白と赤色の物語
- 銀 魂 -



05.TVには放送できない事実たち
アニメ第8話「粘り強さとしつこさは紙一重」
アニメ第9話「喧嘩はグーでやるべし」より






 -- side 夢主1 --





ハイ。みなさんの愛する銀時の育ての親もとい猫な、真選組の副長をしています土方十四郎と申します。
髪を赤いのに戻して、いつもの黒い着流しをゆるっと着ています。

ただいまカブキ町のとあるおたくの前にいます。

今日は義息子がお世話になっているおうちにご挨拶でもと思って、菓子折り持ってやってきたんです
菓子折りとはいえ、駐屯地の台所を借りてオレがみずから作ったケーキ1ホールです。銀時の分もあるので合計2ホール。
手作りの方が安上がりですむからね。
え?お仕事?
台所をのぞいてた真選組のやからに、持っていくもの以外の他の菓子を配ったら、快くかわってくれたよ。
ちゃんと「いってくる」って言ったら、クリーム顔に付けた笑顔で「いってらっしゃい」と手を振られたし。



『すみませーん。どなかいっらしゃいますか』
「なんだいあんたは?」
『あぁ。シロウと申します。うちの息子がいつもお世話になってます』
「は?」

現れたキセルを加えた勇ましい人間の女性に、笑顔で応える。
万事屋銀ちゃんとかかれた看板の一階が、大家さんの家だと銀時が言っていたので、きっとこの方だろう。
なんて貫禄があるんだ。
これならあの銀時でもきっときちんとやりくるめられているに違いない。

っが、そうでもないようで。

「あんた、父親だっていうのなら。あいつのツケ払ってくれねぇかね」

――家賃滞納してるみたい。

ついでに今は、銀時はでかけているらしい。
二階にいるのはチャイナと眼鏡だけなんだと。

「ここ数か月分溜まっててね。私も慈善事業で場所を貸してるわけじゃないんでね」
『え。うそ!?やだなぁ。そのために算術教えたわけじゃないんだけどなぁ。まぁ、オレの仕事柄、忙しすぎてあんまり金使わなねぇからいいけどよぉ。
う〜ん。いくらぐらい溜まってるんだぁ?』
「こないだ、そこそこ入ったようでね。まぁ、今回は二か月分か」
『はぁ〜。いや、本当にめったに使わないからいいんだけどさぁ。・・・面目ない』

なぜかオレが銀時たちがためてるツケを払う羽目になった。
はて?なんでだろう。
まぁ、仕事が忙しいから趣味に使う暇ないし、オレたち真選組は寮に住んでるし、給料なんて食費以外は使わないんだけどさ。
しかも猫としてぶらついてしまえば俺には食堂も必要ないわけだ。
猫のままで歩けば、だれかが魚とか猫が食べれそうなご飯を用意してくれるので、食費さえ減らないときもあるしな!

とはいえ、さすがにオレもそう毎回のように払ってやれるほどの高給取りじゃないんだけどな。

銀時たちの将来のためにって、実は子供たち名義で通帳あったりするけど。
うん。これは銀時とか小太郎とか晋助とかに通帳あげるのやめようかなぁ。
晋助なんかはどっかのボンボンだったっていうしなぁ。
せめて松陽先生の代わりにこれくらいは親代わりとして、とか思ってためてたんだけど。
名義、自分宛てに直しちゃおうかなぁ。

「…あんた、何人こどもいるんだい?」
『銀ひとりと。あとは面倒見てた子が二人かな。声に出てたか?』
「[子供たち名義の通帳]あたりからさね」
『まぁ、そういうことだ。忘れてくれ』
「あんたがねぇ。
それにしても随分若くないかね。そのみてくれで子持ちってぇのは」
『これでもあんたと同等かそれ以上は人生経験あるんだぜぇ』
「天人か!?」
『いんや。化け猫だ』
「・・・・・・

・・・・・・・・・・そうかい」


心で呟いていたはずが、声が漏れていたらしい。
銀時の奴にはその通帳のこと言わない方がいいよと、ありがたい助言までいただいた。


『それで。銀はぁ?』
「あいつなら二階でバタバタと暴れた後、なんかジジイに連れていかれたよ」
『そうか』
「そういえばあんた、どっかで見た顔だねェ。でも赤毛の奴に知り合いはいなかったか。あたしゃぁ、これでも記憶力はいい方でね」

そういえば昨日から真選組の密着撮影するとか言ってたかな。
それで大家さん、TVでみたのかも。

ん?
昨日の夜は――…土方として攘夷志士らを捕まえたような?
あれ?昨日の記憶が中途半端にないなぁ。
池田屋事件の時に総悟からもらったマタタビ酒を飲んだあとで、ちょぉっとハイになっていた自覚がある。
昨日はたぶん眠気のあまりテンションがおかしくなっていたような気がしないでもない。
あとは太陽が昇る少し前の早朝に、いつものように集まった真選組のやつらと剣を合わせたっけ。
あれはオレが道場時代からの日課だから、みんなついてくるんだけど。
テレビクルーのひとたちは早朝4:00だったせいで、死にそうな顔してたな。
眠そうだった。
とりあえず朝の鍛練に出ていた奴ら全員と相手をした。
双方ともに木刀を持ち、オレ対部下という形で仕掛けてくるやつらと打ち合いをするんだ。
本番さながらの迫力だとTVクルーが息をのんでいたが、こんなのだれも本気じゃネェってのになぁ。総悟なんてアイマスクして寝ながら木刀振り回してるしさ。
そんなこんなでいつもの打ち合い鍛錬を終えた後はTVクルーがいったんひきあげたので、ケーキをつくりはじめたんだ。
それであおのあとの交通整理とかの予定もあったけど、全部部下たちに任せてきた。

そういえば昨日から近藤局長の顔を見ていない気がする。
あれ?昨日は酔っぱらってたから気付かなかっただけかな。
でも今日も見てない。
ケーキつくるとすぐにくるベスト5のひとりなのに。

『ん。まぁ、いっか』
「どうかしたのかい?」
『いえいえなんでも』

銀時に会いによく猫の姿で遊びにきてはいたけど、大家さんに会うのは初めてだ。
仕事は部下がやってくれるって言ってたし、どうせだからと、彼女と親睦を深めておこうと出されたお茶をいただきながら、そのまま話に花を咲かせた。



結局、銀時は夕暮れになっても帰ってこなかった。

オレは仕事をそんなにあけとくわけにもいかないし、お登勢さんの方もそろそろ店を開けるころあいだとかで、その日はそれでおひらきとなった。
お登勢さんに挨拶をして店を出た。
もちろん選別にケーキ2ホールはすべてお登勢さんにあげた。
でもきっとお登勢さん一人では食べきれない量だろうから、きっと二階にいる眼鏡やチャイナにもおすそ分けがされるだろう。
そうおもうことにしておく。
銀時の分?あれは家に帰ってこない銀時が悪いということで。





**********





見送ってくれたお登勢さんが見えなくなったあたりで、髪の色を赤から黒に戻した。
この髪は染粉で染めている黒だ。
本当は赤い。それを服を変化させるのと同じ要領で、黒から赤に戻してるんだ。
ちなみに妖怪ならではの髪の色を自由に変化できるというわけではないのはあしからず。

そうして総悟曰く通称“まっくろけ”状態に戻したあと、さらに黒い着流しの袖に手を突っ込んで、ゲタをカラカラならしている。

制服には着替えなかった。
だってあれ首元までかっちりしていて苦しいんだもんよ。

そうやってノンビリと、真選組の駐屯地に向けて歩いていると、河の手前でTVクルーと遭遇した。

「あ!土方副長!いまお帰りですか?」
「帰り際には町を見回りしてるんですね!」

なんか尊敬の念を向けられた。
眼差しが光っている。しかも勝手に盛り上がった後、カメラを回し始めた。

なんなの。
オレ、巡回なんかしてないし。
むしろ普通に帰るところなんだけど!?
何か勘違いしてないか?

「はわ〜。着流しもよくお似合いですねェ」
『あ、ありがとう?』

私たちのことはお気になさらず!そう言ってついてくるカメラクルーたちに、気にしないなら無視しようと、橋を渡っていると、なぜか人がやたらと集まっている。
というか、集まっていたのが解散したせいで、いつもより人通りが多いようだった。

『なんの騒ぎだ?』
「いやぁ。どうも女とりあって決闘したらしいですぜ」
『女で決闘だぁ?』

決闘って…どこの西部劇ですかぁ。
いいえ。ここは大江戸です。

『なんちゅうくだらねぇことを。
どこの馬鹿がそんな…』

今時はやらないことをしたのだろうと、のぞいてみれば、河わきの土手横に倒れる男の姿が――

『…………』

近藤局長が白眼向いてフンドシさらしてたおれてました。

やっべぇ、オレ。何も見てネェわ。
背後でオレを追っていたカメラマンが「わいせつ罪じゃないですかあれ」「とらえないんですかぁ?」と聞いてきたが、オレは『なにもみてない』とかわし、そのままさっさと橋をわたった。
カメラスタッフがあられもない恰好の局長をカメラにおめていたが、編集するときに使われないことを祈ろう。
ここはひとつ近藤さんのために慈善活動でもして、そっちをカメラに収めてもらってTV放送してもらうしかないだろう。
なにか事件は…!?
オレについてくるTVクルーたちの気を引く事件はないのか!!



すんません近藤さん。
庇いきれません。





**********





そ れ か ら。

近藤局長がわいせつ物扱いされてしまったあの騒動の原因が、銀時による卑怯技が炸裂したためだと知り、オレは涙ながらに土下座をすることとなった。
もうマジ泣きですよ。

『すんません!本当にマジですんません局長!息子がとんだご無礼を!!』

オレとの縁で、銀時だって真選組結成前から近藤さんのことしってるのに。
近藤さんが純粋でだまされやすいの知ってるのに。
それを逆手にとるとかどうなの!?
しかも勝負の結果って、うちの銀時が、武器となる木刀にきれこみをいれていたらしい。
なんてむごい。
そしてなんてせこくて卑怯なんだ。あ、同じ意味か。
そんな風に育てた覚えはないのに。

額を打ち付ける勢いで謝罪をしていたら、逆に近藤さんにあせられた。

「やめてくれトシ!あ、いや。まぁ、敵の獲物を使った俺が悪かったし」
「そうでさぁ土方さん。近藤さんのは自業自得でさぁ」
『まぁ、たしかに。お妙さんからストーカー被害の届け出が出てるし。近藤さんのはちょっとやりすぎ感はいなめぇねが…』
「でてたんかい。さすが姉御」
「そういう強気なところも素敵だお妙さん!」
「局長は少しだまってろい。
そもそもどっかの女の尻をめぐっての決闘だったって、いうじゃネェですかい。
あの甲斐性無しな銀髪天パがよくやったと、めでたいと、親なら喜んでやりなせぇ」
『え!?でもオレ、まだ孫とかいらねぇし。子供っていっぺんに五匹ぐらい生まれるじゃネェか。きをつけないと。そんなに銀もオレも養えねぇし』
「まてまてトシィ!たのむから落ち着けって!それは猫の場合だから!人間では一人だから!」
「そんなだから池田屋の時に、恋ができないって銀の字になげかれるんでさぁ」
『!?』

総悟に言われて思い出す池田屋事件。
たしかにそうかもしれない。
っていうか、

『なんで総悟がそれ知ってるんだよ!』

あの色濃いネタの時にはまだ真選組は乱入してなかったはずなのに!?

「当然《シロウ》の首輪に盗聴器仕込ませてもらいましたし」

キラーンと1cmにも満たない小さな機械をどこからか取り出され唖然とする。
どうやら猫になって撫でてもらった時に、ひそかにつけられていたらしい。
もしかしてGPSまではついてないよな。
山崎が見つけるよりも先にオレがナビゲータがわりになってたら、密偵担当な山崎は職を失うぞ。
っていうか、次からはなんか取り付けられてないか気を付けよう。





**********





―――さらにその翌日。
なんか銀髪の侍を探す真選組の姿があった。

『どういうこと?』

「「沖田隊長がスピーカーで触れ回ってた」」

朝の会議の場でいわれたことに、思わず拳が震えた。
なにしてくれてんのお前!!










アニメ 第8話「粘り強さとしつこさは紙一重」
アニメ 第9話「喧嘩はグーでやるべし」より

お妙さんを巡っての修羅場(笑)
ただしこの世界での銀時は道場時代の近藤さんと顔見知りなので、 たぶん「ストーカーでてこい!」って銀時が叫んで近藤さんがでてくるなり「ゴリラぁ!?おまえか!」とかつっこんでる。
後藤さんは夢主な土方のことを考えて「いや俺はお前の良く知る近藤さんではない。その知り合いのそっくりさんだ!」とかほざいてる。
それはスルー。
話は流れて決闘に。
あとは一緒。
最後の最後だけ第9話のネタ。
原作とずれすぎると、話がややこしくなるなぁ。意外と土方さん出番多かったしさ。改変むずい。
ただいま絶賛アニメ見直し中・・・。








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