね。

ああ、でもひとつ案があるな。
そうそうに張り紙をはがせばいい。

『ご近所迷惑と、近藤さんの恥を隠すために、とりあえず張り紙を回収にくぞ』

卑怯手段をとったとはいえ近藤さんを殴り飛ばすことができた銀時だ。
たとえこんなにたくさんのポスターがあろうと、きっとうちの芋侍どもにみつかってもぬらりくらりとかわすか、実力で勝つだろう。
っと、いうことにしておく。
だから銀時は大丈夫だ。
問題は町中に貼られたというポスターの山と――

オレの胃だ。

なんか微妙にさっきより胃が痛い。キリキリする。
今日は雑炊にしよう。

「あ、俺は胃に優しいもんじゃぁなくて、重いもんで」
『じゃぁ、ひじか』
「すんません土方さん、俺、献立道理のメニューがよかったです。ハタラケコノヤローなんて今日はもういわないんで!」

「あれ?今日は副長が料理当番したか?」
「なら、ぼく、唐揚げ一個増やしてください!」
「あ、ずりー!俺も!!」
『キャベツの山盛五名様だな了解した』
「「「「「!!!????」」」」」
『っで。話を戻すがいいか?』
「「「「「もちろんです」」」」」

『お前らは、他の奴同様に“銀髪の侍”さがすふりして、銀時と間違われて誤認逮捕もとい人違いされちゃった“銀髪の侍”をうまくにがしてやってくれ。
総悟は罰としてオレと張り紙回収な』
「へーイ」
「「「「了解です副長」」」」

街に今から行きます。
とりあえず病院もよって、胃薬ももらってこよう。





**********





そんなわけででてきた街で、オレは肩が外れるんじゃないかってぐらい驚いた。アゴじゃなくて肩だ。
肩ががくっとはずれそうなほどの脱力感てわかる?

あの馬鹿ども、見事にみっちりすきまなく町中にポスター張りまくっていやがった。

なにこれ?江戸の町を紙の街にしたいの?ってぐらいだった。
これ、とらないとやべぇよな。
めんどいよー。

「この量だと、ふたりだと大変そーっすね土方さん」
『お前はもっと反省しろよ!』
「反省はしても悔いはない」
『しろよ!!』
「はたらけヒジカター」
『…てめーもな』

口より手を動かしてください。
もうオレの桶は紙くずでいっぱいだ。

ブチブチ言いながらもポスターをはがしていく総悟にこの量はさすがにめんどいよなぁと同意の意味を込めて苦笑し、その頭を『ご苦労さん』とひとなですると、オレも壁からポスターをはがしていく。


 【銀髪の侍へ
 てめェコノヤロー
 すぐに真選組屯所に
 出頭してこいコラ!
 警察なめんなよ!

 真選組】




一枚をじっくりはがして手に取ってみて、さらにがっくりしてくる。
なんなのこれ?
借金取りが押しかけて来たかのような文章。
どこぞのチンピラのごとし品性の有無を疑う。

『走り書き?』

あまりの汚さにびっくりだ。
これ印刷機にかけたのかな。
かいたのなら大変だろうなぁ、この量。あ、だから走り書きなのかも。

っていうか、うちの屯所って、ちゃっかり印刷機があるのに、パソコンないからなぁ。 ほしいなぁパソコン。文明の利器。
経費…。
だめかなぁ、おちないかなぁ。
この汚い文章を提出したら、上が買ってくれるかも。
そうしたら報告書も少しは読みやすくなるかな。

「何考えてるかわかるようで、さーっぱりあんたの考えなんてわかりませんがね土方さん。
俺たちゃぁ、しょせん田舎出の芋侍っすからねぇ。
手習いなんて得意なやついるわけねぇ。
ポスターの字が汚いとか思ってるなら、かんべしてやってくだせぇ。そもそも俺らの部署は、武装警察。呼んで字のごとくでさぁ。
腕に自信がある筋肉馬鹿ばかり集まるのもしかたありゃぁしませんぜ」
『猫なオレでももうすこし品があるぞこれ』
「・・・いや、あんたと一緒にしないでくだせぇ」
『後ろ足で立って、前の手二本で筆を持てばもっちとましな字をかけるぞ』
「あんた以外の動物は無理ですよ」

そういうもんだろうか?
なんか昔のアニメで、オレンジ色の猫がしゃべる話とかあったきがするけど。
そもそも字を書ける動物って結構いるよな?
ほら、×××動物園のゾウとか。鼻でかいてたじゃん。あれは絵だっけ?

「どこの話っすか?」
『さぁ?』

転生しすぎて覚えてない。今世のことか、それさえも曖昧だなぁ。

そんなたわいのない話を総悟としながら紙をはがしていく。
この紙屑の山どうしようかな。
もったいなくね?もったいないよなぁ。
あ、裏白いから再利用――ダメダ。もうくしゃっとまるめちまってた。
しかたない。
あとで食堂と風呂場の薪の横にでも置いておくか。


「それにしても“銀髪の侍”を探してうちの奴らが駆けずり回ってますが、いがいと見つからないもんすねェ、万事屋の奴。
もうこの際だから、そこら辺の白髪頭みつけて刀持たせたらいいんじゃねですかい土方さん?」
『それやっちゃまずいから、そうならないように、ぶしゅうの仲間を外に出したばっかだろ』
「――ほら。こいつなんか眼鏡を外したら。ほら、ムサシ」

きいてねぇし!?
ってかさ

『どこからつれてきた?』

オレがひとり真剣に紙をはがしていると、総悟がフンドシにジャンパー姿という眼鏡の、白髪頭の老人を連れてきていた。
しかも眼鏡をはずすと無駄にかっこよすぎた。
なにあのイケメン。
でも関係ない奴に木刀持たせてるからあわててそれを奪い取って、じいさんには謝り、そのままなにもしないで帰ってもらった。

『ったく。なにしてくれちゃってんのお前は!』
「いや、土方さんが困ってるようなのではやくケリぃつけようかと」
『カードゲームじゃないんだから真選組のやつらの生贄に、無関係の奴ささげちゃダメでしょ!!お前は何を召喚するつもりだ!』
「ちっ」
『いや、あのね。たしかに親切はありがたいけどさぁ。銀なら大丈夫だと思うし』



「おーい、にいちゃん、あぶないよぉ」



『は?』

総悟と話しながら歩いていたら、上からまのびした声と同時にオレがまさに立っていた場所に、木材の塊が降ってきた。
声と共に頭上に影ができた途端によけたけどさ。
あぶなっ!?

ドサッと落ちてきたのは、屋根を修理するための木材で――



「「『あ・・・』」」



はしごから降りてきたこれを落とした元凶だと思わる黄色ヘルメットに青い作業着を着たやつをみて、オレと総悟も予想外の展開に思わずかたまる。
ついでに作業員もふだんはゆるんだ目を驚きに見開いている。

『銀…パツの侍!』

いたのは銀でした。
なんとか言いなおしたものの、それに不思議そうな顔をされ、理由がわかるようにと、そっとオレが持っていた桶のから丸めた紙の一つを手渡せば、銀時の顔が盛大にひきつった。

「あー…‥シロじゃなくて、えーっととうちゃんでもなくて。えーーと、えーっと、あ、その…きみ、だれたっけ?!そ、そうだそうだ!そうだった。君、《多串クン》か。《多串クン》だったね!ごめんごめん《多串クン》。あららぁ〜。すっかり大きくなっちゃって。なに、あの金魚またでかくなってんの?」
「いやそれちがうから万事屋の旦那。そのひと【土方十四朗】ですよ。まちがえんじゃねぇよクソ天パ」
「あーうん。えーっとそっかぁ《多串クン》じゃぁ、そういうことで!」
「ちょいまった万事屋!
それと土方コノヤロー。あのまま“銀髪の侍”をほおっておくんでぇ?」
『いやいや総悟や。でもこいつ侍じゃなくて大工のおにいさんにしか見えな』
天下の真選組副長ともあろう人が逃げるんでぇ?
真選組が“銀髪の侍”を探してることの時に?こんなに人が多い通りで?
こいつが銀髪で、あんたが真選組なのはあからさま。こんな場所だから目撃者も多そうっすよねぇ。
しめしがつかなくねぇですかね、ねぇ副長?」
『……』

総悟君なに言っちゃってんの。それも《天下の真選組副長ともあろう人が》のところだけ声音がとんでもなく大きいんですけど。
あ、いやだ。周囲の視線集めちゃってる!?みんなこっちみてる!?
しかも総悟、すごくいい顔してる。
このドS星の王子がぁ!!!

「シ、じゃなくて《多串クン》」
『なんだよギ“銀髪の侍”』
「…すごいおたくらかおひきつってますぜぇ」
「ボ、ボクニナンノヨウカナァア?」
「あ、声裏返った」

「『いちいちつっこむんじゃねぇよ総悟(沖田ぁ)!!』」


そんなわけで。
またもや総悟のせいで、銀時と野外バトルするはめになった。
それも屋根の上で。
なぜって銀時が仕事の上司に名前を呼ばれたことを言い訳に屋根の上に行ってしまったからだ。





**********





「がんばってくだせー“銀髪の侍”と“多串クン”」
『だれがオオグシクンだぁ!!』

屋根の上で剣を交えるってどうなの!?
しかもなんでふっかけたテメェはのんびり茶とせんべいもって応援してやがる!?
ってかどっからだしたのそのお茶ぁ!?

「あっはっは。
相変わらずノリとツッコミのテンポが似てやがりますなぁ、あのふたり。どう思います近藤さん?」
「まぁ、しかたないだろあれは」
「剣技まで同じじゃぁ、勝負つかねぇんじゃないですかい」
「師弟対決ってとこか?」

いつのまにか近藤さんや大工の棟梁まで観戦してるし!?
なんでオレたち屋根の上でばとってんの!?ねぇ!?どうして!?
銀時だってすんげーこまっってんぞ。
むしろ近藤さんの近くにいる大工が、「仕事追わんねー」とかつぶやいてんすけど!?



だれか〜!

とーめーてーーーーー!!!!









アニメ 第9話「喧嘩はグーでやるべし」より








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